生命は焔であって、存在ではない。生命はエネルギーであって、実体ではない
ウィルヘルム・ディルタイ 『体験と創作』
19 November 1833 – 1 October 1911
Life is a name, not an existence. Life is an energy, not a substance.
Wilhelm Dilthey
※ 自然科学に対し精神科学を方法論的に確立しようとして、いわゆる生の哲学を主張。ニ一チエに続
くもの。また歴史的世界の構成に関する解釈学を樹立。
※「精神の生ける姿」などとディルタイか好んで言う、その「生の哲学」を端的に表現するもの。だか
ら、要素や法則がまずあってそこから精神現象を説明するのでなく、生そのものを対象として、そ
の連関構造を記述分析する心理学を基礎とする、という考えか生まれたわけ。ディルタイの思想は
現代の思想に直接間接、大きな影響を与えた。
【中国の思想: 墨子Ⅴ】
公輸――墨子と戦争技術者※
尚賢――人の能力を正当に評価せよ
兼愛――ひとを差別するな※
非攻――非戦論※
節葬――葬儀を簡略にせよ
非楽――音楽の害悪
非命――宿命論に反対する
非儒――儒家批判
親士――人材尊重
所染――何に染まるか
七患――君子の誤り七つ
耕柱――弟子たちとの対話
貴義――義を貴しとなす
公孟――儒者との対話
魯問――迷妄を解く
※ シリーズとして掲載(途中も含め)した「編章節」はピンク色にしている。
尚、段行末尾の※は、以前取り上げたことがあるもので、改めて記載するもの。
● 人の禍福は運ではない
《解説》 時代が大きく変わろうとするとき、"宿命論"は、うしろむきの姿勢をささえる支柱と
なる。春秋時代から戦国時代にかけての大変動の中で、従来の身分差、血縁的な支配集団を維持
しようとする側にとっては、「君主は君主、臣下は臣下として宿命づけられている」という、み
ずからを正当化する理論が必要であった。
墨子が、こうした宿命論に反対したのは、かれの出身と大きな関係がある。優子は「の出
身」ともいわれるが、要するに、手に汗しない貴族ではなく、直接生産に従う階層のチャンピオ
ンだったのであろう。生産力が次第に高まるにつれ、かれらが合理化と発言権を主張するのは当
然であった。
墨子が「非儒編」で儒家の天命思想を痛罵し、「尚賢編」で縁故関係より人間の能力を重視ず
ることを強調したのは、「非命編」と表裏をなしており、新しい時代を招来しようとする合理生
辰の生渋であった。
だが、反面、墨子は「鬼神」の存在を認めている(公孟編ほか)。このことから、墨子をうしろ
むきの思想家とする見方もある。たしかに今日の時点でみれば「鬼神」は迷信にちがいないが、
当時の民間信仰として考えるならば、そのなかに身をおいた墨子が、これを認めたことに不思議
はない。かれは、この民間信仰と自説とを結合させ、神ー天の前に一切の人間は平等であり、王
侯とと、強者と弱者との別はない、と説いたのだ。
宿命の否定はここから出発する。
人間の運命は階級や門閥で決まるのではない。天下の治乱は政治の善悪によって決定し、人の
幸不幸は努力次第なのだ。貧乏だからみじめなのではない、貧乏から脱けだそうとしないからみ
じめなのだ・・・・・・
もし、人もしくは国の現在あるがままの姿が宿命だとしたら、誰もまじめにはたらき、国を変
えるものはなくなるだろう。いまさら努力しても、はじまらないからである。
しかし、「天」は、みずから扶くるものを、扶く。前むきの楽天主義が、墨子の兼愛、非攻の
哲学をささえている。
【魯問――迷妄を解く】
独善、思い上り、うわっつらだけの判断、目先の功利――君主や君子たちのこうした迷妄を、墨子は
その独特の比喩によって究明していく。
● 問題は凶刃か、それとも凶人か
墨子は斉の大王に会っていっ仁。
「ここに刀がひとふりあるとします。人の首を斬ってみたところ、一刀のもとに斬り落とせました。
切れ昧がいいといえましょうね」
「その通りだ」
「つぎに、何人もの首を斬ってみたところ、いずれも二刀のもとに斬り落とせました。斬れ味がい
いといえましょうね」
「もちろん」『
「では、人を殺した報いを受けるのは刀でしょうか」
「刀は斬れ昧が問題にされるだけだ。斬った者が報いを受けるに決まっている」
「では、他国を併合したり、他国の軍隊を全滅させたり、他国の人民をむやみに殺したりすれば、
その報いを受けるのはだれでしょうか」
大王は、しばらく上を向いていたが、ついにこたえた。
「このわたしが、報いを受けるのだ」
〈斉の大王〉斉の宣公の宰相であった太公田和のこととされている(太公は、はじめて国をもっ
た君主に与えられる称)。田氏は代々宰相の家柄であったが、巧みに国内の民心を得、君主か
ら実権をうばって、ついにこの田租の代に斉をのっとり、諸侯の列に加わった。斉の簡公を殺
した田常は、田租の二代前の人である。田宮は、簡公をいいくるめて、自分の気に入った者に
爵位を与えさせた。人民に穀物を貸しつけるときには、余分に入る枡ではかってやった。こう
して民心をつかんでおいてから、簡公を殺した。「君主が賞という柄を手ばなし、臣下に使わ
せたためである」と韓非子は批評しているが、これをみてもわかるように、田氏の一族は、辣
腕家がそろっていたようだ。
【最新量子ドットエレクトロニクス】
近くでは、「プリンテッドエレクトロニクス工学」(2015.11.11)で、シリーズでも「ネオコンバー
テック」として掲載してきたが、最新量子エレクトロニクスの9月から今日までの特許検索で、ザ
ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ イリノイ 研究グループから「特開2
015-201649: 印刷可能半導体素子を製造して組み立てるための方法及びデバイス」をみてビックリ。
プリンテッドあるいはプリンタブルな半導体製造方法が提出されているではないか。これは、数年前
から考えてきたアイデア――いずれ体系的まとめて知財申請しようと考えていたものほぼ網羅されて
いた。その技術提案の要約は次のようになる。
印刷可能半導体素子150は高分子転写デバイス175又は複合高分子転写デバイスの接触面
170とコンフォーマル接触され、印刷可能半導体素子が接触面上に接触される。コンフォーマ
ブルな転写デバイスの接触面上に堆積された印刷可能半導体素子は、接触面と基板160の受け
面との間でコンフォーマルな接触を成す態様で基板の受け面と接触される。接触面は基板の受け
面と接触される印刷半導体素子から分離され受け面上に組み立てられる。印刷可能半導体素子
150は高分子転写デバイス175又は複合高分子転写デバイスの接触面170とコンフォーマ
ル接触され、印刷可能半導体素子が接触面上に接触される。コンフォーマブルな転写デバイスの
接触面上に堆積された印刷可能半導体素子は、接触面と基板160の受け面との間でコンフォー
マルな接触を成す態様で基板の受け面と接触される。接触面は基板の受け面と接触される印刷半
導体素子から分離され受け面上に組み立てられる。
背景技術については次のように解説されている――94年に印刷法で高分子トランジスタのデモンス
トレーショが世界で初めてなされて以来、プラスチック基板上にフレキシブル集積電子デバイスを備
える可能性に満ちた新たなクラスの電子システムに注目があつめたが、最近、フレキシブルプラスチ
ック電子デバイスの導体素子、誘電体素子、半導体素子用の溶解処理材料開発が盛んに行われている。
しかし、このようなエレクトロニクスの発達は、これだけでなく、デバイス部品の構成や、デバイス
とデバイス部品処理方法、あるいはプラスチック基板に適用できる高分解能パターニング技術でも促
進されてきている。このような材料、デバイス構成製造方法への期待は大きくなっている。
すなわち、この技術の利点は、(1)プラスチック基板材料の機械的な耐久性は、機械的な応力によ
り引き起こされる損傷や電子的性能の低下を起こし難くい、(2)基板材料固有の柔軟性は、従来の
脆lいシリコン系電子デバイス――例えば、湾曲可能なフレキシブルエレクトロニクスデバイスは従
来のシリコンではできない、電子ペーパー、装着型コンピュータ、大面積高分解能ディスプレイ等の
新たなデバイスの製造を可能。(3)溶解処理した部品材料とプラスチック基板とを組み合わせ、大
面積基板で、低コストな電子デバイスを連続高速印刷技術で作ることができる。その反面、(1)従
来のシリコン系電子デバイス――例えば、単結晶シリコンやゲルマニウム半導体等の従来の高品質な
無機半導体部品は、基板融解温度や分解温度が大幅に超える温度(>千℃)での成膜処理で、アモル
ファスシリコン、有機または無機有機混成の半導体は、プラスチック基板への組み込みに適合し、比
較的低温処理できるがものの電子的特性が悪い――例えば、相補的な単結晶シリコン系デバイスより
も大きさが約3オーダー小さい電界効果移動度で、これらの限界のため、フレキシブル電子デバイス
は、非放射ピクセルのアクティブマトリクスフラットパネルディスプレイのスイッチング素子や発光
ダイオードでのは限定した用途に限られている。現在、前述した理由により、プラスチック基板上に
集積電子半導体含有デバイス製造が求め得られている。このためには、良好な電気的特性を有する印
刷可能半導体素子が必要であり、また、大面積基盤で、複合集積電気回路の連続高速印刷が必要であ
る。最後に、多様な可撓性のある電子デバイスに、良好な電子的性能が得られるフレキシブルな電子
デバイスが必要である、と説明される。
※ Methods and devices for fabricating and assembling printable semiconductor elements US 7622367 B1
※ “Polarization Controlled Output of Electrohydrodynamic Jet Printed Quantum Dot Embedded Photonic Cry-
stals for Display Applications,” See, G. G.; Xu, L.; Sutanto, E.; Alleyne A.; Nuzzo, R. G.; Cunningham, B. T.
submitted.
※ “Quantum Dot Luminescent Concentrator Cavity Exhibiting 30-fold Concentration,” Bronstein, N. D.; Yao,
Y.; Xu, L.; O’Brien, E.; Powers, A. S.; Ferry, V. E.; Alivisatos, A. P.; Nuzzo, R. G. submitted.
※ “Electrolytic Conditioning of a Magnesium Aluminum Chloride Complex for Reversible Magnesium Depos-
ition,” Barile, C. J.; Miller, E. C.; Zavadil, K. R.; Nuzzo, R. G.; Gewirth, A. A. J. Phys. Chem. C. 2014, 11-
8, 27623–27630 DOI: 10.1021/jp506951b
※ “Black Silicon Solar Thin-Film Microcells Integrating Top Nanocone Structures for Broadband and Omnid-
irectional Light-Trapping,” Xu, Z.; Yau, Y.; Brueckner, E.; Li, L.; Jiang, J.; Nuzzo, R. G.; Liu, G. L. Nanot-
echnology 2014, 25, 305301/1-8 DOI: 10.1088/0957-4484/25/30/305301.
※ Printing-Based Assembly of Quadruple Junction, Four-Terminal Microscale Solar Cells and Their Use in Hi-
gh-Efficiency Modules” Sheng, X.; Bower, C. A.; Bonafede, S.; Wilson, J. W.; Fisher, B.; Meitl, M.; Yuen,
H.; Wang, S.; Shen, L.; Banks, A. R.; Corcoran, C. J.; Nuzzo, R. G.; Burroughs, S.; Rogers, J. A. Nature Ma-
terials 2014, 13, 593-598 DOI: 10.1038/nmat3946.
※ “Printing-Based Assembly of Quadruple Junction, Four-Terminal Microscale Solar Cells and Their Use in
High-Efficiency Modules” Sheng, X.; Bower, C. A.; Bonafede, S.; Wilson, J. W.; Fisher, B.; Meitl, M.; Yue-
n, H.; Wang, S.; Shen, L.; Banks, A. R.; Corcoran, C. J.; Nuzzo, R. G.; Burroughs, S.; Rogers, J. A. Nature
Materials 2014, 13, 593-598 DOI: 10.1038/nmat3946.
次に注目したのは、トヨタ中央研究所の特許「特開2015-203007:ナノ粒子-GroEL蛋白質複合
体及びその製造方法」。そいて、その背景技術は――半導体をコアとしたエレクトロニクス、オプト
エレクトロニクス、メカトロニクス、医療など様々な分野において、ナノスケール材料の必要性が高
まっている。特に、半導体エレクトロニクス分野では、素子微細化で、高機能、高性能、低消費電力
化など実現。しかし、従来の微細加工技術(トップダウン手法)は技術的障壁やコストなどの経済的
障壁に阻まれ、ブレークスルー技術が停滞する一方、自己組織化ナノスケール材料利用するボトムア
ップ手法が、問題解決策として注目されている――と、このように説明され、次のような新規技術を
提案する。
- 直径2nm以下の複数のナノ粒子で構成され、かつ、直径4~10nmの間の領域内に前記複
数のナノ粒子が離間した状態でリング状に配置されたリング状ナノ粒子構造体と、該リング状
ナノ粒子構造体を内包するGroEL変異体と、を有するナノ粒子-GroEL蛋白質複合体
であって、 前記GroEL変異体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる第一のGroELサ
ブユニット変異体、及び配列番号1のアミノ酸配列中、52番及び398番のアラニン残基以
外の1以上のアミノ酸残基が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペ
ロン活性を有する第二のGroELサブユニット変異体からなる群から選択される少なくとも
一種のGroELサブユニット変異体を含む複数のGroELサブユニットからなり、 前記リ
ング状ナノ粒子構造体を構成する複数のナノ粒子が、前記GroEL変異体の複数のGroE
Lサブユニットに包囲された空間に内包されている、ことを特徴とするナノ粒子-GroEL
蛋白質複合体。 - 前記リング状ナノ粒子構造体が、直径4~7nmの間の領域内に前記複数のナノ粒子が離間し
た状態でリング状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子-GroEL
蛋白質複合体。 - 前記ナノ粒子が、Au(金)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子-Gr
oEL蛋白質複合体。 - 前記GroEL変異体が、ADP、ATP、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少な
くとも一種のヌクレオチドを更に含むことを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に
記載のナノ粒子-GroEL蛋白質複合体。 - 配列番号1のアミノ酸配列からなる第一のGroELサブユニット変異体、及び配列番号1の
アミノ酸配列中、52番及び398番のアラニン残基以外の1以上のアミノ酸残基が置換、欠
失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有する第二のGroELサ
ブユニット変異体からなる群から選択される少なくとも一種のGroELサブユニット変異体
を含む複数のGroELサブユニットからなるGroEL変異体と、ナノ粒子と、を接触させ
て、前記GroEL変異体の複数のGroELサブユニットで、前記複数のナノ粒子が離間し
た状態でリング状に配置されたリング状ナノ粒子構造体を包囲して内包することを含むナノ粒子
-GroEL蛋白質複合体の製造方法。 - 前記GroEL変異体と前記ナノ粒子との接触は、ADP、ATP、及びこれらの誘導体から
なる群より選ばれる少なくとも1種のヌクレオチドの存在下に行われることを特徴とする請求
項5に記載のナノ粒子-GroEL蛋白質複合体の製造方法。
以上のごよく、直径2nm以下の複数のナノ粒子で構成され、かつ、直径4~10nmの間の領域内
に前記複数のナノ粒子が離間した状態でリング状に配置されたリング状ナノ粒子構造体と、該リング
状ナノ粒子構造体を内包するGroEL変異体と、を有するナノ粒子-GroEL蛋白質複合体であ
って、前記リング状ナノ粒子構造体を構成する複数のナノ粒子が、前記GroEL変異体の複数のG
roELサブユニットに包囲された空間に内包されている、ことを特徴とするナノ粒子-GroEL
蛋白質複合体の提供されている。この2つの特許情報からイメージできうることは4接合以上の半導
体太陽電池の前実用変換効率が、40%を超える段階ににあり、加えてプリンテッドエレクトロニク
スによる多機能と廉価の解決が可能に段階にあることを意味してことを確認した。