『ベル・エポック―美しき時代パリに集った芸術家たち』 パナソニック汐留美術館

パナソニック汐留美術館
『ベル・エポック―美しき時代パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に』 
2024/10/5 〜12/15



ベル・エポック期のパリの文化芸術を紹介する展覧会が、パナソニック汐留美術館にて開かれています。


アンリ=ガブリエル・イベルス「挿絵付き上演目録」 1893〜1894年  デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵

それが『ベル・エポック―美しき時代パリに集った芸術家たち』で、会場にはルノワールなどの絵画をはじめ、シェレやロートレックのポスター、またガレやラリックの工芸作品、それに当時の女性たちが身にまとった装身具など250点を超える作品が展示されていました。

今回の最大の特徴は、アメリカの大手通信企業の創設者であるデイヴィッドと、弁護士および慈善事業家であるジャクリーヌの両名が収集したコレクションによって構成されていることで、すべての作品が日本で初めて公開されました。


シャルル・モラン『ロイ・フラー(オレンジ色の衣装)(黄色の衣装)』 1895年頃 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵

そのうち絵画ではジョージ・ラクス、アンリ・ドトゥーシュ、ルイ・ルグランなど、国内では必ずしも有名ではない画家も登場していて、こうした画家の作品にも見ごたえのある作品が少なくありませんでした。


ジュール・シェレ『音楽』1891年頃、『パントマイム』1891年、『コメディー』1891年、『ダンス』1891年 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵

ハイライトを飾るのは、当時のパリの街路や劇場を彩ったポスターの名作で、文芸キャバレー・シャ・ノワールの看板猫を描いた『シャ・ノワール』や、ジュール・シェレの『音楽』といった作品に魅せられました。


手前:ピエール・ボナール『ピアノのための家族の情景集(C.テラス曲)』より 1893年 栃木県立美術館

美術、工芸、舞台、文学、モードなど多様なジャンルの作品が入り混じっているのも、展示の見どころといえるかもしれません。ボードレールの初版本やプルーストの書き込み校正刷といった貴重な資料にも目を引かれました。


Penオンラインでも展覧会の見どころを紹介しました。

国内初公開作品多数!『ベル・エポック―美しき時代』で体感する、芸術の都・パリに花開いた文化|Pen Online

12月15日まで開かれています。

『ベル・エポック―美しき時代パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に』 パナソニック汐留美術館@shiodome_museum
会期:2024年10月5日(土) 〜12月15日(日)
休館:水曜日(ただし12月11日は開館)
時間:10:00~18:00 
 *入館は閉館の30分前まで。
 *11月1日(金)、22日(金)、29日(金)、12月6日(金)、13日(金)、14日(土)は20時まで開館。
料金:一般1200円、65歳以上1100円、大学生・高校生700円、中学生以下無料。
 *ウェブサイト割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
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『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館

国立西洋美術館
『モネ 睡蓮のとき』
2024/10/5~2025/2/11


クロード・モネ『睡蓮』 1916〜1919年頃 マルモッタン・モネ美術館

国立西洋美術館にて『モネ 睡蓮のとき』が開かれています。

その『モネ 睡蓮のとき』の簡単な見どころについて、FIGARO.jpに寄稿しました。

印象派好き必見! 展覧会『モネ 睡蓮のとき』の見るべきポイント7。madameFIGARO_jp


クロード・モネ『睡蓮』 1916〜1919年頃 マルモッタン・モネ美術館

今回のモネ展の最大の特徴は、モネが長年探求してきた睡蓮に焦点を当てていることで、後年の大装飾画に連なる習作を含んだ睡蓮の作品が20点ほど展示されていました。


左:クロード・モネ『睡蓮の池』 1917〜1919年頃 右:クロード・モネ『睡蓮』 1914〜1917年頃 いずれもマルモッタン・モネ美術館

その中でもハイライトといえるのが、マルモッタン・モネ美術館のコレクションを中心とする睡蓮をモチーフとした9点の絵画の展示で、いずれもパリのオランジュリー美術館の展示室をイメージした白い楕円形の空間にて並んでいました。


こうした睡蓮のほかにも、睡蓮に達する前に水辺の景色を描いた作品や、藤やアガパンサス、そしてアイリスなどの花を描いた作品も展示されていて、とりわけ当初、睡蓮の装飾画の上部に帯状装飾として設置することを計画していた『藤』の習作が印象に残りました。

白内障を患い、不確かな視覚にあっても描き続けた晩年の絵画も充実していたかもしれません。アメリカの抽象表現主義を思わせる『日本の橋』や、服喪の象徴とも呼ばれる枝垂れ柳をモチーフとした『枝垂れ柳と睡蓮の池』なども見ごたえがありました。


「3 大装飾画の道」の展示室風景

会期中も「3 大装飾画の道」の展示室のみ撮影ができます。

人気のモネだけあり、会期はじめより土日を中心として入場への待ち時間が発生しています。混雑状況等は『モネ 睡蓮のとき』の公式SNSアカウント(@monet2024_jp)が発信しています。お出かけの際は事前にご確認ください。

展覧会の開催前、FIGARO.jpにて、アンバサダーをつとめる俳優の石田ゆり子さんにインタビューを行いました。あわせてご覧いただければ幸いです。

石田ゆり子が語る、モネとアートとパリと。 madameFIGARO_jp

2025年2月11日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、京都市京セラ美術館(2025年3月7日〜6月8日)、および豊田市美術館(2025年6月21日〜9月15日)へと巡回します。

『モネ 睡蓮のとき』@monet2024_jp) 国立西洋美術館@NMWATokyo
会期:2024年10月5日(土)~2025年2月11日(火・祝)
休館:月曜日。10月15日(火)、11月5日(火)、12月28日(土)〜2025年1月1日(水・祝)、1月14日(火)。ただし10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)、2025年1月13日(月・祝)、2月10日(月)、2月11日(火・祝)は開館。
時間:9:30~17:30 
 *金・土曜日は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2300円、大学生1400円、高校生1000円。
 *当日に限り本展の観覧券で常設展も観覧可。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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2024年11月に見たい展覧会【浅井忠/中村彝/須田悦弘】

今年も残すところあと2ヶ月となりました。11月も注目したい展覧会が少なくありません。気になる展覧会をリストアップしてみました。



展覧会

・『生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ』 世田谷美術館(9/21~11/17)
・『芹沢銈介の世界』 日本民藝館(9/5~11/20)
・『大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展』 平塚市美術館(10/5~11/24)
・『光琳 国宝「紅白梅図屏風」×重文「風神雷神図屏風」』 MOA美術館(11/1~11/26)
・『両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代』 町田市立国際版画美術館(9/14~12/1)
・『塩田千春 つながる私』 大阪中之島美術館(9/14~12/1)
・『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界展』 府中市美術館(9/21~12/1)
・『丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展』 アサヒグループ大山崎山荘美術館(9/14~12/8)
・『没後50年記念 福田平八郎×琳派』 山種美術館(9/29~12/8)
・『荏原 畠山美術館 開館記念展 Ⅰ―與衆愛玩一共に楽しむ–』 荏原 畠山美術館(10/5~12/8)
・『挂甲の武人 国宝指定50周年記念  特別展「はにわ」』 東京国立博物館(10/16~12/8)
・『荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ』 国立新美術館(10/30~12/16)
・『松谷武判』 東京オペラシティ アートギャラリー(10/3~12/17)
・『運慶展』 横須賀美術館(10/26~12/22)
・『追悼 野見山暁治 野っ原との契約』 練馬区立美術館(10/6~12/25)
・『ピカソ・セラミックー「見立て」の芸術』 ヨックモックミュージアム(10/29~2025/12/28)
・『テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする』 東京ステーションギャラリー(10/12~2025/1/5)
・『没後30年 木下佳通代』 埼玉県立近代美術館(10/12~2025/1/13)
・『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』 市原湖畔美術館(10/19~2025/1/13)
・『レオ・レオーニと仲間たち』 板橋区立美術館(11/9~2025/1/13)
・『没後100年 中村彝展―アトリエから世界へ』 茨城県立近代美術館(11/10~2025/1/13)
・『平安文学、いとをかし』 静嘉堂@丸の内(11/16~2025/1/13)
・『ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉』 千葉市美術館(11/16~2025/1/13)
・『西川勝人 静寂の響き』 DIC川村記念美術館(9/14~2025/1/26)
・『ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』 森美術館(9/25~2025/1/19)
・『京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!』 福田美術館(10/12~2025/1/19)
・『唐ごのみ』 三井記念美術館(11/23~2025/1/19)
・『浅井忠、あちこちに行く-むすばれる人、つながる時代―』 千葉県立美術館(10/30~2015/1/19)
・『田村友一郎 ATM』 水戸芸術館現代美術ギャラリー(11/2~2025/1/26)
・『小杉放菴展』 八王子市夢美術館(11/16~2025/1/26)
・『三菱一号館美術館 再開館記念 『不在』―ソフィ・カルとトゥールーズ=ロートレック』 三菱一号館美術館(11/23~2025/1/26)
・『儒教のかたち こころの鑑―日本美術に見る儒教』 サントリー美術館(11/27~2025/1/26)
・『ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見』 麻布台ヒルズ ギャラリー(11/1~2025/2/2)
・『須田悦弘展』 渋谷区立松濤美術館(11/30~2025/2/2)
・『パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅』 日本科学未来館(11/6~2025/2/4)
・『ひとを描く / ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて』 アーティゾン美術館(11/2~2025/2/9)
・『ゴミうんち展』 21_21 DESIGN SIGHT(9/27~2025/2/16)
・『そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠』 東京都庭園美術館(11/30~2025/2/16)
・『漫画家・森薫と入江亜季展』 世田谷文学館(11/2~2025/2/24)
・『特別展「鳥 ~ゲノム解析で解き明かす新しい鳥類の系統~」』 国立科学博物館(11/2~2025/2/24)
・『T2 Collection「Collecting? Connecting?」/奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展』 WHAT MUSEUM(10/4~2025/3/16)

ギャラリー

・『青山悟展「永遠なんてあるのでしょうか」 』 ミヅマアートギャラリー(10/9~11/10)
・『未来都市シブヤ_エフェメラを誘発する装置』 GYRE GALLERY(10/17~11/29)
・『日本のアートディレクション展 2024』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(11/1~11/30)
・『吉田志穂個展「印刷と幽霊」』 BUG(10/30~12/1)
・『トニー・アウスラー「Transmission」』 SCAI THE BATHHOUSE(10/4~12/21)
・『千住博・四代田辺竹雲斎 二人展「Beyond Nature」』 YUKIKOMIZUTANI(11/6~12/21)
・『渡辺志桜里 宿/Syuku』 資生堂ギャラリー(11/6~12/26)
・『ウェイド・ガイトン THIRTEEN PAINTINGS』 エスパス ルイ・ヴィトン東京(10/31~2025/3/16)

まずは近代洋画の先駆者として知られ、日本画や工芸、図案などでも業績を残した浅井忠の回顧展です。千葉県立美術館にて『浅井忠、あちこちに行く-むすばれる人、つながる時代―』が開かれます。



『浅井忠、あちこちに行く-むすばれる人、つながる時代―』@千葉県立美術館(10/30~2015/1/19)

1856年に佐倉藩の江戸屋敷に生まれた浅井は、幼少年期を佐倉市にて過ごすと、日本最初の国立美術学校「工部美術学校」第一期生としてイタリア人画家アントニオ・フォンタネージから西洋画を学びました。のちに農村風景などを油絵で描くと、パリへと留学し、アール・ヌーヴォーに感銘を受けてデザイン活動を開始しました。また帰国後は京都へと移住し、京都高等工芸学校教授を務めるなど後進の育成にも努めました。


その浅井の画業を同館の所蔵する4つの日記を軸に紹介するのが本展で、約2400件に及ぶコレクションから、収蔵後初公開8点を含む約350点の作品と資料が公開されます。各地を旅した浅井の足跡をたどりながら、作品とじっくり向き合うまたとない機会となります。

続いては大正期に活躍した洋画家・中村彝の回顧展です。茨城県立近代美術館にて『没後100年 中村彝展―アトリエから世界へ』が開かれます。



『没後100年 中村彝展―アトリエから世界へ』@茨城県立近代美術館(11/10~2025/1/13)

1887年、茨城県水戸市に生まれた中村彝は絵の道を志すと、第3回文展への初入選以降、新進洋画家として注目され、下落合にアトリエを構えて制作に励むも、1924年に肺結核によってわずか37年にて生涯を閉じました。


今回の回顧展では、重要文化財『エロシェンコ氏の像』や第3回文展への入選作『巌』、さらに約半世紀ぶりに公開される作品など約120点の作品にて中村の画業を明らかにします。なお展示は同館のみの単独開催となり、他館への巡回はありません。

ラストは現代美術です。渋谷区立松濤美術館にて『須田悦弘展』が行われます。



『須田悦弘展』@渋谷区立松濤美術館(11/30~2025/2/2)

本物と見間違うほどリアルな草花や雑草の木彫を手がける須田悦弘は、思いがけない場所に作品をさりげなく設置することで知られ、空間と作品が一体となるインスタレーションで人気を集めてきました。


その須田の都内の美術館としては25年ぶりの個展が本展で、初期作品やドローイング、また近年取り組んでいる古美術品の欠損部分を木彫で補う補作の作品などが公開されます。哲学の建築家とも呼ばれる白井晟一の瞑想的な建築空間との響きあいにも注目が集まりそうです。

ブログは不定期での更新となります。今月もよろしくお願いいたします。
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