20160128
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003三色七味日記1月(6)2003年の演劇関東大会
2003年三色七味日記1月再録です
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2003/01/26 日 晴れ
日常茶飯事典>演劇関東大会
息子は高校演劇関東大会へ。昨日は観客として、見るだけの参加。今日は高校演劇部が関東大会に出場の晴れの日。息子は午前中は観劇。午後は演劇部スタッフ。
高校演劇大会の規定では「大会当日にOBなどの手助けを受けること禁止」という条項があるのだが、「OBはいけないと書いてあるが、中学生はいけないという規定がない」という理由で、中学生の息子たちが手伝ってもいいことにしたのだと。
パンフレットを見ると、毎回入賞している強豪校は部員が60人とか100人とかいる。息子のところは高校中学合わせて10人もいない。舞台の設置撤収が時間通りにできないと減点されるので、手伝う方も真剣勝負。いい舞台になるといいけれど。
本日のそねみ:野球も演劇も強豪校は部員数が巨大
2003/01/27 月 雨
日常茶飯事典>電車が遅れて遅刻したので、欠席
漢字作文2コマ。
息子は、雨の中遅刻すれすれで登校した。ところが地下鉄の事故で電車が遅れて、学校についたら1時間目は始まっていて、みんな英語のLL教室室に移動したあとだった。LL教室に遅れて一人で入っていくのも、教室にひとりで待っているのもいやだからと、そのまま回れ右して帰宅。
忙しい思いして、朝、お弁当を作ったのに。
本日のうらみ:せめて弁当を食べ終わるまで学校にいてから、帰宅してくれ
2003/01/28 火 晴れ
ニッポニア教師日誌>パレスに住むエンペラの顔
漢字、会話2コマ。
「~ことがあります」の経験を述べる文型。前に、学生たちに見せてもらった冬休み中の写真の話題から導入。
ディズニーランドへ行った、初詣に神社へ行ったなど、いろいろなこれまでに出かけたことやホームステイで体験したことを出してもらい、「~ことがあります」の文を作る。
ジョナたちは、冬休みのはじめに皆で東京へ行ってきたそう。クリスマスイブイブ、すなわち天皇誕生日であるからしてパレス見物をしてきた。
「日本のお金にはエンペラの写真がありません。私たちはエンペラの顔を知りません。パレスで顔を見ることができました」と無邪気に喜んでいた。
「エンペラの顔はハンサムでしたか」「遠くから見たので、よくわかりません。」
私の例文、「ジョナさんは東京のパレスに行ったことがあります。私はまだパレスに行ったことがありません。エンペラに会ったことがありません。エンプレスと話したことがありません」
「文化勲章をもらうときにパレスの中へ行きますから、それまでは行きません」と言ってみたが、この冗談は留学生には通じなかった。
そして「皇居」と言わず、あえて彼らが使った英語のパレスということばをそのまま外来語として用いた例文の語感も、留学生には通じないだろう。
コーキョと発音するときにまつわりついているイカメシイものが、パレスと言ったとたんに身軽になり「なんとかパレス」という、街のパチンコ屋かリゾート地のストリップ劇場のような語感が出てくるから、外来語魔法のあら不思議。エンペラと発音すると、テンペラやカンペラの仲間みたいになって、いかめしさが消える。
「昨日友達とchurthに行きました」という学生に「チャーチ、日本語で教会。きのう友達と教会へ行きました。はい、リピートアフターミー」と言いなおしさせるときもあるのに、パレスは皇居と言い直しをされられないのはなぜか、なんて学生は気づかない。
外来語語感について、宮沢章夫が『茫然とする技術』所収「NHK英語講座テキスト」に書いていた文がおもしろくて笑えた。外来語語感についてこれほど卓抜な感性をほかにしらない。『茫然とする技術』図書館で借りた本だけど、文庫になったら絶対に買う。
本日のきわみ:「不敬のきわみ」なり、と、逮捕されることはない時代でよかった
2003/01/29 水 晴れ
ことばの知恵の輪>知らない日本語
午前中、Aダンス。
午後、辞書全読をはじめる。語彙数調査のため、辞書に出ている単語を全部読み、未知の語を調査する。日本語教師としてなかなかの職業訓練といえばいえるし、単なる暇つぶしとも言える。
とりあえず岩波国語辞書を読み、漢和と古語辞典で補足。
NTTの語彙数調査のリストで調べたのでは、私の日本語語彙数は約6万語と分かったので、岩波国語辞書に搭載されている57000語は、ほとんど知っているはずという前提で読み始めた。
だが、実際には未知語があるある。後半から初めて、は段からわ段へ。あ段へ戻って、か段へ。あと「さ、た、な」が残っている。
特殊な専門用語ならいざ知らず、一般国語辞書に搭載されている語で知らない語があろうかと思ったのに、思い上がってはいけない。知らない語がやはりある。
あ段で知らなかった語は4語。「文色(あいろ)」「「烏兎(うと、金烏玉兎の略)」「燕雀鴻鵠(えんじゃくこうこく、燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや、から来た四字熟語」「笈摺(おいずる)」を知らなかった。
燕雀鴻鵠は四字熟語だから、四字熟語の中には知らない語もたくさんあるはず、と納得できるのだが、文色、笈摺、烏兎の三語、これまでに文の中で見た記憶がなく、意味を初めて知った。
烏兎は日月の意。神武天皇が金色の烏を肩に乗せているのは挿絵で見て知っていて、金の烏が日の神のシンボルと知っていたのに、中国古語で金烏玉兎は太陽と月を表すというのを初めて知った。玉兎の字は知っていたが、玉のように丸っこいかわいい兎と思っていて月のシンボルとは知らなかった。無知?
ところが、娘と息子はこの「烏兎」の語と意味を知っていた。なぜなら、RPGゲームの戦いの技の中に「烏兎」という技があるからだ。烏兎の技を使うと、敵をすごいパワーでやっつけることができるのだそうだ。
笈摺は、巡礼が笈を背負うときに背中が摺れるのを防ぐための上着という。
ま、これは現代では四国遍路専門用語のうちに入るのかもしれない。昔は巡礼お遍路がどの家の門口にも立ち寄ったのだから、皆この語を知っていたのかも。
子供の頃、お遍路姿の人が門口に立つとお母さんは米や麦をお椀にひとつあげて、「お通りください」と言っていた。彼らは仕事を持っている人が宗教心にめざめて一念発起で巡礼に出るのではなく、「お遍路専門」である人なのだと言う。だから私はお遍路というのは乞食のことだと思っていた。
芝居の中で子役が甲高い声で「ジュンレーにゴホーシャー」と叫ぶのは、乞食のものごいだと思っていた。「巡礼専門職」の人々は、笈など背負っていなかったから、笈摺というものを見たことも聞いたこともなかった。
本日のひがみ:RPGの技「烏兎」を知っている子供、しらない日本語教師
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20160128
当地滞在中に読む本として、読むのに時間がかかりそうで、少しずつ読めばいい本として、惣郷正明『辞書風物誌』「暉峻康隆の季語辞典」重い単行本なのに、持ってきました。
しごと仕事の毎日で、辞書をのんびりひもとく時間がなかなかとれません。通勤電車読書ができないので、読書時間は、寝る前の枕頭読書のみ。寝ながら読むのには、文庫以上に重い本は不適当。『辞書風物誌』は、椅子で読んでいます。
リタイア後の楽しみにと思って買った「暉峻康隆の季語辞典」結局リタイア後に読むことになりそうです。
今回は五味文彦『絵巻で読む中世』網野善彦『日本中世都市の世界』久木綾子『見残しの塔』という中世づくしの読書です。網野、まだ読み終わっていない。
今回持ってきた本のうち、久木綾子『見残しの塔』は2012年に文庫新刊で買って、結局4年間ツンドクでした。久木さん、1919年生まれ。若い頃の文学志向を結婚後は押し込めて専業主婦生活。70歳をすぎて文学活動を再開し、取材と執筆。2008年に『見残しの塔』を完成させて出版。89歳の新人作家として有名になりました。私は2012年に文庫になるのを待って買ったのですが、読んだのはヤンゴンで。ヤンゴンでひたる日本中世の職人世界面白かったです。日本の宮大工ほかの職人魂、ほんとに感服。
『絵巻で読む中世」『日本中世都市の世界』も、とても面白い。室町末期&織豊政権研究が行き詰まっているという息子くんに勧めよと思う。楽市楽座のこと、網野の「公界・無縁・楽」論は、異論があるにせよ熟知しておいたほうがよい、と思うので。「とっくに読んだ」と言うかもしれぬが。
<つづく>
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003三色七味日記1月(6)2003年の演劇関東大会
2003年三色七味日記1月再録です
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2003/01/26 日 晴れ
日常茶飯事典>演劇関東大会
息子は高校演劇関東大会へ。昨日は観客として、見るだけの参加。今日は高校演劇部が関東大会に出場の晴れの日。息子は午前中は観劇。午後は演劇部スタッフ。
高校演劇大会の規定では「大会当日にOBなどの手助けを受けること禁止」という条項があるのだが、「OBはいけないと書いてあるが、中学生はいけないという規定がない」という理由で、中学生の息子たちが手伝ってもいいことにしたのだと。
パンフレットを見ると、毎回入賞している強豪校は部員が60人とか100人とかいる。息子のところは高校中学合わせて10人もいない。舞台の設置撤収が時間通りにできないと減点されるので、手伝う方も真剣勝負。いい舞台になるといいけれど。
本日のそねみ:野球も演劇も強豪校は部員数が巨大
2003/01/27 月 雨
日常茶飯事典>電車が遅れて遅刻したので、欠席
漢字作文2コマ。
息子は、雨の中遅刻すれすれで登校した。ところが地下鉄の事故で電車が遅れて、学校についたら1時間目は始まっていて、みんな英語のLL教室室に移動したあとだった。LL教室に遅れて一人で入っていくのも、教室にひとりで待っているのもいやだからと、そのまま回れ右して帰宅。
忙しい思いして、朝、お弁当を作ったのに。
本日のうらみ:せめて弁当を食べ終わるまで学校にいてから、帰宅してくれ
2003/01/28 火 晴れ
ニッポニア教師日誌>パレスに住むエンペラの顔
漢字、会話2コマ。
「~ことがあります」の経験を述べる文型。前に、学生たちに見せてもらった冬休み中の写真の話題から導入。
ディズニーランドへ行った、初詣に神社へ行ったなど、いろいろなこれまでに出かけたことやホームステイで体験したことを出してもらい、「~ことがあります」の文を作る。
ジョナたちは、冬休みのはじめに皆で東京へ行ってきたそう。クリスマスイブイブ、すなわち天皇誕生日であるからしてパレス見物をしてきた。
「日本のお金にはエンペラの写真がありません。私たちはエンペラの顔を知りません。パレスで顔を見ることができました」と無邪気に喜んでいた。
「エンペラの顔はハンサムでしたか」「遠くから見たので、よくわかりません。」
私の例文、「ジョナさんは東京のパレスに行ったことがあります。私はまだパレスに行ったことがありません。エンペラに会ったことがありません。エンプレスと話したことがありません」
「文化勲章をもらうときにパレスの中へ行きますから、それまでは行きません」と言ってみたが、この冗談は留学生には通じなかった。
そして「皇居」と言わず、あえて彼らが使った英語のパレスということばをそのまま外来語として用いた例文の語感も、留学生には通じないだろう。
コーキョと発音するときにまつわりついているイカメシイものが、パレスと言ったとたんに身軽になり「なんとかパレス」という、街のパチンコ屋かリゾート地のストリップ劇場のような語感が出てくるから、外来語魔法のあら不思議。エンペラと発音すると、テンペラやカンペラの仲間みたいになって、いかめしさが消える。
「昨日友達とchurthに行きました」という学生に「チャーチ、日本語で教会。きのう友達と教会へ行きました。はい、リピートアフターミー」と言いなおしさせるときもあるのに、パレスは皇居と言い直しをされられないのはなぜか、なんて学生は気づかない。
外来語語感について、宮沢章夫が『茫然とする技術』所収「NHK英語講座テキスト」に書いていた文がおもしろくて笑えた。外来語語感についてこれほど卓抜な感性をほかにしらない。『茫然とする技術』図書館で借りた本だけど、文庫になったら絶対に買う。
本日のきわみ:「不敬のきわみ」なり、と、逮捕されることはない時代でよかった
2003/01/29 水 晴れ
ことばの知恵の輪>知らない日本語
午前中、Aダンス。
午後、辞書全読をはじめる。語彙数調査のため、辞書に出ている単語を全部読み、未知の語を調査する。日本語教師としてなかなかの職業訓練といえばいえるし、単なる暇つぶしとも言える。
とりあえず岩波国語辞書を読み、漢和と古語辞典で補足。
NTTの語彙数調査のリストで調べたのでは、私の日本語語彙数は約6万語と分かったので、岩波国語辞書に搭載されている57000語は、ほとんど知っているはずという前提で読み始めた。
だが、実際には未知語があるある。後半から初めて、は段からわ段へ。あ段へ戻って、か段へ。あと「さ、た、な」が残っている。
特殊な専門用語ならいざ知らず、一般国語辞書に搭載されている語で知らない語があろうかと思ったのに、思い上がってはいけない。知らない語がやはりある。
あ段で知らなかった語は4語。「文色(あいろ)」「「烏兎(うと、金烏玉兎の略)」「燕雀鴻鵠(えんじゃくこうこく、燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや、から来た四字熟語」「笈摺(おいずる)」を知らなかった。
燕雀鴻鵠は四字熟語だから、四字熟語の中には知らない語もたくさんあるはず、と納得できるのだが、文色、笈摺、烏兎の三語、これまでに文の中で見た記憶がなく、意味を初めて知った。
烏兎は日月の意。神武天皇が金色の烏を肩に乗せているのは挿絵で見て知っていて、金の烏が日の神のシンボルと知っていたのに、中国古語で金烏玉兎は太陽と月を表すというのを初めて知った。玉兎の字は知っていたが、玉のように丸っこいかわいい兎と思っていて月のシンボルとは知らなかった。無知?
ところが、娘と息子はこの「烏兎」の語と意味を知っていた。なぜなら、RPGゲームの戦いの技の中に「烏兎」という技があるからだ。烏兎の技を使うと、敵をすごいパワーでやっつけることができるのだそうだ。
笈摺は、巡礼が笈を背負うときに背中が摺れるのを防ぐための上着という。
ま、これは現代では四国遍路専門用語のうちに入るのかもしれない。昔は巡礼お遍路がどの家の門口にも立ち寄ったのだから、皆この語を知っていたのかも。
子供の頃、お遍路姿の人が門口に立つとお母さんは米や麦をお椀にひとつあげて、「お通りください」と言っていた。彼らは仕事を持っている人が宗教心にめざめて一念発起で巡礼に出るのではなく、「お遍路専門」である人なのだと言う。だから私はお遍路というのは乞食のことだと思っていた。
芝居の中で子役が甲高い声で「ジュンレーにゴホーシャー」と叫ぶのは、乞食のものごいだと思っていた。「巡礼専門職」の人々は、笈など背負っていなかったから、笈摺というものを見たことも聞いたこともなかった。
本日のひがみ:RPGの技「烏兎」を知っている子供、しらない日本語教師
~~~~~~~~~~~~~~~~~
20160128
当地滞在中に読む本として、読むのに時間がかかりそうで、少しずつ読めばいい本として、惣郷正明『辞書風物誌』「暉峻康隆の季語辞典」重い単行本なのに、持ってきました。
しごと仕事の毎日で、辞書をのんびりひもとく時間がなかなかとれません。通勤電車読書ができないので、読書時間は、寝る前の枕頭読書のみ。寝ながら読むのには、文庫以上に重い本は不適当。『辞書風物誌』は、椅子で読んでいます。
リタイア後の楽しみにと思って買った「暉峻康隆の季語辞典」結局リタイア後に読むことになりそうです。
今回は五味文彦『絵巻で読む中世』網野善彦『日本中世都市の世界』久木綾子『見残しの塔』という中世づくしの読書です。網野、まだ読み終わっていない。
今回持ってきた本のうち、久木綾子『見残しの塔』は2012年に文庫新刊で買って、結局4年間ツンドクでした。久木さん、1919年生まれ。若い頃の文学志向を結婚後は押し込めて専業主婦生活。70歳をすぎて文学活動を再開し、取材と執筆。2008年に『見残しの塔』を完成させて出版。89歳の新人作家として有名になりました。私は2012年に文庫になるのを待って買ったのですが、読んだのはヤンゴンで。ヤンゴンでひたる日本中世の職人世界面白かったです。日本の宮大工ほかの職人魂、ほんとに感服。
『絵巻で読む中世」『日本中世都市の世界』も、とても面白い。室町末期&織豊政権研究が行き詰まっているという息子くんに勧めよと思う。楽市楽座のこと、網野の「公界・無縁・楽」論は、異論があるにせよ熟知しておいたほうがよい、と思うので。「とっくに読んだ」と言うかもしれぬが。
<つづく>