46 伸びゆく若芽 / 地風升(ちふうしょう)
※ 升とは、のぽりゆくこと、地(坤)の下に芽を出した若木(巽)が、
天をめざしてすくすくと伸びゆく姿を示す卦である。上昇を示す卦
は三つある(晋、升、漸)が、順調な成長という面ではこの卦が最
高である。勢いから言えば、旭日昇天の「晋」が最も盛んだが、ど
うしても危険とひずみをともなうのである。この卦は、堅実に、し
かも自信をもって向上するものを表わしている。「彖(たん)伝」
にはその時の心構えとして、時を得ること、実力を養うこと、後援
者を得ること、の三つをあげている。若芽には、春の季節と強烈な
生命力と豊かな養分とが必要なのである。
● ペロブスカイト太陽電池をR2Rで量産性を証明 12.6%
9日、薄膜太陽電池の研究開発に関するメーカーのコンソーシアムであるSolliance 社は、ローツ・
ツー・ロール(R2R)方式でペロブスカイト太陽電池(PSC)を作製し、その変換効率が面積0.1cm2
のエリアで最大12.6%だったことを発表。この変換効率は、PSCに限らず、R2R方式で作製した
太陽電池として最高水準である。 PSCは結晶Si系太陽電池を超える高い変換効率を、結晶シリコ
ン系の1/5のコストで実現できる可能性がある次世代太陽電池。現時点で、単接合PSCのセル変
換効率の最高値は22.1%だが、多くがスピンコートという方式で作製されており、量産に向い
たR2R方式での作製例はほとんどない。今回の成果により、特に、低コストでの量産可能性を確認
できたと担当者は話す。
同社は今回、30cm幅のPETフィルム上に透明導電膜のITO層を形成した市販のシートの上に室温、
大気圧下でペロブスカイト層や電子輸送層(ETL)をR2Rで積層し、乾燥、焼成した。その製造ス
ループットは、1分間で5メートルと速い。焼成プロセスの温度は120℃以下。今後、作製した
性能バラつきを抑え、同時にさらなる高効率化を図っていき、近い将来に、より大きな測定エリア
で変換効率15%をめざす。これは楽しみだ。
● 初の金メダル デュアルモールで西島行真
中京大)が日本男子史上初の金メダルを獲得。積極的な滑りで頂点に立つ。世界選手権で男子の日
本勢は非五輪種目のデュアルモーグルで03年に附田雄剛、09年に西伸幸が銀メダル獲得してい
るが、そのモーグルでは初の金メダル快挙となる。岐阜県揖斐郡池田町出身。生後1年でスキー好
きの両親の影響を受けスキーを始める。小学校4年生でモーグルを始める。岐阜第一から中京大に
進学。W杯の最高成績は15年12月のW杯ルカ大会(フィンランド)デュアルモーグル3位。2
月の札幌冬季アジア大会でモーグルとデュアルモーグルの2冠。166センチ、54キロと小柄。
すごいぞ!
Mar. 24, 2016
【ZW倶楽部:竹のバイオマス発電の原料化に成功】
日本国内に豊富に存在するものの、ボイラーで燃焼させると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成
してしまうなどの特性から、バイオマス発電の燃料には不向きとされている竹。日立製作所はこう
した竹の性質を、一般的なバイオマス燃料と同等の品質に改質する技術の開発に成功した(スマー
トジャパン 2017.03.10)。
竹はカリウムを多量に含んでおり、灰の軟化温度が680~900度と低く、大型のボイラーで燃焼させ
ると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成する特性がある。さらに塩素濃度も高いため耐火物や伝
熱管を腐食させやすい。そのため、一般にはバイオマス発電などの燃料としては不向きとされてい
る。 竹は国内に豊富に存在するバイオマス資源であり、成長力が非常に強い。根が森林へ拡大す
るとそこに生育する樹木の成長を阻害してしまうため、放置竹林の拡大防止や、資源としての有効
活用策の確立も課題となっている。燃料に適さないという課題を解決し、竹をバイオマス発電に活
用できるようになれば、林業と発電事業者の双方にメリットが生まれる。
脱水後の粉末で作ったペレットを燃焼させたところ、灰の軟化温度は1100度以上に向上した。塩素
濃度も人体に影響のないダイオキシン類レベルとされる木質バイオマスペレット燃料の規格レベル
まで抑えることができた。さらにこの手法を、孟宗竹、真竹、淡竹、笹や雑草類、未利用の杉の皮
にも適用したところ、同様の効果が得られることが分かったという。
同社はこうしたニーズに応える技術の開発に成功する。竹類から「燃料に不向き」の原因であるカ
リウムと塩素を溶出除去、一般的な木質バイオマス燃料と同等の品質に改質する技術。
● 木質燃焼灰は産業廃棄物か
Apr. 14, 2017
ところで、木質バイオマス燃料はをエネルギー変換する方法は大きく分けて次の2つがある。
- 木質バイオマスを発酵しガス化し、①燃焼ボイラー、②ガスタービン発電、③燃料電池にて
変換するする方法 ※ 排熱を交換機や熱電変換素子で改修する方法。 - 木質バイオマスを燃焼ガス化した後、第1項と同様にエネルギー変換する方法。
このとき排熱は徹底的に回収利用するとともに、この工程で発生する廃棄物を回収し、①土壌改質
剤(肥料)、②コンクリートなどの窯業増量剤として徹底利用する。
いま、この滋賀県での木質バイオマス燃料事業(「湖の碧い四つの古城」Azure quatre vieux château
sur le lac) を構想しており、折りをみて掲載していく。
Mar. 9, 2017
黒猫 そして本が届いた。
わたしの作業場は角地の南西側向きに掃き出し窓があり、いぶきの生け垣越しに車の往来がみえる。
この間などは、彼女が溝掃除をしていて、車が住宅街だというのにスピードをだして、視界を横切
るので事故が起こると直感し、しばらくすると案の定、大きな衝突音とともに衝突事故が2件も発
生する。いずれも、その被害者は町内の知り合いの方である。彼女は事故とは関係ないのだが、地
元の中小零細のデベロッパーが宅地開発した道路幅狭まく消防車が通行するのもやっとという貧相
な住宅街なのだが、今朝もヤマト運輸のトラックを室内ウォーキング中、視界を走行音とともに確
認し、今回も直感通り、玄関チャイムが鳴り、声がするのでドアを開けると、若いドライバーが宅
配物を届けてくれた。受け取り領収のサインをしながら、最近なにかと話題になっているんだねと
声をかけると、評判になっていると微笑みながら応じてくれる彼の顔をみると何とも頼もしそうな
男前の若者であった。宅配ドライバーの低賃金で、苦労が多い話(上写真)は、何もヤマトだけで
なく、この日午後に、竹馬の友から突然電話が入り、宅配ドライバーをやっている苦労(低賃金で、
顧客の対応の悪さ、大阪南の中国人観光客が歩行マナーの悪さなどの苦労や、ドライバー不足によ
る慢性的な過重労働、それだけでない、零細の宅配会社の経営継続危機に追い込まれている実情等
々)聞かされる羽目となり、長時間の電話となってしまった。もはやこれは社会問題なのだ、そう、
これが平和時の「富収奪の経路依存性」におけるところの、「常在戦場」なのだろう、「蟻の一穴」
(体制崩壊の序章)となりかねないと妄想する。それにしても、わたしは、「アマゾン」を利用す
ることをやめている。その理由は唯拝金主義の経営精神のニオイを感じてのこと、これが世間で言
われる外資系企業特有のドライさ加減なのだろう。
兎も角も、黒猫が紀伊国屋書店に発注した村上春樹の近著『騎士団長殺し』――旋回する物語そし
て返送する言葉――を届けてくれた。
今日、短い午睡から目覚めたとき、〈顔のない男〉が私の前にいた。私の眠っていたソフ
ァの向かいにある椅子に披は腰掛け、顔を持だない一対の架空の目で、私をまっすぐ見つめ
ていた。
男は背が高く、前に見たときと同じかっこうをしていた。広いつばのついた黒い帽子をか
ぶって顔のない顔を半分隠し、やはり暗い色合いの丈の長いコートを着ていた。
「肖像を描いてもらいにきたのだ」、顔のない男は私がしっかり目覚めたのを確かめてから
そう言った。彼の声は低く、抑揚と潤いを欠いていた。「おまえはそのことをわたしに約束
した。覚えているかね?」
「覚えています。でもそのときは紙がどこにもなかったから、あなたを描くことはできませ
んでした」と私は言った。私の声も同じように抑揚と潤いを欠いていた。「そのかおり代価
として、あなたにペンギンのお守りを渡しました」
「ああ、それを今ここに持ってきたよ」
彼はそう言って右手をまっすぐ前に差し出した。彼はとても長い于を持っていた。手の中
にはプラスチックのペンギンの人形が握られていた。お守りとして携帯電話にストラップで
つけられていたものだ。彼はそれをガラスのコーヒー・テーブルの上に落とした。ことんと
いう小さな音がした。
「これは返そう。おまえはおそらくこれを必要としているだろう。この小さなペンギンがお
守りとなって、まわりの大事な人々をまもってくれるはずだ。ただしそのかわりに、おまえ
にわたしの肖像を描いてもらいたい」
私は戸惑った。「しかし、急にそう言われても、ぼくはまだ顔を持だない人の肖像という
ものを描いたことかありません」
私の喉はからからに渇いていた。
「おまえは優れた肖像画家だと聞いている。そしてまたなにごとにも最初というものはあ
る」と顔のない男は言った。そう言ってから笑った。おそらく笑ったのだと思う。その笑い
声らしきものは、洞窟のずっと奥から聞こえてくる、虚ろな風音に似ていた。
彼は半分顔を隠していた黒い帽子をとった。顔があるべきところには顔がなく、そこには
乳白色の霧がゆっくり渦巻いていた。
私は立ち上がり、仕事場からスケッチブックと柔らかい鉛筆をとってきた。そしてソフア
に腰掛けて、顔のない男の肖像を描こうとした。でもどこから始めればいいのか、どこに発
端を見つければいいのか、それがわからなかった。なにしろそこにあるのはただの無なのだ。
何もないものをいったいどのように造形すればいいのだろう? そして無を色んだ乳白色の
霧は、そのかたちを休みなく変え続けていた。
「急いだ方がいい」と顔のない男は言った。「わたしはそれほど長くこの場所に留まること
はできない」
胸の中で心臓が乾いた音を立てていた。時間はあまりない。急がなくてはならない。しか
し鉛筆を握った私の指は宙にとどまったまま、どうしても動こうとはしなかった。まるで手
首から先が痺れてしまったように。彼が言ったように、私にはまもらなくてはならない何人
かの人たちがいる。そして私にできることといえば、絵を描くことだけだった。それなのに
どうしてもその〈顔のない男〉の顔を描くことができなかった。私はなすすべもなく、そこ
にある霧の動きをにらんでいた。「悪いが、もう時間が切れた」と顔のない男は少し後で言
った。そして顔のない口から白い川霧の息を大きく吐いた。
「待ってください。あと少しすれば
男は黒い帽子をかぶり直し、また顔を半分隠した。「いつか再び、おまえのもとを訪れよ
う。そのときにはおまえにも、わたしの姿を描けるようになっているかもしれない。そのと
きが来るまで、このペンギンのお守りは預かっておこう」
そして顔のない男は姿を消した。賞が突然の疾風に吹き払われるように、一瞬にして空中
に消えた。あとには無人の椅子とガラスのテーブルだけが残った。ガラスのテーブルの上に
はペンギンのお守りは残されていなかった。
それはただの短い夢のように思えた。しかしそれが夢でないことは私にはよくわかってい
た。もしそれが夢であるのなら、私の生きているこの世界そのものがそっくり夢になってし
まうはずだ。
いつかは無の肖像を描くことができるようになるかもしれない。ある一人の画家が『騎士
団長殺し』という絵を描きあげることができたように。しかしそれまでに私は時間を必要と
している。私は時間を味方につけなくてはならない。
村上春樹 『騎士団長殺し』Ⅰ部 顕れるイデア編
と、ここまで読んで、トリス・クラッシックのホット・ウイスキーを作るためにブログ打ち込みを
終える。