極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

変換効率30%超時代

2015年11月13日 | デジタル革命渦論

 

 


       全体から見て、私は人間は生き残ると考える。心ある人たちは
       そ
れに気づいている――そこにこそ、よくなる希望がある。 

                          ジャワルハラ・ネール

 

                                                              
                 On the whole, I think we shall survive.
                             Thinking People realize that――
and  therein
                                         lies the hope or its getting
better.      

                                                                         Jawaharlal Nehru


             ・On the whole   「全体から見て」「概して」
      ・therein=in that 
「そこそこに」
 

 

   非命 -宿命論に反対する- / 『墨子』

  天の前にすべての人間は平等である。貴族も庶民もない。身分差を認めないことは、宿命を認
 めないことにつながる。墨子は、宿命論の上にアゲラをかく君主を痛罵し、"運が悪い"とあき
 める民衆を叱陀する。

  ● 宿命論の害悪

 今日、どの為政者もみな国を富まし、人口をふやし、社会秩序をととのえたいと望んでいる。だが、
かれらが実際に得るものは、富ではなく貧困であり、人口の増加ではなく減少であり、秩序ではなく
混乱である。つまり為政者は、望んでいるものの代わりに、望まないものを手に入れるのである。そ
れはなぜか。
 宿命論者が人民の中にまぎれこんでいるからだ。かれらはこう主張する。
「豊かになるか貧しくなるかは、すべて宿命である。人口の増減、秩序と混乱、長命と短命、すべて
同様である。どんなに力のある人間でも、この宿命には勝てない」
 宿命論者はこういう論法で、為政者に説き、また人民の労働意欲を失わせている。かれらは社会を
害するものだ。したがって宿命論者の主張をとりあげ、その本質をあばく必要がある。
 宿命論の本質をみやぶるには、どうすればよいか。
 まず検証の規準を立てて、かれらの議論をそれに照らしあわせることだ。規準がなければ、日時計
の目盛を動かしてしまうようなもので、議論の当否、利害をはかることができない。検証には、三つ
の規準が必要である。

 第一に、歴史に根拠を求める。
 第二に、実態に即して調べる。 
 第三に、実地に適用した場合を考えてみる。

 つまり、古代の聖王の事蹟に根拠を求め、人民の生活感覚に即して調べ、政令として発布した場合、
国家と人民の利益となるかどうかを考えるのである。これが議論を検証するための三つの規準である。


 三表法 

  墨子は雄子は、宿命論の本質を・見破るために三つの基準(三表法)をもちだしたのだが、これ
 はあらゆる場合に適用できる実証的な物の見方といえる。つまり、ひとりよがりの判断でなく、す
 べてを、歴史的事実と社会的現実にてらし、またそれを実践した結果を予測してみるのである。
  三表法は、類推の理とともに、墨家が最初にとなえた論法として名高い。

  なお、三つの基準のうち、第二については、この編では人民の生活感覚(百姓耳目の実)と記さ
 れているだけでわかりにくいが、「非命下編」にはその内容にふれて次のようにいう。
  「農夫は、朝はやく山て夕方おそくまで、畑仕事にはげむ。努力すれば豊かになるが、努力を怠
 れば貧しくなる。飢えるか飢えないかは、努力しだいだ、という道理を体得しているから、仕事を
 怠けないのだ。
  婦人は、朝はやく起きて夜おそくまで、機織りにはげむ。努力すれば豊かになるが、努力を怠れ
 ば貧しくなる。寒さにふるえるかふるえないかは、努力しだいだ、という道理を体得しているから、
 仕事をなまけないのだ」


               子墨予言日、今者王公大人、為政  国家者、皆欲国家之富、人民之衆、
              刑政之治。然而不得富商得貧、不掲栗沢得寡、不得治而得乱。則是本失
              其所欲、埓其所悪。是故何也。子墨子言曰、執有命者、以雑於民間者衆。
       執有命者之言日、命富則富、命貧則貧、命衆則衆、意寡則寡、命附則附、
       命乱則乱、命寿則寿、命夭則夭。命難強勁何益哉。上以説王公大人、下
       以阻百姓之従事。故執有命者不仁。故当執有命者之言、不可不明弁。

        然則明弁此之説、将奈何哉。子墨子言曰、必立儀。言而母儀、譬猶運
       釣之上、而立朝夕者也。是非利害之弁、不可得而明知也。故言必有三表。
       何謂三表。子墨子言日、有本之者、有原之者、有用之者。於何原之、上
       原察、白姓耳目之実。於
何用之、発以為刑政、観其中国家百姓人民之利。
       此所謂言有三表也。



今読み返して、先秦時代の「科学的思考のススメ」版のように平易に書かれていることに改めて驚く。
いわば、「実践的科学技術者集団」の「教典」に当たるが、今夜から「非命-宿命論に反対する-」
を改めて読み直していく。なにかインスピレーション(閃き)を会得できれば幸いだ。こんなことを
書いていると『技術と人間』や「日本の技術者運動」を主宰した星野芳郎を思い出すこととなった。



 
  
【時代は太陽道を渡る 23】

● より高きをめざし: 変換効率30%超時代へ
 
太陽光発電設備の世界的な伸長はとどまるころを知らぬがごとき状態にある(下図)。矢野経済研究所
の調べによると、太陽光パネルの世界市場が、容量ベースで前年比25.4%増の54.5ギガワット、、
金額ベースで前年比11.22%増の1199億ドルになると予測するが、金額ベースでは 供給価格の急
落で伸び率はその半分程の前年比11.2% 増、1199億ドルに留まりコスト的には苦しい局面も
るだろうが、保守・サービス・買い換え需要とバージョンアップなど仕事は逓増していく。しかし
ながら、パネルメーカーの世界的シェアは、技術的には先行していた日の丸メーカ
はドイツに、米国
中国と次々に追い抜かれ、シリコン多結晶系メガソーラーの京セラ1(+α)社のみの苦境状態?に
あるが、買い換え等長期的にみると、エネルギー分野の主要産業として順調成長していくとみる。

 

● 変換効率30%超時代のトップランナー日本

先月8日、北海道大学でカメレオン発光体――ユーロピウムという希土類元素を含む分子型の発光体
――の技術を結晶シリコン型太陽電池に応用し、変換効率を2%向上させることに成功したことを公表。従来
の結晶シリコン型太陽光パネルに張る特殊な保護フィルム(EVA フィルム)に、紫外光を効率よく赤
色光に変換する「カメレオン発光体」を入れる。このフィルムを太陽光パネルの表面に張ると、カメ
レオン発光体が紫外光を吸収して赤色領域に発光し、結晶シリコン型太陽電池の光吸収領域が増える
ため、変換効率が2%向上する。心配される品位劣化は10年間有効だという(下図クリック)。

これは波長シフト方式だが、パネル表面に微細な例えば、チューブ状、多面体の酸化ケイ素を配置し
入射光を完全に閉じ込め変換する特許提案もある。実用直前の25%超のシリコン系パネルに(1)
吸収波長領域の拡張フィルム、(2)あるいは、反射光をゼロにするフィルムを貼り合わせあるいは
結合融合させことで、2、3%の変換効率を稼ぐことが可能となるが、30%を超えるには5%以上
向上させることが必要である。

 



それには、2、3年前に報告された45%を超える量子ドット太陽電池や多接合型太陽電池(下特許
事例図)
、あるいは集光型などの高効率太陽電池開発で、テッペンを取る必要があるし、その潜在的
な実力がこの日本にある。また、カネカのように国際的な共同開発の動きもある。
 


特開2015-141970 受光素子および受光素子を備えた太陽電池

今夜、調べた「特集|最新高変換効率太陽電池」―――詳細に理解するまでに至っていないが、中で
も面白いものを見つけることがある。それの一例が下図である。それによると―――
変換装置は3次
元空間伝播光を2次元空間伝播光に変換する構造体80と、2次元空間伝播光を導波する面状光導波
路20と、この面状光導波路20の端部に設けられた光電変換用の半導体層30とを有する。面状光
導波路20の主面に入射した光がその内部を導波されて半導体層30に入射する。面状光導波路20
内を導波される光の正味の進行方向と、この面状光導波路20の端面から半導体層30に入射した光
によりこの半導体層30の内部に生成されるキャリアの正味の移動方向とのなす角度θがほぼ直角な
入射光に対する不感領域をなくすことができ、ステブラー・ロンスキー効果――アモルファスSi太陽
電池は,使用開始から暫くの間に特性が低下する現象――や紫外成分による有機半導体の劣化を抑え
ることができ、極めて高い光電変換効率を得ることができ、大面積化も極めて容易な、太陽電池など
として用いて好適な光電変換装置を提供する」(要約)ということだが、今夜のところは「何のこっ
ちゃ」ということになるので、残件扱いとして、後日まとめて掲載する。、

特開2015-201563 光電変換装置、建築物および電子機器




● ソニーの全固体電池登場

ここで、パネルだけでなくデクサマニー(泉の女神)に登場してもらおう。13日、ソニーは、電解
質に固体材料
を活用した全固体電池を試作。樹脂フィルム上に固体電解質を成型する薄膜型の2次電
池で、新規の正極
材料を開発することで実現させる。折り曲げなど形状の自由度が高いほか、作製時
に高温処理が不要で製
造コストの低減が見込めるという。小型・薄型のウエアラブル機器や、折り曲
げに対応でき、フレキシブルデバイスへの搭載が可能で数年後の実用化を目指す。

この開発の特徴は、全固体電池に向けた非晶質の正極材料と、その特性評価。従来一般的な全固体薄
膜2次電池では結晶材料を正極活物質に用いるため、高温の成膜プロセスが必要だったが、ソニーの
開発材料は非晶質で、成膜時に基板加熱しない。このためほとんどの製造過程を室温で実施できる。
正極材料は、リン酸系のリチウム金属化合物。試作品は、厚さが400ミクロンのポリカーボネート
フイルムを基板とし、スパッタリング装置を用いて正極や固体電解質、負極を積層することで作製。
固体電解質にはリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)を成膜し、電解質の厚みは500ナノ
メートル程度。正極材料の遷移金属元素としてはニッケル、マンガン、コバルト、銅、銀などを評価
している。また、遷移金属にニッケルを用いた時が最も高い放電容量を示し、正極活物質の重さ当た
りの容量では330ミリアンペア時/グラム。参考に特許関連製造技術を下図を掲載(クリック)。
 

 

全固体電池の製造方法は、成膜ロールの周面に対向配置された複数の成膜源を用い、周面に複数の薄
膜を
積層して全固体電池を形成する工程と、全固体電池を周面から剥離する工程とを含むことで、体
積容量密度を向上できる全固体電池の製造方法を提供(
図5)。 

 

● ホンダ「太陽光+ガスコージェネ+EV」住宅を開発

ルーフ型高変換効率の太陽光発電パネルを搭載できればどのようなことになるのか?  それは『デジ
タル革
命渦論』の「オールソーラーシステム」として既に展開済みだが、今月12日、ホンダは LIXI
L住宅研究所と合同で、太陽光とコージェネレーション(熱電併給)システム、電気自動車(EV)を搭
載したコンセプト住宅「次世代レジリエンスホーム・家+X(いえプラスエックス)」を東京都葛飾
区に建設・公開している(上図クリック)。その特徴は、コンセプト住宅は、2つの発電設備とEVを
組み合わせ、災害時にも快適な生活を維持する。LIXIL住宅研究所による“住まいの消費エネルギーゼ
ロ”の住宅をベースに、家と電力を相互にやりとりするV2H(電気自動車から住宅への電力供給)シス
テム。これらを効率的に運用するエネルギーマネジメントシステム(EMS)など、「家とEVとエネルギ
ーの融合による新しい暮らし」の提案を行う。
停電時にも商用電力から太陽光発電やガスエンジンコ
ージェネに切り替えて家庭に電力を供給するとともに、余剰電力をEVに充電できるさらに
 コンセプ
ト住宅に導入されている家庭向けコージェネシステム「エコウィルプラス(ECOWILL PLUS)」には、
ホンダ製のガスエンジンコージェネユニットを採用。また、V2H対応の普通充電器には「Honda Power
Manager」を設置している。
 

 

 

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季節外れの八月

2015年11月12日 | デジタル革命渦論

 

 


     これまで経験してきた中でもトップクラスの操縦性と安全性。  /  安村 佳之 


   

 

   私は理性には耳をかしませんことよ。・・・・・・理性とは、いつも、
             ほかの誰かが言わねばならないことですものね。 
      

                             エリザベス・クレシッグホーン・ガスケル


 

                                          Elizabeth Gaskell



                A little credulily helps one on  through life very smoothly,
                I'll not listen to reason......
                Reason always means what someone else has got to says

                                                                                             Elizabeth C. Gaskel
         
           1. credulity ; 人の言うことを疑いもせずに信じること
        
2. has got to say=has to say
       



 


● 折々の読書  『China 2049』Ⅲ 

                秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     

                                     マイケル・ピルズベリー 著
                                  野中香方子 訳  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケ
ル・ピルズベリーが、自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえ
で、中国の知られざる秘密戦略「100年マラソン(The Hundred-Year Marathon) 」の全貌を描い
たもの。日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係、そして

ビジネスや日常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 

  【目次】 

 序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔

 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)  

  第1章 中国の夢 

  諜報活動についてジョン・ル・カレのスパイ小説やジェームズ・ボンドの映画のよう
 なイメージを抱いていたかどうかはともかく、わたしはじきに現実を知った,わたしの
 コードネームは007のように洗練された謎めいたものではなかった※。中ソ問題につ
 いて最も詳細な報告は、CIAが長明的に行ってきた研究(ESAUおよびPOLO)
 によるもので※、築まった証拠は複雑だった。キッシンジヤー率いるNSC(国家安全
 保障会議)のスタッフの間では、中国との関係を深めるべきかどうかについて意見が分
 かれた’&vは、ニクソン大統領が1969年2月の会議で表明した見方を支持した、
 それは、中国はソ連よりも危険な脅威であり、村中のミサイル防衛が必要だ、というも
 のだ、そういうわけで、その年の11月まで、キッシンジャーのアドバイザーらは「中
 国への開国」に反対していた。当時キッシンジャーは、大統領の訪中の可能性を尋ねら
 れ、「その可能性は低い」と答えている※。

※イアン・フレミングのコードネームの利用とコードネーム"007"については以下の研究
  を参照。Donald McCormick, 17F; The Life of Ian Fleming (London: Peter Owen Publishers、
     1954);Nicholas Rankin Ian Fleming'sCommandos; The Story of the Legendary 30  Assault
     Uni  (New York; Oxfored University Press, 2011); John Pearson, The Life of Ion Fleming  (N-
     ew York; Bloomsbuy, 2013); Craig Cabell, Ian Fleming's Secret War (Barnsley, UK; Pen and
     Sword, 2008).

※例えば次を参照。HaI Ford, “Sovict Thinking about thc Dangcr of a Sino-US RaPProchcmcnt,
    ”CIA lntclligcncc RCPort. Directoratc of lntelligene, Reference Tide; ESAU LI, Feb 1974,
      http://www.foia.cia.gov/sites/dcfault/filcs/documen_convcrsions/14/esau-50.pdf

H.R.Haldeman, THe Ends of Power (New York;  Dell, 1978),91; Roger Morris Memorandum
  for  Henry Kissinger, November 18, 1969, declassified memo, Subject: NSSM 63, Sion-Soviet
    Rivalry――A Dissenting View, Nixon Presidential; August 19, 1969, Nixson Memorandandum
    to Henry Kissinger, Secret、Augist 19, 1969, Nixon Presidential Library. キッシンジャーとハ
  ルデマンの関係についてより深く知るには以下を参照。Robert Dallek, Nixon and Kissinge;
    Partner in Power (New York; HarperCollins, 2007), chpter 11.


  わたしは何時間もかけてESAUおよびPOLOの報沿書を読んだが、中国の野望に
 ついての記述には大いに驚かされた。1960年から62年にかけて、CIAの「IRO
 NBARK」と名づけられた一連の作戦のもと、ソビエトの極秘文書の数千ページがミ
 ノックスカメラで密かに撮影された。信じがたいことにその文書には、モスクワの軍指

 導者が中国をNATO同盟国に並ぶ軍事的脅威と見なしていることが記されていた。ま
 た、ニューヨークのFBIが、三つのスパイ作戦(コードネームは、SOLO、TOP
 HAT、FEDORA)を遂行してきたこともわたしは知った。それらはソ連共産党内
 部の上層部から信頼できる情報を引き出すことに成功していた※。。しかしFBIとC
 IAは、さらに詳細な情報の収集をわたしに求めた。国連本部巾務局のオフィスは国連

 ピルの35階を占めていた。そこで出会った最も印象的なソ連の職員は、アルカディ・シ
 ェフチェンコという名の、小太りで白髪の社交的な人物だった。当時39歳のシェフチェ
 ンコは酒豪で、特にマティーニを好み、マンハッタンのフレンチービストロ、ラ・プテ
 ィートーマルミートで長話をするのが常だった,わたしは彼と親しくなり、よくランチ
 をともにしたが、その席で彼は、国連のプロトコルなどまやかしだと笑い飛ばした。例
 えば、母国の職員との付き合いは控えるようにとされているが、ロシア人の職員は皆、
 毎日のように彼のオフィスにやってきて情報交換し、指示を仰ぐのだと言った。


  1969年4月、シェフチェンコは、信頼できる友人になっていたわたしに、ひと月
 前に中ソ国境で中国軍が行った蛮行の詳細を詰った。y連軍の中隊を待ち伏せして奇襲
 攻撃を什掛けたそうだ。アメリカの諜報機関職員の大半が知らない情報だった。またシ
 ェフチェンコはこう教えてくれた,「ソ連の指導者は、中国が共産圏の支配、ひいては
 世界支配を目論んでいると考え、中国人を憎み恐れている」。何十年もの間、中国はソ
 連の援助に頼る弱者を巧みに演じてきた。その中国があからさまな挑戦を仕掛けてきた
 ことに、ソ連の人々はショックを受けていたのだ。

  シェフチェンコと国連本部ビルのノースデレゲイツ・ラウンジでコーヒーを飲みなが
 ら話した時のことは、特によく覚えている。シェフチェンコの中国の将来についてのジ
 ョークにわたしは大笑いした,こんなジョークだ。

  ソ連の指導者レオニード・ブレジネフがニクソン大統領に電話をかけてきた,
  ブレジネフが言う。
  「KGBによると、あなたは2000年に何か起きるかを予測できるスーパーコンピ
  ユーターを持っているそうですね」

  「ええ、持っていますよ」 ニクソンが答える。
  「では、その頃、誰がソ連政治局を牛耳っているか、教えていただけますか?」
   ニクソンは沈黙し、一向に答えようとしない。
  「はは!」
   ブレジネフは笑った。
  「そのコンピューターはそれほど高性能でもないのですね」
  「とんでもない、書記長」
   ニクソンが答えた。
  「コンピューターはあなたの質問に答えています,ただわたしにはそれが読めないの
  ですI
  「なぜですか?」
  ブレジネフが訊いた。
  「中国語で書かれているからです」

  わたしが笑ったのは、あまりにもばかげていると思ったからだ。自国民さえちゃん

 養えていないマルクス主義の後進国にソ連の将来がかかっているというオチは、当
時の
 わたしにはこっけいに思えた。だが、抜け目ないロシア人は、わたしたちが知ら
ない何
 かを知っていた。わたしは同じ部署の他のロシア人、エフゲュー・クトボイ、
ウラジー
 ミル・ペトロフスキー、ニコライ・フオチンとも付き台いがあったが、彼ら
も別の機会
 にその同じジョークを言った。その裏に深刻なメッセージがあることに、
わたしはまっ
 たく気づいていなかった。


  わたしはほとんどの時間を、政治局の下の階で働いていたクトボイとともに過ごし
た(
 ※。わたしたちの上司ペトロフスキーはのちにソ連の外務次官になった。クト
ボイはの
 ちにソ連のユーゴスラビア大使となる。シェフチェンコと同様、彼らもわた
しの質問に
 喜んで答えてくれた。ふたりとも当時は30代だった。彼らは、中ソの軋轢
の歴史や、中
 国人の回りくどいやり方について、嬉々として教えてくれた。クトボイ
は、中国の共産
 党政権は事実上ソ連が築いたようなもので、ソ連は中国政府の重要な
部門のすべてにア
 ドバイザーを置いた、と語った,武器輸送、軍事訓練、技術的な助
言など、すべては同
 盟国としての中国を近代化するために供与された。しかし195
3年にヨシフ・スター
 リンが亡くなると、両国の関係は悪化した。


※これについては2010年に再びクトボイが Diplomatic Academy in Moscoxvで議論して
 いる。彼は「45年前にわたしが言った通りだ]と発言した。 

              
                                    この項つづく



 

【最新プリンテッドエレクトロニクス工学 Ⅱ: 血糖値を計測する】

ここ数年、医者にかかったことは、歯医者と眼科と皮膚科の3つ。といっても軽い治療。血圧
計ることも、血糖値をはかることもなかったが、眼精疲労による頭痛が度重なり、糖尿病ー
――数
日以上の高血糖が続くと眼のレンズが膨らみ、厚みが増すことがある。つまり、老眼鏡
掛けたような状態。多くの場合は血糖コントロールをよくすれば数日で改善するが、レンズ
完全に元に戻るには6週間以上かかる――の症状もあるとうことでネット検索を行う。下図
のように恐ろしいなることも説明されいる。




それだけじゃなく、血糖値の乱高下はよくない――欠陥の内壁を劣化や動脈・静脈瘤・血栓を
発生させるというもので、血管が破れるとどうなるかは、今年かかけがえのない友を失ってい
るから切実でもある。眼精疲労による偏頭痛の対処の仕方はわかっているので、過剰ななスト
レスを減らし、過剰なデスクワークを減らせば対応できる(下記参照「●今夜の一曲」)。


 

そこで、血糖値をウエアラブルで即時測定できないかと特許技術を検索(過剰適応症まるだし)
継続的な血糖値の計測は、血糖値が低い低血糖状態の速やかな検出が目的。低血糖状態は、命
に関わる危険な状態があり速やかな検出が必要とされている。現在、糖尿病患者などが自分で
血糖値を計測するための携帯型の血糖値測定装置として、光を用いた非侵襲式の血糖値測定装
置の開
発が進められ、血糖値は食事や運動などによって一日のうちでも大きく変動するため、
こまめに測定す
る必要だが、継続的な使用を前提とした携帯型の血糖値測定装置には、バッテ
リー動作が前提で。使
用可能時間や、充電や電池交換の頻度等の観点からは大容量のバッテリ
ーが望ましいが、携帯性等
の観点からは小型・軽量である小容量のバッテリーが望ましい。
下図(クリック)の血糖値測定装置10は、使用者2の手首等に装着され、光を用いた非侵襲の測定装
置で、使用者2の血糖値を間欠的に測定。測定間隔は、測定した血糖値に応じて設定され、測定した
血糖値が低い場合には、測定間隔を短く設定。 消費電力の低減を図る。

 

また、下図(クリック)は、血糖値計測装置10において、血糖値予測部166は、使用者の
血糖値を予測
する。発光部111は、使用者の生体内に向けて計測光を照射する。発光制御部
161、計測点候補設定部164、光量制御方法決定部168、及び計測点選択部169は、
予測された糖値に基づいて1回の計測当たりの計測光の光量を制御する。受光制御部162、
吸光スペクトル生成部170、及び血糖値算出部171は、使用者からの反射光を受光して
糖値
を計測することで、消費電力の低減を図るっている。

 
特開2015-142667 血糖値計測装置及び血糖値計測方法



 

 ● 今夜の一品

 

   ● 今夜の一品

 【季節はずれの八月】 

 

   愛で向日葵が揺れている
   一度はやぶれた恋なのに
   もしも許されて逢えるなら
   大事な命も惜しくない 

   涙で星屑も滲む空の下
   彷徨う旅人の夜は長い
   月の満ち欠け心乱されて
   哀しき迷い子はとこへ行くの?

   八月の蒼さにキラめく海では
   潮風が歌う魔性の Love song

        この胸に皆川ま波音はせつなく
      Oh、恋人たちのセレナード※

     Preuy little baby    

     いつか来た道は遠いけど
   振り向く場所に君がいる
   夕暮れにほほを寄せ口づけた
   海辺のテラスは色褪せた
  
   愛しい女性のために生きた毎日を
   秋待つ黄昏の海に想う
   生まれたこの街の空は霞んでも
   遙かな面影は赤く燃えている

   ギラギラと輝く真夏の太陽が
   この身を焦がすようなRomance
     見つめ合う涙に溺れたわけとは
   Oh,瞳の中のエメラルド

   今夜茅ヶ崎に帰るなら
   君の幻想に抱かれたい

       八月の蒼さにキタめく海では
   潮風が唱う魔性の Love song     
          この胸に響くは波音のせつなく
     Oh、恋人たちのセレナード

     Pretty little baby
     Come-a Come-a mabe ・・・・・・
 



                               『八月の詩』
                                      
                                      歌 サザンオールスターズ
                                                                     作曲/作曲   桑田佳祐  
                                
                           


朝から右目の眼底が痛み、彼女の昼のうどんを食べ終えると、水が浜「シャーレ」へ車を飛ば
し、対岸の
を眺めながら、ラークを1本深々と吸う。風は強いが上天気だ。水曜日だというの
に店にはたくさんの客
で溢れ、時折、サイクリングを楽しむ人たちが通り過ぎていく。いつも
のウエルカム・ベルをならすことなく
帰宅する。フルオープンでカーステのバリュームを上げ
湖岸を走る。「茅ヶ崎」という歌詞で、彼女と別れ
たあの日が去来する。冷たい浜風に、季節
の外れの八月とたわむむれながら湖岸を疾走する。

● 訃報

綾瀬靖夫さんが他界された。樹脂旋盤加工の専門家(自営業)で、実験器や試作器の製作を依
頼させていたが、町内の親父会などは気さくな職人気質は多くのひとに愛された。顔を会わせ
ば「仕事をくれ!」がいつもの挨拶だった。享年72。

                                       合掌

 

 

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プリンテッドエレクトロニクス工学

2015年11月11日 | ネオコンバーテック

 

 

   もしも悪魔が存在せず、人間か悪魔を創造したのなら、
       人間は自分の顔形に似せて悪魔を創造したのだ、と私は思う。

                             ドストエフスキー  『カラマーゾフの兄弟』


                     I think if the devil doesn't exist、 but man has created him,
                     he has created him in his own image and likeness.


  これは、聖書の「神は自分に似せて人間を創り給うた; God created man in his own image
       
もじったもので、悪魔は人間みたいという痛烈な言葉ということになる。
     

                

  公孟 -儒者との対話- / 『墨子』

●  「口これをいいて、身必ずこれを行なう」


   告子が墨子に自慢した。
  「わたしには、国を治める手腕があります」
 「あなたには"治める"という意味がわかっていないようだ。口にしたことは必ず実行する、
  これが"冶める"ということだ。
 あなたは日でばかり自慢して、なにも実行していない。いいかえれば、自分の身を瓜して
  いるのだ。自分自身すら治められない者が、国を冶めることなどできるはずがない。さし
 あたり、あなたは自分の身を乱さぬようにすることだ」

   《解説》「非儒篇」と対応して読ひとき、儒家批判についてはひしろ本祠のほうが現代
  的な説得
力をもつ。風俗習慣の面よりも人間心理の面をを素材にしているからであろう
  と説明される。

 

 


● 折々の読書  『China 2049』Ⅲ

 

                            秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     

                                     マイケル・ピルズベリー 著
                                  野中香方子 訳 

 

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケ
ル・ピルズベリーが、自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえ
で、中国の知られざる秘密戦略「100年マラソン(The Hundred-Year Marathon)」の全貌を描い
たもの。日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係、そして
ビジネスや日常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 

 【目次】

 序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 
第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣) 

  第1章 中国の夢


              天無二日 土無二王――天に二日無し、土にニ王無し
        
                                  『礼記』曾子問 

  1950年代、中国はソ連を共産圏のリーダーとして認め、従属していた。脆弱な
 国のふりをして、技術的に進んだソ連から支援を引き出そうとしたのだ。しかし、従
 属は毛沢東の好みではない、ということをソ連は知っていた。ソ連は、中国を恐れ、
 信用していなかった。しかし、米中が同盟を結ぶことをそれ以上に恐れていたので、
 アメリカに偽りのメッセージを送った。

  1961年末、アナトーリ・ゴリツィンという男がヘルシンキのCIAのトップに
 接触し、亡命の意思を伝えた,CIAの協力により、ゴリツィンは家族とともに、フ
 ィンランドの首部ヘルシンキからスウェーデンの首部ストックホルムまで飛行機で逃
 亡した(※)、ゴリツィンはウクライナ出身の45歳になるKGB幹部で、戦略計画部
 門で働いた後、フィンランドのソビエト大使館にイヴァン・クリノフという偽名で派
 遣されていた。ストックホルムから空路アメリカに向かった肢は、ソビエトの対西洋
 作戦の情報ファイルを携えていた。彼は、「西側が接触した最も価値の高い亡命者」
 と
呼ばれ(※)、後にテレピドラマ『ミッション・インポッシブル(訳註*邦題は『
 スパイ大
作戦』)この登場人物のモデルにもなった。中ソ関係についてきわめて貴重な
 情報をも
たらし、それは、その後の数年間、アメリカの外交および情報コミュニティ
 に多大な影響を及ぼした。

  当初から、アメリカの諜報機関の職員はゴリツィンを信用した。ゴリツィンは、西
 側で活動する何人ものソ連のスパイの名を明かし、自分が信用できることを示した。
 最大の貢献は、英国の秘密情報部の工作員キム・フィルビーがソ連のスパイだったこ
 とを腿露したことだ。
  またゴリツィンは謀略家で、後に、英国の首相ハロルド・ウィルソンはKGBのス
 パイだと主張した。彼の情報操作の一つは、中国とソピエトが共産主義の盟主の座を
 めぐって争い、決裂した、という噂に関するものだ。「そのような噂に根拠はない。
 中国人がアメリカから貴重な情報を盗めるよう、KGBが仕立てた嘘だ」とゴリツィ
 ンは断言し、こう警告した。

 「いずれソ連から亡命者が来て、中ソ決裂の証拠を持っていると主張するだろう。そ
 れがいつであれ、この人物を信用してはならない」
  2年以上後に、この予言は的中した。

※ Jeanne Vertefeuille Golitsyn に同行した。Sander Grimes amd Jeanne Vertefeuille
        Circle of Treason; A CIA Account of Traitor Aldrich Ames and the Men He Betrayed (Ann-
        apolis MD; Noval Insitute Press, 2013), 4. また, laine Shannon
,"Death of the Pcrfect Spy,
        "Time, June
24, 2001,http;/content.time.conl/time/magazine/article/0,9171,1648863,00.h-
         tml;  Tennent H. Bagly, spymaster; Starting Cold War Revelations of 
a Soviet KGB Ciefe
         (New York; Skyhorse Publishing, 20013).


※ Rohert Buchar. And Reality Be Damned...Undoing American; What Media Didin't Tell You
         About the End Of the Cold Wa r and the Fall of Communism in Europe (Durham, CT; Eloq-
         uent Book, 201), 211, n. 9.

   1964年1月に、ユーリ・ノセンコというKGBの工作員が、ジュネーブでCI
 A職員に接触し、しばらく後に亡命した。肢は二重スパイで、西側のために諜報活動
 をしていたことがソ連にばれたのだ。モスクワに召喚されたが、行けば収監は確実
  で、おそらくさらに悪い結果が待っているとわかっていたので、アメリカヘの亡命を
 決意したのだった。ノセンコは、中ソ関係について一般的な見方と矛盾する多くの情
 報をもたらした。特に、中ソの分裂は深刻だという彼の主張は、それに根拠がないと
 するゴリツィンの主張と真っ向から対立つた。実際はどうかというと、当時、中ソの
 分裂は深刻な局面を迎えており、国境地帯での衝突が頻発し、全面戦争まで懸念され
 ていた※。ノセンコは、ゴリツィンは亡命してきたのではなく、KGBの命を受けて
 アメリカに潜入し、米中が同盟を結ぶのを阻むために偽の情報を流した、と主張
した。
 さらに肢は、毛沢東は共産主義体制の盟主の座のみならず、世界秩序の支配者
という
 地位を担っている、と不吉な予言をした。

※ Johon Limond Hart, The CIA's Russians (Annapolis, MD;Naval Insitute Press, 2003), 137.

  ゴリツィンとノセンコの対立する主張は、アメリカ政府を困惑させた。共産主義の
 二大国家の分裂という情報は非常に魅力的で、それが事実なら、亀裂を利用しない手
 はない,しかし、両国は思想的に結びついているので、西側がくさびを打ち込もうと
 すれば、団結して抵抗するはずだ――こうした葛藤を経て、アメリカの情報コミュニ
 
ティでは、次第にゴリツィンを信じ、ノセンコを信用しないという合意が形成されて
 
いった。だがそれは、その後数十年間になされた中国に関する数多くの合意と同じ
 間違っていた。

 
  ノセンコは独房に入れられ、話を撤回するまでそこにいることを命じられた。しか

 し3年たっても、主張も自信も揺るがなかった。ついに何人かのアメリカ人アナリス
 トが、ノセンコがちらつかせたもの、つまり、米国が中国と手を結ぶことを、ソ連が
 警戒しているのは真実ではないかと考えるようになった。CIAとFBIは真相を明
  かすために、世界規模で情報収集を始め、わたしもその一員になった。
 
  1969年、アメリカの情報コミュニティがこの論争を解決するには、二つの要素
 が必要とされ
た。一つは、KGBの対諜報活動部門に送り込んだスパイで、もう一つ
 はソビエト共産党の高
位のメンバーに接触できる人物だ。だが、残念ながらどちらも
 手中になかったので、あるもの
で我慢するしかなかった,それは、ソ連の人がたくさ
 ん出入りするニューヨークの組織、国連剌
務局でたまたま働いていたひとりの平凡な
 大学院生である。


   当時、わたしは24歳で、コロンビア大学のある教授の紹介で、国連事務総長のオ
 フ
ィスで政務官として働いていた。下っ端ながら、その部門でポストを得た唯一のア
 メ
リカ人だった。わたしは秘密情報収扱許可を(以前 の政府関係の仕事から)得て
 お
り、また、世界中の国連職員のトップに接触できたので、FBIとCIAにとって
 は
スカウトするのに最適の人材だった。
  4月のどんよりと曇った月曜の午前8時35分、わたしは国連本部ビルがある一番街
 42帳面の角に立って、駆が途切れるのを待っていた。1ブロックの道を外交官用ナ
 ン
バープレートをつけた黒いリムジンが占拠し、ニューヨーカーの怒りをかっていた。 
 2ヵ月前に国連事務局で働くようになってから、何度も往来した道だ。だが、その日
 
の仕事は、それまでとは違っていた。わたしはアメリカ政府のスパイとして働くこと
 
にハロ意したのだ。

  CIAの「ピーター」、FBIの「スミス」がそれぞれわたしとの連絡を担った。
 彼
らは国家安全保障担当補佐官ヘンリー・キッシンジャーから、中ソ断絶の可能性に
 つ
いてソ連側の情報を集めるよう、命じられていた。中国がどのようなパートナーに
 な
るか、信頼できるか、気まぐれか、危険かといったことに関心は払われなかった。
  ア
メリカの情報コミュニティが唯一関心を寄せていたのは、中ソを分かつくさびとし
 て
北京を利用できるかどうか、ということだった。すべては、1969年8月にニク
 ソ
ン大統領の主催でカリフォルニア州サクラメントにある「西部のホワイトハウスー
 (カ
リフォルニア州議事堂)で開かれることになっていた、アジアの将来について話
 し合
う会議の下準備だった。

                                                                           この項つづく
 

 

 



   出典:朝日新聞デジタル

● 琵琶湖の水草、短時間で分解

今月6日、刈り取った水草を、活性酸素使い短時間で分解処理する技術を下水道処理施設開発
を手がけるアオヤマエコシステム(大津市)が開発。びわ湖で異常繁茂する水草を処理し、処
理物も有機肥料として有効利用できる。
同社がつくった処理機の中で、電圧をかけて発生させ
た活性酸素を入れながら40~50℃で水草をかき混ぜると、酸化されて細胞膜が破壊され、
出てきた水分が蒸発し、乾燥した土状の処理物になる。水草はほとんどが水分で、50キロの
しめった水草が約24時間後に1キロになる。
汚泥処理法を同社が応用し、今年度の「県イノ
ベーション創出支援事業補助金事業」に採択された。今年7月から試験的に水草800キロを
処理したところ、汚泥よりも効率よく処理できることがわかった。



さて、この処理法は「活性酸素種の簡易な発生方法のフェントン法の改良」技術である。有機
リン系農薬の例では
、窒素、リンを含有した有機化合物該処理装置は、被処理水供給手段,過
酸化水素添加手段,鉄イオン添加手段,pH調整手段で構成、過酸化水素を添加し、鉄イオン
添加は、2価の鉄イオンを、pH調整剤を添加し、所定の弱酸性に維持し分解処理される。し
かし、処理水が酸性である場合を除いて、生成する鉄水酸化物がフロックを形成し、大量の鉄
汚泥が発生するという問題がある。

同社の方法は、活性酸素種発生剤――金属(M)、炭(C)を含有、金属(M)、炭(C)と
が接触し炭/金属複合体(MC)――と過酸化水素、次亜ハロゲン酸、酸素からなる群より選
ばれる少なくとも1種と水とを必須構成体として構成される。活性酸素種の製造方法は、金属
水の存在下で接触させて活性酸素種を発生させ酸化分解物を生成させる。過去、わたしたちも、
フェントン法を検討したことがあったが、過酸化水素の取り扱い上(使用量が大きい)、安全
サイドに考え、生物処理法を採用した経験をもつが、その当時から改良が進んでいるようだ。

 

                                                特開2015-030656 活性酸素種発生具



● シミの原因物質の分解方法に光明 

今月5日、富士フイルム株式会社は、シミの原因となるメラニン色素を含む「メラノソーム」
が表皮細胞で分解される際に、タンパク質分解酵素「カテプシンV」が関与することを発見。
カテプシンVは、細胞内の消化器官「ライソソーム」に存在する酵素で、その量が減少すると
ケラチノサイトにメラノソームの蓄積が多くなり、ケラチノサイトの細胞分裂が抑制されるこ
も確認。この結果は、カテプシンVの増減がターンオーバーによるメラニンの排出に関与し、
また、米ぬか脂質に含有される成分「オリザノール」に、カテプシンV産生促進作用とメラノソ
ーム分解促進作用があるを確認。さらには、本成分を世界最小クラス20ナノメートルサイズ
で安定分散させた「ナノオリザノール」の開発に成功する。粒子径を小さくすることとで、皮
膚への浸透性向上が期待されている。

 
老化とともに、シミが増えてきたが、安全性を確認し商品化されたお世話になろうと思ってみ
るが、ここは写真基剤の1つであるゼラチンの知財を持つ究開発富士フイルムならでの事業展
開に脱帽。

 

 



【最新プリンテッドエレクトロニクス工学】

 ● 世界初 グラビアオフセット印刷適用電子回路形成技術

今月5日、㈱SCホールディングスはこのほど、グラビアオフセット印刷をベースに独自の技
術を応用し、さまざまな線幅が混在する複雑な電子回路においても、複数回の印刷を行うこと
なく容易に一括形成を可能とする世界初の製版技術を確立したと発表。16年1月までにこの
技術
を使った印刷版の商品化を予定。装置開発やシステムインテグレーションなどの提供も視野
に入れ、プリンテッドエレクトロニクス分野のリーディングカンパニーを目指す。
近年、ウエ
アラブル端末や有機EL照明などの電子デバイスの量産において、印刷技術を活用し、簡易か
つ低コストで製造できるプリンテッドエレクトロニクスに注目が集まっている。
この技術を使
った回路形成には、スクリーン印刷(孔版)やグラビア印刷(凹版)を応用した方法があり、
特に精密な電子デバイスの製造には、複雑で微細な回路形成が可能なグラビアオフセット印刷
が適しているが
、この印刷方法で線幅の異なる回路を一括形成する場合、転写不良による回路
の断線や不均一な膜厚が形成されてしまう可能性があるため、同一線幅の回路ごとに描き分け
られた複数の印刷版を用意した上で、複数回に分けて印刷を行う必要があり、量産体制の確立
への大きな課題となっている。

製版技術・画像処理技術に加え、半導体・液晶関連の製造装置で定評のある表面処理技術や、
プリント基板関連の直接描画技術を応用。グラビアオフセット印刷方法をベースに、世界で初
めて電子回路の一括形成を可能にする製版技術を開発しました。この新技術は、電子回路の製
版データ作成時にインクの材質や粘度、印圧情報を考慮し、回路の線幅に応じて最適な深度を
持つ印刷版を製作するもので、回路の一括形成時における線切れや膜厚の不均一性などの転写
不良を解消。プリンテッドエレクトロニクスでは難しいとされてきた生産性とコスト面での課
題を一気に解決する画期的な技術になる


【参考特許】

オフセット印刷法でパターンが形成された基板を量産するには、各工程を順次に実行する個々
の装置
を並べ、製造ラインを構築することが考えられるが、電子機器向け基板を量産するのに
好適な製造ライン
がなかった。このパターン転写システムは、下図1のように、ブランケット
91と印刷版93を洗浄する第一
洗浄部11と、ブランケット91に転写剤を塗布する塗布部
41と、転写剤が塗布されたブランケット91と印刷版93を貼り合わせることで、ブランケ
ット91にパターンを転写する転写部51と、パターンが転写されたブランケット91を基板
9に貼り合わせることで、基板9にパターンを転写する転写部53とで構成。また、パターン
転写システム1は、転写部51でブランケット91にパターンを転写した印刷版93と、転写
部53にて基板9にパターンを転写したブランケット91を、第一洗浄部11に向けて搬送す
る受渡搬送部23で構成で、電子機器向け基板の量産に好適な技術――(1)印刷版の再利用
で数量削減、(2)ブラケットの再利用で数量削減、(3)パターン転写システムの占有面積
を小さくできる、(4)ブランケットと印刷版の位置決めを容易にできる、(5)装置がシュ
リンク(ダウンスペーシング)できる、(6)2つの異なるブラケットが処理できる――を提
供する。

このようにして、電子回路パターンを銅板などで形成し、印刷用ローラーのブラケットに取り
付け機能性インクを塗り乾燥させれば、「1→N」型生産方式(類似例:石油精製)で大量に
製品でき、コストは一挙に逓減することができるが、版の管理が再現性の鍵となる。それと、
有機溶剤などを使うので安全衛生面(例:胆管ガン)に注意を要する。

 

 

 

  

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世界覇権100年戦略 Ⅱ

2015年11月10日 | 時事書評

 

 

     外部から喝采ばかりを求める人は、自分の幸福
       のすべてを他人の保管に委ねているのである。

                                オリヴァー・ゴールドスミス

 

             He who seeks only for applause from without 
                        has all hls happiness in another's keeping.

                                         Oliver Goldsmith 

                                                       

 

 

  公孟 -儒者との対話- / 『墨子』

 

●  "売りこみ”は悪徳か

  公孟子が墨子にいった。
 「すぐれた者は、かならず人に知られます。巫女をごらんなさい。予言がよく当たれば、じ
 っとして
いても、供え物が集まってきます。美女にしても、じっとしているから、降るよう
 に縁談が持ちこま
れるのです。"たしは美人です"とふれ歩いたのでは、相手にされないでし
 ょう。あなたが、あら
こちに出向いて、自説を説いているのは、骨折り損だと思います」
  墨子はこたえた。
 「今の世の中をみるがいい。美女をほしがる男は多い。だから、美女はじっとしていても、
 縁談の口
がかかってくるだろう。
  だが、今の世の中に仁や義をほしがる人は、ほとんどいないのだ。こちらから出向いて説
 かなけれ
ば、関心をもたせることはできない。
  それでなくも、たとえばここに占い師が二人いて、ひとりは街角に立って多くの人を相手
 にし
もうひりは家にいて客を待っているとしたら、どちらのみいりが多いだろう」
 「むろん、街角に立つほうです」
 「仁義の道も同じことだ。こちらから出向いて人に説いたほうが、はるかに効果があるし、
 しかも多くの人に説くことができる。決して骨折り損ではない」

 

 

● 折々の読書  『China 2049』Ⅱ

                            秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     

                                     マイケル・ピルズベリー 著
                                  野中香方子 訳 

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケ
ル・ピルズベリーが、自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえ
で、中国の知られざる秘密戦略「100年マラソン(The Hundred-Year Marathon)」の全貌を描い
たもの。日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係、そして
ビジネスや日常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。
 

 【目次】

 序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 
第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣) 

  第1章 中国の夢


              天無二日 土無二王――天に二日無し、土にニ王無し
        
                                  『礼記』曾子問


  2013年3月、習近平が主席に就任した時、アメリカの中国ウォチャーの間で、習の
  評価はまだ定まっていなかった。中国のタカ派は習を高く評価していたが、
西側の観測筋
 に広まっていた見方は、「この黒い髪をふさふさとはやし、温和な笑みを
たたえた害のな
 さそうな60歳の男は、ゴルバチョフのような改革者で、古くからの警
戒を解き、西側が
 長く夢見てきた民主主義の中国をついに実現するだろう」というも
のだった。しかし、ま
 もなく彼には彼の夢があることがわかってきた。世界のヒエラ
ルキーにおいて中国にしか
 るべき地位を取り戻させるというものだ。それは、194
9年に権力を掌握して以来、共
 産党が渇望してきたことでもある。その1949年に
100年マラソンは始まった、と中
 国の指導者たちは考えている。習主席は、タカ派が掲げる「復興之路」というスローガン
 を採用
した。主流から外れたナショナリズム的なグループのものだった表現が、この新た
 な主席の公約になったのだ。その含意が表面化するまでに長くはかからなかった。



  北京の天安門広場の端に、1949年に毛沢束の命を受けて作られたピルの10階ほど
 の高さのオベリスクが立っている,中国政府に認可され監督されている公認ツアーガイド
 は、通常、そこへ外国人を案内しようとしない。仮に西側の人間が自分でそこへ行ったと
 しても、大理石と花肖岩からなるオベリスクに彫られた中国語には、英語の案内が添えら
 れていないので、意味はわからないだろう,実のところ、このオベリスクは、マラソンを
 最初から支配していた思想を詳しく語っている。

  この巨大なオベリスクは、ネット上では「人民英雄記念碑」とありきたりな名前で紹介
 されているが※、実際には、ヨーロッパの列強に強いられた「百年の屈辱」による「中国
 の嘆き」の象徴と見なされている。1939年の第一次アヘン戦争では、清朝との貿易摩
 擦から、英国海軍が中国の港を占領し、破壊した。オベリスクに刻まれた碑文と彫り物は、
 その後の中国の百年の歴史(少なくとも共産党政権から見た歴史)を、人々の抵抗と西洋
 による占領、そしてゲリラ戦の末に1949年に毛沢東が輝かしくも中央人民政府主席に
 就任し、中国の屈辱を終わらせた、と説明する。

※ "Monunlentto People’s Heroes," TraveIChinaGuide.com,http://www.travelchinaguide.com/
      attraction/
 
beijing/tiananmen-square/People,heroes,rnonurnent.html

  アメリカ人旅行者は毎日のようにオベリスクのそばを歩き、遠くから写真を撮るが、そ
 こに肖かれているメッセージには気づかない。オベリスクが中国人民の愛国心の象徴にな
 ったことは、わたしたちが見落としていたもう一つのシグナル、すなわち中国の正義の日
 が近づきつつあるというシグナルを送ってくる。要するにオベリスクは、中国は悲嘆し、
 アメリカは何も知らないという両者の関係を体現しているのだ。
  中国は世界のヒエラルキーにおいて特別な位置を占めるという考え方のルーツは、中国
 共産党の台頭よりはるか昔に遡る※。19世紀後半にヨーロッパの列強は、衰退しつつあ
 るオスマン帝国の蔑称「ヨーロッパの病人」になぞらえて、中国を「東アジアの病人」と
 呼んだ。中国の知識人の多くはその呼び名に立腹し、欧州列強をはじめとする諸外国への
 怒りをさらに募らせた,「外国人はわたしたちのことを東アジアの「病人」と呼ぶ,野蛮
 で劣等な民族と見なしているのだ」と、革命家の陳天華は1930年に苦々しげに書いて
 いる※。その苦しみは、中国が世界のヒエラルキーの頂点というしかるべき地位を回復す
 るまで癒やされないだろう。

James Rccvcs Pusey, China and Charles Darwin(Canlbridgc,MA: Harvard university Press,
      1983),chapter 6; and xiaosui xiao. "
China Encounters Darwinism: A Case of lntercultural
      Rhetoric.”
Quarerly Journal of Speech 81, no. 1 (1995).

※  引用元は Guoqi xu,Olympic Drcarns: Chinaand Sports,1895-2008(Cambridgc,MA:
     Harvard univcrsity Press, 2008),19.


  20世紀初頭、中国の作家や知識人は、チャールズ・ダーウィンとトマス・ハクスリー
 の著作に魅了された。特にダーウィンの生存競争と適者生存という概念は、中国が西洋諸
 国に味わわされた屈辱に復讐する方法として共感を呼んだ。翻訳家にして学者、改革者で
 もあった厳復は、ハクスリーの『進化と倫理』を最初に中国語に翻訳した人と考えられて
 いる。しかし、彼は重大な間違いを犯した。「自然選択」を「排除」と訳したのだ。それ
 がダーウィンの思想についての中国人の考え方を支配するようになった※。つまり、生存
 競争で負けたほうは弱者と見なされるだけでなく、自然界であれ政治的世界であれ「排除」
 される、と彼らは考えたのだ。「弱者は強者に飲込まれ、愚か者は賢人の奴隷になり、結
 局生き残るのは(中略)時代と場所と社会環境に最も適した者だ※と厳復は書いている。
 また彼は、「西洋は、劣等な民族はすべてよりすぐれた民族に滅ぼされるべきだと考えて
 いる」とさえ書いている※,1911年に辛亥革命を起こし、「近代中国の父」と称され
 る孫文は、民族の存続を基礎に置いた。それは列強との闘争を、白色人種による「人種の
 絶滅」の脅威、つまり黄色人種を従属させ、抹殺さえしようとする動きに対する抵抗と考
 えたからだ※。

Puscy,Chinα and Charles,190-91.ピュージーは次のように書いている。「中国の何より重
  要な、革命の「科学的」理由は(中略)ダーウィンの最も重要な文章の誤りに基づいて
   いる。責任を誰が負うべきかは、不明なままだ」(209)。

Riazat Butt, “Darwinism,Through a Chinesc Lcns,” Gardian, November 16, 2009 http://
      www.theguardian.coi11/commentisfree//belief/2009/nov/16/darwin-evolution-china-politics.  

Puscy,China and Charles Darwin, 208.

Orville Schell and John Delury, Weaith and Power; China's Long March to the Twenty-First
      Century(London: Little,Brown,2013),131.
中国人の人種やその関係についての考え方は、
   例えば次を参照。 M. Dujon Johnson,Race and Racism in the Chinas: ChineseRacial 
      Attitudes Toward Africans and African-Americanss(Bloomington,IN: AuthorHouse, 2007);
      Fredcrick Hung,"Racial Supcriority and lnfcriority Complcx,"  China Critic,January 9,1930,
      http://www.chinaheritagequarterly.org/030/features/Pdf/Racial%20SuPcriority%20and%201nfcr
      iority%20ComPlcx.Pdf: Nicholas D.Kristof,‘IChina's Racial unrcst Sprcads to Bciμng
      CamPus." Ncw York Times, January 4, 1989, httP://www.nytimes.com/1989/01/04/world/
      china-s-racial-unrcst-sPrcads-to-beijing-campus
.html; Frank Dikottcr,The Discourse of Race in
      Modern China (Syanford, CA:Stanford University Press; 1992); Frank Dikotter, Imperfect
     Conceptions: Medical Knowledge, Birth Defects, and Eugenics in China(New York: Columbia
     univcrsity Press: 1998).


  このテーマは1949年に再び採用された。毛沢束の著作には、ダーウィン的な思想が
 散見される。毛が影響を受けたある翻訳者は、ニつの人種、つまり黄色人種と白色人種が
 将来戦うことになり、黄色人種が戦略を変えないかぎり、白人が「優勢」になるだろうと
 結諭づけている。カール・マルクスの著作を知る前から、毛とその一派は、中国が存続す
 るには、過激な長期的戦略によって中華民族の独自性を守らなければならない、と考えて
 いた※。こうして中国共産党の戦略思考は、「容赦ない競争世界における生存競争」とい
 う概念に支配されるようになった。

Puscy,China and Charles Darwin, 208. 


  1930年代に国民党軍に破れた紅軍(中国共産党)が行った有名な長征(徒歩での大
 移動)の問、毛は本を1冊だけ携えていた。それは西洋には並ぶもののない、歴
史を教訓
 とする国政の指南潜、『資治通鑑』だった。英語圏では The Genera/ Mirrar 
for the aid of
     Goverment
呼ばれる。その書の核となるのは戦国時代の兵法だ
が、紀元前4000年まで
 遡る逸話や格言も収められている※。特に『礼記』に
拠るものは、中国人が魅了されたダ
 ーウィン的な思想と一致する。曰く、「天無二日」(天
に二つの太陽はない※)。財界の
 秩序は、本質的にヒエラルキーを成す。そし
て、その頂点には、常に唯一の統治者が存在
 するのだ。

The Genereral Mirror(「資治通鑑』)の一部の英訳は以下の書を参照。Peter K. Bol,  This
      Culture of Ours; Intellectual Transitions in Tang and Song China (Stanford, CA: Stanford Univers-
      ity Press, 1992
), 233-46
例えば、蛮族との外交に関しては「彼らの残酷さは(われわれ
   とは)異なる種類のものだが、損失よりも利益を選び、死よりも生を望
においてわれわ
   れと同じである。彼らを支配する『道』がわかれば、彼らは、そ
れを受けいれ、服従す
   るだろう。その道を失うならば、彼らは反逆し侵略するだろ
244)。

Carine Defoort,The Pheasant Cap Master(He Guan Zi);A Rhetorical Reading (New York; State
      University of New York 
 Prcss,1996).206

  アメリカの中国専門家が犯した最大の問違いの一つは、この『賢治通鑑』を軽んじ
たこ
 とだ。この本は、英訳されなかった。1992年になって初めて、わたしたちは
『資治通
 鑑』が毛沢東の愛読書だったことを知った。ニューヨーク・タイムズ紙の記者
ハリソン・
 ソールズベリーが、毛沢東は1935年当時のみならず、1976年に亡
くなるまで、繰
 り返しその本を読んでいたことを報じた(※)。小平や他の指導者
もその本を読んでい
 る。また、中国の高校生は、その本から抜粋した文章を書き写し
て学ぶ。そこには、戦国
 時代から伝わる策略の用い方、敵の包囲を避ける方法、好機
が訪れるまで既存の覇権国を
 自己満足にひたらせておく方法などが記されている。こ
うしたことをすべて、わたしたち
 は見逃していたのだ


※ ソールズベリーは、中国の戦略思考を理解するためのこの重要な手がかりを、毛沢東秘
  書で伝記作家の李鋭へのインタビューで知ったと報告している。Harrison E. Salisbury,
   The New Emperors;China in the Era of Mao and Deng (New York Harper Perennial 1993
),480,
   n.17
. ソールズベリーはこう報告する。「1973年のはじめ、小平のもとをひとり
  の訪問者が訪れた。訪問者は、氏が「『資治過鑑』を熟読しているのを知った」(325)。
  ソールズベリーはまた、1949年に中華人民共和国を建国するために北京に乗り込ん
  だ毛沢東は『資治通鑑』を携えていた。「帝国を支配するには、過去の皇帝の知恵を手
  引きにするべきだ」(9)。さらにソールズベリーはこうも言う。「毛沢東の時代を生き
  延びた人が皆、毛が古代の国々の栄枯盛衰の歴史について広く読んでいたことを信じて
  いるわけではない」(53)。


  毛沢束は明らかにダーウィンの言葉を借用してこう言った。
「社会主義を奉じるわれわ
 れは、イデオロギーの戦いで最適者として勝ち残るため
に、あらゆる状況を利用しよう
 (※)」 1950年代に、毛をはじめとする中国の指導者はしばしば世界支配について
 語ったが、西側の人間はそれを、アイゼンハワーやケネディやトルーマンやニクソンがア
 メリカを世界の最強国と見なすのとは追って、ただの誇大妄想か、ナショナジズムの熱を
 かきたてるための無害な大言ぐらいにしか思っていなかった。また、中国共産党が大躍進
 時代に掲げた、「英国を追い越し、アメリカに追いつく」というスローガンを、真剣に捉
 えた人もほとんどいなかった(※)。
  毛沢東が主席であった時代、アメリカの諜報機関の職員は、自らの先入観や偏見に支配
 されており、彼らの多くは中国人を、過激な一派に率いられた素朴で遅れた国民と見てい
 た。中国の道路には自動車ではなく自転車があふれ、製造業者は扇風機さえ作れず、外国
 からの投資はごくわずかだった。毛が描く奇怪なナショナリズム的計画は、西側の人間か
 ら見れば、ほんのお笑い草だった。毛は各国にいた中国の大使を引き上げさせた。農民を
 助けようと、穀物をついばむスズメを軍隊に命じて駆除させた。偉大な指導者は、スズメ
 が害虫を食べてくれていたことを知らなかった。その結果、バッタやイナゴが大量に発生
 し、穀物生産は壊滅的な被害を受けた。

Butt,“Darwinism.Through a Chinese Lens.”

Xu Jianchu. Andy wilkes, and Janet sturgeon, “Offcial and Vemacular ldentifications in the 
   Making of the Modem World: Case Study in Yunnan, S.W. Chhina, " Center for Biodiversity and
      Indigenous Knowledge (CBIK), October 2001, 4.


  アメリカの諜報機関の職員は、中国がソ連の従属的パートナーという立場に満足してい
  ない、という報告を信じようとしなかった。総じてアメリカ人は、中国のように遅れた国
 がソ連のライバルになり、やがてはアメリカと対峙するなどという見方はばかげていると
 思っていたのだ。しかし、それを笑わない人々がいた。ソ連の指導者たちだ。彼らはアメ
 リカが気づくずっと前に、中国のたくらみを知っていた。100年マラソンについての最
 初の情報はモスクワからもたらされた。


かって、社会主義とは、それを名乗る国だけ社会主義が存在した。マルクスの思想が唱える"社
会主義社会"にもっとも近いのは、日本などの先進国の高度消費社会諸国であるとわたし
(たち)
は考えている。毛沢東の考える社会主義がいかなるものか?よもや「ロング・マーチ」(
長征)
のゴール(2049年)が、各国のひとびとを抑圧する国であろうはずかないだろうと思いた
いが、本書でそれを長
考していこう。

                                   この項つづく

 

  ● 今夜の一曲

第70回ジュネーブ国際音楽コンクール(作曲部門)の決勝が、スイス・ジュネーブで8日あり、兵庫
県たつの市出身の現代音楽作曲家薮田翔一が優勝した。日本人では初めて。

 

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ベンチャーダマシ Ⅰ

2015年11月09日 | 開発企画

 

 

        時間と空間と重力は、物質から離れて存在することはない。

                   アルベルト・アンシュタイン 1915

 

                                                                                    

  公孟 -儒者との対話- / 『墨子』

●  門と泥棒

  墨子が病気になったとき、弟子の践鼻が枕元にきて、
 「いつか先生は、『鬼神はたしかに存在し、禍福をもたらす力がある。正しい人間には福をもたらし、
 邪まな人聞には禍をもたらす』といわれました。
  ところが、先生は聖人であられるのに、病気になられた。これはどうしたわけでしょう。先生のお
 っしゃることが正しくないのでしょうか、それとも鬼神には、人を裁く力がないのでしょうか」
 「わたしが病気になったからといって、すぐ鬼神に結びつけるのはよくない。病気になる原因はたく
 さんある。寒暑が原因になることもあれば、疲労が原因になることもある。
  おまえの見方は、門がたくさんあるのに、一門を閉めて、もう泥棒は入らないと安心するようなも
 のだ」 

 

 出典:中日新聞

【ベンチャーダマシ Ⅰ】 

● サイクリングに「漁船タクシー」を 守山市が新事業 

守山市は7日、漁船で希望の港まで人と自転車を湖上輸送する「漁船タクシー」を試行的に始めた。初
心者にも
気軽にサイクリングと湖上の景色を楽しんでもらう企画で、今月下旬には一般向けに事業を始
める。申し込みを
受け付けている。市内の琵琶湖大橋に、自転車で琵琶湖を一周する「ビワイチ」をす
る人が多く立ち寄ることに着目。国の地方創生交付金を使い、ビワイチの拠点化を目指して市と守山漁
業協同組合が協力。同市の木浜漁港を起点に申込者の希望に合わせて、県内五カ所へ輸送する。この

は市内の9人が参加。2隻の漁船に分かれて自転車を積み込み、大溝漁港(高島市)や大津港(大津市)へ向か
った。各港に到着すると、湖岸沿いを走って思い思いのペースで木浜漁港を目指した。初心者だとこげる距離が
限られていつも同じコースになってしまうが、船があれば同じ距離でも違うコースが楽しめて良いと思うと参加者
は満足げに話した。一般向けは今月22、28、29日、12月5日と、来年3月にも3回予定。参加費は一人一回3
千円。原則、事前に市地域振興課=077(582)1165へ申し込む。

 

行政情報システム室の資料(上図)の資料によるとスポーツ自転車は01年から3.5倍の伸び率(電動
アシスト車は1.8倍)と圧倒的な伸びを記録。ところで、琵琶湖一周した経験者なら気付くと思うが一
周するには夜間を抜いて一日では無理がある。それなら、船に乗せ、大津、守山、近江八幡、彦根、長
浜、今津、堅田の7カ所に寄港できれば、8時間で無理なく分割一周できるし、何といっても風景が好
いから病みつきなるほど楽しい(天候次第だが)。
 

EVARTube


● パンクしない自転車タイヤ

自転車でのトラブルの1つはチェーンが外れる、2つは思いがけないパンクだとは誰しも軽々している
だろう(盗難はここには入れていない)。そこで、パンクしなく、しかも軽い自転車のタイヤが話題を
よんでいる。それが上の写真「EVARTube」(製造元「株式会社デファクトスタイル」)。自転車や車
いすのタイヤの内側にある空気チューブを取り払い、代わりにこの製品と入れ替える事でバンクレスの
タイヤとなるす。基本は直径3センチメートル長さ250センチメートル程度の円柱状で、4種類のサイズ
展開だけで、市販されている全てのタイヤに適合出来る設計になっている。類似の樹脂製パンクレスタ
イヤ製品などと比較して、重さが半分以下になるよう、特殊なクッション材を用いた工業製品(合成樹
脂の立体網状集合体:特許/実用新案)。重さが軽くなるとことで、原材料の使用量も少なく、原料の
EVA樹脂――Ethylene Vinyl Acetate Copolymer)エチレン ビニールアセタート コポリマー
の略称で、エ
チレンと酢酸ビニル共重合体させた合成樹脂――はれ安価で製造コストもかなり安、く抑えることがで
きる。

従来のパンク防止対策済空気タイヤは、パンクを防止するため、合成樹脂製弾性発泡体やシリコーンゴ
ムが充
てんされたタイヤチューブを備えていることがあったが、(1)タイヤチューブに合成樹脂製弾
性発泡体やシリコーンゴムを充てんすると、タイヤチューブ全体の重量が少なくとも2キログラム以上
となり空気タイヤの軽快性が損なわれる。(2)
また、合成樹脂製弾性発泡体は、シリコーンゴムより
も軽いものの軽いものの、水分を吸収しやすい。そのため、合成樹脂製弾性発泡体がタイヤチューブ内
に侵入した湿気を吸収し、タイヤチューブ全体重量が増加し経年劣化する。(3)さらに、タ
イヤチュ
ーブ形状が意図せずタイヤチューブの形状変化し、タイヤの縁部をホイールリムに押しつける力が不十
分となりホイールリムからタイヤが外れやすくなる。(4)
また、タイヤチューブの重量バランスや剛
性が不均一になり、このタイヤチューブを利用する自転車等の乗り物の乗り心地が悪いなどの問題があ
。これらの問題点は、チューブレスタイヤでも同様のことが言える。同社の伊澤光輝社長は○百億の
売る上げと意気込みを語っている。


【符号の説明】

1  空気タイヤ内蔵用クッション  2  タイヤ支持部  3  タイヤ本体支持部  4  縁支持部  5  リム支持部  10 
タイヤ  11  タイヤの両縁部  20  ホイールリム  21  ホイールリムの両縁部  W1  縁支持部の幅  W2  タイ
ヤの両縁部の内側幅  WD  幅方向

このため、上図1の改良考案(実登3181271 空気タイヤ内蔵用クッション 株式会社デファクトスタイル
――空気タイヤ内蔵用クッション1は、ホイールリム20に装着されたタイヤ10の内側形状と同様の
形状であって中実又は中空に形成されているタイヤ支持部2と、ホイールリム20の内側部分のうちタ
イヤ10が接触していない部分の形状と同様の形状であって中実又は中空に形成されているリム支持部
5と、を備えているとともに、複数の合成樹脂捲縮糸が互いに絡み合いながらそれらの接点で融着させ
合成樹脂捲縮糸集合体を用いて構成することで、一般的な空気タイヤとパンク防止対策済空気タイヤを
比較し、パンク防止性能を向上させるだけでなく、乗り心地、走行性、耐久性や安全性の維持向上させ
ることができる空気タイヤ内蔵用クッション――が提供されている。





● 世界初の深漬専門事業:『古漬け本舗構想』

『人工培土と餡屋』(2015.11.04)で古漬けのことに触れたが、そのバラエティの多さと、その定義の
不確かさに少々暗澹とした気持ちに落ち込む。「発酵食品」と規定すると「油漬け」や「砂糖漬け」(
「ピクルス」は?といえばやバルサミコ酢やワインのように長期熟成できるものもあり、メゾな半発酵
領域な入るだろうと思うから外れる)もあるし、それじゃ、漬け込む(保存熟成)期間でいえば、「浅
漬け」のようなものもあり、1年以上と規定しても半年、数ヶ月ならどうするということで迷う。さら
に、「糠漬け」「麹漬け」「味噌漬け」などの「床」(媒体)の規定もある。例えば、先ほどのピクル
スのような「酢漬け」のように梅酒の梅のような「アルコール漬け」(炭酸水水漬け)などの液体。あ
るいは、世間ではまだ出回っていないガス・気体のような気体漬け(窒素漬け、二酸化炭素漬け――厳
密にいえばバナナはエチレンガス漬けだし、冷間燻製はある種のアロマ漬けともいえるが)などの区別
もあり、また、一般的な食品か特定保健用食品は、あるいはそれは、消化酵素、代謝酵素、食物酵素と
の関係からの規定性という「規定性」をめぐる課題が横たわる。



つぎに、被加工食品飲料の規定、液体でいえば、酒・酢・乳・シロップ・醤油など、固形物では、茶・
ハーブなどの草木・穀物・魚介(卵巣・精巣)・野菜・果実、鳥獣(卵)、家畜(卵)、特に最近は熟
成肉が美味いということで話題になっているが、干し肉や冷凍保存以外の持続可能な社会時代にマッチ
した、グリーンで美味しい発酵食肉品が開発できればこれは一大センセーショナル(sensational) には
なるが、例えば、鮎を例にとると年魚であり長くて二年魚で、香魚と呼ばれるほどで、刺身(瀬越)、
塩焼き、天麩羅、一夜干し、稚鮎油漬け、鮎の燻製が知られているが、その良さを壊す漬け物は敬遠さ
れてしかるべきかもしれないが、それを超える商品が完成すれば"凄い知財"のかたまりになることは必
定。稚鮎のように丸ごと漬け込むか、臓物を取り除くか、それとも一旦焼いてから漬け込むか、固形発
酵培地(媒体)か、食酢やアルコールに漬け込むか、アロマ燻製などの気体(ガス)処理して漬け込む
かそうれは様々だが、そんなことを考えると、春日一球ではないが"秋の夜長も眠れない"ことになる。



もう1つ、発酵商品製造評価方法。発酵過程は、農林水産物の育種開発と同じで長時間かかるため、そ
れを短縮する評価システムの開発が肝となる。内部環境を評価するシステムの構築は簡単だ(『高密度
栽培工学』2015.04.29)。問題は、発酵容器の再現設計仕様とそれを保管する環境の再現設計仕様の2
つ(簡単に書いているが、これを落とし込み細分化する作業は膨大)。評価システムを極力コンパクト
にすることはベターだが、熱力学的な変動と微小成分・微小濃度のその場検出に腐心細心することも必
定。これに成功すれば格段に時間短縮できれば、後は従来のの拡販ルーチン過程に入るだろう。

さて、発酵食費や漬物の機能の一義は、(1)その栄養価を損なうことなく保存することはいうまでも
なく、(2)河豚卵巣の毒を解毒機能をもつ糠漬けのごとく、さらに新しい価値を付加する機能もある
という「医食同源」敵側面もある。(3)さらに、「還相」的側面、つまり、1つも無駄のでない商品
製造プロセス――例えば、大根の葉っぱ。根の有用化、魚介類の臓物、鱗や甲殻の有用化――
機能を組
み込む機能がある。もっとも、この(3)つめが古漬けの真骨頂でもある。
 

 




【時の砂の波紋】


時空
連続体の中で、時間は四次元として知覚される。過去、現在および未来の全てが。

時間
波紋自然素材が変化していくことで、その存在を知る。

砂と水の2つで相補構成された時計。


禅寺
の庭の砂のように、12時間周期で、斬新でいて平坦な波紋をつくる。

その一方で水は、無限の同心円の波形を通し時の儚さを伝える。



 
  Time and space and gravitation have no separete existence from matter

                                                                                            - Albert Einstein -

 

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米国初女性大統領の誕生?

2015年11月08日 | 開発企画

 

 

   魅力とは、はっきりした返事を求めなかったのに、イエスの返事を得る方法である。

                                               アルベール・カミュ

 

     Charm is a way of getting the answer
                                “Yes” without having asked for clear answer.  
                                     

 

  公孟 -儒者との対話- / 『墨子』

● 自分を"かくまう"罪

  墨子に師事する青年がいた。その青年が墨子に向かって、
 「鬼神はたしかに存在し、人の行為を判断して禍福をくだす。行ないの正しい者には福を与え、正し
 くない者には、わざわいをもたらす、というのが先生の持論です。
  ところで、このわたしは長い囲先生に師事していますが、いっこうにうだつがあがりません。先生
 のおっしゃることがまちがっているのか、それとも鬼神には禍福をくだす力などないのか、二つにひ
 とつであると思います。うだつのあがらないわけを教えてください」
 「わたしがまちがっているのでもなければ、鬼神に禍福をくだす力がないのでもない。
  おまえは、罪人をかくまうと、罰せられることを知っているか」
 「いいえ、知りません」
 「ここにおまえより十倍もすぐれた人がいるとする。おまえは、その人にくらべて自分がその十分の
 一の価値しかないことを認めるかね」
 「それは、むりです」
 「おまえより百倍もすぐれた人がいれば、全面的にその人の実力を認めて、自分を無にすることがで
 きるかね」
 「とても、むりですに
 「人をひとりかくまうだけでも罪になる。ところがおまえは、こんなにたくさんのものをかくまって
 いる。こういう罪を犯していれば、幸運がめぐってこないのは、当然ではないかに

 

【我が家の焚書顛末記 Ⅱ】

本の整理野中には洋書も少しあり、たまたまヒラリークリントンの06年に購入した『ヒラリー・ロダム・
クリントン自伝』を拾いあげ処分しようかと迷う。この本もご多分にもれず積んどくだけであったが翻訳
することに決め焚書を免れる。和書は漢字をコード認識し読み飛ばせて日本語は楽だが、英文はそれがな
く、それでなくても慢性的な眼精疲労に悩まされているのにと、変なところで頑張ってしまう"旋毛癖"

働いた。次期大統領候補として有力視されている彼女だが、共和党などの政敵を融和・懐柔・打開をする
手腕が乏しいとか、戦争屋ロックフェラー(デイヴィッド)の影響が大きく、彼女が就任すれば戦争が起
きる――最近の中東情勢を見る限り誰が大統領になろうとその可能性は大きいだろうが――とかの情報が
飛び交う魑魅魍魎の世界もあってなかなか面白いが、これも眼精疲労を助長する。

さて、彼女は47年イリノイ州シカゴ郊外で、織物工場を経営する父と専業主婦の母の間に生まれる。名
門女子大
ウェルズリー・カレッジを卒業後、イエール大学ロースクールを修了。その後、弁護士として子
供、女性、社会的弱
者の権利擁護に力をそそぎ、ニクソン大統領弾劾の司法委員会にも参加。75年イエ
ール大学時代に知り合
ったビル・クリントンと結婚し、アーカンソー州に移住。司法長官の妻、州知事夫
人をへて93年大統領夫人に。医療保険改
革や女性の地位向上のために尽力し、新しいファーストレディ
像を築きあげた。99年ニューヨーク州から上院
議員選に出馬し、翌2000年当選を果たす。現在、アメ
リカ大統領の椅子にもっとも近い女性として、全世界の注
目を集めるが新鮮味がないとかで離反する支持者
も出ている。本書せは、「彼女自らが、子供時代、夫ビル・クリントンとの結婚生活、ホワイトハウスの内幕、上院選
の勝利に至るまでを綴った感動のメモワールである。母として、妻として、政治家として、全世界がもっとも注目する
女性が、21世紀という困難な時代に生きるすべての人に贈る“人生賛歌”」と紹介されたりしている。

  

また、読売新聞特別編集委員の橋本五郎(五郎丸ではない)は、「ホワイトハウスは全米刑務所の中で最
も光り輝く刑務所である」。アメリカ第33代大統領、ハリー・トルーマンの
至言である。ヒラリー自伝
は、大統領だけでなく、その夫人にとっても時に牢獄と化す“刑務所”を根拠地
にして戦う女性の記録で
もある。既成の観念や陋習(ろうしゅう)と戦いながら、立ち止まることなく前進しようとする
張り詰め
た姿が全編にみなぎり、読むものに畏怖の念さえ呼び起こす。大統領夫人とは「立場」ではあるが
「仕事
」ではない。この立場を使ってどう夫を助け、自身の声を失わずに国家に奉仕できるか。そう考える彼女
は、
女性の地位の向上を求め、子供の人権を守り、医療保険改革に取り組んだ。そして、どんな時でも自
分自身であ
ろうとした。幾多の試練が待つ彼女の支えとなったのは、歴代ファーストレディーだ。穏やか
で毅然としたエレノア・ル
ーズベルトの写真を眺めていると、エレノアの言葉がよみがえる。「女性はテ
ィーバッグみたいなもの。熱湯に入
れられるまで、その強さにだれも気づかない」「政治の世界に身を置
く女性たるもの、サイのように皮を厚くしなくて
はならない」。ヒラリーはこれらの言葉を呪文のように
唱えて危機を乗り切るのだった。皮を厚くしすぎて温かみのない人間になることを恐れながら。その彼女
にとって最大の危機は、夫がモニカ・ルウィンスキーとの「不
適切な関係」について自分を欺いたことだ
った。とめどない怒りに我を忘れた。「妻としてはビルを絞め殺してやりた
かったが、彼はわたしが支援
したいと思うようなアメリカと世界の指導者だった」ことで踏みとどまる。そのもがき苦
しむ様が赤裸々
に綴られていると評価しているほどだが、米国初の女性大統領が誕生するなんて素敵ではないかと、ミー
ハーなことしか言葉として浮かばない。

 

 

  


【時代は太陽道を渡る 22】

今夜は技術の話題を3つ4つ拾ってみる。

● 世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場が稼働

産業技術総合研究所が開発したスーパーグロース(SG)法を用いたカーボンナノチューブ(CNT)の世界初
の量産工場を日本ゼオン(株)が完成させ稼働を開始(2015.11.04)。SG法は高速・大量合成――従来の
CNT合成法と比較して、数百倍の成長効率を示すとともに、合成したSGCNTは基板から容易に分離できるた
め、品質を損なうことなく炭素純度99%以上の純度でSGCNTを簡便に回収することができることから、触媒
使用量および製造コストの大幅な削減――が可能であり、SG法で得られるCNTは、従来と比較して、高アス
ペクト比、高純度、大表面積といった特長を有し、従来にない機能や特徴を持つ新機能性材料、次世代デ
バイス等への応用が期待される材料です。高性能キャパシタ、高機能ゴム材料、高熱導電材料等の革新的
材料やデバイスへ応用できることから、その需要拡大が見込まれます。

 
これは、大きな『マテリアル革命』になる。現在の電気配線、銅を中心しているが、他の天然・プラスチ
ック繊維樹脂とのコンビネイションで銅より強くて軽量で優れた導電率をもつ配線材料となるばかりでな
く、薄くて軽い大容量のキャパシタ型蓄電器やフローリング材とコラボすることで薄くて軽いヒートシー
トにもでき、道路の融雪舗装、あるいは、薄くて丈夫な大面積の熱電素子として世界展開できる商品にと
なる。これは大変愉快だ。

 




● 年間平均42.9%、最大73%の電力削減効果を達成

シャープが開発した「採光フィルム」で、窓に設置することで太陽光などの外光を効率良く取り込め、同
社が実施した実証実験で、この採光フィルムを導入し年間4割以上の照明電力の削減効果を確認。それに
よると、同社が開発したオフィスビルなどの照明用電力の削減に貢献する「採光フィルム」。同社は同フ
ィルムの節電・省エネ効果を実証するため、研究所の実験室に採光フィルムを設置し、1年間(15年9
月1日~8月31日)にわたり室内の照度測定を行った。その結果、室内照明の消費電力量が年間で約4
割の削減につながったという。これは、液晶ディスプレイの開発で培った光学制御技術を応用。太陽の年
周/日周運動を考慮した光学設計に基づく独自の技術を採用している。表面に微細加工を施すことでフィ
ルムの片側よりさまざまな角度から入射する光を、反対側から一定の角度で出すことを可能にしている。

このフィルムをガラスに張り付けるなどし、窓の上部に設置することで、季節や時間帯に応じて変化する
入射角度にかかわらず、太陽光を効率的に天井方向に取り込み、不快なグレア(まぶしさ)を抑えながら
室内全体を明るくすることができるのが特徴。シャープでは採光フィルムをサッシに納めた「自然採光シ
ステム」として製品化し、オフィスビルをはじめ、学校、病院、コンビニなどをターゲットに展開してい
く方針。

 

● ビームスプリット式ペロブスカイト色素増感太陽電池で変換効率21.
5%達成

東京大学の瀬川研究会のグループは 、ダイクロイックミラーを用いた(通常のハーフミラーではない、波
長スプリット:上図/左上)ペロブスカイトと色素増感太陽電池のタンデムセルで効率 21.5% を実現。
手段を問わなければハイブリッド(有機)系太陽電池だけでもここまで達成ことを実証。使用した色素は
新開発の RuDX3

太陽電池の変換効率を上げるには、光吸収には近赤外領域はかかせない。エネルギー変換効率を高めるこ
とが重要。
太陽電池ペロブスカイト鉛ハロゲン化物の進歩が顕著で20%以上の高い変換効率が達成され
ているが、長波長サイドの吸収限界は~800ナノメートル。
さらに、ペロブスカイト型太陽電池の変換
効率を向上させるには、近赤外太陽電池とハイブリット色素が有用。
ここでは、近赤外に幅広い応答を示
すパンクロマチック増感剤(=DX3:~1100ナノメートル)で、AM1.5で30ミリアンペア/平方
センチを超える光電流密度をえる。
可視光吸収するペロブスカイトセルとともにDX3系色素増感型太陽電
池を使用し、ハイブリット色素増感太陽電池は、スペクトル分離し21.5%の高変換効率を達成した。


   


※  AM(エアマス)1.5とはエアマスの頭文字で、太陽が地表に到達するまでに通過する大気の量を表す。
  地表面に垂直入射で届く場合をAM1とし、AM1.5とは、垂直入射に対して大気を通過する距離が1.5
  倍であることを示し、日本も含め世界中でAM1.5を基準としている。

 



● 米国で進むコミュニティー・チョイス・アグリゲーション(CCA)制度

コミュニティー・チョイス・アグリゲーション(Community Choice Aggregation: CCA;自治体選択集約制
度)は、地方自治体などが住民、ビジネス、さらに公共施設用の電力需要をまとめて購入できることを規
定したもので、02
年に成立。この法律により、地方自治体は、自ら電力を発電、または発電事業者から
電力を調達する、コミュニティーが自由に選択できる公共事業形態の一つ。米カリフォルニア州では2000
年~01年に発生した電力危機が原因で小売全面自由化が保留になった。民間電力会社の地域独占が継続
され、家庭用電力消費者は電力購入の「チョイス(選択)」の機会を失うが、同州北部マリーン郡とその
周辺の消費者は、電力の購入先を大手電力会社から地方自治体に乗り換え、太陽光発電などの再生可能エ
ネルギーを選択、乗り換えで、今年は1,060万ドル(約12.6億円)の電気料金と、6万トン以上の温室効果
ガス削減を見込まれるほどになる。

「再エネ比率56%」でも料金は割安

NPO 法人マリーン・クリーン・エネルギー(Marin Clean Energy: MCE)の電力プランを選択した需要家は、
従来と変わらず PG&E から請求書を受け取るようになっている。ちなみに、電気代の内訳は、MCEにより
調達・供給される電気の料金、PG&E (パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー)からの送配電料と
その他の料金になっている。本来、MCE PG&E は、小売り販売先獲得で競争相手になるわけだが、CCA
の仕組み上、MCE が発電、PG&E が送配電と顧客サービスを行う、パートナーシップというユニークな形
にもなる。

カリフォルニア州は当時、「再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(Renewable Portfolio Standard:RPS
)」により、20年までに州内の電力販売量の33%を再生可能エネルギーで賄うという目標を制度化し
ていた(現在は30年までに50%に引き上げられた)。RPS遵守義務のあるPG&Eを含む民間電力会社は、
電力販売量の約20%は再生可能エネルギーで満たしていたものの、MCEはさらに多くの再生可能エネルギー
を調達できている。MCEは、現在3つのプランをコミュニティーメンバーに提供する(下図)。(1)「ラ
イトグリーン」は再生可能エネルギーの占める比率が56%、(2)「ディープグリーン」は百%再生可能エ
ネルギー、そして、(3)「ローカルソル」は100%地元の太陽光発電の電力からなる。


PG&Eの電力プランは、現在、再生可能エネルギー比率が27%であり、月平均の家庭用電気料金は111.26
ドルである。これに対し、MCE  の「ライトグリーン」は再エネ比率が2
倍の56%に高まるうえに、月々
の電気料金はわずか1.58ドルだがPG&Eより安い、109.68ドルとなっている(下図)。一方、PG&Eと比べ、再
エネの比率が約4倍(再エネ百%)の「ディープグリーン」と、「ローカルソル」では、PG&E より割高に
なっている。月平均の割高額(プレミアム)は、「ディープグリーン」ではわずか3.5ドルだが、「ローカ
ルソル」では28.89ドルとなっている。




「自動乗り換え」で顧客を獲得

マリーン郡のコミュニティーのために立ち上がったMCEだが、現在は近辺の地方自治体も参加し、顧客ベー
スを広げている。今年はワインで有名なナパバレーのあるナパ郡の他に4市が新しくMCEに加入した。家庭
用顧客が総数の約60
%、ビジネス用の顧客が約20%を占めるが、電力需要量では家庭用とビジネス用顧
客は約半々となる。
このプログラムで驚くべき特徴は、コミュニティーのメンバーの80%以上が従来の地域
独占の民間電力会社からMCEに乗り換えた
。この高い乗り換え率の背景には、CCAを優遇する仕組みが法律
設けられている。
それは、CCAに限り、MCEなどのCCA プロバイダーが自動的にディフォルト(初期状態
)に設定――普通だったら PG&E のような地域独占電力会社からMCEへの乗り換え手続きが必要になるが、
CCA のプログラム開始と同時にコミュニティーの顧客は自動的にCCA に乗り替わるようになっている。

発電料金の単価は、再エネ百%でも大手電力より安い

CCAは、地域で発電した再生可能エネルギーをコミュニティーで消費するという「地産地消」モデルを目標
にしている。MCEは、再生可能エネルギー比率56%の電気を地域独占の大手電力会社(ここではPG&E
に比べて安い価格で提供している。再エネ56%のプランは「ライトグリーン」と呼ばれ、発電料金は8.2
セント/kWh。「ディープグリーン」と呼ばれる再エネ百%プランの発電料金は「ライトグリーン」に1セン
トを上乗せした9.2セント/kWhで提供する。これらの発電料金は、PG&Eの再エネ比率27%(9.745セント
/kWh)より低価格になっている。


地方自治体が、大手電力会社より再エネ比率が高いのに低価格で提供できるのか?

特定非営利活動法人なので、株主に支払う報酬がなく、大手電力会社は株主に12%の投資リターンを保証
しなくてはならない。そうしたリターンを求められることがなく、運営は効率的で、無駄がないので、あま
り経費もかからく、電気調達で迅速に決断する。プロジェクトディペロッパー、銀行、投資家が無駄に時間
を費やさずに済み、結果的に経費が低く保て、最近では再生可能エネルギーを含む電気の発電コストが大幅
に下がるので、競争的価格で調達できる。MCEの顧客は小売会社とし発電コストを払い、送電網を運営する
PG&Eに送電コストを支払う。送電コストは電力をMCEまたはPG&Eから購入しても同じ単価の12.164セン
ト/kWhになっている。

FIT活用し、顧客の住む地域での再エネ開発を強化

MCECCAプログラムはエコな電力を低価格で販売するだけではなく、再エネ固定価格買取制度(FIT)、
太陽光発電の余剰電力買い取り、省エネプログラムも手掛けている。これらの施策は、コミュニティー内で
雇用を生み出し、環境を保護し、地域を支える効果がある。「ディープグリーン」の収入の一部がこれらの
プログラムの資金にあてられる。運営当初、「グリーンな電力」と「低価格」でPG&Eと差別化するため、
比較的低コストな州外の風力、バイオマス、水力発電所などから電力を調達してきた。だが、「ローカル」
を強調すべく、現在は州内、さらに顧客が住む地域での再生可能エネルギーの調達と開発に力を入れている。
MCEFITプログラムは1メガワット
未満の再エネ発電設備が対象で、買取期間は20年、買取価格は3つ
の発電電源タイプとプログラム全体の認定発電容量で決まる。つまり、買取価格が年度ごとに決まるのでは
なく、発電設備の出力規模を基準にした変動方式で、具体的には、認定容量が2メガワット増えるごとに、
買取価格が低減する仕組みになる(下図)。



3つの電源タイプは(1)ピークエネルギー、(2)ベースロードエネルギー、(3)断続的エネルギーにな
っている。ピークエネルギーの定義は、一日における発電総量の90%が午前66から午後10時の間に発電、
送電されるエネルギー。太陽光発電や太陽熱などのこの定義にはまる。ベースロードエネルギーは、バイオ
マス、バイオガス(廃棄物)、燃料電池など通常運営時の設備利用率が75%を超えるエネルギー。断続的
エネルギーはピークとベースロードエネルギーに当てはまらないエネルギーとして、風力が挙げられている。
例えば、認定容量が2メガワット以内では、太陽光発電のようなピーク時に電力を供給する電力の買取価格
137.66ドル/MWh(13.77セント/kWh)。総設置認定量が12メガワットに達すると買取価格が90ドル/MWh
(9セント/kWh)になる。


先月末、MCEは新しいサービス内容を発表した。それは25年までに「ライトグリーン」の再生可能エネル
ギーの比率を現在の56%から80%まで上げることだ。今年は99メガワットの風力と、州内に建設され
た20メガワットと23メガワットのメガソーラー(大規模太陽光発電所)からの調達も始まった。さらに
現在同州のサンフランシスコ、ベイエリア(サンフランシスコ湾の湾岸地域)で2番目に大きい10.5メガ
ワットのメガソーラーを現在、建設中。パリで11月30日から開かれる第21回国連気候変動枠組み条約
締約国会議(COP21)に参加する予定という。これは面白い動きだ。

 

 

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アデル・リターズ

2015年11月06日 | 時事書評

 

 

   ドラムをたたけ、バンジョーを鳴らせ、長くくねった冷たい
        サクソフォーンをすすり泣かせろ。そらゆけ、ジャズバンド
                  
                    カール・サンドバーグ 「ジャズ・ファンtジア」

           Drum on your drum, batter on your banjos, sob on the
                     long cool winding saxophones,  Go to it, O jazzmen.  

                                                                                       Carl Sonburg

  公孟 -儒者との対話- / 『墨子』

● 何をもってか必ずしも人を視ん

  墨子に師事する青年がいた。
 「どうして学問をしないのだ」と澄子がきいた。
 「わたしの一族には、学問をする者がいないのです」
 「それはおかしい。一族に美人を好む者がいないからといって、美人を好まないわけではあるまい。
 一族に富貴を望む者がいないからといって、富貴を好まないわけではあるまい。美人や富貴を求め
 る
場合でさえこうなのだ。ましてや、義は天下の宝物だ。これを学ぶのに、他人の思惑など気にし
 ては
いけない」

 

【最新波動発電工学】

● 波力発電の先駆けへ 湘南平塚で実験開始

東京大学生産技術研究所の林昌奎教授らの研究グループは、19年度をめどに神奈川県平塚市で出
力150キロワット以上の波力発電装置の実証実験を行う。漁港などの海岸沿いに設置し、発電した
電力を地元で消費する"地産地消"モデルの確立を目指す。実証で得た知見などを自治体や企業と共
有し、全国に普及させる体制も整える。


2×4メートルの鉄板で波を受け、振り子運動により発電する波力発電装置を15年中に完成させ
る。文部科学省の支援を受け、出力43キロワットの発電設備として16年8月をめどに岩手県久
慈市に設置。発電性能や荒れた波を受けた時の耐久性などを検証する。平塚市での実証ではこの装
置を3台連結して出力を拡充、地産地消型として実用化できる規模で設置する。久慈市での実証結
果を踏まえて改良するほか、3台の装置の接続技術を開発する。平塚市の協力を受けて地元住民の
許可を得る作業も進め、19年度の設置を目指す。漁村などの沿岸部に設置し、地元で消費するこ
とで送電費用が安価な低コスト仕様を構築する。また、久慈市と平塚市の実証で得られる知見の共
有などを目的に、研究会を16年4月に立ち上げる。

ところで、波力発電システムは、海上や海中に設置され、交換作業が容易でない。また、システム
の耐久性が要求され、最低でも10年間使用できることが必要である。振子式波力発電装置では、
周期が6~12s程度の波の力を振子が絶えず受け、ベーンが絶えず揺動するが、もともとベーン
ポンプはこのような周期で絶えず揺動することを想定して設計されていない。また、システムの小
型化を図るため20MPa以上での使用が条件となるがその開発にはコストがかかる。従来の波力
発電装置は、波受部材を防波堤の前方に設置し、防波堤から反射される反射波と入射波の共振現象
を用いてエネルギー変換効率を向上させるが、通常、防波堤の前面には消波ブロックが存在し、反
射面の位置が特定できない問題がある。



 

 【符号の説明】

1 波力発電システム  2 防波堤 8 消波ブロック  9 平均水面  13 波受部材  20 ポンプ装置  21 ポ
ンプ  41 主通路  42 流量センサ  43 アキュムレータ装置  44 アキュムレータ用切換弁  45 第1ア
キュムレータ  46 第2アキュムレータ  60 油圧モータ装置  61 モータ用切換弁  64 第1油圧モータ 
65 第2油圧モータ  66 出力軸  67,68 サーボ機構  71 発電機  72 パワーコンディショナ  73 回
転数センサ  80 制御装置  90 昇降装置


上図の新機構案は、消波ブロックが存在する防波堤であっても、これを排除することなく、耐久性
能及び耐圧性能を向上させることができ、また低コストの波力発電システムを提供することを目的
に提案されている。波力発電システム1は、波受部材13と、ポンプ装置20と、アキュムレータ
装置43と、油圧モータ装置60と、発電機71とを備えている。波受部材13は、波の力を受け
て揺動し、ポンプ装置20は、波受部材13の揺動運動を直動運動に変換して作動油を主通路41
に吐出するラムシリンダ式のポンプ21で構成。アキュムレータ装置43は、主通路41を流れる
作動油を蓄圧し、その作動油を主通路41の圧力が所定圧以下になる排出する。油圧モータ装置60
は、ポンプ装置20からの作動油が主通路41を介して供給され、作動油の吸入量に応じた回転速
度で出力軸66を駆動する。発電機71は、出力軸66の回転速度に応じた回転数で回転して電力
を発生する構成で、 耐久性能及び耐圧性能を向上させることができる。

地球温暖化による水位上昇による、沿岸浸食が進行していくと予測されるなか、波動発電の真価が
問われるが故、日本列島の沿岸という沿岸を波動発電装置で護岸しながら格安のエネルギーをつく
ることができれば、国土の付加価値を高めることになる。「護岸と発電」の同時解決こそクール・
ジャパンの真骨頂だろう。




【東北からの2つ最新マテリアル技術】

● 液体金属の流れで電気 電池が不要に?

東北大金属材料研究所の斎藤英治教授(物性物理学)のグループは2日、細い管に液体金属を流すだ
けで微弱な電気が発生することを突き止め、実際に電気を取り出すことにも成功したと発表。発見者
は、大学院生の高橋遼氏。石英でできた直径0.4ミリの管に液体金属の水銀やガリウム合金を、秒
速2メートルで流し、千万分の1ボルトという極めて微弱な電気を取り出す。発生する電気量は流れ
の速さに比例。管の中を流れる液体金属は摩擦で渦を巻き、その影響で金属の中の電子も自転。自転
の強弱により起電する。液体金属流が電気を発生させる原理は理論計算で発見。実験で証明できたの
は、絶縁体である石英を管に用いることを思い付いたことが大いという。斎藤教授は発電装置の超小
型化が可能。家電製品のリモコンに装置を組み込めば、ボタンを押す力で発電し、電池が不要になる
かもしれないと話す(河北新聞 2015.11.03)。微小電流で動作するデバイスが開発されれば、それへ
の応用展開が期待される。

  doi:10.1038/nphys3526

 

 

● 鉄系超伝導体の新たな極薄膜化技術

先月30日、前出東北大学金属材料研究所の塩貝純一助教らのグループは、鉄とセレンの層状の超伝
導物質・セレン化鉄(FeSe)を、電気化学反応をつかったエッチング法を用い極薄膜化する技術を確
立。この手法により、一つのFeSe試料で約20ナノメータから単原子層0.6ナノメータまでの厚みを
連続的に変化できる。
さらに、転移温度40ケルビンの高温超伝導が、単原子層0.6ナノメータから
数ナノメータという幅広い厚さの薄膜状態で実現することを初めて観測。これまで、極薄膜セレン化
鉄の高温での超伝導転移は厚さ約1ナノメータ以下でしか起こらないと考えられてきたが、、極薄膜
状態での高温超伝導誘起する起源が解明できるかもしれない。
また、この薄膜エッチング法は、セレ
ン化鉄以外の物質にも適用できる、極薄膜の新奇物性の調査研究の展開できるかもしれない。これは
実に面白い。

 doi:10.1038/nphys3530

 

 

 

  

   ● 今夜の一曲

【アデルの復活】 

Hello, it's me, I was wondering
If after all these years you'd like to meet to go over everything
They say that time's supposed to heal, yeah
But I ain't done much healing

Hello, can you hear me?
I'm in California dreaming about who we used to be
When we were younger and free
I've forgotten how it felt before the world fell at our feet

There's such a difference between us
And a million miles

Hello from the other side
I must've called a thousand times
To tell you I'm sorry, for everything that I've done
But when I call you never seem to be home

Hello from the outside
At least I can say that I've tried
To tell you I'm sorry, for breaking your heart
But it don't matter, it clearly doesn't tear you apart anymore

Hello, how are you?
It's so typical of me to talk about myself, I'm sorry
I hope that you're well
Did you ever make it out of that town where nothing ever happened?

It's no secret
That the both of us are running out of time

So hello from the other side
I must've called a thousand times
To tell you I'm sorry, for everything that I've done
But when I call you never seem to be home

Hello from the outside
At least I can say that I've tried
To tell you I'm sorry, for breaking your heart
But it don't matter, it clearly doesn't tear you apart anymore

Ooh, anymore
Ooh, anymore
Ooh, anymore
Anymore...

                                                                  ”Hellow”
                               Singer           Adele Adkins
                               
Writer     Adele Adkins/Greg Kurstin

 


シングソングライター・アデルの「Hellow」は、今年10月23日に彼女のアルバム「25」からシングル
カットされ、12年の最初のシングル「007スカイフォール」から3年ぶりにリリースされた。新
曲作りに悩んでいた彼女が、プロデューサのグレック・クリスティンと出会うことで生まれる。この
は、ソウルミュージックのピアノバラードで郷愁と後悔をテーマとした歌詞からなり、音楽評論家たちから称
賛をはくす。英国を含む23か国で 「Someone like You」 に次いで、2度目の第1位を獲得。米国では4週連続
第1位を獲得。ミュージックビデオとしてはテイラー・スイフトの 「Bao Blood」 が持つ1日の2千10万の閲覧回
数を超える2千770万回を記録、また、マイリー・サイラスの 「Wrecking Ball」 がもつ1億回数記録を最短時
間で達成するという記録ずくめで話題となる。

因みに、アデル(88年5月5日生まれ )は、英国の歌手。英国BBCの人気投票企画「サウンド・オブ・2008」に
てトップスターに躍り出る、同年のデビューアルバム「19」がチャート初登場1位を獲得、09年の米国グラミー
賞で最優秀新人賞と最優秀女性ポップボーカルパフォーマンス賞の2部門、12年の同賞で主要3部門を含む
全6部門の賞を獲得、12年9月時点で、全世界での総売上が2千3百万枚突破、これは今世紀に入り最大売
上にあたる。

●   自分の腕にキーボード

日本電気(NEC)は5日、ウェアラブルグラス用の新しいユーザーインタフェースの腕を仮想キーボー
ド化する「ARmKeypad(アームキーパッド)」を開発。
ARmKeypadは、ウェアラブルグラスとウェア
ラブルウォッチを連携させる新しい認識技術により、前腕に仮想キーボードを表示するシステム。腕に
キーボードや入力ボタンを装着しているような感覚でタッチ入力ができる。うぅ~ん、これも『デジ
タル革命渦論』の1つの様態ということか。生身も法整備もついて行けるのか少々不安が募る。

 

 

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データ改竄の謎解き

2015年11月05日 | 時事書評

 

 

  見たいなら見るがいいさ、でも君は跳ばなきゃならない   /   W.H.オーエン

 

The sense of danger must not disappear:
The way is certainly both short and steep,
However gradual it looks from here;
Look if you like, but you will have to leap.


Tough-minded men get mushy in their sleep
And break the by-laws any fool can keep;
It is not the convention but the fear
That has a tendency to disappear.


The worried efforts of the busy heap,
The dirt, the imprecision, and the beer
Produce a few samrt wisecracke every year;
Laugh if you can, but you will have to leap.


The clothes that are considered right to wear
Will not be either sensible or cheap,
So long as we consent to live like sheep
And never mention those who disappear.


Much can be said for social savior-faire,
Bu to rejoice when no one else is there
Is even harder than it is to weep;
No one is watching, but you have to leap.


A solitude ten thousand fathoms deep
Sustains the bed on which we lie, my dear:
Although I love you, you will have to leap;
Our dream of safety has to disappear.

 

                                             Leap Before You Look
                              W. H. Auden

 



   公孟 -儒者との対話 / 『墨子』

 

● 貸し借りはない


   墨子に師事する青年がいた。健康で聡明な青年であったので、墨子は、もっと勉強させたいと思っ
 た。
 「もう少し勉強を続けなさい。そうすれば、役人に推薦してあげるから」
  墨子にこうすすめられて、青年は、その気になった。一年経つと、かれは墨子に約束の履行をせま
 った。だが、墨子はこういった。
 「役人に推薦することはできない。おまえも魯の国にあった話を知っているだろう。
  魯の国に五人兄弟がいた。父親が亡くなったとき、長男は酒飲みで、葬式を出そうとしなかった。
 そこで弟たち四人は一計を案じ、兄に向かって、
 『父の葬式を出してください。そうすれば酒を買って上げますから』
  ともちかけた。この話に乗った長男は、さっそく父親の葬式を出した。葬式が終わると、かれは弟
 たち四人に約束の履行をせまった。弟たちの返事はこうであった。
 『酒は、買うわけにはいきません。あの葬式では、あなた自身が父親を葬ったと同時に、わたしたら
 四人も父親を葬ったのです。つまり故人はわたしたち四人だけの父親ではないわけです。もし、あな
 たが葬式を出さなかったとしたら、あなたはそれこそ世間の笑い者になっていたでしょう。だから葬
 式を出すようにすすめたのです。葬式を出すことによって、あなたは子としての義務を果たした。同
 時に、わたしたちも、子としての義務を果たしたのですから、その点であなたもわたしたちも立場は
 同じで、貸し借りはないはずです』
  おまえも、この長男と同じだ。もし、勉強を続けなかったら、それこそ世間の笑い昔になっただろ
 う。わたしがすすめたのは、そのためだ」
 

 

 

【データ改竄の謎解き】

10月15日、三井住友建設が施工主となって建設していた横浜市のマンションのパークシティLaLa横浜
の建設に際し、当社の工事の一部に不備があったことと、施工報告書の一部データが無断で書き換えられ
ていたことが明らかになった。
杭工事を請け負った旭化成建材が施工報告書のデータの一部を転用・加筆
したことを、同社の親会社である旭化成が
14日に明らかにしていた。同マンション4棟中の1棟が傾斜。
杭工事のデータ改ざんが新たに判明。一部の杭で、杭先端を支持層上で固定するセメントミルクの量を決
める際、異なる杭のデータを転用していた。
この問題を受け、国土交通省は23日、不安解消を目的とし
て、同社が杭打ちを行った物件、全国3040か所について、住民や自治体にデータの情報提供をするよ
う命令。28、釧路市の北海道営住宅の建設でもデータの流用・改ざんを行っていた。この工事の責任者
は横浜市の工事とは別の人物で、データ改ざんの不正行為が社内ぐるみで行われたとみられる。29日の
報道では
、この杭のデータ流用問題は、同社が請け負った工事以外でも行われたとみられとのこと。杭工
事の関係者に複数取材では、計測機器の不具合やデータ紛失などを理由に、流用が多数行われている。同
社の親会社
旭化成の平居正仁副社長は、現場責任者が関わったくい打ち工事41件のうち、19件で、デ
ータが改ざん。また全国の請負物件中、百件以上で改ざんを行った疑いがあるとしながら「管理する体制
チェックする体制においても、問題があったんではないか。上司その他の関与のしかたについても、不十
分なところがあったのではないか」と語っている。 

● 低排土・高支持力杭工法とは 

旭化成建材工業が採用した場所打ちコンクリート杭工法=低排土・高支持力杭工法(DYNAWING)とは、既製コ
ンクリートパイル事業(中小型杭事業)して
「ATTコラム」など、先進性を追求した高付加価値の製品・ 施工技だとさ
れるもの。 杭施工時の発生残土量は、従来の埋め込み杭工法に比べ、大幅に低減(低排土)、杭の設計支持力が
大きくとれる(高支持力)な杭工法。 高付加価値製品である「DYNAWING」により、主力事業分野である既製コン
クリートパイル事業を 強化したATT(アット)コラム(Asahikasei-Tenox-Technology Column
)は、(株)テノック
ス社とで共同開発される。その特徴は次の3つ(下図クリック)。

(1)発生残土を大幅に低減
(2)高い設計支持力を実現
(3)安定した高品質の施工






● 支持層の判断と問題点の推定

上図の旭化成建材の社内調査報告資料によると、(1)オーガーモーター電流値の変動解析による支持
層の推定、
(2)セメントミルク注入量の計測記録、(3)それと、支持地盤の深さとと土質記録の粉
飾あるいは改竄され可
能性があり、杭のうち8本が不健全で、6本が支持層に未達、2本が到達してい
るが支持層への挿入が不十分と同
社は認め、想定要因として(1)到達確認を怠り、(2)支持層の急
激な変化による誤認によるのではとしている。

ただし、(2)は土質と電流値に変動で判別できそうに思えるがそこはわからない。特に土質サンプル
が採取されチェ
ックできていれば問題は解決――異常検出→フィードバック→施工追加(現在の工法変
更是正)――できるだろう。
こう考えていくと、東洋ゴムの免震ゴムの検査データ改竄が、工場サイド
で発生しているのに対し、今回は、工事
現場で発生している違いがあるものの、その背景に高層建造物
や対防災改造という建設業界インフレ模様と
グループの好況感が企業規律を弛緩させていた、あるいは
むき出しの資本主義風土(「早よせ!安せ!」)を蔓延させたとも考えられる。また報道の中で「安全
率」が出ていたが、ここにも分析のメスを入れる必要がありそうだ。

 



※ 基礎工法概説図


―――
表 基礎工法の種類と場所打ちコンクリート杭工法の種類

ここで、既製杭とは工場で製作された杭のこと。これに対し、現場で作られる杭を『場所打ち杭』という。
場所打ち杭とは、現場で組んだ円筒状の鉄筋を掘削した地盤の中に落とし込み、後からコンクリートを穴
の中に流し込み、固めて杭を形成するものである。地面を掘削する際の方法により工法が異なり、施工可
能な杭長に関係する。

● 場所打ちコンクリート杭工法の種類

1)アースドリル工法

本工法は、ドリリングバケットを回転させて地盤を掘削、バケット内部に収納された土砂を地上に排土す
る方法で掘削を行う。
孔壁は、表層部では表層ケーシングを用い、それ以深は安定液で保護。掘削完了後
所定の形状に製作された鉄筋かごを孔内に建込み、トレミー管でコンクリートを打込むことにより杭を築
造する。

 

2)オールケーシング工法

本工法は、ケーシングチューブを掘削孔全長にわたり揺動(回転)・押込みながらケーシングチューブ内
の土砂をハンマーグラブにて掘削・排土することで掘削し、所定の深さの地盤に達したら孔底処理を行い
鉄筋かごを建込み後、トレミーによりコンクリートを打込み、コンクリート打込みに伴いケーシングチュ
ーブおよびトレミーを引抜き回収を行う工法である。

3)リバーズ工法

本工法は、ビットを回転させ地盤を切削し、その土砂を孔内水とともにサクションポンプまたはエアリフ
ト方式等により地上に排出することで削孔し、孔壁の保護は、表層部ではスタンドパイプを使用し、スタ
ンドパイプ下端以深では、孔壁に形成されたマッドケーキと、孔内水および地下水の水頭差により行う。
大径かつ大深度掘削に対応でき、特殊ビットを使用しトルクを増すことで岩盤の掘削も可能である。


4)BH工法

BH (Boring Hole) 工法は、強力な動力を持つボーリングマシンを使用し、ボーリングロッドの先端に取
り付けたビットを回転させ、ノーケーシングで掘削する工法です。掘削には安定液を使用し、これをグラ
ウトポンプでビット先端に送り込み、掘削された土砂を上昇水流によって孔口に運び、サンドポンプで排
出する「正循環」方式となっている。掘削終了後はスライム処理を行い、場所打ちコンクリート杭の造成
あるいは既製杭の建て込みを行うことができる。既存の杭掘削工法の中で、最もコンパクト性にすぐれた工
法。特徴は① 施工機械が小型のため、狭小な敷地での施工が可能。②高架下や屋内など、作業高さが低い
場合でも施工が可能。③進入道路が狭い場合でも、軽量で小型であるため、搬出入が容易に行える。④マ
シンの組立・解体に重機を必要としない。⑤施工時の騒音・振動がきわめて低レベルである。



5) 深礎工法

本工法は、現在施工されている場所打ち杭の中では最も歴史が古く、掘削は人力または機械により行いつ
つ、鋼製波板とリング枠(主にライナープレート)で土留めを行う。孔内で鉄筋を組立て、土留め材を取
り外しながらコンクリートを打設し杭を形成する。第一生命ビルや銀座松屋の工事を施工した木田保造の
発案によると言われその特徴は、①
人力掘削なので狭い敷地や傾斜地又は根切り面からの施工が可能。②大
口径で大深長の杭施工が可能。③湧水が多い場合や崩れやすい地盤には適さない。④無振動・無公害である。

 

 

 

 

                                  秋深き隣は何をする人ぞ       /   松尾芭蕉

 

 

 

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人工培土と餡屋

2015年11月04日 | 開発企画

 

 

  Mr. Miki, that type of comment is unacceptable and totally onappropriate for the workplace!

       三木さん そうしたコメントは職場ではうけいれられないし 全く不適切ですよ!

                                      しごとの基礎英語「お悩み ケース218」

      
   ※ スモールトークとセクシャルハラスメントとの違いを肝に命じる。   
        

  公孟 -儒者との対話 / 『墨子』

● 道理は道理

  墨子が程子と議論したときのこと。墨子が孔子をほめるので、程子はいった。
 「あなたは、儒家を認めないくせに、孔子はほめる。なぜですか」
 「道理は道理として認めたいからだ。たとえば、うだるような暑さの日には、鳥は高い所へ飛んでい
 き、魚は水の底へもぐって、暑さを避ける。たとい禹王や湯王がいて、いくら知恵をしぼったところ
 で、この道理はくつがえせない。
  鳥や魚の知恵は、人間には及ばない。しかしいくら相手が鳥や魚でも、道理は道理なのだ。禹王や
 湯玉といえども、この道理には従わざるをえない。
 わたしだって同じだ。孔子をほめるのは、道理は道理として認めたいからだ」

 

 

【最新人工培土工学】

農業が大きく様変わりしている。文化の日の朝にふさわしいかもしれない。NHKのまちかど情報室は、
で「アイデアで変わる日本の収穫」で、女性向けだけではないが、(1)機能的な農作業着、(2)草刈
り機と専用ベルト、(3)農場で使用するレンタル仮設トイレ、(4)ピンク色の軽トラック、(5)農
作業用ベスト、(6)家庭菜園キット"世界一小さい畑"、(7)植物を育てやすい培養土、(8)ハーブ
のじゅうたんが紹介されていた。このうち(4)(8)はこのブログの掲載してから一度も思いつかなか
ったものであるが、(6)(7)は既に構想済みだったが、この人工培土を開発したみのる産業株式会社
は、例の「つき姫」(上下写真クリック)のメーカでこれもNHKのこの番組で紹介されたものであるこ
とに驚く。
 


そこで、いつものように特許情報を調べるが、そのバックグランドの説明文がふるっているので紹介して
おこう(下図、最下図クリック)。


 我が国では、就農人口の減少、就農人員の高齢化などに伴って、農作業の省力化、機械化が進められ
 ている。その1つとして、小さな容器で育てた苗を移植機で根鉢ごと容器からから抜き取って、田畑
 に自動的に植え付ける方法が広く採用されるようになっている。この方法による場合は、通常“セル”、
 “ポット”などと称されるプラスチック等からなる小さな容器または該小容器を連結して設けたトレ
 ーに培土を自動的に土詰めした後に野菜、草花、果樹、樹木などの植物の種子を播いて所定期間育苗
 するか、或いは種子を加えた培土を前記小さな容器またはそれを連結してなるトレーに自動的に土詰
 めした後に所定期間育苗し、それを根鉢ごと小容器から抜き取って移植機で田畑に植え付けることが
 一般に行われている。根鉢は、培土の自己接着力と植物の根の絡みによる強力でその形を維持してい
 るが、根鉢強力が低く、わずかな衝撃で根鉢の形が崩れてしまい、移植機による苗の植え付けが困難
 であった。

                       -中略-

 また、近年、緑化の促進や環境保護などを目的として、屋上、法面、前記以外の風や雨の強い土地な
 どに植物を植えることが行われるようになっている。屋上、法面などの緑化に当たっては、苗箱に土
 詰めして育苗したものをそのまま屋上や法面などに設置する方法が一般に採用されている。しかしな
 がら、そのような従来の方法による場合は、土詰めした苗箱は重くて施工性に劣り、しかも水捌けが
 十分ではない。その上、屋上や法面などでは、風や雨によって土の飛散や流失が生じやすく、そのよ
 うな従来法では植物を健全に生育させることが困難であった。そのため、軽量で、施工性に優れ、建
 物などに対する負担が少なく、取り扱い性に優れ、水捌け性に優れ、しかも風や雨で飛散したり流失
 せずに強力な苗床を形成して植物を円滑に生育させることのできる育苗用培土が求められてきたが、
 そのような要求を満たす育苗用培土が得られていないのが現状であった。

 本発明の目的は、より強力の高い根鉢を形成し、移植機や人手によって苗を根鉢ごと田畑などに植え
 付ける際に根鉢の崩壊が生じず、円滑に植え付けることができ、しかも苗を育成阻害を招くことなく
 健全に育てることのできる育苗用培土およびその固化方法を提供することである。特に、本発明は、
 容積が10cm3以上、特に10~400cm3の植物育成用容器への機械充填に一層適していて、前
 記容器への充填の妨げになるような大きな繊維塊が形成されず、繊維が育苗用培土中に均一に分散さ
 れていて、該植物育成用容器に良好な作業性で円滑に機械充填することができ、しかも植物育成用容
 器に充填した後は、強力の高い根鉢を形成することのできる育苗用培土、および該育苗用培土の固化
 方法の提供を目的とする。さらに、本発明の目的は、屋上、法面、風雨の強い土地などのような、風
 や雨によって土の飛散や流失が生じ易い場所に用いたときに、飛散したり流失することがなく、強力
 な苗床を形成することができ、しかも、軽量性、施工性、取り扱い性、水捌け性などの特性にも優れ
 る育苗用培土およびその固化方法を提供することである。

                                  特許3847212 育苗用培土

そして、「特許4740471育苗用培土」の九つの請求項目を規定している。


 特許3847212 育苗用培土

 



※ 商品事例

 

 

このような事例から、未来の稲作が見えてくる。稲苗モジュールを育成モジュールにはめ込み、稈長約1メートル(
根長40センチメートル)として、フローボート式モジュールとして一筆書き状にした水槽に逐次投入し搬送動力を水
流として一定面積に敷き詰めていく。搬送用水には成長促進ミネラルや有微生物用栄養分、耐性強化(消毒剤)成
分などの機能成分をタイムリーに配合供給し、最適水温制御し、収穫は定点排出口で自動的に刈り入れ、同時に
モジュールと茎・葉・根部(これらは、エネルギー、工業製品、創薬、食品などとしてすべて有用物に転換する)を自
動回収するという完全自動システムを連想している。そこには耕耘機は消え、代わりに自動散水装置や育成管理
無人機が飛んでいるというイメージである。動力エネルギーはすべて地産地消分散型再生可能エネルギーで賄う。

 



【世界初のあんこ専門事業: 『餡屋』構想】

餡あるいは餡子は、肉・野菜・豆類・芋類などを用いた餅や饅頭などの中身に入れる具のこと。(1)肉
や野菜を
用いる塩味系統と(2)豆や芋などを用いる甘味系統――豆や芋を用いる餡も砂糖が普及するま
では、塩味のいわゆる塩餡であった――がある。もともと詰め物の意。『字彙』では餅の中の肉餡を指し
日本へは聖徳太子の時代に中国から伝来したとされ、中国菓子で用いられる肉餡がその原形となっている。
アズキを用いた小豆餡が開発されたのは鎌倉時代で、当初は塩餡であったが、安土桃山時代になって甘い
餡が用いられるようになった。砂糖が用いられるようになった江戸時代中期では高貴な身分に限られてい
た。尚、餡を英語で「ビーン・ペースト」と訳されるから、概念として極めて限定的で、「フルーツ・ペ
ースト」「ミート・ペースト」「フィッシュ・ペースト」「ラクト・ペースト」「グレーン・ペースト」
なども含まれる。そこで、洋菓子などに利用されるジャム、生クリーム、カスタードクリームは餡とは
呼ばれないというが、日本では、餡に含めていいんじゃないかと思うがどうなんだろう。例えば、果樹類
のジャムを入れると飛躍的
に種類が増える

あんこ(餡)の種類一覧
名称説明
つぶあん(あぐらあん) 小豆を砂糖で煮詰めたもの。おぐらあんの由来は、小倉山の鹿の斑紋に小豆が似ていることから。
つぶしあん つぶあんを潰したもの。
こしあん つぶあんをこし器にかけて、小豆の皮を取り除いた物。
さらしあん(漉し餡) こしあんを乾燥させ粉末状にしたもの。使用時は水で戻して使う。
しろあん(白いんげん) 白インゲンを原材料にしたあんこ。
しろあん(白あずき) 白小豆を原材料にしたあんこ。
ずんだ 枝豆を原材料にしたあんこです。宮城県と山形県の郷土料理で使われることが多い。ずんだ餅などが有名。
村雨(むらさめ) さらしあんに餅米を加えて作るあんこ。
緑豆餡(りょくとうあん) 緑豆を原材料にしたあんこ。
芋餡 サツマイモを原材料にしたあんこ。
紫芋餡 サツマイモを原材料にしたあんこ。
栗餡 栗を原材料にしたあんこです。ケーキのモンブランなどに使う。
鶯餡 青エンドウを原材料にしたあんこです。うぐいすパンなどに使う。
蓮の実餡 ハスの種子を原材料にしたあんこです。中国や台湾で使用される。主に月餅、最中など。
黒胡麻餡 黒胡麻を使用したあんこ。
白胡麻餡 白胡麻を使用したあんこです。
ピーナッツ餡 ピーナッツを使用したあんこ。
胡桃餡 クルミを使用したあんこ。
冬瓜餡 トウガンを使用したあんこ。
棗餡 ナツメを使用したあんこ。
バナナ餡 バナナを使用したあんこ。洋菓子に使う。
葛餡 クズを使用したあんこ。
南瓜餡 カボチャを使用したあんこ。和菓子、洋菓子に使われる。
いちご餡 イチゴを使用したあんこ。
抹茶餡 抹茶を使用したあんこ。
化合あん 餡のベースとなる材料以外の材料を練りこんで作られるあんこ。
主な化合あんには以下がある。

  • 黄身餡:あんに卵の黄身を練りこんだ餡。
  • 胡麻餡:あんに胡麻を練りこんだ餡。
  • 味噌餡:あんに味噌を練りこんだ餡。
  • 抹茶餡:あんに抹茶を練りこんだ餡。
  • 柚子餡:あんに柚子を練りこんだ餡。
  • 桜餡:あんに刻んだ桜の葉を練りこんだ餡。

  

ここでは一旦、この課題を棚上げし、餡の栄養価にや薬理効果について考えてみよう。甘味餡の主役の小
豆は
植物性たんぱく質が豊富で、さらに健康維持に役立つ以下の成分も含まれる。尚、活性酸素の退治に
有効なのが
ポリフェノーで、赤ワインは、その含有量が多いが、実は、あずきに含まれるポリフェノール
の方が、もっと多いといわれる
。さらに、あずきにはビタミンB群がたくさん含まれて、なかでもビタミ
ンB1・B2・B6が豊富。このビタミンB群は、相互に関係しながらエネルギー代謝を促し、糖質・たんぱく
質にも富み、疲労回復に効果的で、披労の蓄積が気になったら、おやつや食事に小豆が効果を発揮すので
は?!。また、ナトリウムの摂取過多は、腎機能を低下させ、高血圧やむくみの原因となるが、高血圧は
糖尿病や脳卒中など様々な成人病の要因ともなる。この余分なナトリウムを排泄する”カリウム”を多く
含んでいるのが小豆、効率よくカリウムを補給できる。

  • ビタミンB1・B2(代謝機能の向上) 
  • ビタミンE(老化防止) 
  • 鉄分、銅、ミネラル(造血作用の促進)
  • 食物繊維(整腸、便秘防止、血中コレステロールの抑制)

 

こんなことを考えてみたが、これ意外に発酵食品専門事業『古漬屋』構想もある。彦根にもこんな専門店
があって、世界発信できれば申し分ないだろう。


 


【我が家の焚書顛末記 Ⅰ】

● 『あなたにもできる 常温核融合実験!?』

二階の蔵書が多すぎて余りの重さで床が抜け階下に落下し『偽装の夫婦』のヒロイン嘉門ヒロが、行き先
もなく、彼氏・陽村超治の家に転がり込み?同居するという筋書。そういえば、前職場のエス君も同じ
うな体験しているが、わたしの書棚は一階にありそのようなとはないが、20数年前、訳があり、大半の
本を
焚書処分する(図書館への寄贈や書籍売却は一切なし)。ここにきて、近くの焼却場で焚書処分を継
的に実行――有用図書はデジタル化し保存した後焚書。今日は、94年、東京駅前の三省堂に購入した、
常温核融合実験」に関する本(上写真)を処分。ところで、常温核融合(Cold Fusion)とは、室温で、
素原子の核融合反応が起きるとされる現象――89年にこ観測したとの発表――3月23日にイギリス・
サウサンプトン大学のマーティン・フライシュマン教授とアメリカ・ユタ大学のスタンレー・ポンズ教授
がこの現象を発見したとマスコミに発表。この発表で重水を満たした試験管(ガラス容器)に、パラジウ
ムとプラチナの電極を入れ暫らく放置、電流を流したところ、電解熱以上の発熱(電極の金属が一部溶解
したとも伝えられた)が得られ、核融合の際に生じたと思われるトリチウム、中性子、ガンマ線を検出し
た――にまつわる社会現象。常温での水素原子の核融合反応は、きわめて低い頻度ながら、トンネル効果
や宇宙線に含まれるミューオンによって実際に起き、観測もできる科学的に証明された物理現象である。
常温で目視でき、実用的なエネルギー源として活用できうる規模で起きたと主張されていた核融合反応。
現在は、安価で高いエネルギーを発生し工業的に利用できるような常温核融合は成功していない。

 実験時の電解セル

日本では今年10月26日に、NEDO 15年度「エネルギー・環境新技術先導プログラム」で、「画
期的なエネルギー貯蔵技術の研究開発」との項目中の「金属水素間新規熱反応の現象解析と制御技術」テ
ーマで、「常温核融合」がテーマの一つとして採択されている(下図)。国立大学法人東北大学 電子光
理学研究センタ、株式会社テクノバ、日産自動車株式会社、国立大学法人九州大学がその委託予定先であ
る。

 

ということで、時間軸の優先度からは消極的な情報収集レベルになる。いまとなっては、89年のフィーバーが懐か
しいということで、今夜でチョン。

  ● 今夜の一品

スマートフォンを高精度の3Dスキャナーに変身。「Eora 3D 」。アルミニウム製円柱形のデザインを持
ち、スマートフォンを側面に固定し、高精度の3Dスキャナーとして使えるようになる。コンパクトで軽
量サイズなので、持ち運びにも便利だ

 

 

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オーレッドが来た!

2015年11月03日 | デジタル革命渦論

 

 

       そして架空のことであるというのは、夢の中で起こっているというのと同
       ことですから。夢というのは――それが眠りながら見ている夢であれ、目覚
       めながら見ている
夢であれ――ほとんど選択の余地がないものなのです。

                                                           村上春樹 『職業としての小説家』

 

  公孟 -儒者との対話 / 『墨子』

● 中傷

  墨子は程子にいった。
 「儒者の説く"道"には、天下を滅亡に迫いやる要素が四つある。
  第一に、天や鬼神の存在を疑い、それについて説明しないこと。これは天下を滅亡に追いやるもの
 である。
  第二に、死者に対する考え方である。葬儀を盛大にし、長いあいだ喪に服す。二重につくった棺を
 用い、おびただしい副葬品をいれる。死者を送るさいには、引越しでもするような騒ぎである。そし
 て、三年間も悲しんで喪に服するから、しまいには疲れ果てて、立つにも歩くにも、人の扶けや杖を
 必要とするようになる。耳は遠くなるし、目はかすか。こういう風習は、天下を滅亡に迫いやるもの
 である。
  第三には、音楽に熱中することだ。これも天下を滅亡に追いやるものである。
  第四には、宿命論だ。貧乏と裕福、長寿と短命、秩序と混乱、これらは運命ずけられたものであり、
 人の力ではどうしようもないと考える。これでは、為政者は国を治めようとしなくなるし、人民は働
 こうとしなくなる。これも天下を滅亡に迫いやるものである」
 「そんなにまで儒者を中傷しなくてもいいではありませんか」
 「いや、事実でないのに、こういったのであれば、それは中傷にもなろう。しかし、実際にあること
 を取りあげたのだから、中傷にはならない」
  程子はあいさつもしないで帰りかけた。
 「待ちなさい」
  と墨子が声をかけた。
  席に戻って、程子はいった。
 「承服できません。あなたのような言い方をすれば、潟のような聖王でも、ほめるに価しない人物に
 なるし、梁や糾のような暴君であっても、非難できないことになる」
 「それはまちがいだ。そんなわかりきったことをもち出して、あれこれ議論するくらいなら、沈黙し
 て相手にしないほうが賢明だ。あなたが真剣に議論すれば、わたしも真剣に答える。しかし良い加減
 な議論ならば、わたしも良い加減にあしらう。
  わかりきったことをあれこれ議論するのは、車のながえでアリをつぶすようなものだ。バカバカし
 くて本気になれない」

※ 〈程子〉程繁ともいう。儒家と爾家の二派の学問を治めた人であるらしい。

 

 




【OLEDが来た!】

スマートフォーンや4K・8Kなどの高精細カラーディスプレ装置に有機エレクトロルミネサンス、い
わいる、オーレッド(OLED)・有機ELの時代がやってきている。真面目にOLEDGを出してい
こうという風にメーカが変わってきた。液晶をやっている所は、部材屋も完成品メーカーも流通も、ど
こも儲かっていないのが正直なところ急激な価格低下にある。液晶が出始めた頃は40インチで20万
円くらいだったが、今では5万円でお釣りがくる。いくらなんでもここまで安くなるものなのか?とい
う疑問さえ浮か昨今だが、これは、韓国や中国の"現代版モノづくり完全模倣追随輸出政策"――定義の
確認は必要だが――の影響が大きい。さらに、一旦下がった価格は、付加価値を入れないとメーカ側が
上げたくてもなかなか上がらず、3Dや4K、曲面などで付加価値をつけてもすぐに価格は下る。液晶
はどこのメーカーでも参入できるため差別化ができな状況にある。

これに対し、オーレッド(OLED)はデバイスそのものが異なり、圧倒的な付加価値をもつ差別化―
自己発光で、ディスプレイの性能は液晶とは比較にならないできる。加えて、ここにきて圧倒的に安く
オーレッド(OLED)を作れるようになった。それを担える企業として韓国の二社に加え、パナソニ
ックは自社の知財、企業技術――大型インクジェットプリンタによる画素形成技術、画質の不安定、暗
部諧調が悪い、全体の均一性、カラーシフトなどの問題解決――を保有しているので、LG社との事業
提携などの動きはプラスの方向に動く。後は、撤退したソニーやパイオニアの動きが気になるところ。
ともあれ、いろいろ言ってみたいことも書いてみたいこともあるが、わたしが調査研究をはじめ20年
近くなるがやっと長いトンネルを抜け出したという思いが去来する。これは愉快だ。

 
● 関連特許事例

発光素子を含む画素回路を有するアクティブマトリクス型の表示装置は、発光素子のVI(電流電圧)
特性やIL(電流光出力)特性のばらつきにより、発光素子に一定電圧や一定電流を印加しても輝度ム
ラ(luminance  unevenness)による画質劣化が発生。この発光素子のVI特性やIL特性のばらつきは、
例えば、発光素子の製造時のばらつきや、発光素子の経時劣化のはらつきなどにより生じる。発光素子
の製造時のばらつきによるVI特性やIL特性のばらつきは、(1)輝度ムラの発生の要因となり、
(2)発光素子の経時劣化のはらつきによるVI特性とIL特性のばらつきは、焼き付き(イメージス
ティッキング(Image  Sticking  ))の発生の要因となる(下図、三星ディスプレイ株式會社/最下図、ソ
ニー株式会社クリック)。

この問題を解決するため、発光素子を含む画素回路を複数有し、表示データに基づき供給されるデータ
信号に対応する画像を表示する表示部と、表示期間における発光素子の発光と、センシング期間の発光
素子のセンシングとを、画素回路ごとに制御する制御部と、表示データを補正する補正部とを備え、補
正部は、センシング期間において、対象画素回路に対するセンシングが行われる場合に、対象画素回路
に対応する補正後の表示データに基づく、対象画素回路の発光素子の発光量が、対象画素回路に対応す
る補正前の表示データに基づく表示発光量から、センシング発光量が減算された発光量となるように、
対象画素回路に対応する表示データを補正することで、発光素子のVI特性がセンシングされる際に生
じうる画質の劣化を防止することが可能な、表示装置、および制御方法を提案している。

 【図面の簡単な説明】

【図1】本発明の実施形態に係る表示装置における制御方法に係る処理の一例を説明するための流れ図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る表示データと、画素回路が有する発光素子の発光状態との一例
【図3】第1の実施形態に係る表示装置における動作のタイミングチャート(timing  chart)の一例
【図4】第1の実施形態に係る表示装置の構成の一例
【図5】第1の実施形態に係る表示装置の構成の一例
【図6】第1の実施形態に係る1垂直期間におけるタイミングチャートの一例
【図7】第1の実施形態に係る画素回路の基本動作の一例

 

 

   

 

● 折々の読書 『職業としての小説家』 28    

  ともあれ二〇〇〇年代に入ってから、僕は三人称という新しいヴィークルを得たことで、小説
 の新たな領域に足を踏み入れることができるようになりました。そこには大きな開放感がありま
 した。ふとまわりを見回してみたら壁がなくなっていた、みたいな感じです。
  言うまでもないことですが、キャラクターというのは、小説にとってきわめて重要な要素です。
 小説家は現実味があって、しかも興味深く、言動にある程度予測不可能なところのある人物をそ
 の作品の中心に――あるいは中心の近くに――据えなくてはなりません。わかったような人々が、
 わかったようなことばかり言ったり、わかったようなことばかりやっている小説は、あまり多く
 の読者の手に取ってもらえないのではないでしょうか。もちろん「そういう、あたりまえのこと
 をあたりまえに書いた小説が優れているんだよ」とおっしやる方も中にはおられるでしょうが、
 僕としては(あくまで個人的な好みとしてですが)、そういう話にもうひとつ興味が持てません。

  でも「リアルで、興味深く、ある程度予測不可能」という以上に、小説のキャラクターにとっ
 て重要だと僕が考えるのは、「その人物がどれくらい話を前に導いてくれるか」ということです。
 その登場人物をこしらえたのはもちろん作者ですが、本当の意味で生きた登場人物は、ある時点
 から作者の手を離れ、自立的に行動し始めます。これは僕だけではなく、多くのフィクション作
 家が進んで認めていることです。実際そういう現象が起きなければ、小説を書き続けるのはかな
 りぎすぎすした、つらく苦しい作業になってしまうはずです。小説がうまく軌道に乗ってくると、
 登場人物たちがひとりでに動きだし、ストーリーが勝手に進行し、その結果、小説家はただ目の
 前で進行していることをそのまま文章に書き写せばいいという、きわめて幸福な状況が現出しま
 す。そしてある場合には、そのキャラクターが小説家の手を取って、彼をあるいは彼女を、前も
 って予想もしなかったような意外な場所に導くことになります。

  具体例として、最近の僕の小説を引き合いに出させていただきます。僕の書いた長編小説『色
 彩を持だない多崎つくると、彼の巡礼の年』の中に、木元沙羅というなかなか素敵な女性が登場
 します。実を言いますと、僕はもともと短編小説にするつもりでこの小説を書き出しました。原
 稿用紙にすればだいたい六十枚くらいのものになるだろうと予想して。
 
  筋を簡単に説明しますと、主人公の多崎つくるは名古屋の出身で、高校時代にとても親しくし
 ていた四人のクラスメートから「もうおまえとは会いたくない。口もききたくない」と言われま
 す。その理由は説明されません。彼もあえて質問しません。彼は東京の大学に入って、東京の鉄
 道会社に就職し、今では三十六歳になっています。高校時代に友人だちから理由も告げられず絶
 交されたことは、心に深い傷を残しています。でも彼はそれを奥に隠し、現実的には穏やかな人
 生を送っています。仕事も順調だし、まわりの人々には好意を持たれているし、恋人も何人かつ
 くりました。でも誰かと深い精神的な関係を結ぶことができません。そして彼は二つ年上の沙羅
 と出会い、恋人の関係になります。

  彼はふとしたきっかけで、高校時代に親しくしていた四人の親友から拒絶された体験を、沙羅
 に語ります。沙羅はしばらく考えてから、あなたはすぐに名古屋に帰って、十八年前にいったい
 そこで何かあったのかを調べなくてはならないとつくるに言います。「(あなたは)自分が見た
 いものを見るのではなく、見なくてはならないものを見るのよ」と。
  実を言うと僕は、沙羅がそう言うまで、多崎つくるがその四人に会いに行くことになるなんて、
 考えもしませんでした。僕としては、自分の存在が否定された理由もわからないまま、多崎つく
 るがその人生を静かに、ミステリアスに生きていかなくてはならないという、比較的短い話を書
 くつもりだったのです。でも沙羅がそう言ったことで(彼女がつくるに向かって口にしたことを
 僕はそのまま文章にしただけです)、僕は彼を名古屋に行かせないわけにはいかなかったし、そ
 して果てはフィンランドにまで送り込むことになりました。そしてその四人がいかなる人々であ
 るのか、それぞれのキャラクターを新たに立ち上げなくてはなりませんでした。そして彼らの辿
 ったそれぞれの人生を、具体的に描かなくてはなりませんでした。その結果として、当然のこと
 ながら、物語は長編小説という体裁をとることになりました。

  つまり沙羅の口にした一言がほとんど一瞬にして、この小説の方向や性格や規模や構造を一変
 させてしまったのです。それは僕自身にとっても大きな驚きでした。考えてみれば彼女は、主人
 公である多崎つくるに向かってではなく、実は作者である僕に向かって語りかけていたのです。
 「あなたはここから先を書かなくてはいけない。あなたはそういう領域に足を踏み入れているし、
 それだけの力を既に身につけているんだから」と。つまり沙羅もまた、僕の分身の投影であった
 ということになるかもしれません。彼女は僕の意識のひとつのアスペクトとして、僕が今ある地
 点で留まっていてはいけないということを、僕白身に教えていたわけです。「もっと先まで突っ
 込んで書きなさい」と。そういう意味ではこの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
 は、僕にとっては決して小さくない意味を持つ作品になっているかもしれません。形式的に言え

 ばいわゆる「リアリズム小説」ですが、水面下ではいろんなものごとが複合的に、またメタフォ
 リカルに進行している小説だと僕自身は考えています。

  僕自身が意識している以上に、僕の小説の中のキャラクターたちは、作者である僕をせき立て、

 励まし、背中を押して前に進めてくれているのかもしれません。それは『1Q84』を書いてい
 るときに、青豆の言動を描きながらひしひしと感じたことでもありました。彼女は僕の中の何か
 を強引に押し広げて(くれて)いるみたいだな、と。でも振り返ってみれば、僕は男性のキャラ
 クターよりは女性のキャラクターに導かれたり、駆り立てられたりする場合の方がむしろ多いみ
 たいですね。自分でもどうしてかはわかりませんが。
  僕が言いたいのは、ある意味においては、小説家は小説を創作しているのと同時に、小説によ
 って自らをある部分、創作されているのだということです。

  ときどき「どうして自分と同じ年代の人間を主人公にした小説を書かないんだ?」と質問され
 ることがあります。たとえば僕は今六十代半ばですが、なぜその年代の人間の物語を書かないん
 だ。なぜそういう人間の生き方を語らないんだ? それが作家としての自然な営みではないか、
  でももうひとつよくわからないのですが、どうして作家が自分と同じ年代の人間のことを書か
 なくてはならないのでしょう? どうしてそれが「自然な営み」なのでしょう? 前にも申し上
 げましたように、小説を書いていていちばん楽しいと僕が感じることのひとつは、「なろうと思
 えば、誰にでもなれる」ということです。なのに僕がなぜその素晴らしい権利を、自ら放棄しな
 くてはならないのでしょう?

  『海辺のカフカ』を書いたとき、僕は五十歳を少し過ぎていましたが、主人公を十五歳の少年
 に設定しました。そして書いているあいだ、自分が十五歳の少年であるように感じていました。
 もちろんそれは現在、現役の十五歳の少年が感じているはずの「感じ」と同じものではないはず
 です。それはあくまで僕が十五歳であったときの感覚を、「現在」に架空に移し替えたものです。
 でも小説を書きながら、僕は自分が十五歳であったときに実際に吸った空気や、実際に目にした
 光を、ほとんどそのままありありと自分の中に再現することができました。自分のずっと奥底に
 長いあいだ隠されていた感覚を、文章の力によってうまく引きずり出すことができたのです。そ
 れはなんというか、本当に素晴らしい体験でした。そういうのはあるいは小説家にしか味わえな
 い感覚かもしれません。

  でもその「素晴らしさ」を僕一人が単に楽しんでいるだけでは、それは作品として成り立ちま
 せん。それを相対化させていかなくてはなりません。つまりその喜びみたいなものを、読者と共
 有するかたちに持って行かなくてはならないのです。そのために僕は中田さんという六十代の〈
 老人〉を登場させました。中田さんもある意味では僕の分身です。僕の投影です。彼の中にはそ
 ういう要素があります。そしてカフカくんと中田さんが並立し、呼応し合うことによって、小説
 は健全な均衡を獲得しています。少なくとも作者である僕はそのように感じましたし、今でも同
 じように感じています。

  いつか僕は自分と同じ年代の主人公が登場する小説を書くかもしれません。しかしそれが今の
 時点で「どうしても必要なこと」であるとは思えないのです。僕の場合、まず小説のアイデアが
 ぽっと生まれます。そしてそのアイデアから物語が自然に自発的に広がっていきます。最初にも
 申し上げましたように、そこにどんな人物が登場することになるか、それはあくまで物語自身が
 決めることです。僕が考えて決めることではありません。作家である僕は忠実な筆記者としてそ
 の指示に従うだけです。

  あるとき僕はレズビアンの傾向を持つ二十歳の女性になるかもしれません。あるとき僕は三十
 歳の失業中のハウスハズバンドになるかもしれません。僕はそのとき与えられた靴に足を入れ、
 それに足のサイズを合わせて行動を開始します。それだけのことです。足のサイズに靴を合わせ
 るのではなく、靴のサイズに足を合わせるのです。現実にはまずできないことですが、小説家と
 して長く仕事をしていると、そういうことが自然にできるようになってきます。なぜならそれは
 架空のことですから。そして架空のことであるというのは、夢の中で起こっているというのと同
 じことですから。夢というのは――それが眠りながら見ている夢であれ、目覚めながら見ている
 夢であれ――ほとんど選択の余地がないものなのです。僕は基本的にその流れに従うしかありま
 ごく一般的な意味合いで言ってません。そしてその流れに自然に従っている限り、いろんな「ま
 ずできないこと」が、自由にできるようになります。それこそが、小説を書くことの大きな喜び
 なのです。

  「どうして自分と同じ年代の人間を主人公にして小説を書かないのか?」と質問されるたびに、
 そういう風に答えたいと思うのですが、それでは説明としてあまりに長くなりすぎるし、相手に
 すんなり理解してもらえるとも思えないので、いつも適当にごまかしてしまいます。にこにこし
 て、「そうですね、そのうちにそういうものを書くかもしれませんね」みたいなことを言って。
 でもそれとは別に――小説に登場させるさせないとは別にも、「今ここにある自分」というもの
 を客観的に正確に見つめることは、けっこうむずかしい作業になります。今の現在進行形の自分
 というのは、なかなか把握しづらいものですよね。あるいはだからこそ僕は、いろんなサイズの
 自分のものではない靴に自分の足を入れ、それによって今ここにある自分を総合的に検証してい
 ることになるのかもしれません。ちょうど三角法で位置を測定するみたいに。

  いずれにせよ、小説の登場人物について僕が学ばなくてはならないことは、まだまだたくさん
 ありそうです。またそれと同時に、自分の小説の登場人物から僕が学ばなくてはならないことも、
 まだまだたくさんありそうです。これからもいろんな変な、不思議な、そしてカラフルなキャラ
 クターを小説の中に登場させ、息づかせていきたいと思っています。新しい小説を書き始めると
 き、僕はいつもわくわくするのです。今度はどんな人々に巡り合えるのだろう、と。


                        「第九回 どんな人物を登場させようか?」
                             村上春樹 『職業としての小説家』

次は「第十回 誰のために書くのか?」です。

                                      この項つづく

 

 ● 今夜のレシピ

今朝は彼女が交通事故に合った。雨降る中その場所に出かけて帰ってきたが、大したことはなかったが、
寒さに当てられた?こともあり、午前中のスルーディプリンターを組み立て作業やあれこれやってると
急に空腹に襲われ、インスタントラーメン(「サッポロ一番 塩らーめん」サンヨー食品 115円/個
税抜き)があったのでそれをレンジで加熱して食べることに何とか急場をしのぐも、しばらくしても、
震えも空腹も収まらず、今度はまる餅(佐藤食品工業)を電子レンジで加熱し砂糖醤油なんとか落着く。
ここで興味を惹いたことは2つ。朝の事故立ち会おいによるちょっとした体調異変が1つ。もう1つは、
加工食品の品質の高さ――もっとも、加工度が上がれば添加剤(燐酸エステルなど)のリスクも心配さ
れるが。前者は前後の話を含めてボリュームが多くなるのでカット。後者は、ラーメンの具材(トッピ
ング)のこととグルテンフリーの2つ。家庭で手作り冷凍食品をつくっておけば便利なこと、たとえば
チャシューや煮卵を冷凍保存しておき、ラーメン加え、お気に入りの中華鉢にいただければこれはもう
絶品のラーメンに仕上がると、ブログでも掲載してきた作業の補強で、手作り冷凍品を調べてみたとい
うわけ。
 
ついで、ラーメンのグルテンリスクを考え、「大豆タンパク&繊維」の固まりの「おから&おからボー
ル」のレシピとその冷凍品化を考えたというわけだが、これまた「広大妄想&過剰反応」へと発展。と
ころが、そのことを彼女にすると「
そうね、私につくってくれる?」っての反応が返ってきた。これは
どういうわけだ?厨房は彼女の専用テリトリではなかったのか?後は優先すべき時間を「新うちメシ」
創作に割り当てれればいいわけで、ネット掲載しストックし電子出版しながら、特許出願し、事業化構
想」を書き上げれば好いではないか?、止まれ、これまた「過剰適応症」だ。



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ドラッグリポジシッニングと柘榴

2015年11月02日 | 時事書評

 

 

       やっぱり日本製の列車はいい。揺れないし安全ね 

                                           ミヤンマーの  「あまちゃん列車」

 

 

 

  公孟 -儒者との対話 / 『墨子』

 

● 天をみくびるな

  公孟子が墨子にいった。
 「人が行動するさい、義か不義かということが問題です。吉か凶かなどということは論ずる必要はな
 い」
 「それはちがう。むかしの聖王は鬼神が確かに存在し、人の行為を判断して禍福をくだすと考えた。
 聖王の時代に国が立派に治まったのは、かれらが天の賞罰を信じて国を治めたからだ。
  だが、桀王や紂王などは、そうは考えなかった。鬼神には人の行為を判断する力はなく、禍福をく
 だすことなどできないと考えた。かれらの時代に国が賊びたのは、かれらが天の賞罰を信じないで、
 国を冶めたからだ。
  先王の書には、『人が倣るのは、天をみくびるからだ』という箕子のことばがつたわっている。こ
 れは不義をなす者には罰がくだり、善をなす者には賞が与えられることを意味している」

※ 天の声

鬼神の存在をみとめることを今日の感覚で。"迷信"と決めつけることは容易である。が、慎みの心は、人

間の自信過多症に対する処方箋として、時代の差を超越しているのではなかろうかと解説されるが、哲
や複雑系経済学上の「因果報応」「因果律」という言葉に当り、「天の声」は慎み深く洞察するものし

聞くことができないと諭すものであろう。


  

【抗癌最終戦観戦記 Ⅳ】

● 前立腺がん治療に光 抗がん剤、肝炎薬で効果復活

前立腺がんの抗がん剤が効かなくなった患者に既存の抗ウイルス薬を併用すると、再び効果が得られる可能性が
あるとの研究結果を、慶応大などのグループがまとめた。来春から医師主導の治験を始める計画。京都市で開か
れている日本癌(がん)治療学会で30日、発表。

慶応義塾大学医学部の大家基嗣教授らの研究グループは、抗がん剤が効かなくなったがんに対し、別の薬
剤の投与で再び抗がん剤が効くようにする新しい治療法の臨床試験に成功。抗がん剤「ドセタキセル」が
効かなくなった進行性の前立腺がんの患者に対して抗肝炎ウイルス薬「リバビリン」を併用し、5例中2
例で、前立腺がんのバイオマーカー(目印となる生体物質)の値が下がることを確認。現在、ドセタキセ
ルが効かなくなった前立腺がんに対する有効な治療法がなく、新たな治療法として期待でき、16年3月
をめどに慶大病院で医師主導型の治験を始める。同研究チームは、ドセタキセルが効きにくいがん細胞を
持つマウスに、ドセタキセルとリバビリンを投与することで治療の有効性を確認していたが、抗がん剤が
効かなくなるよう変化したがん細胞中の遺伝子の性質を、再び効くようにリバビリンが変化させる作用メ
カニズムが考えられるという。

これをみて、理解できたる人はどれほどいるのだろうと考え込む。「ガン細胞の生理特性を利用し、2種
類の抗ガン剤を投薬タイミングを変えて投与し治療する方法」ということの他になにがあるのか、マイク
ロ(ナノ)カプセル技術などによる同時投与ではだめなのかと。まず用語が複雑である。(1)リバビリ
:日常臨床において広く使用され、ヒトに対する安全性が既に確立されている抗ウイルス薬。13
年に
泌尿器科学教室において、病理学教室、発生・分化生物学教室ならびに産業総合研究所との共同研究によ
り、ドセタキセル療法が効きにくい患者に対し有用な可能性が高い薬剤として世界で初めて発見し報告
(Kosaka T et.a1 CancerScience 2013/下図クリック)。この発見には、難洽既がんの治療に発生学・幹
細胞医学の手法を取り入れ、生物情報工学による遺伝子発現プロファイルの解析を融合し、効果的な薬剤
を抽出していくという。(2)リプログラミング療法:山中教授によるiPS細胞誘導に代表されるように、
分化した細胞をリセットして受精卵のような発生初期の未分化な状態に巻き戻すことを、最近ではリブロ
グラミング・再プログラム化・初期化と表現されることが多いが、今回、本研究グループは、抗がん剤が
効きにくくなったがんを抗がん剤が効くようにするという治療法が、抗がん剤の感受性を巻き戻すという
点において、リプログラミングするという概念と近似していることから、リブログラミング療法と提唱し
ている。
(3)ホルモン療法:省略、(4)癌幹細胞:省略、(5)遺伝子発現プロファイル:省略、
(6)遺伝子発現プロファイル:省略、(7)ドラッグリポジシッニング:特定の疾患に有効な治療薬か
ら、別の疾患に有効な新たな薬効を見いだすという新薬開発の方法。


DOI: 10.1111/cas.12183

この領域については、残件扱いとして、いずれまとめて考察する。 

 

   

● 折々の読書 『職業としての小説家』 27    

  小説を書いていて、いちばん楽しいと僕が感じることのひとつは、「なろうと思えば、自分は
 誰にでもなれるんだ」ということです。
  僕はもともと一人称「僕」で小説を書き始め、そういう書き方を二十年くらい続けました。短
 編なんかではときどき三人称を使いましたが、長編に関していえばずっと丁人称「僕」でとおし
 てきました。もちろん僕=村上春樹ではなく(レイモンド・チャソドラー=フィリップ・マーロ
 ウではないのと同じように)、それぞれの小説によって「僕」の人物像は変わってくるわけです
 が、それでも一人称で書き続けていると、現実の僕と、小説の主人公の「僕」の境界線が時とし
 て――書き手にとっても、また読み手にとっても――ある程度不明瞭になるのはやむを得ないこ
 とです。



  最初のうちはそれでも問題はなかったのだけど、というか僕自身、架空の「僕」を挺子の支点
 にして小説世界を立ち上げ、広げていくことをひとつの目的としていたのですが、そのうちにだ
 んだんそれだけでは間に合わないと感じるようになってきました。とくに小説が長く大きくなる
 につれて、「僕」という人称だけではいくぶん狭苦しく、息苦しく感じるようになってきました。
『世界の終りとハードボイルド・ワソダーランド』では、「僕」と「私」という二種類の一人称を
 章ごとに使い分けていますが、それも一人称の機能の限界を打開しようという試みのひとつだと
 思います。 



 一人称だけを用いて書いた長編小説は、『ねじまき鳥クロニクル』(一九九四・九五)が最後の
 ものになります。しかしこれだけ長くなると、「僕」の視点で語られる話だけではおっつかなく
 て、あちこちに様々な小説的工夫が持ち込まれています。他の人の語りを入れるとか、長い書簡
 をもってくるとか……とにかくありとあらゆる話法のテクニックを導入して、一人称の構造的制
 限を突き破ろうとしています。しかしさすがに「これがもう限界だな」と感じるところがあり、
 その次の『海辺のカフカ』(二〇〇二)では半分だけを三人称の語りに切り替えています。カフ
 カ少年の章はこれまでどおり「僕」が語り手になって話が進みますが、それ以外の章は三人称で
 語られています。折衷的と言えばそのとおりなんですが、たとえ半分であるにせよ三人称という
 ヴォイスを導入することによって、小説世界の幅を広げることができた――と僕は思っています。
 少なくとも僕自身はこの小説を書きながら、『ねじまき鳥クロニクル』のときよりは、手法的な
 レベルで自分がずっと自由になっていると感じました。



  そのあとに書いた短編小説集『東京奇譚集』、中編小説『アフターダーク』はどちらも、最初
 から最後まで純粋な三人称小説になっています。僕はそこで、つまり短編小説と中編小説という
 フォーマットで、自分に三人称がしっかり使えることを確かめているみたいです。買ったばかり
 のスポーツカーを山道に持っていって試し乗りし、いろんな機能のフィールを確かめるみたいに。
 そういう流れを順番に追ってみると、僕が一人称に別離を告げ、三人称だけを使って小説が書け
 るようになるまでに、デビュー以来ほぼ二十年を要していることになります。ずいぶん長い歳月
 ですね。
  人称の切り替えにどうしてそれほど長い時間が必要だったのか? その正確な理由は自分でも
 よくわかりません。ただ何はともあれ、「僕」という一人称を使って小説を書く作業に、僕の身
 体と精神がすっかり馴れてしまっていたということなのでしょう。だからその転換に時間がかか
 ったのだと思います。それは僕にとってはただの人称の変化というより、大げさに言えば視座の
 根本的な変更に近いことだったのかもしれません。




  僕は何ごとによらず、ものごとの進め方を切り替えるのに時間がかかる性格みたいです。たと
 えば、登場人物に名前を与えることが長いあいだできませんでした。「鼠」とか「ジェイ」とか、
 そういう呼び名みたいなものはまあオーケーだったんですが、きちんとした姓名がどうしてもつ
 けられませんでした。どうしてか? そう質問されても自分でもよくわかりません。「ただ人に
 名前をつけるのが、どうにも恥ずかしかったから」としか言えません。うまく言えないんだけど、
 僕みたいな者が勝手に人に(たとえそれが自分でこしらえた架空の人物であれ)名前を賦与する
 なんて、「なんか嘘っぽい」という気がしたんです。最初のうちは小説を書くという行為自体が、
 僕にとって何かしら恥ずかしかったということもあるかもしれません。小説を書いていると、ま
 るで自分の心を裸で人前に放り出しているみたいで、ずいぶん恥ずかしかったのです。

  主要人物になんとか姓名がつけられるようになったのは、作品で言えば『ノルウェイの森』
 (一九八七)からですね。つまりそれまでの最初の八年くらいは、基本的に名前を持だない登場
 人物を用いて、一人称で小説を書いてきたわけです。考えてみれば、ずいぶん不自由なこと、ま
 わりくどい制度を自らに押しつけて小説を書いてきたわけですが、そのときはそれほど気になら
 なかった。まあこういうもんだろう、と思ってやっていました。

  でも小説が長く複雑になるにつれて、そこに登場する人々が名前を持たないことに、僕もさす
 がに不自由を感じるようになりました。登場人物の数が増えれば、そして彼らが名前を持だなけ
 れば、当然そこに具体的な混乱が生じてきます。だからあきらめて腹をくくり、『ノルウェイの
 森』を書くときに「名前付け」を断行しました。簡単ではありませんでしたが、目をつぶって
 「えいやっ」とやってしまうと、その後は登場人物に名前をつけるのは、さして難行ではなくな
 りました。今ではとくに苦労もなく、さらさらと適当な名前をつけています。『色彩を持だない
 多崎つくると、彼の巡礼の年』のように、主人公の名前がタイトルになる本まで書くようになり
 ました。『1Q84』も女主人公に「青豆」という名前がついた時点で、話は勢いを得て前に進
 み出しました。そういう意味では名前というのは、小説にとってとても重要な要素になります。

 

  このように僕は、新しい小説を書くたびに、「よし、今回はこういうことに挑戦してみよう」
 という具体的な目標――その多くは技術的な、目で見える目標です-をひとつかふたつ設定す
 るようにしています。僕はそういう書き方をするのが好きなのです。新しい課題をクリアし、今
 までできなかったことができるようになることで、白分か少しずつでも作家として成長している
 という具体的な実感が得られます。一段一段梯子を登っていくみたいに。小説家の素晴らしいと
 ころは、たとえ五十歳になっても、六十歳になっても、そういう発展・革新が可能であるという
 ことです。年齢的な制限というのがあまりありません。スポーツ選手なんかだとなかなかそうは
 いかないでしょう。

  小説が三人称になり、登場人物の数が増え、彼らがそれぞれに名前を得たことによって、物語
 の可能性が膨らんでいきました。つまりいろんな種類の、いろんな色合いの、いろんな意見や世
 界観を持った人物を登場させられるし、そういう人たちの多種多様な絡み具合を描いていけるよ
 うになりました。そして何より素晴らしいのは、自分が「ほとんど誰にでもなれる」ということ
 でした。一人称で書いていたときにも、その「ほとんど誰にでもなれる」という感覚はあったの
 ですが、三人称になるとその選択肢が更にぐっと広がります。

  一人称小説を書くとき、その多くの場合、僕は主人公の(あるいは語り手の)「僕」を〈広義
 の可能性としての自分〉として大まかに捉えているのだと思います。それは〈実際の僕〉ではな
 いけれど、場所や時間を変えられていたら、ひょっとしてこうなっていたかもしれない自分の姿
 であるわけです。そのような形で枝分かれさせていくことで、僕は自己を分割していた、という
 ことになるかもしれません。そして自己を分割し、物語性の中に放り込むことで、自分という人
 間を検証し、自分と他者との――あるいは世界との接面を確かめていたわけです。最初の頃の僕
 にはそういう書き方が合っていました。そして僕が愛好する小説の多くも、一人称で書かれてい
 ました。



  たとえばフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』も一人称の小説です。小説の主人公
 はジェイ・ギャツビーですが、語り手はあくまでニック・キャラウェイという青年です。私(ニ
 ック)とギャツビーの接面の微妙な、しかしドラマチ″クな移動を通して、フィッツジェラルド
 は自己の有り様を語っています。そういう視点が物語に深みを与えています。
  しかし物語がニ″クの視点で語られることは、小説が現実的な制約を受けることをも意味しま
 す。ニックの目が届かないところで何かが起こっても、それを物語に反映することがむずかしい
 からです。フィッツジェラルドはいろんな手法を用いて、小説的テクニックを総動員して、その
 制約を巧妙にクリアしていきます。それはそれでもちろんとても面白いんですが、そういう技術
 的工夫にもおのずと限界はあります。事実、その後フィッツジェラルドは『グレート・ギャツビ
 ー』のような構成の長編小説は書いていません。

  サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』もとても巧妙に書かれた、優れた一人称小
 説ですが、彼もその後、同じような書き方をした長編小説は発表していません。たぶんその構成
 上の制約のために、小説の書き方が「同工異曲」になることを恐れたためではないかと僕は推測
 します。そしてたぶん彼らのそのような判断は正しかったはずです。

  たとえばレイモンド・チャンドラーのマーロウもののような「シリーズ小説」であると、そう
 いう制約のもたらす「狭さ」が遂に有効な親密なルーティーンになって、うまく機能を発揮する
 わけですが(僕の場合、初期の「鼠」ものにはそういうところが少しくらいあるかもしれません)、
 単発ものの場合、丁人称の持つ制約の壁は、書き手にとってだんだん息苦しいものになっていく
 ことが多いようです。だからこそ僕も一人称小説という形式に対して、いろんな方向から揺さぶ
 りをかけ、新しい領域を切り拓こうと努めてきたわけですが、『ねじまき鳥クロニクル』に至っ
 て「これがそろそろ限界だ」と痛感しました

  

  『海辺のカフカ』で半分に三人称を導入して、いちばんほっとしたのは、主人公のカフカくん
 の物語と並行して、中田さん(不思議な老人)と星野さん(いささか粗暴なトラック運転手)の
 物語を進めて行けたことです。そうすることによって僕は、自己を分割するのと同時に、自己を
 他者に投影できるようにもなったわけです。より正確に言うなら、分割した自己を他者に託する
 ことができるようになったということです。そしてそうすることによって、コンビネーションの
 可能性が大きく広がりました。そして物語も複合的に技分かれし、いろんな方向に広がっていけ
 るようになりました。



  だったらもっと前に三人称に切り替えておけばよかったじやないか、そうすればもっと進歩も
 早かっただろうに、と言われそうですが、実際にはなかなかそう簡単にいきません。性格的に融
 通があまりきかないということもありますが、小説的視座を切り替えるとなると、小説の構造そ
 のものに大きく手を入れることになりますし、その変革を支えるための確かな小説的技術と基礎
 体力が必要になります。だからこそ少しずつ様子を見ながら、段階的にしかそれができなかった
 ということもあるでしょう。身体で言えば、運動目的にあわせて骨格と筋肉を少しずつ改造して
 いかなくてはならなかったということです。肉体改造――それには手間と時間がかかります。


                        「第九回 どんな人物を登場させようか?」
                             村上春樹 『職業としての小説家』


本を読んでいると、トルコでは新婚のとき新郎がザクロを地面に投げて割り、飛散した種子の数で、その
夫婦のあいだに生まれる子どもの数を占ったという習わしをイメージした。なぜか?小説の
創作過程の産
みの苦しみと喜びを連想したため。



                                        この項つづく



 

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