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ミンガラ春庭「ヤンゴンの漢字」

2016-01-17 00:00:01 | エッセイ、コラム
20160117
ミンガラ春庭ニッポニアニッポンご教師日誌>2016ヤンゴン教室だより(1)ヤンゴンの漢字

 ヤンゴンでの日本語授業、テキストは「みんなの日本語」という初級教科書を使っています。2015年の6-8月、四つのクラスを作ってどのクラスも週一回だけの授業という、私からみたら無謀と思えるカリキュラムを前任者が組みました。
 最初の登録者が100人を越えたので、クラスを4つに分けた、というのも、経験のない前任者にとって仕方のないクラス編成だったのでしょうが、私が8月に引き継いだとき、最初100人を越えていたという初級ゼロスタート登録者も30名に減っていました。
 無料の日本語教室だから、ちょこっとのぞいて見ようという興味本位の学習者が毎週ごとに抜けていって、本気で日本語を学びたい学生だけが残っていました。

 私は12月新学期にあたって、90分授業を週1回しかしない、なんてのはナンセンス。定着もしない。前週やったことを忘れているから、復習するだけで少しも前進しない、と主張しました。
 一般的な日本国内日本語学校では、『みんなの日本語』をテキストにする場合、「一つの課を50分授業6コマですすむ」という教科書の指定に対して、50分授業を一日4コマ。週5日で合計週に20コマ。1週間に2課~3課進みます。1学期4月~7月で初級前半を修了するというカリキュラムで進んでいます。
 初級を終えるには、どの言語でも300時間ほどは学習時間が必要だ、ということも、学科長はしらないまま、日本の日本語学校では、一学期で「みんなの日本語」を修了する、というのを聞きかじってきたらしく、自分の大学でも同じように進んでいると思い込んだようです。

 2015年度に1年間勉強した学生に対して、中級クラスを作れ、と命じられました。冗談じゃない。昨年度日本語を学習したクラスは、中級クラスどころか、初級前半25課のうち、9課までしか進んでいませんでした。
 日本語教育がどのように行われているのかを縷々説明し、週1回しか日本語授業をもうけていないこの大学で中級クラスをはじめるには、5年はかかる、ということを理解してもらいました。
 
 12月からは、初級ゼロスタートレベル1クラスも、既習組レベル2クラスも、週に2回授業を受けられるようにしたい。そのためには、100人の登録者を全員受け入れて、パラパラと抜け落ちていくのを放置した前学期の轍を踏まないよう、最初からやる気のある学生だけを選抜したい、と、学科長に強調しました。学科長は、120名まで登録を受け付ける。選抜試験を行って50名~60名のクラスにする、ということで了解しました。

 まず。最初の時間に「ビルマ語作文」を2日後に提出せよ、と申し渡しました。「私がもつ日本への関心」という題のビルマ語作文、2日後に提出した登録者は、120名のうち80名でした。40名は母語で作文を書くことができず脱落。
 次ぎに、カタカナ授業を2回実施しました。独自テキストを作成し、次週カタカナテストによって選抜すると予告。土日の週末、本気で日本語授業を受けたい学生は必至に勉強したことでしょう。暗記は得意な当地の学生。英語でも中国語でも、丸暗記が当地の語学学習の基本です。

 カタカナ試験を受験した学生は、65名でした。作文を出した80名から15名が脱落。作文を提出し、試験を受験した学生は全員合格としましたが、点数の低かった学生には、再受験を申しつけました。12名の再受験者のうち、2度目に同じ試験問題を受けに来た学生は4名のみ。他の学生は「日本語めんどくさそうだから、簡単そうな中国語を登録した」などの理由で来ませんでした。結局ゼロスタートレベル1は、50名で出発。当初の予定通りの人数に収まりました。これでもう脱落者はいないかというと、そうでもなく、中間試験も期末試験も実施すると予告してあるので、試験のたびに脱落するだろうと思います。

 最後まで残った学生は、次の学期に継続してレベル2のクラスに進級できるという特典。レベル2学生にも特典があります。2年間日本語を学んだ学生のうち、優秀者を2~3名学科長が選び、日本との交換留学生候補とする、という学科長のお達しを学生に伝えました。

 昨年度は日本語教育がはじまったばかりで、日本語能力で日本留学者を選ぶほどレベルが上がっていなかったので、学科長は英語の成績をもとに交換留学生を選びました。3人の女子学生が、昨年から今年9月まで、日本で留学生活を送っています。

 学科長のお達しその2.日本語能力を知るために、日本語能力試験を学生に受験させたい。またまた、日本語教育を知らない学科長からの無理難題。日本語能力試験を受験するには漢字学習が必須。しかし、週に90分授業を2コマ。(60分授業に換算すれば3コマ)の日本語授業では、漢字学習をする時間などとれません。日本語能力試験(Nテスト)受験には漢字もリスニングも必要と強調したところ、課外授業時間帯に設置されている日本語授業に加えて、60分の漢字授業時間を設けることになりました。
 
 レベル2の学生達、60分の漢字授業で10~15の漢字を詰め込む、という詰め込み授業に、「にほんごはむずかしいですが、おもしろいです」という定番の日本語文型を口にしながら学習しています。最初の日は、一~万、円。2回目は、日月火~土、3回目は象形文字の基本。山や川など。という具合に進んできました。

 春庭お得意の、身体文字。大や小、女を身全体で表現するジェスチャー漢字は、ヤンゴンでもうけました。
 女子学生達、欧米系の学生に比べて、漢字字形の認識力が優れていて、書き文字の形もとてもきれいです。ミャンマー文字の複雑な形に目がなれているせいだろうと思います。
 アルファベット一本槍ですごしてきた欧米系学生、「生」と「先」の字形区別がなかなかできなくて、「先生」が「生先」になったり「生生」になったりしていたのに比べると、「大」と「犬」と「太」は違う、という説明にもにこにこうなずいています。ミャンマー文字も、一点くわわるだけで別の文字になるからです。

 私など、以下のビルマ文字表を見ただけで脳がパニック。老化した脳が拒絶反応起こしたというのに、若い脳細胞はどんどん吸収していきます。


 最後の授業では、記念のお習字大会をやるつもりなので、筆や墨汁、半紙を日本から調達する予定です。

<つづく>
コメント (2)
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