『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ』 東京都写真美術館

東京都写真美術館
『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ』 
2024/7/30~11/3



1962年に生まれた岩井俊雄は、19世紀の実験的な視覚装置を研究すると、独自のメディアートを切り開くとともに、いわいとしお名義にて絵本『100かいだてのいえ』シリーズが大ヒットするなど、多様に活動してきました。

そのいわいとしおのメディアアーティストとしての制作と19世紀の映像装置をシンクロさせたのが『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ』で、いわいのメディアアート作品、および東京都写真美術館が所蔵する19世紀の映像装置が公開されていました。

今回の展示で興味深いのは、19世紀の映像装置のレプリカが数多く展示されていることで、いずれも実際に手で触れて動かしながら、当時の人々が見たと思われる仕掛けや視覚の効果を味わうことができました。

一方でいわいのメディアアートで目立っていたのは、1985年から1990年にかけて制作した「時間層」のシリーズでした。そのうちの『時間層II』とは、120体の紙の人形を並べた円盤を回転させ、上に画面を下向きに設置したテレビからストロボ光を照らすと、人形がダンスをするように動き回る光景が生まれる作品で、「第17回現代日本美術展」の大賞を受賞しました。

これらの4点の「時間層」のシリーズは、展示の機会が長くなかったものの、今回をメディアアート研究者である明貫紘子の協力のもとに修復され、25年ぶりに揃って公開されました。

絵本「100かいだてのいえ」の作者、いわいとしおが切り開いてきたメディアアートの世界|Pen Online

『映像装置としてのピアノ』と呼ばれるグランドピアノと映像を融合させた作品も面白いのではないでしょうか。手前のトラックボールを転がすと光のドットを描き出され、後ろのピアノの音が鳴り響きながら水晶のような光が飛び出すように作られていました。


体験型の作品が多く、見て、触れて楽しめるような展覧会だったかもしれません。なお「時間層」のシリーズの作品は毎時00分と30分に作動します。



11月3日まで開催されています。

『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ』 東京都写真美術館@topmuseum
会期:2024年7月30日(火)~11月3日(日・祝)
休館:月曜日。(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
時間:10:00~18:00
 *木・金曜日は20時まで。ただし7/20〜8/31の木・金は21時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、学生560(440)円、中高生・65歳以上350(280)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *8月30日(金)までの木・金曜日の17:00〜21:00はサマーナイトミュージアム割引:学生・中高生無料、一般・65歳以上は団体料金。
場所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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『彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」』 彫刻の森美術館

彫刻の森美術館
『彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」』 
2024/7/26〜11/4



今年3月に亡くなった彫刻家、舟越桂の展覧会が、箱根の彫刻の森美術館にて開かれています。

その『彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」』の見どころについて、Penオンラインに寄稿しました。

人間とは何かを問い続ける。彫刻家、舟越桂の展覧会が彫刻の森美術館にて開催中|Pen Online

今回の展覧会で公開されているのは、立体22点と平面35点のほか、各種資料などで、あわせて生前の舟越が仕事場としたアトリエの再現展示も行われていました。


クスノキを素材に、等身大の人物像などを制作した舟越は、キャリアを重ねることに作風を変化させていて、性別を感じさせない人物像から山のようなイメージの人物像、さらには両性具有の身体を持った「スフィンクス」のシリーズなど、人間存在を見据えつつも、多様に展開する作品世界をたどることができました。

また舟越が家族のために作り、姉の末盛千枝子によって出版された「おもちゃのいいわけ」に関する展示では、往年のおもちゃとともに、27年ぶりに新版として本に加わった作品なども公開されていて、舟越の創作の意外な一面も伺い知れました。



これらの本館ギャラリーのほかに、別棟のアートホールにて開かれている「彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選」も見応えあったかもしれません。



ここでは荻原守衛、朝倉文夫から、ブランクーシ、ジャコメッティ、舟越保武らの作品に加え、舟越が選出した三木俊治や保井智貴、それに名和晃平らの作品が紹介されていました。



また舟越桂、三沢厚彦、杉戸洋、小林正人の4名による共同制作、『オカピのいる場所』も存在感がありました。



「彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選」は一部作品を除いて撮影も可能です。



11月4日まで開かれています。

『彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」』 彫刻の森美術館 本館ギャラリー
会期:2024 年7月26日(金)〜 11月4日(月・休)
休館:なし
時間:9:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2000円、大学・高校生1600円、中学・小学生800円、未就学児無料。
 *Webチケット割引、団体割引、障害者割引あり。
住所:神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121
交通:箱根登山鉄道「彫刻の森」駅下車、徒歩2分
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『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』 SOMPO美術館

SOMPO美術館
『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』
2024/6/22~9/23



ロートレックの紙作品の個人コレクションとしては、世界最大級を誇るフィロス・コレクションが、初めてまとめて日本へとやって来ました。

それが『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』で、素描作品をはじめ、ポスターを中心とする版画、雑誌や書籍のための挿絵、さらに家族や知人にあてた手紙や写真など、約240件の作品と資料が公開されていました。

今回のロートレック展の最大の特徴は、フィロス・コレクションの中心である素描やスケッチが大変に充実していることで、細やかでかつ素早い筆触によって描かれた騎手や馬、それに肖像画などのスケッチを見ることができました。

一方で代表的なポスターにおいても比較的状態の良いものが選ばれていて、例えば第三者が文字入れする前の刷りといった、ロートレック自身のオリジナルのデザインの反映された作品を目の当たりにできました。



ブリュアンのキャバレ「ミルリトン」の宣伝用ポスターである『キャバレのアリスティド・ブリュアン』も、店名などの文字情報が載せられる前の刷りの作品で、ポスターを気に入ったブリュアンが作らせた縮小版と合わせて展示されていました。



ともすれば地味とも捉えられながらも、版画と異なり一点ものであるスケッチからは、ロートレックの視線ないし筆の動きなどをダイレクトに感じ取れたかもしれません。手紙や写真などからもロートレックの人となりや生き様が浮かび上がっているように思えました。

これまでのロートレック展とは何が違う?『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』の見どころ|Pen Online

一部のポスターの作品のみ撮影が可能でした。


9月23日まで開かれています。

『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』 SOMPO美術館@sompomuseum
会期:2024年6月22日(土)~9月23日(月)
休館:月曜日。※ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館
時間:10:00~18:00
 *金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800(1600)円、大学生1200(1000)円、高校生以下無料。
 ※( )内は事前購入料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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2024年9月に見たい展覧会【空の発見/塩田千春/田中一村】

連日の凄まじい猛暑から一転、台風の影響により長く雨が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。



9月は秋のシーズンを迎え、多くの展覧会が開幕します。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・『吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる』 埼玉県立近代美術館(7/13~9/23)
・『平田晃久―人間の波打ちぎわ』 練馬区立美術館(7/28~9/23)
・『夏と秋の美学』 根津美術館(9/14~10/20)
・『GO FOR KOGEI 2024』 富山県富山市、石川県金沢市(9/14~10/20)
・『南条嘉毅 展|地中の渦』 KAAT神奈川芸術劇場(9/23~10/20)
・『Nerhol 水平線を捲る』 千葉市美術館(9/6~11/4)
・『特別展 眼福』 静嘉堂@丸の内(9/10~11/4)
・『北アルプス国際芸術祭2024』 長野県大町市(9/13~11/4)
・『瑛九』 横須賀美術館(9/14~11/4)
・『開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ』 東京都現代美術館(8/3~11/10)
・『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』 東京都現代美術館(8/3~11/10)
・『空の発見』 渋谷区立松濤美術館(9/14~11/10)
・『建物公開2024 あかり、ともるとき』 東京都庭園美術館(9/14~11/10)
・『没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―』 サントリー美術館(9/18~11/10)
・『田名網敬一 記憶の冒険』 国立新美術館(8/7~11/11)
・『バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰』 三井記念美術館(9/14~11/12)
・『生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ』 世田谷美術館(9/21~11/17)
・『芹沢銈介の世界』 日本民藝館(9/5~11/20)
・『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』 六甲山上(8/24~11/24)
・『両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代』 町田市立国際版画美術館(9/14~12/1)
・『塩田千春 つながる私』 大阪中之島美術館(9/14~12/1)
・『田中一村展 奄美の光 魂の絵画』 東京都美術館(9/19~12/1)
・『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界展』 府中市美術館(9/21~12/1)
・『丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展』 アサヒグループ大山崎山荘美術館(9/14~12/8)
・『西川勝人 静寂の響き』 DIC川村記念美術館(9/14~2025/1/26)
・『ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』 森美術館(9/25~2025/1/19)
・『ゴミうんち展』 21_21 DESIGN SIGHT(9/27~2025/2/16)

ギャラリー

・『Ryu Itadani「Everyday Life “THERE“」』 ポーラ ミュージアム アネックス(8/9~9/23)
・『ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展』 GYRE GALLERY(7/17~9/24)
・『山本昌男展「生物 ≅ 静物」』 ミヅマアートギャラリー(8/28~9/28)
・『Yabiku Henrique Yudi 「JARRING HARMONY」』 YUKIKOMIZUTANI(9/20~10/19)
・『空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信』 資生堂ギャラリー(8/27~10/20)
・『ハルーン・ミルザ Ceremonies and Rituals』 SCAI THE BATHHOUSE(8/27~10/12)
・『上西祐理 Now Printing』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(9/3~10/23)
・『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』 銀座メゾンエルメス フォーラム(9/7~2025/1/13)

まずは日頃見ないことのない「空」をテーマとしたユニークな展覧会です。渋谷区立松濤美術館にて『空の発見』が開かれます。



『空の発見』@渋谷区立松濤美術館(9/14~11/10)

ここでは江戸時代より近現代へと至る美術の「空」の表現の変遷をたどるもので、松川龍椿の『京都名所図屏風』や前北斎改為一の『富嶽三十六景山下白雨』、また岸田劉生の『窓外夏景』に萬鉄五郎『雲のある自画像』、さらには阪本トクロウの『ディスカバー』などの多彩な作品が公開されます。


「宇宙への意識、夜空を見上げる」や「カタストロフィーと空の発見」など、「空」にまつわる独特な切り口の章構成も見どころとなるかもしれません。

続いては現代アートファン待望の展覧会です。大阪中之島美術館にて『塩田千春 つながる私』が行われます。



『塩田千春 つながる私』@大阪中之島美術館(9/14~12/1)

これは大阪生まれのアーティスト、塩田千春が実に16年ぶりに当地で個展を開くもので、代名詞ともいえる糸を使った大規模なインスタレーションなどが展示されます。


中之島美術館の広くスタイリッシュな展示空間へ作品がどのように響き合うのかにも注目が集まりそうです。

ラストは画家、田中一村の一大回顧展です。東京都美術館にて『田中一村展 奄美の光 魂の絵画』が開催されます。



『田中一村展 奄美の光 魂の絵画』@東京都美術館(9/19~12/1)

栃木県にて生まれ、東京美術学校を2ヶ月で退学した後、千葉で農業をしながら制作に従事した一村は、50歳にて奄美大島へ移住すると、染色工として働きながら、同地の自然や風土を題材にした日本画を数多く描きました。

その一村の画業の全貌に迫るのが『田中一村展 奄美の光 魂の絵画』で、絵画を中心にスケッチ、工芸品、資料など250件を超える作品が公開されます。


一村は過去、展覧会にて作品が公開される度に人気を集めてきましたが、まさに回顧展の決定版といえる内容となるかもしれません。

ブログは不定期での更新となります。それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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