表があれば浦がある。陽があれば陰がある。その変化と発展の法則を見きわめることが勝利
への第一歩であろ。
「敵の来たらざるを恃(たの)むことなく、われのもって待つあるを恃む」
智者が方策を練る場合は、必ずアメとムチを使い分ける。アメで誘えばらくらくと目的を達
することができ、ムチを与えておけば、災いを未然に防ぐことができる。敵国を屈伏させよ
うとする場合にはムチを加え、疲れさせようとする場合は次々と事をおこして奔走させ、味
方につけようとする場合にはアメで誘う。つまり戦争に際しては、常にこちらの意のままに
敵を勁かすことが感荷である。戦争においては、敵が来ないであろうことを特みにするので
はなく、敵が来られないような、わが備えを恃みとすることである。敵が攻めないであろう
ことを恃みとするのではなく、敵に攻める隙を与えないような、わが備えを特みとすること
である。
※ここでは、「願望」と「備え」の「notA or B」の「不戦」「非戦」を能動的に行う第
三(オルタナ)の選択(日本国平和憲法)を備忘しておく。
【下の句×樹木トレッキング 27:マメザクララ】
蚕豆のはたけの花の久しきに散りかかりたりさくらの花は 若山牧水
※「蚕豆」の読みは「そらまめ(=空豆)」
マメザクラ(豆桜:Cerasus incisa (Thunb.) Loisel.)はバラ科、サクラ属の植物。桜の野生種
の一つ富士山近辺やその山麓、箱根近辺等に自生しており、フジザクラやハコネザクラとも
言う。マメ(豆)の名が表すように、この種は樹高が大きくならず、花も小さい。富士や箱根
を中心に本州の中部、中央地溝帯近くに分布している。伊豆半島の温帯から亜高山帯まで様
々なところに分布している。この地形になじむように自らを変化させていったと考えられて
いる。花の時期は3月下旬から5月上旬で、花弁は五枚一重で色は白から薄紅色。花は1cm
から2cmと小ぶり。他種と違い花を下に向けて開せる。樹木としてはさして大きくならず、
大きいものでも10m程度であり、樹高1m程でも花をつけるようになる。この特徴は栄養や気
候から生育の難しく大きく成長できない亜高山帯でも子孫を残せるように変化したものだと
考えられる。このため、亜高山気候の場所でも育ち、一般的な桜より寒さに耐える。木の肌
は薄い灰色。細い枝を長く伸ばす。葉は広い楕円形で葉の端の鋸上の部分は切込みが深い(
欠刻状重鋸葉)。実は赤黒く熟する。大きく育たなくとも花を咲かせる特徴があるため、庭
木や盆栽としても非常に有用といえる。寒さに非常に強く、-20℃にも耐える。
第4章 プラザ合意は、日本を貶める罠だったのか?
第6節 冷戦で西側が勝利したのは、経済パフォーマンスの差
1985年にゴルバチョフがソ連共産党書記長となり、ペレストロイカ(政治・経済の立て
直し改革)を推進しますが、1989九年にはポ-ランド、ハンガリー、チェコスロバキア
などで共産党体制が崩壊,1989年ドイツ国民らもハンガリーなどから一斉に国境を越え
て西ドイツに脱出するようになり、1989年11月には東西ドイツを分断していた「ベル
リンの壁」が崩されることになります。そして同年12月、マルタ島でゴルバチョフ書記長
とアメリカのブッシュ大統領が会談し、第二次世界大戦以降、国際社会に大きな影響を与え
てきた東西冷戦が終結しました。
冷戦が西側の勝利に終わったのは経済パフォーマンスの差であった、といってもいいと思い
ます。資本主義国のほうが社会主義国よりも経済パフォーマンスが良かったために勝利した
のです。もし、資本主義国の経済パフォーマンスが悪く、失業者を増やしていたら資本主義
国が勝ったかどうかはわかりません。資本主義が積極的に勝ったというより、共産主義の経
済運営よりは効率が良く、失業者の増加も少なく抑えることができたため、負けずにすんだ
というのが実態でしょう。
資本主義は問題の多い制度ですから、運営がまずいと恐慌になってしまう可能性があります
。しかし、社会主義より修正が利きやすいので、うまく運営すれば社会主義より経済パフォ
ーマンスが良くなります。資本主義は100点ではないけれども、落第点ではないレベルで
す。社会主義と資本主義の違いは「ミクロ経済学の領域」への政府の介入の度合いの差です。。
官僚がミクロに介入して賢く運営しようとするのが社会主義です。一方、官僚はマクロのこ
とだけをやり、ミクロのことは分権化して市場に任せるのが資本主義です。
官僚が細かいことまで賢く運営するのは極めて困難です。どんなにスーパーマンのような官
僚でも、末端の取引のことまで全部わかるはずがありません。データを集めるだけでも大変
で、それだけで頭が痛くなってしまうような世界です。官僚がミクロのことまで全部取り仕
切ることはできないと考えて、分権して市場に任せるのが資本主義です。私はもともと理系
の人間なので、理科の法則で物事を考えます。社会主義がうまくいかないことは、物理の発
想で直感的にわかっていました。
物理学には、分子の1つひとつの動きをすべて運動方程式で記述できれば、世の中の物事が
完璧にわかるという「ラプラスの悪魔」という命題があります。頭の中で考えると実現可能
であるかのように思えます。しかし、現実には計算することが多すぎて、その命題を解くこ
とは実行不可能であることが証明されています,どんなに高速のスーパーコンピュータを使
っても時間がかかりすぎて計算できないのです。
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【脚注:ラプラスの悪魔】
➲20世紀に入って量子力学が登場したことから、「世界に存在する全ての原子の位置と運
動量を知ることができない」という形でラプラスの悪魔の論争は落ち着く。「世界に存在す
る全ての原子の位置と運動量を知ることができない」ということが、原理であるということ
が信じられるようになるまで、物理学者たちはラプラスの悪魔に悩まされる。
➲ラプラスの確率については、本書のほかに「世界の名著」第65巻(中央公論社)、および
『ラプラス確率論』(共立出版)がある。やや詳しく知りたい確率論の入門書ならゴマン
とあるが、おもしろい本としてたとえば、安藤洋美『最小二乗法の歴史』(現代数学社)、
内井惣七『シャーロック・ホームズの推理学』(講談社現代新書)、ジョン・パウロス『確
率で言えば』(青土社)、石井博昭・森田浩・斎藤誠慈『不確実・不確定性の数理』(大阪
大学出版会)などはどうか。ちなみに「ラプラスの魔」という言葉は1928年のデュ・ボア・
レーモンの『自然認識の限界について』(岩波文庫)のなかでネーミングされた。
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☈また、物理学には「二体問題」というものもあります。2つの問題はうまく解くことがで
きるのですが、3つ、4つと増えるにつれて計算がものすごく大変になり、三体問題、多体
問題は特別なケースを除いて解けないことがわかっています。
物理学では、すべてのことについての計算はできないので、全体のざっくりした法則を研究
対象とするようになりました。そのような物理学の法則を知っていましたので、経済学を最
初に習ったときに「社会主義はうまくいかないだろう」と感じました。左派経済学者の人た
ちは、物理学の法則はあまりご存知ないでしょうから、社会主義が可能であると思ったので
しょう。社会主義体制下で官僚がやるべきことは10個や20個のレベルではありません。価格
設定から、資源分配、技術開発など膨大な処理事項を、一部の官僚たちだけの力で、うまく
関連づけながら「最適」な形に持っていくことなど、到底不可能です,人知の計算能力をは
るかに超えています。
社会主義は、官僚に無限の計算能力があると仮定しなければ、成立しないシステムです。資
本主義には問題が多いとしても、ミクロのことは分権化して市場に任せたほうが効率的なの
です。日本が経済成長できたのは、社会主義より相対的にパフォーマンスの良い資本主義シ
ステムを選択したからです。また、通産官僚などが業界指導したように見せながら、実際に
は民間企業が自由にやってきたからです。
➲二体問題(Two-body problem)は、古典力学において互いに相互作用を及ぼす2つの点の
動きを扱う問題と定義できる。身近な例としては、惑星の周りを回る衛星、恒星の周りを回
る惑星、共通重心の周りを回る連星や、原子核の周りを回る古典的な電子などである。全て
の二体問題は、独立した一体問題に帰着させて解くことができる。しかし、三体問題やそれ
以上の多体問題は、特別な場合を除いて解くことはできない。
第7節 「前川レポート」はただ状況の変化をなぞっただけのもの
ところで、東西冷戦が終焉に向かう時代の流れは、日本に思わぬ余波をもたらすことになり
ます。アメリカ国内で、「ソ連が崩壊したあとの最大の脅威は経済大国・日本だ」という声
が廊府として湧き上がってきたのです。それだけ、日米の経済摩擦は厳しいものとなってい
ました。
そうなってしまった原因の1つとして、もちろん、本章で見たようなレーガノミクスの問題
もあります。しかし何より、日本が「ダーティ・フロート」で為替レートのゲタを履き続け
て、アメリカに対して圧倒的に有利な条件で競争を続けてきたことが、不必要なまでの反発
を招いてしまったとも考えられるでしょう。やはり、どこか恣意的で無理のある歪んだ経済
運営は、様々な問題を引き起こしてしまうのです。日本からすれば「ダーティ・フロート」
は、「1ドル=360円」という幸福な時代からの移行期のものだったとはいえます。しか
し、結果的にはそれが、アメリカをはじめとする諸外国のフラストレーションを高めてしま
うことになったのです,
プラザ合意翌年の1986年には、中曽根康弘政権の私的諮問機関である「国際協調のため
の経済構造調整委員会」(座長・前川春雄日銀総裁)が、報告書を発表します。世にいう「
前川レポート」です。その内容は以下のようなものでした。
1.内需拡大
2.国際的に調和のとれた産業構造への転換
3.市場アクセスの一層の改善と製品輸入の促進等
4.国際通貨価値の安定化と金融の自由化・国際化
5.国際協力の推進と国際的地位にふさわしい世界経済への貢献
6.財政・金融政策の進め方
細かい内容を省いて簡単にいえば、内需拡大のための政策提言がされたと見ればいいでしょ
う。前年の1985年にプラザ合意かおり、為替が完全に自由化され、政府の介入はほぼな
くなりました。言い方を変えると、輸出企業が履いていた高いゲタがなくなったということ
です。もともと日本は内需の大きい国であり、それほど外需の比率は高くありませんでした
が、有利な為替相場を使って外需によって猛烈に儲けることができていました。しかし、プ
ラザ合意でゲタを脱ぐことになったので、もう外需で大儲けをすることはできなくなりまし
た。それに合わせて内需で儲ける経済構造に変えざるをえなくなります。それで、前川レポ
ートで「外需で儲けられなくなったから、内需を頑張りましょう。為替を自由化したから、
他の分野もそれに合わせた対応をしていきましょう」という提言が出されたのです。
意味合いとしてはそれだけのことですから、実際には前川レポートは大した役割を果たして
いませんそれでも、時の中曽根首相はこの内容をレーガンに伝え、レーガンもこの報告を評
価したといわれます。しかし、考えてみれば、この提言もある意味では、「どこか恣意的で
無理のある歪んだ経済運営」だといえます。レポートをまとめて「内需拡大をする」と国際
的に訴えるのはいいとして、では日本政府として、どうやってそれを実現するというのでし
ょうか。結局、日本は「口ばかりでやる気がない」などと、さらに批判されることになりま
す。
この項つづく
【量子ドット工学講座 No.53:最新量子ドット技術】
● 新ペロブスカイト太陽電池有機・無機ハイブリッド正孔輸送材料技術
4月9日、東京大学らの研究グループは、高活性有機低分子と安定性に優れる無機塩部分を
併せ持つ正孔輸送材料「BDPSO」を開発たことを公表。次世代太陽電池の旗頭であるペ
ロブスカイト太陽電池の難点である安定性を大幅に向上させたという。これにより、高活性
有機低分子と安定性に優れる無機塩部分を併せ持つ正孔輸送材料「BDPSO」を開発し、
次世代太陽電池の旗頭であるペロブスカイト太陽電池の難点である安定性を大幅に向上させ
従来の酸性の「PEDOT:PSS」とは異なり、「BDPSO」は中性で非吸湿性なので、
隣り合う光吸収層や電極の腐蝕を抑制し、製造条件下および発電条件下での素子の寿命を大
幅に伸ばし、新型正孔輸送材料は塗布型太陽電池の生産効率を上げると同時に製品の安定性
も向上させるので、フレキシブル塗布型太陽電池の実用化が大幅に早まるものと期待する。
【概説】
光活性な鉛ペロブスカイト結晶(光活性層)に光を当てて励起状態を作り、そこから生じる
「電子」と「正孔」をそれぞれアノードとカソードに「取り出し」、外部の回路につなげて
電流を取り出す。「取り出し」は自然には起きないので、光活性層の上下に電子と正孔に親
和性の高い材料を接合させて無理矢理取り出す必要がある。フラーレン(C60)を始めとして電子
輸送材料には良いものが多く知られているが、正孔輸送材料の選択肢は少ない。「PEDOT:PSS」
が高性能で広く使われてきたが、強酸性・吸湿性のために、活性層や電極など素子のいろいろな部
分を損なうので、素子の寿命が著しく短くなる。これがペロブスカイト太陽電池の問題とされてきた。
また、下左図1は、forwardは昇圧時、reverseは降圧時に得られた電流-電圧曲線を示す。今回
作製したペロブスカイト太陽電池は、電圧掃引(昇圧/降圧)方向によって電流-電圧曲線にずれ
が生じず、良好な動作特性を持つことが分かった(下左図)。
上左図3(1)「BDPSO」、(2)「PEDOT:PSS」を正孔輸送層に用いた太陽
電池(封止無)を空気中(湿度40-50%)で保管した場合の安定性試験(3)「BDP
SO」を正孔輸送層に用いた太陽電池(封止後UVカット有)の35℃連続太陽光照射下で
の安定性試験。
上図(図4 2段階の「BDPSO」合成経路)は、「BDPSO」は、市販の安価な有機
物から最短2段階で合成でき、かつ再結晶で容易に精製できることから、低コスト正孔輸送材
料として期待できる。写真は空気中での「BDPSO」。これで、ペロブスカイト系太陽電
池は実用化の最終段階に入る。
図1 スピン偏極ヘリウム(He)原子ビームによるスピン検出の原理
●磁性絶縁体を用いてグラフェンのスピンの向きを制御:スピントランジスタの実現前進
4月4日、量子科学技術研究開発機構らの研究グループは、回路を用いたスピントランジス
タの実現にかかせない電子スピンの向きを制御する新技術に成功しまことを公表。今日のエ
レクトロニクスが抱える性能向上の限界や電力消費の問題解決に繋がるスピントロニクス)
の発展に向けて道を拓く。これによると、スピントロニクスが次世代情報技術の発展には、
演算デバイスの中で中心的な役割を担うスピントランジスタの実現が鍵になる。グラフェン
は、スピンの向きを長距離に保持できる導線の材料としてスピントランジスタへの応用が注
目されている。グラフェンをスピントランジスタに用いることで、演算デバイスへの応用に
適した高速でエネルギー消費の少ないスピントランジスタの実現が期待されています。しか
し、グラフェン回路でスピントランジスタを構成するためには、グラフェンの中を流れる電
子のスピンの向きを偏らせる技術の開発が鍵となっていました。今回、同チームでは、電流
が流れない磁性絶縁体でグラフェンの中のスピンの向きを制御する新技術の開発に成功。本
成果により、情報機器による電力消費の著しい削減や充電の必要がない携帯端末など生活を
豊かにする情報通信機器の実現が期待されている。
【概説】
上図1は、スピン偏極He原子のビームをグラフェンに照射すると、He原子はグラフェンの表
面でHe原子が持つ電子のスピン(図では上向き)と反対向きのスピン(図では下向き)を持つグ
ラフェンの電子を検出して信号を発します。本研究では、YIGのスピンの向きに対してHe原
子のスピンの向きを変えながら、He原子から発せられる信号を観測することで、グラフェン
の電子の状態やYIGのスピンとの相対的な方位を明らかにする。通常の金属や半導体などで
は、材料が持つ磁性や材料を流れる電子が感じる磁場(スピン軌道相互作用)を利用して電
子のスピンの向きを制御することができます。しかし、グラフェンは磁性を持たずスピン軌
道相互作用も極めて弱いため、グラフェンそのものの性質を使ってスピンを操作することは
困難。そこで、研究チームでは、電流が流れない絶縁体の性質を持つ磁性体をグラフェン
と貼り合わせることで、磁性絶縁体からの作用によってグラフェンを流れる電子のスピンの
向きを制御できないかと考える。そこで、絶縁体の性質を持つ磁性体として磁気デバイスやスピ
ントロニクスの分野で広く用いられるイットリウム鉄ガーネット(YIG)に着目。高品質なYIGの薄膜
をグラフェンと原子レベルで接触するよう貼り合わせた接合を作製し、量子ビームの一種で
あるスピン偏極ヘリウムビームを用いて、グラフェンとYIGの接合に含まれるグラフェンの電
子のスピンを観測。
グラフェンは厚さが一原子しかないため、グラフェンを異なる材料と接合した試料の観測を
行う場合、X線や紫外線を用いる一般的なスピンの観測技術ではX線や紫外線がグラフェン
の下地(今回の場合には、YIGにまで透過してしまい、グラフェンのスピンを高感度に検出
することができない(下図2)。これに対して、スピン偏極ヘリウムは物質の最表面で散乱さ
れ下地には透過しないので、接合の表面にあるグラフェンのスピンだけを選択的に検出す
ることができる。
図2 スピン偏極ヘリウム(He)ビームとX線, 紫外線の検出領域
スピン偏極He原子はグラフェンの表面で散乱されるため、厚さが一原子しかないグラフェン
のスピンを選択的に検出することができる。一方、X線や紫外線グラフェンの下地まで透過
し、深さが数原子以上までの領域を同時に検出。
グラフェンの中の電子の状態を示す信号強度(上図)とスピンの向きを示すスピン非対称率
(下図3)の測定結果を示します。各図の横軸は、グラフェンの電子が持つエネルギーを示
しています。今回、YIGのスピンの向きを一方向に揃えた状態で測定を行うと、緑枠内のエ
ネルギーを持つ電子に正のスピン非対称率が観測されました。グラフェンには様々なエネル
ギーを持つ電子が存在しますが、上図の曲線の形状から、枠内の電子は、グラフェンの中を
高速に流れることができるディラックコーンと呼ばれる状態の電子であることが分かる。
図3 グラフェンとYIGの接合について観測されたグラフェンの電子の状態を示す信号強度と
スピンの向きの偏りを示すスピン非対称率
さらに、下図のスピン非対称率の符号から、それらグラフェンのディラックコーンのスピン
の向きがYIGのスピンの向きと同方向に揃っていることが分かりました。(下図4)。本研究か
ら、グラフェンのスピンはYIGのスピンと相互作用しており、YIGのスピンの向きに応じてグ
ラフェンのスピンの向きを自在に操作できることが明らかになる。さらに、実験結果を理論
的に解析した結果、グラフェンとYIGの接合では、界面の付近でYIGの性質が変化してグラフ
ェンの中を移動する電子のスピンに働く磁場(スピン軌道相互作用)が強められている可能
性も明らかになる。
図4 グラフェンとYIGの接合における電子スピン間の相互
作用を示す概念図
実験結果を解析した結果、グラフェンとYIGの接合では、両者が原子レベルで近接すること
で、界面(点線で囲んだ領域)にある酸素原子を介してグラフェンとYIGの電子のスピンの
間に互いの向きを揃えるような相互作用が働いていることが分かる。このようなグラフェン
と磁性絶縁体の接合における近接効果は、スピントランジスタの新しい動作技術として利用
できる。
● 商用化始まる“アナログ量子コンピューター”役に立つのはどれか
デジタル、つまり論理演算が可能な本物の量子コンピューターの実現ははるか先。一方で、
アナログ計算限定の“量子コンピューター”の商用化は既に始まっている。競合するのは本
物につながる技術を用いた量子ゲート型と、物理学の模型に基づくイジングマシン型の2つ
に大別でき、イジングマシン型が商用化で一歩リードしているが、既存のスーパーコンピュ
ーターを超える有用性を多くの問題で示すには量子ビットが数百万~1億個必要とも考えら
れており、実現は早くて20~30年先と予測されている。
この項つづく
● 今夜の寸評:歴史は三度繰り返すか
米国の保護主義化、ロシア・中国の武力覇権にともなうネオ冷戦構造進行、英米流金融資本
主義のもたらした貧富・格差の拡大と地球規模の環境破壊が同時進行する。
こんな夜は、ポール・アンカの「マイ・ウェイ」を聴き眠りにつこう。