51 大山鳴動 / 震為雷(しんいらい)
※ 震は雷鳴、勁くことなどを表わす。この卦は、それが二つ重なって
おり、天地の間に雷鳴がとどろきわたっているのである。古代人に
とって、雷鳴は天の怒りの声であり、強い畏怖の念をかきたてるも
のであった。しかしそれが案外実害を起こすことは少ないというこ
ともまた、かれらは経験の上からよく知っていたのである。耳目聳
動(じもくじょうどう)、思わず戦慄するようなことに出遭ったと
きは、この雷鳴を思い浮かべることだ。沈着冷静に振舞えば、案外
あっけなく通り過ぎるものである。この卦はまた、前景気やかけ声
ばかりで肝心の内容がともなわないことをも表わす。十分心しなけ
ればならない。
【RE100倶楽部:変換効率30%超早期実現へ】
太陽光発電と蓄電池の革命的な技術の向上によりコストが急速に低下し、助成金がなくても十分に競争
できる時代となり急速に普及している。国際エネルギー機関(IEA)によると、2015年には世界各地で新
たに作られた太陽光発電所の発電容量は51ギガワットに達し、それまでに建設された分と合わせる
と227ギガワットに及ぶという。電力コストも逓減し、発電所の計画、建設から運用廃止までの全
コストを生涯発電量で割った均等化発電原価(Levelized cost of electridty;LCOE)を過去10年間分で比較
すると、石炭のLCOEは世界平均で、百ドル/MWhでほぼ一定であるのに対し、太陽光発電のそれは
6百ドル/MWhからは百ドル/MWh近くまで低下。世界経済フォーラムによると、助成金なしで
グリッドパリティを達成した国が既に30か国以上あり、2020年までには世界の3分の2以上の国々
がそれに追随するだろうと予想する。
しかし、一方、発電コスト削減ては、日本は遅れをとる。米国のエネルギー省によると、米国、欧州、
中国、インドと比較した場合、住宅用太陽光発電コストは米国に次いで2番目、ユーティリティでは
日本だけ突出して高い。自然エネルギー財団による分析によると、日本で価格が高い要因は、主に建
設工事費、これは施工期間の長さ→人件費の増大、押し上げる。また、使われるモジュールのコスト
も高めな傾向が依然として残っている(品質の安定とは背反するが)。世界全体と比較すれば割高な
日本の太陽光発電も、この20年でコストは5分の1ほどになり、2015年には新たに作られた太陽光発
電所の発電容量が10ギガワットを超える。さらにコストを劇的に逓減するには、変換効率を30%
以上にすることで、工期短縮(面積1/2以下)を実現する。勿論、当初のセル単価は高いが、量産
が始まれば、よりコンパクトに、急速に逓減することは間違いないだろう(基本特性第4則:デフレ
ーション)。
● 事例研究:4接合反転変成太陽電池の製造法とデバイス構造
Mar. 2, 2017
ここ数年、宇宙用途のためのⅢ-Ⅴ族化合物半導体多接合太陽電池の大量生産により、技術の進歩が、
宇宙での使用のみならず地上のソーラーパワー用途にも加速。Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体多接合デバイス
は、シリコンに比べて製造が複雑になる傾向はあるものの、エネルギー変換効率が高く、一般的に放
射線耐性も高いとされる。典型的な商用のⅢ-Ⅴ族化合物半導体多接合ソーラーセルは、1sun、エア
マス0(AM0)の照度下で27%を超えるエネルギー変換効率をもつが、最も効率の高いシリコン技術で
も、同等の条件下で約18%の効率程度。シリコンソーラーセルに比べて高いⅢ-ⅤV族化合物半導体
ソーラーセルの変換効率は、異なるバンドギャップエネルギーを有する複数の光起電力領域を用いた
入射放射線のスペクトル分割と、各領域からの電流の蓄積とを達成する能力に部分的に基づいている。
典型的なⅢ-Ⅴ族化合物半導体ソーラーセルは、半導体ウェハ上に垂直多接合構造で製造し、その後、
個々のソーラーセルまたは、ウェハが水平アレイの形に配置され、電気的直列回路の形で個々のソー
ラーセルが互いに接続。アレイの形状及び構造、並びにアレイが含むセルの数は、所望の出力電圧及
び電流によって部分的にめる。
例えば、M.W.Wanlass他著、「高性能Ⅲ-Ⅴ族光起電力エネルギー変換器のための格子不整合手法(
Lattice Mismatched Approaches for High Performance, Ⅲ−V Photovoltaic Energy Converters)」(2005年1月3日
〜7日 第31回IEEE光起電力専門家会議議事録 IEEE出版 2005年)に記載されるような、Ⅲ-ⅤV族化合
物半導体層に基づく反転変成ソーラーセル構造は、将来的な商用高効率ソーラーセルの発展の重要な
概念的出発点を提示しているが、セルの多くの異なる層の材料及び構造は、材料及び製造ステップの
適切な選択に数多くの実用的あ困難をともなう。このため、宇宙用ソーラーセルの効率を高めること
にあるが、宇宙用ソーラーセルの効率は、(不活性Ge上の2重接合InGaP/GaAsの)23%から(3重接
合InGaP/InGaAs/Geの)29.5%に向上している。この向上の実現は、材料品質の改善のみならず、宇
宙動作環境の特徴である荷電粒子放射に起因する電力劣化を低減するセル設計の改善による。
下記のソレアロ テクノロジーズ コーポレイション社の「特開2017-041634 多接合反転変成ソーラー
セル」はこれを応用した多接合ソーラーセルの製造方法とそのデバイス構成・構造の新規考案が提案
されている。
【要約】
上図の多接合ソーラーセルが、第1のバンドギャップを有する上部の第1のソーラーサブセルと、上
部の第1のソーラーサブセルに隣接し、第1のバンドギャップよりも低い第2のバンドギャップを有
する第2のソーラーサブセルと、第2のソーラーサブセルに隣接して量子井戸を含み、第2のバンド
ギャップよりも低い第3のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、第3のソーラーサブセ
ルに隣接し、第3のバンドギャップよりも高い第4のバンドギャップを有する傾斜中間層と、傾斜中
間層に隣接し、第3のバンドギャップよりも低い第5のバンドギャップを有し、第3のソーラーサブ
セルに対して格子不整合である下部の第4のソーラーサブセルとを含む構成・構造の編成層を含むⅢ
-Ⅴ族半導体化合物に基づく、高性能の多接合ソーラーセルを実現する製造工程及びデバイスの提案
である。
【特許請求範囲】
- 多接合ソーラーセルであって、第1のバンドギャップを有する上部の第1のソーラーサブセル
と前記上部の第1のソーラーサブセルに隣接して格子整合し、前記第1のバンドギャップより
も低い第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルと、前記第2のソーラーサブセ
ルに隣接して格子整合し、前記第2のバンドギャップよりも低い第3のバンドギャップを有する
第3のソーラーサブセルと、前記第3のソーラーサブセルに隣接し、該第3のバンドギャップ
よりも高い第4のバンドギャップを有する傾斜中間層と、前記傾斜中間層に隣接し前記第3の
バンドギャップよりも低い第5のバンドギャップを有し、前記第3のソーラーサブセルに対し
て格子不整合である下部の第4のソーラーサブセルと、を備え、前記傾斜中間層は、一方では
前記第3のソーラーサブセルと、他方では前記下部の第4のソーラーサブセルと格子整合するよ
うに組成的に傾斜し、前記第3のソーラーサブセルの面内格子定数以上であって前記第4のソー
ラーサブセルの面内格子定数以下の面内格子定数を有することという制約に従って、As、P、N、
Sb系のⅢ-Ⅴ族化合物半導体のいずれかで構成され、前記第3のソーラーサブセル及び前記第
4のソーラーサブセルのバンドギャップエネルギーを上回るバンドギャップエネルギーを有し、
前記下部の第4のソーラーサブセルは、約1.05〜1.15eV のバンドギャップを有し、前記第3の
ソーラーサブセルは、約1.40〜1.50eVのバンドギャップを有し、前記第2のソーラーサブセルは、
約1.65〜1.78 eVのバンドギャップを有し、前記上部の第1のソーラーサブセルは、約1.92〜2.2
eVのバンドギャップを有する、ことを特徴とする多接合ソーラーセル。
※ 尚、詳細は上図ダブクリ参照(英文)。
● 事例研究:貯蔵型太陽光発電装置および貯蔵型太陽光発電システム
半導体太陽電池は、半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を吸収して電気を生成する。
例えば結晶シリコンは1.12eV以上のエネルギーの光を吸収して結晶シリコン中に正孔と電子を生
成する。一定の光を照射すると、ホールと電子のエネルギー差は半導体のバンドギャップにより決ま
り、入射光の波長にかかわらずエネルギー差は1.12eVである。図2の大きな表示で見る別ウィン
ドウ(タブ)は、半導体における正孔 - 電子分極効率によって決定される。Vocは、半導体のバンド
ギャップ(eVで表される値)を超えないがバンドギャップに近い値である。
バンドギャップ以上のエネルギーを有する短波長の光を半導体に照射すると、入射光のエネルギーが
半導体中で部分的に消失し、Voc はバンドギャップに近い小さい値である。したがって、最も効率よ
く発電が行われる光のエネルギーは、半導体太陽電池のバンドギャップよりも僅かに大きい値である。
すなわち、高効率化の観点から、半導体太陽電池には、バンドギャップに相当する波長よりも僅かに
短い波長の光を照射することが望ましい。 バンドギャップの小さい太陽電池が短波長の光を吸収する
場合、発電効率は非常に低い。その理由は次の通りである。具体的には、光子エネルギーの大きい短
波長の光を太陽電池に照射しても、太陽電池のバンドギャップによってVocが決まり、増加することは
ない。さらに、光子エネルギーが大きいので、光子数が減少する。その結果、単位光照射強度に対して
I scが小さくなり、発電効率が低下する。
大きな起電力と大きな電力を得るために、バンドギャップが異なり、分光吸収感度が互いに異なる複
数の半導体が積層された多接合太陽電池が開発されている。例えば、図3に示すようなエピタキシャ
ル結晶形成技術を用いてAlInP、InGaAs、Geのp-n接合を積層形成した多接合(積層)太陽電池が提案さ
れている。例えば、InGaP / InGaAs / Ge三重接合太陽電池のような多接合型太陽電池は、可視光から赤
外領域の広い範囲の光を吸収して発電する。
図4
また、図4に示すように、バンドギャップの異なるセルをあらかじめ単セル化しておき、透明な導電
性接着剤を用いて貼り合わせる方法。また、薄板状基板の両面にそれぞれ異なる分光感度を有する太
陽電池セルを有する複数の太陽電池パネルが所定の間隔をおいて平行に配置され、一方の太陽電池パ
ネルを構成する第1の太陽電池の表面で反射した光が他方の太陽電池パネルの第2の太陽電池に入射す
るもの。また、太陽電池自体の吸収特性を利用した多接合太陽光発電装置提案されている。
下図5に示すように、互いに異なる吸収波長範囲を有し、配線4によって電気的に直列接続された複数
の太陽電池1、2、3と、外部からの光を反射して各太陽電池に光を照射する反射ミラー6、7とを
吸収波長域に吸収されて発電する。遮光板の前後にそれぞれ異なる波長感度を有する太陽電池が設け、
表面側の太陽電池が直射日光を受光する太陽電池付きブラインドであって、その遮光板の前後にそれ
ぞれ異なる波長感度を有する太陽電池が設けられ、表面側の太陽電池が直射日光を受光する太陽電池
付きブラインドであって、 背面側に太陽電池からの反射光を前面側から受光し、この夜間照明用太陽
電池付きブラインドで発電した電力を蓄電池に蓄えて利用することが提案されている。
以上のようなことをふまえ、①光の反射損失を小さく抑え、②太陽電池のエネルギーロスを小さく抑
え、③電力を発生させることができ、④効率的かつ効率的に電気を蓄える、蓄電式太陽光発電装置お
よび蓄電式太陽光発電システムを提供することが本件の目的とされる。
【要約】
蓄電式太陽光発電装置10は、分光吸収感度が互いに異なる少なくとも2種類の太陽電池11、12、13を
含む太陽電池と、太陽電池に電気的に接続された蓄電装置21、22、23とを備えている。太陽電池は、n
番目(n は1以上の整数)の太陽電池が光を透過または反射させて自発的に光を分散させるように構
成されており、n +n 番目の太陽電池に吸収された光の一部以外の太陽電池が、より小さいバンドギ
ャップを有するn+1番目の太陽電池に落ちる。各太陽電池は、蓄電装置の1つに電気的に接続され、
2つ以上の太陽電池に電気的に接続された蓄電装置に蓄える。
図3 積層型多接合太陽電池の一例を示す概略図
図5 直列型多接合太陽光発電装置の一例を示す概略図
図6、蓄電式太陽光発電装置(第1実施形態の一例)の一例を示す概略図(ここでは図6は図番が表
記されていないが、図5の右の図がそれである)
図17 実験例1及び比較実験例1の各セルの電流 - 電圧特性曲線を示す図
図18、実験例1及び比較例1の太陽光を模擬した光に対するa-Si(アモルファスシリコン)セル及び
c-Si(結晶シリコン)セルの配置を示す模式図
図19、実験例2及び比較実験例2の各セルの電流 - 電圧特性曲線を示す図
- 互いに異なる分光吸収感度を有する2以上の太陽電池を含み、バンドギャップが減少する順に配
列された複数の太陽電池を備えた蓄電式太陽光発電装置であって、太陽電池に吸収されない入
射光の一部を透過または反射させて入射光を分散させ、入射光の一部を次の太陽電池に入射さ
せる光路方向に対して下流側に配置されている。前記2つ以上の蓄電装置のそれぞれに直接ま
たは間接的に電気的に接続された2つ以上の蓄電装置とを備え、前記2つ以上の蓄電装置のそ
れぞれによって生成された電力は、太陽電池に電気的に接続された蓄電装置とを備える。 - 前記各太陽電池の発電電力は、前記各太陽電池ごとに個別に記憶されることを特徴とする請求
項1に記載の蓄電式太陽光発電装置 - 前記2つ以上の太陽電池蓄電装置は、前記2つ以上の太陽電池のうちの少なくとも2つの太陽
電池と電気的に接続された蓄電装置を総称して、前記蓄電装置を構成することを特徴とする請
求項1に記載の蓄電式太陽光発電装置。少なくとも2つの太陽電池によって生成された電力を
蓄える。 - 前記2つ以上の太陽電池のうちの少なくとも2つの太陽電池が電気配線によって電気的に直列
に接続され、前記2つ以上の蓄電装置が蓄電装置を備えている、請求項1に記載の蓄電式太陽光
発電装置。電気配線によって直列に接続された少なくとも2つの太陽電池によって生成された電
力を集合的に蓄積する。 - 前記蓄電式太陽光発電装置は、前記2つ以上の太陽電池をそれぞれ含む2以上の太陽電池ユニッ
トと、前記2つ以上の太陽電池ユニット内の太陽電池とを備えることを特徴とする請求項1に
記載の蓄電式太陽光発電装置。 同じ分光吸収感度を有するものが同じ蓄電装置に接続されてい
る。 - 請求項1に記載の蓄電式太陽光発電装置と、前記蓄電式太陽光発電システムの外部からの光を
集光し、前記蓄電式太陽光発電システムの光路方向に対して最も上流に配置された2つ以上の
太陽電池の中から太陽電池に向けて照射する集光部入射光。
【JESEA地震予測:2017.03.15号】
2.みんな月に行ってしまうかもしれない
新潟に着くと、右に折れて海岸沿いを北上し、山形から秋田県に入り、青森から北海道に渡っ
た。高速道路はいっさい使わず、一般道をのんびりと速んだ。あらゆる意昧合いにおいて急ぎの
旅ではない。夜になれば、安いビジネス・ホテルか簡易旅館を見つけてチェックインし、狭いベ
ッドに横になって眠った。ありかたいことにたとえどんな場所だろうと、どんな寝床だろうと、
私はだいたいすぐに眠りに入ることができた。
二日目の朝、村上市の近くからエージェンシーの担当者に電話をかけ、これからしばらくのあ
いだ肖僅圃描きの仕事はできなくなると思うと告げた。まだ制作途中の依頼が数件あったが、私
としてはとても仕事ができるような状況ではなかった。
「それはまずいですよ。いったん依頼を引き受けてしまったんだから」と彼は声を使くして言っ
た。テントの上には無限の空かあった。空には無数の星が光っていた。他には何もない。
それから三遊間ばかり、私はプジョーを運転して北海道の各地をあてもなくまわった。四月が
やってきたが、その年の雪解けはもう少し先のことだった。しかしそれでも空の色が目に見えて
変わり、植物のつぼがはころび始めた。小さな温泉地があればそこの旅館に泊まって、ゆっくり
風呂に入り、髪を洗って髭を剃り、比較的まともな食事をとった。それでも体重計に乗ると、東
京にいた頃に比べて体重は五キロばかり落ちていた。
新聞も読まなかったし、テレビも見なかった。カーステレオのラジオも北海道に着いたあたり
から調子が悪くなり、やがて何も聞こえなくなった。世間でどんなことが起こっているのか、ま
ったく知らなかったし、とくに知りたいとも思わなかった。コ伎苫小牧でコイン・ランドリーに
入り、汚れた衣服をまとめて洗濯した。洗濯が終わるのを待つ間、近所の床屋に入って伸びた髪
を切ってもらった。髭も剃ってもらった。そのときに床屋のテレビでNHKのニュースを久しぷ
りに目にした。というか、目を閉じていてもアナウンサーの声はいやでも耳に入ってきた。でも
そこで伝えられた一連のニュースは始めから終わりまで、私とは何の縁も関わりも持だない、ど
こかよその惑星の出来事みたいに思えた。あるいは誰かが適当にでっちあげた作り事のように思えた。
私が唯一、自分になんらかの関わりを持つこととして受け入れたのは、北海道の山中で、一人
でキノコ探りをしていた七十三歳の老人が熊に襲われて死んだというニュースだった。冬眠から
目覚めた熊は、腹を減らせて気が立っているからとても危険なのだ、とアナウンサーは語った。
私はときどきテントで眠って、気が向くと一人で森の中を散歩していたから、熊に襲われたのが
私であっても不思議はなかった。襲われたのはたまたま私ではなく、たまたまその老人だったの
だ。しかしそのニュースを聞いていても、熊に惨殺された老人に対する同情心はなぜか湧いてこ
なかった。その老人が経験したであろう痛みや恐怖やショックを思いやることもできなかった。
というか、老人よりはむしろ熊の方に共感を覚えたくらいだった。いや、共感というのではない
な、と私は思った。それはむしろ共謀の意識に近いものかもしれない。
おれはどうかしている、と私は鏡の中の自分自身を見つめながら思った。小さく声にも出して
みた。頭がいくらかおかしくなってしまっているみたいだ。このまま誰にも近づかない方がいい。
少なくともしばらくのあいだは、四月も後半にさしかかった頃、私は寒さにもいささか飽きてき
た。だから北海道をあとにして 内地に渡った。そして青森から岩手、岩手から宮城へと太平洋
の海岸沿いに道んだ。南に下るにつれて、季節は少しずつ本格的な春へと移っていった。そのあ
いだ私はやはり妻のことを考え続けていた。妻と、おそらく今頃どこかのベッドの上で彼女を抱
いているであろう無名の手のことを。そんなことを考えたくはなかったが、ほかに考えるべきこ
とをひとつとして思いつけなかった。
この項つづく
「トランプはまるでニクソン」。こう、日本で人気のパックン(コラムニスト・タレント)はニュー
ズウィークス(2017.03.21号)で書いている。その1つが二人とも選挙中に人種対立をあおった点、
2つめは、ニクソンはベトナム戦争終結、トランプはISISを壊滅させる「秘密のプラン」を持っ
ているということで、3つめは選挙中二人とも民主党本部への侵入事件(ニクソンは空き巣、トラン
プはロシアによるハッキング)に巻き込まれている点だ。そして、この先、トランプはどこまでニク
ソンと同じ道を走り続けるのかと問いかけ。ニグソンは「僕は悪者じゃない」(I AM NOT A CROOK
!) と言って捜査に抵抗したが、辞職に追い込まれたが、どうもパックンは、そうなって欲しいとにお
わせる結んでいるが、わたし(たち)は両国民にとって最善の方向に展開することを祈る他なし。