20141001
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十四事日記夏の終わりの小さな旅(1)大人の一人えんそく in 甲府
山梨県甲府に、学校校舎、旧睦沢小学校を見に行った報告をUPしました。 8月26日、そろそろ夏も終わりかなという日に甲府へ行き、駅前の睦沢小学校と、山梨県立美術館、県立文学館を見学したのです。
甲府駅について、まずは、駅前の旧睦沢学校(現・藤村記念館)を見学。記念館見学報告はこちらに。
http://blog.goo.ne.jp/hal-niwa/e/38c02e26238d90afd8c7c7ac7306b3bd
駅前からバスで、県立博物館へ。このとき、バス乗り場でちょっとしたトラブルがありました。旅行者は、バス停の丸い標識の前から順に並んで、バスの到着を待っていました。小雨が降ってきて、バス停の屋根からはみ出る人もいましたが、みなおとなしく並んでいました。地元の人と思われるオバサンが数人、あとから来て、順番の列ではなく、まんなかへんに固まっていました。
どうして列に並ばないのかなあと思っていると、バスが来て、バス前方の乗り口ではなく、うしろのドアが開きました。都バスだと前乗り後ろ降りですが、甲府駅前では後ろ乗り、前降りだったのです。金額が固定制でない地方では、後ろ乗り前降りのほうが多い。
後ろドアが開くと、オバサンたちは、そこからさっさと乗り込みました。
一番前から乗るのだと信じておとなしく並んでいた人たちは、くるりと向きを変えて後方ドアから乗り込みましたが、並んでいたのに座れない人もいました。私は一人旅なので、一人座席に座れましたが、二人連れの人たちは、二人がけのいすはオバサンたちがさっと占領したので並んで座ることができませんでした。「ああいう、順番を守らない人がいるっていやねぇ」と、文句言っていました。
おそらく地元の人たちにしてみれば、バスは後ろ側の出入り口から乗るのは常識なので、一番前から列を作っているほうが非常識なのでしょう。
エレベータの立ち位置について、関西は歩く側が左、立つのが左側、と東京周辺とは逆であることは留学生にもお知らせしていますが、そうか、バスの乗り込むドアも地域によって異なるから、都バスの前が乗り口、後ろドアが降り口というのとは違う地方もあるよなあ。しかし座れなかった人たちは、美術館間まで15分の間、「前から順にならんでいた列を無視して、あとからきて後ろドアから乗り込んだひとたち」について、「ずうずうしい」と、非難し続けたのでした。
列が並んでいるのを無視して、「いつものように」後ろドアからささっと乗り込んだほうは、それがいつもの当然のやり方とおもっているし、前ドアから乗ると思って列を作っていた人々にすれば、列先頭から乗り込むのが当然と思ったのです。
自分たちの尺度がすべてであり、己が正義。他者のルールは認めないということ。キリスト教の考え方だと仏教は非常識というのも、その逆もあるだろうし、イスラム教では施しを受けた方に対して施しを与えたほうが、「ありがとう」とお礼を言うのだ、と聞いて、「そんな理不尽なこと納得がいかない」と言った人もいます。でもイスラム教では「あなたに施しをすることで、アラーに向かって善行をしたことを報告できるから感謝する」という意味で、お金や親切を与えた方が「ありがとう」と言う。それはそれで理にかなっていると思うのだけれど、自分の尺度がすべてと思っている人にとっては奇異に思える。
あとから来て先に乗り込んだオバサンたちが、列が出来ているのを無視して乗り慣れたバスにさっさと乗り込んでしまったのも、それを美術館に着くまで15分間えんえんと文句言い続けるのも、双方、「自分が正義」と思っているのでしょう。世界中、争いごとは全部「正義をつらぬくために」行われるのであって、ナチスのホロコーストも「アーリア民族による正義」だったのですから、私にはどうにも「絶対的な正義」というものが信じがたいのです。
ミレー展をやっている山梨県立美術館に着くまで、この「自分の側の尺度」について考えていました。
ミレーがバビルゾンで絵を描き始めた頃は、「金持ちの肖像画を描くのではなく、農村風景や農民を描いた絵が売れるはずはない」と、当時の絵画の基準からはずれた画題を非難されてきた、ということです。
日本人には、田舎の風景を描く画題は南画でも洋画でも好まれていましたから、バルビゾン派が紹介されて以来、ミレーの農村風景や農民はたいそうな人気で。今回の山梨県立美術館訪問も、夏休み期間であるとはいえ、26日木曜日という平日だったにもかかわらず、けっこうな人出でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/91/87509d3e0f5471ec8d45e2df32004f01.jpg)
ミレー展、山梨県立美術館の次には府中美術館に巡回展示していきました。府中にくることがわかっていたなら、甲府には行かなかったかもしれませんけれど、まあ、青春18切符利用の日帰り旅行、美術館のとなりの県立文学館なども見て、甲州名物のほうとうも食べたので、よい一日になりました。
<つづく>
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十四事日記夏の終わりの小さな旅(1)大人の一人えんそく in 甲府
山梨県甲府に、学校校舎、旧睦沢小学校を見に行った報告をUPしました。 8月26日、そろそろ夏も終わりかなという日に甲府へ行き、駅前の睦沢小学校と、山梨県立美術館、県立文学館を見学したのです。
甲府駅について、まずは、駅前の旧睦沢学校(現・藤村記念館)を見学。記念館見学報告はこちらに。
http://blog.goo.ne.jp/hal-niwa/e/38c02e26238d90afd8c7c7ac7306b3bd
駅前からバスで、県立博物館へ。このとき、バス乗り場でちょっとしたトラブルがありました。旅行者は、バス停の丸い標識の前から順に並んで、バスの到着を待っていました。小雨が降ってきて、バス停の屋根からはみ出る人もいましたが、みなおとなしく並んでいました。地元の人と思われるオバサンが数人、あとから来て、順番の列ではなく、まんなかへんに固まっていました。
どうして列に並ばないのかなあと思っていると、バスが来て、バス前方の乗り口ではなく、うしろのドアが開きました。都バスだと前乗り後ろ降りですが、甲府駅前では後ろ乗り、前降りだったのです。金額が固定制でない地方では、後ろ乗り前降りのほうが多い。
後ろドアが開くと、オバサンたちは、そこからさっさと乗り込みました。
一番前から乗るのだと信じておとなしく並んでいた人たちは、くるりと向きを変えて後方ドアから乗り込みましたが、並んでいたのに座れない人もいました。私は一人旅なので、一人座席に座れましたが、二人連れの人たちは、二人がけのいすはオバサンたちがさっと占領したので並んで座ることができませんでした。「ああいう、順番を守らない人がいるっていやねぇ」と、文句言っていました。
おそらく地元の人たちにしてみれば、バスは後ろ側の出入り口から乗るのは常識なので、一番前から列を作っているほうが非常識なのでしょう。
エレベータの立ち位置について、関西は歩く側が左、立つのが左側、と東京周辺とは逆であることは留学生にもお知らせしていますが、そうか、バスの乗り込むドアも地域によって異なるから、都バスの前が乗り口、後ろドアが降り口というのとは違う地方もあるよなあ。しかし座れなかった人たちは、美術館間まで15分の間、「前から順にならんでいた列を無視して、あとからきて後ろドアから乗り込んだひとたち」について、「ずうずうしい」と、非難し続けたのでした。
列が並んでいるのを無視して、「いつものように」後ろドアからささっと乗り込んだほうは、それがいつもの当然のやり方とおもっているし、前ドアから乗ると思って列を作っていた人々にすれば、列先頭から乗り込むのが当然と思ったのです。
自分たちの尺度がすべてであり、己が正義。他者のルールは認めないということ。キリスト教の考え方だと仏教は非常識というのも、その逆もあるだろうし、イスラム教では施しを受けた方に対して施しを与えたほうが、「ありがとう」とお礼を言うのだ、と聞いて、「そんな理不尽なこと納得がいかない」と言った人もいます。でもイスラム教では「あなたに施しをすることで、アラーに向かって善行をしたことを報告できるから感謝する」という意味で、お金や親切を与えた方が「ありがとう」と言う。それはそれで理にかなっていると思うのだけれど、自分の尺度がすべてと思っている人にとっては奇異に思える。
あとから来て先に乗り込んだオバサンたちが、列が出来ているのを無視して乗り慣れたバスにさっさと乗り込んでしまったのも、それを美術館に着くまで15分間えんえんと文句言い続けるのも、双方、「自分が正義」と思っているのでしょう。世界中、争いごとは全部「正義をつらぬくために」行われるのであって、ナチスのホロコーストも「アーリア民族による正義」だったのですから、私にはどうにも「絶対的な正義」というものが信じがたいのです。
ミレー展をやっている山梨県立美術館に着くまで、この「自分の側の尺度」について考えていました。
ミレーがバビルゾンで絵を描き始めた頃は、「金持ちの肖像画を描くのではなく、農村風景や農民を描いた絵が売れるはずはない」と、当時の絵画の基準からはずれた画題を非難されてきた、ということです。
日本人には、田舎の風景を描く画題は南画でも洋画でも好まれていましたから、バルビゾン派が紹介されて以来、ミレーの農村風景や農民はたいそうな人気で。今回の山梨県立美術館訪問も、夏休み期間であるとはいえ、26日木曜日という平日だったにもかかわらず、けっこうな人出でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/91/87509d3e0f5471ec8d45e2df32004f01.jpg)
ミレー展、山梨県立美術館の次には府中美術館に巡回展示していきました。府中にくることがわかっていたなら、甲府には行かなかったかもしれませんけれど、まあ、青春18切符利用の日帰り旅行、美術館のとなりの県立文学館なども見て、甲州名物のほうとうも食べたので、よい一日になりました。
<つづく>