もう1週間もたってしまったが、11月4日は「越後の角突き」平成24年最終回であった。
▲「天竜」と「隆政」の取組
越後の角突きは、新潟県小千谷市東山地区と、長岡市山古志地区に伝わる伝統行事であり、国の重要無形文化財に指定されている。もともと、長岡市と小千谷市の山間部は二十郷と呼ばれる小さな集落が点在する地だった。角突きは、そこに共通して伝承されてきた文化である。
角突きと同じくして伝えられてきたのが「錦鯉」。今は行政区分的に分かれてしまっているが、元々は大きな地域文化圏である。
越後の角突きは滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』にも記されており、江戸時代から有名だったことが分かる。
▲勢子はお清めの酒を口に含んで場所に臨む
もともと牛は、頭を突き合わせて押し合い、力比べをするという習性があるそうだ。この地での農耕牛もそうやって角突きをしてきた。
今は牛を農耕に使うことはなく、角突き用に牛をわざわざ買っているお宅がある。牛持ちと呼ばれる。この地では、犬の散歩ではなく、牛の散歩が日常である。
そんなのどかな地。
▲当日の取り組み発表。勢子は拍手で同意を示す
前日までは崩れていた天気もこの日は回復し、千秋楽を楽しみに出かけた。今は小千谷駅からシャトルバスも出ているので行きやすくなった。もちろん車でも行けるが、かなりの山道を行くことになる。
今回は家族の車で乳幼児連れで早めに行った。母曰く、早く行くと「ぜんざい」がもらえるからという理由でである。
▲小千谷の闘牛キャラクター「よし太クン」も登場。長靴を作ってもらっていないからか闘牛場には入れず…。
闘牛場の周囲には角突き牛が無造作につながれている。基本的におとなしいから触ることもできる(私は触らないけど)。
今回、まだ怖いもの知らずの甥っ子がしきりに牛のそばに行きたがって、ドキドキした。なにせ相手は1トン超の大牛である。よし太クンにはあまり興味がないのよねぇ…。よし太クンに幼児を魅了するキャラクターアップを求む(笑)。
▲「天寿」と「龍氣」の取組。勢子が至近距離で見守る。小千谷の勢子は藍染の法被に「角突き」と白抜きされていて格好良い。
日本には数は多くないが「闘牛」が行われているところがいくつかある。その中で「越後の角突き」が特異なのは、勝ち負けはないこと。全取組引き分けで終わる。
牛が過度に疲れないよう、傷付かないように見守る「勢子」が牛とともに大勢場内に入って取組を管理する。元々は大事な農耕牛。ひとつ屋根の下に暮らす大事な家族である。傷つけて働けなくなったら大変なわけである。
今は農業に従事する牛はいないが、家族同様に大事にしてもらっている昔ながらの飼い方をされている牛もまだいる。
▲「健康力」と「門兵衛」の取組。勢子は両手を広げて「よしたー、よしタッ!」と牛に気合いを入れる。「健康力」は地元のおじいちゃんたちが老後の楽しみに共同購入した牛である。この日も80を超えた牛持ちが場内で頑張っていた。
鼻の綱を取られて頭をつけ合わした牛は、お互いをぐいぐい押し合う。時に上から押し付けたり、クイッと首をもたげて相手の体制を崩したり、と牛は牛なりに考えながら角突きをする。
そして十分戦ったであろうというタイミングで「審判長」が手を上げる。すると、勢子が牛を分けて終わりとする。
▲「六兵衛」と「新政」の取組
▲「拓輝号」と「角銀」の取組。この2頭、すでに後ろ足を大勢の勢子に取られているのだが、当人たちはまだまだやる気満々。勢子が鼻を取りに行く。
ただ、牛も面白いところを無理やり分けられるので、なかなか思うようにいかないこともある。時に、いつまでも頭を離さないヤツや、足を取られてもまだ取り組みを続けようとするヤツ、中には勢子につかまらないよう場内を疾走するヤツもいる。
そんなヤンチャな牛と勢子のやり取りもこの角突きの見どころである。
牛の一瞬のすきをつき、取組み相手の鼻(牛の弱点)を取る勢子の鮮やかな牛さばきには場内から拍手が起きる。
▲「平野屋」と「順ノ下」の取組。後方で大勢で足を引っ張ってもやめられない2頭。この足に綱をかけるのも一つの技術である。
▲勢子に鼻を取られた「平野屋」。奥の方で「順ノ下」も鼻を取られて、ともに「痛いの~(>_<)」の顔
角突きは相撲と同じく、後半に行くほど年齢を重ねた横綱牛が出てくる。明らかに体周りも最初の牛よりも2回り以上大きい。そして、そういう牛の取り組みの方がやはり面白い。
だけど最近どうも帰りの渋滞を嫌って、早めに帰ろうとする人が少なくないのよね~。花火でもそうやって最後まで見ない人が多い。だけど花火と違って、ここの渋滞って観客数が限られているから(写真で見ても分かるでしょ)そんなに大変なことにはならないはずなんだけれどねぇ…。
何はともあれ、今年もいい角突きを楽しめた。
やはり千秋楽は牛たちがこなれていて迫力がある。初場所の初々しいデビュー戦もかわいいんだけれどね。
これから5月の初場所まで、牛たちは冬籠りに入る。そして当地は間もなく3メートル以上の雪に覆われる
▲「曙」号を引く未来の勢子。小学2年生になりました。おにいちゃんともども、闘牛場のゲート番をしていました。ちなみにお父さんがイケメンです。
【蛇足】
最近は高級カメラを抱えて最前列に座りこむ人も結構いる(お仕事先のツアーも年に1回は来ている)。
一応、ワイヤー4本(ゴムカバー付)でしっかりと区切っているのだが、やはり1トン超の牛が体当たりしてくると迫力がある。この日は前日までの雨で場内の足場が悪いためか、結構そういう取り組みが多かった。
自分もカメラを構えるので気持ちは分からなくもないが、やはりあれはちょっと危ないと思う。1本30万越えのレンズがいつか踏みつぶされますぜ~。
▲「天竜」と「隆政」の取組
越後の角突きは、新潟県小千谷市東山地区と、長岡市山古志地区に伝わる伝統行事であり、国の重要無形文化財に指定されている。もともと、長岡市と小千谷市の山間部は二十郷と呼ばれる小さな集落が点在する地だった。角突きは、そこに共通して伝承されてきた文化である。
角突きと同じくして伝えられてきたのが「錦鯉」。今は行政区分的に分かれてしまっているが、元々は大きな地域文化圏である。
越後の角突きは滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』にも記されており、江戸時代から有名だったことが分かる。
▲勢子はお清めの酒を口に含んで場所に臨む
もともと牛は、頭を突き合わせて押し合い、力比べをするという習性があるそうだ。この地での農耕牛もそうやって角突きをしてきた。
今は牛を農耕に使うことはなく、角突き用に牛をわざわざ買っているお宅がある。牛持ちと呼ばれる。この地では、犬の散歩ではなく、牛の散歩が日常である。
そんなのどかな地。
▲当日の取り組み発表。勢子は拍手で同意を示す
前日までは崩れていた天気もこの日は回復し、千秋楽を楽しみに出かけた。今は小千谷駅からシャトルバスも出ているので行きやすくなった。もちろん車でも行けるが、かなりの山道を行くことになる。
今回は家族の車で乳幼児連れで早めに行った。母曰く、早く行くと「ぜんざい」がもらえるからという理由でである。
▲小千谷の闘牛キャラクター「よし太クン」も登場。長靴を作ってもらっていないからか闘牛場には入れず…。
闘牛場の周囲には角突き牛が無造作につながれている。基本的におとなしいから触ることもできる(私は触らないけど)。
今回、まだ怖いもの知らずの甥っ子がしきりに牛のそばに行きたがって、ドキドキした。なにせ相手は1トン超の大牛である。よし太クンにはあまり興味がないのよねぇ…。よし太クンに幼児を魅了するキャラクターアップを求む(笑)。
▲「天寿」と「龍氣」の取組。勢子が至近距離で見守る。小千谷の勢子は藍染の法被に「角突き」と白抜きされていて格好良い。
日本には数は多くないが「闘牛」が行われているところがいくつかある。その中で「越後の角突き」が特異なのは、勝ち負けはないこと。全取組引き分けで終わる。
牛が過度に疲れないよう、傷付かないように見守る「勢子」が牛とともに大勢場内に入って取組を管理する。元々は大事な農耕牛。ひとつ屋根の下に暮らす大事な家族である。傷つけて働けなくなったら大変なわけである。
今は農業に従事する牛はいないが、家族同様に大事にしてもらっている昔ながらの飼い方をされている牛もまだいる。
▲「健康力」と「門兵衛」の取組。勢子は両手を広げて「よしたー、よしタッ!」と牛に気合いを入れる。「健康力」は地元のおじいちゃんたちが老後の楽しみに共同購入した牛である。この日も80を超えた牛持ちが場内で頑張っていた。
鼻の綱を取られて頭をつけ合わした牛は、お互いをぐいぐい押し合う。時に上から押し付けたり、クイッと首をもたげて相手の体制を崩したり、と牛は牛なりに考えながら角突きをする。
そして十分戦ったであろうというタイミングで「審判長」が手を上げる。すると、勢子が牛を分けて終わりとする。
▲「六兵衛」と「新政」の取組
▲「拓輝号」と「角銀」の取組。この2頭、すでに後ろ足を大勢の勢子に取られているのだが、当人たちはまだまだやる気満々。勢子が鼻を取りに行く。
ただ、牛も面白いところを無理やり分けられるので、なかなか思うようにいかないこともある。時に、いつまでも頭を離さないヤツや、足を取られてもまだ取り組みを続けようとするヤツ、中には勢子につかまらないよう場内を疾走するヤツもいる。
そんなヤンチャな牛と勢子のやり取りもこの角突きの見どころである。
牛の一瞬のすきをつき、取組み相手の鼻(牛の弱点)を取る勢子の鮮やかな牛さばきには場内から拍手が起きる。
▲「平野屋」と「順ノ下」の取組。後方で大勢で足を引っ張ってもやめられない2頭。この足に綱をかけるのも一つの技術である。
▲勢子に鼻を取られた「平野屋」。奥の方で「順ノ下」も鼻を取られて、ともに「痛いの~(>_<)」の顔
角突きは相撲と同じく、後半に行くほど年齢を重ねた横綱牛が出てくる。明らかに体周りも最初の牛よりも2回り以上大きい。そして、そういう牛の取り組みの方がやはり面白い。
だけど最近どうも帰りの渋滞を嫌って、早めに帰ろうとする人が少なくないのよね~。花火でもそうやって最後まで見ない人が多い。だけど花火と違って、ここの渋滞って観客数が限られているから(写真で見ても分かるでしょ)そんなに大変なことにはならないはずなんだけれどねぇ…。
何はともあれ、今年もいい角突きを楽しめた。
やはり千秋楽は牛たちがこなれていて迫力がある。初場所の初々しいデビュー戦もかわいいんだけれどね。
これから5月の初場所まで、牛たちは冬籠りに入る。そして当地は間もなく3メートル以上の雪に覆われる
▲「曙」号を引く未来の勢子。小学2年生になりました。おにいちゃんともども、闘牛場のゲート番をしていました。ちなみにお父さんがイケメンです。
【蛇足】
最近は高級カメラを抱えて最前列に座りこむ人も結構いる(お仕事先のツアーも年に1回は来ている)。
一応、ワイヤー4本(ゴムカバー付)でしっかりと区切っているのだが、やはり1トン超の牛が体当たりしてくると迫力がある。この日は前日までの雨で場内の足場が悪いためか、結構そういう取り組みが多かった。
自分もカメラを構えるので気持ちは分からなくもないが、やはりあれはちょっと危ないと思う。1本30万越えのレンズがいつか踏みつぶされますぜ~。
良い一時を過ごされましたね。震災の爪痕も癒え、
平常の角突きが再開されてもう何年にもなりますね。
それにしましてもあの大牛が鼻先をつままれるとい
とも簡単にコントロールされる感じがしまして
面白いですねぇ。愉快な風景がありました。
仕事が忙しいのですかね。お越しと記事更新が
ないので気になっています。
ご心配おかけしてすみません。完全にキャパシティオーバーの仕事量でして…。それでも行くところに行っているのですが(笑)