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ぽかぽか春庭「舟を編む」

2014-09-18 00:00:01 | エッセイ、コラム
20140918 
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>ことば映画(6)舟を編む

 本屋大賞になったとき、映画になるかもというのを知って、特に波瀾万丈のストーリーではなし、こつこつと地味に辞書作りという地味なストーリーが映画になるのか心配していたら、ちゃんと映画になっていたので、よかったよかった。私はギンレイにかかったとき息子といっしょに見にいって、テレビ放映されたとき娘も加わっていっしょに見ました。

 「ふたりして先に見ちゃったことは許すから、絶対に途中でネタバレするようなことしゃべっちゃだめだよ」と、娘に釘をさされたので、私は黙って見ていましたが、わいわいがやがやしゃべりながら見るのが好きな娘は、「う~ん、ハラハラさせるところが、プロポーズするかしないかってところのほかは、血潮が抜けた、いったいどうした、という2カ所だけなのを、こうやってちゃんと2時間の映画にするのって、すご~い」と言っていました。

 ことばがテーマの映画シリーズ。現実の世界でも、辞書作りという話題、「言海」をひとりで編集した大槻文彦とか、「大漢和」の諸橋哲治とか、辞書編纂をめぐる見坊豪紀と山田忠夫の大げんかとか、いろいろ話題になりそうななネタがいっぱいです。
 私は、松田龍平も好きだし満島ひかりのタンナさん監督も好きだから、この作品、内容は地味でもおもしろかったです。
 
 20年書けて一冊の辞書をまとめ、売り出されたその日から次の版の改訂作業が始まる。辞書作りという地味な分野ですけれど、「まじめ」にこつことが出来る人がいるかぎり、辞書は不滅です。

 スペイン人女性、マリア・モリネール。一生涯をかけて、主婦の仕事子育てのあいまに,
一語一語の語用例を集めてスペイン語辞典を作り上げました。マリアの生涯についてガルシア・マルケスが書いたエッセイ。それをもとにしたシナリオで、マリアの伝記映画ができたらいいなあと思います。

 活動写真がトーキーとなり、「カツドー」ではなく「エーガ」と呼ばれるようになって以来、ことばが前面に出て主要なテーマとして扱われる映画が多々作られてきました。
 映画の中のたったひとことが、見た人の気分を変え、あるときは一生のささえになることもあるのですから、映画を作る側はどれほどひとつひとつの台詞に気合いをこめてつくっていることでしょう。

 むろん、台詞以上に無言のシーンが満場の観客の心を感激でいっぱいにすることもあります。『シネマ・パラダイス』のラストシーン。教会の検閲で切り取られたキスシーンが延々と続きます。恋人たちがただ熱くキスし続けるくフィルムが、人間賛歌になっていました。
 でも、最後の台詞が映画をぐっと締めるってのもすてきです。魔法にかけられたように、最後の台詞を反芻しながら映画館を出る、というのは映画ファンにとって至福のひととき。

 ことばの海を渡っていく舟。大客船もあるのでしょうけれど、手こぎのボートでぎっちらぎっちらとこぎ渡るのも、ひとつの方法。途中沈没もありです。

 4月から授業の合間に取り組んできた日本語教科書の編集。これまで使ってきた教科書を文法中心の教科書から、「課題解決式」に変えていくという編集がなかなか一貫せず、夏休みもずっとかかりきりでした。私はあまり役に立たなかったですが、今日は、印刷前の最後の編集ミーティングです。
 では、私も笹舟に乗ってことばの海へ。 

<おわり>
コメント (2)
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