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ぽかぽか春庭「サル学ニッポン」

2016-01-03 00:00:01 | エッセイ、コラム

上野動物園のニシローランドゴリラ。ゴリラの中では小型です

20160103
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>サルの文化史(2)サル学ニッポン

 世界中のサル研究。日本は、その最先端の研究を続けているひとつです。
 立花隆が『サル学の現在』を上梓したのが1991年ですから、それから15年たって、日本のサル学はさらに研究が進んでいるでしょう。
 私は、動物園に行って、サルを眺めているのも好きですし、京都大学で研究されているチンパンジー、アイのウォッチャーです。

 霊長類学研究は、生物学系統の研究と、人類学のひとつの分野として研究するスタイルに大きく分かれていますが、京都大学などでは、後者の研究が続けられており、チンパンジーを「互いに認め合う仲間」として認識するところから研究が進んでいるところが、とてもユニークだと思います。チンパンジーを数えるときは、一匹とか一頭ではなく、当然ひとり、ふたり、です。

 京都大学霊長類研究所の松沢哲郎教授は、アイの研究を続けて、「ヒトの心」をもさぐっています。松沢先生は、もともとは哲学専攻で、「ヒトとはなにか」からサル研究に入った方なのです。
 動物としての分類では、サル目ヒト科の中に、ヒト属とパン属(チンパンジーとボノボ)、ゴリラ属とオランウータン属がいます。ヒト属とパン属の遺伝子配列の違いは、1.2%のみ。98.8%のDNAは同じです。

 動物園で生まれ育ち、赤ちゃんのときから人間に育てられたサルは、自分が母親になったときに、うまく子育てができない。京都大学の霊長類研究所で育ったパンは、子供のパルを産んだとき、どうやって授乳するかわからず、自分の指をパルの口に突っ込んだそうです。哺乳瓶を咥えて育った記憶があったのでしょう。一方1歳まではアフリカのチンパンジーの群れにいたアイは、ちゃんと授乳をして、息子のアユムをほぼ自分一人の力で育てたといいます。

 松沢先生は、人間の子も、サルの子も、臨界期と呼ばれる時期に愛情深く扱われることが成長にとって大切と語っています。ヒトの子も、記憶にないほどの幼い時期に、愛情深い養育者に出会わなかった子供に、言語能力の未発達や精神的なゆがみが生じることを指摘しておいでです。

 人間の子育てがサル類の子育てと大きく異なるのは、サルの子は乳離れするまで、ほぼ母親一人が養育を担うのに対して、ヒトの母親は、自分の母親や姉妹その他の手助けを期待できる点だと、松沢先生は指摘しています。

 サルの雌は閉経して妊娠能力を失うとほぼ同時期に寿命になるのに対して、ヒトのメスは、閉経後も寿命を保ち、娘らの世代の子育てを手伝うことが大きく異なる。バーサンがいるかいないかが、ヒトのヒトらしさを育てた。、、、、ほらね、どこかの元知事が「生殖能力を失ったバーサンは、さっさと死ね」と公言したことがありました。これを見ても、彼の知性の低さ品性の卑しさがわかります。バーサンがいるから、ヒトはヒトになったんだよ。

 原始的なサルから、霊長目が進化し、霊長目の中でヒトだけが「音声言語」を持った。ヒトの母と子は、目と目でアイコンタクトをとり、子は母親(もっとも身近な養育者)が指さしたものを見つめることができる。子はおなかが空いたとき、おむつが濡れて不快なとき、泣き声をあげ、自分の声が母親を呼び寄せる力を持つことを知る。母親の声の中から有益な発音を聞き分け、しだいにその発音のマネが出来るようになる。1歳すぎるとママ、とかウマウマとか、意味をもった音声を発するようになる。

 京都大学のアイに小片を使った言語教育が行われているのと同様に、外国ではチンパンジーに手話を教えるチームも研究を続けています。
 チンパンジーには、記号を意味化して意味をつかみ取る能力がある。

 アイは、小片の並べ方で単語を理解できるサルになりました。私は、アイが獲得した言語能力を、アユムに教えてやれるのかについて、アユムが産まれたときから興味津々でした。アユムは現在6歳くらいと思いますが、アイがことばを教えたという記録はどこにも出ていません。

 丸くて赤い小片と「ください」を意味する小片を組み合わせて、「りんごください」という文を並べると、ごほうびにりんごをもらえる、という学習は、アイにもできた。アユムがそれをアイから教わる日がくるのだろうか。
 アイがことばをアユムに伝える能力を持っていたら、『猿の惑星』は実現するだろうと思ったのですが、、、、
 まだまだ研究途上、サル学研究は、ますます面白い研究成果を発信してくれるだろうと思います。

 以下の写真、2013年春庭撮影の多磨動物園のオランウータン(インドネシア語で「森のヒト」の意)です。
 
 野生のオランウータンは、高い木の枝から枝を伝い、木のつるなどをロープとして綱渡りして生きています。多磨動物園でも、地上150mにロープを張り、猿の綱渡りを実現しました。
 ロープを伝わってオランウータンの「別荘」に行くと、おやつがもらえる。オランウータンたちはじょうずにロープをつかみ、移動していきました。動物の行動展示のひとつですが、見ていてあきません。

 地上150mの高さに張られたロープを器用に伝わって行きます。






 多磨動物園オランウータンの母子。
 野生のオランウータンは、蟻塚に棒を差し込んで、シロアリを釣って食べる。多磨動物園では人工的に蟻塚を設置。中におやつを隠しておく。母ザルは子に、どうやって蟻塚の中の獲物を探すか、教えます。写真の子猿は、興味津々に蟻塚をのぞき込んでいます。



 多磨動物園オランウータンのオス。たぶん、神はなぜ猿を至高の動物とせず、おろかな戦さをするヒトのほうを優遇したのか、と、宗教的思索にふけっているところ。
 猿の惑星では、ゴリラは軍人に、チンパンジーは政治家に、オランウータンは宗教者になるんじゃなかったっけ。



<つづく>  
コメント (4)
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