坂茂のオンライン・ギャラリートークで鑑賞する「坂茂建築展」

大分県立美術館
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」
2020/5/11~7/5



「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」を開催中の大分県立美術館が、建築家、坂茂(ばんしげる)によるオンライン・ギャラリートークを動画で配信しています。



そこでは坂さんが、美術館の主幹学芸員である宇都宮壽さんとZOOMでやり取りしながら会場を案内していて、冒頭では美術館の建物で特徴的なガラス水平折戸の開放について触れていました。そして紙管で建てた坂茂の別荘の一部を実物大で再現したスペースや、大分県立美術館のカフェのために設計した椅子が並ぶ光景なども映像で見られました。

展示は「紙の構造」、「木の可能性」、「手で描く」、「プロダクトデザイン」、さらに「災害支援」の5つのテーマから構成されていて、1つ1つの意図についても解説から理解することが出来ました。


「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年 フランス、パリ近郊 Scale:1/150

「紙の構造」では、1985年のアルヴァ・アアルト展に用いた紙の内装や、1995年に建てた紙の建築である小田原パビリオンなどの資料が展示されていて、紙管による回廊の展示室内の光景も良く分かりました。


「ハノーバー国際博覧会日本館」 2000年 完成模型 1/100

2000年のハノーバー国際博覧会日本館では、紙管の模型が展示されていて、重りを載せて製図したプロセスについて語っていました。また実物大のジョイントの模型や、完成した建物の写真も印象的で、学生との協働や、簡単に施工し得るような建物の設計など、坂の建築に対するアプローチも興味深く思えました。


大分県立美術館 ©Hiroyuki Hirai

2つ目の「木の可能性」では、中国の伝統的な竹の帽子から着想を得たポンピドゥーセンター・メスの屋根や、スイスのメディアでチューリッヒに建てたタメディア本社の模型などが並んでいました。それに韓国のゴルフ場のクラブハウスに用いられた3分の1の柱の模型や、OPAMこと大分県立美術館の資料展示も充実しているようで、多数の模型が展示室に並ぶ光景を目の当たりに出来ました。また自然や環境を意識した建築設計も目立っていました。

「手で描く」では、手書きのスケッチが壁一面に天井付近まで展示されていて、「コンピューターによる図面は頭に繋がるのに対し、手書きの図面は心に直結している。」との坂のコメントも心に深く留まりました。


「富士山世界遺産センター」 2017年 静岡県富士宮市

「プロダクトデザイン」で面白いのは、坂が学生時代に設計したという照明でした。当時は実現しなかったものの、最近製品化し、ホテルに使われたとのことで、坂が照明までを手掛けていたとは知りませんでした。


「コンテナ多層仮設住宅」 2011年 完成模型 1/300

ラストは坂がライフワークとしている「災害支援」のプロジェクトで、阪神淡路大震災の紙の仮設住宅や教会、ニュージーランドのクライストチャーチの「紙の大聖堂」などの写真や模型が並んでいました。そして「紙の大聖堂」では、中にカメラを入れる映像があり、あたかも実際の聖堂の中へ立ち入ったかのような臨場感が得られました。


「紙の教会」 1995年 完成模型 1/50

それに2004年の中越地震より提供している、避難所の間仕切りの実物のシェルターも展示されていて、新型コロナなどの感染症対策にも有用との指摘も納得するものがありました。「災害で住環境を失った人々を支援するのも建築の仕事」との言葉も重みがあるのではないでしょうか。

オンライン・ギャラリートークの動画は約1時間に及んでいて、大変に細かく丁寧な解説をじっくり聞くことが出来ました。見応えも十分でした。



この他、大分県立美術館では、「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」の設営作業も動画で公開していて、様々な模型が展示室に築かれる光景をスピード感ある映像にて捉えられていました。トーク動画と合わせて見るのも良いかもしれません。



さて4月17日から臨時休館していた大分県立美術館ですが、新型コロナウイルスの感染防止対策を行い、5月11日より再開館しました。


入館時にはサーモカメラによる体温測定が実施される他、所定の用紙に代表者指名や来館日時、それに電話番号、市町村名などの連絡先を記入する必要があります。また大分県の新型コロナウイルス感染症対策本部によって、海外から入国、帰国、ないし特定警戒都道府県より来県した場合は、2週間の健康観察と外出の自粛を要請されています。

もちろん消毒液での消毒の徹底、咳エチケットやマスク着用などの感染予防対策も必須です。お出かけの際は十分にご注意下さい。

注)大分県立美術館の外観を除くブログ内写真は、「建築倉庫ミュージアム」(寺田倉庫)、及び「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」(TOTOギャラリー・間)会場内で撮影。

「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」 大分県立美術館@OPAM_OPAM
会期:2020年5月11日(月)~7月5日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~19:00
 *金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学・高校生700(500)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *半券提示でコレクション展も観覧可。
住所:大分市寿町2-1
交通:JR大分駅府内中央口(北口)から徒歩15分。JR大分駅前7番乗り場から、大分交通バス「青葉台線」(田室町経由)23番・24番、「県立図書館線」(田室町経由)3番、スカイタウン高崎線(西春日町経由)8番に乗車し、「オアシスひろば前」下車すぐ。JR大分駅上野の森口前から中心市街地循環バス「大分きゃんばす」に乗車し、「オアシスひろば前(県立美術館南)」下車すぐ。
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アーティストが動画で語る「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」展

DIC川村記念美術館
「開館30周年記念展 ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」
2020/3/20~7/26 *開催延期、臨時休館中



臨時休館中のDIC川村記念美術館が、開催延期となった「開館30周年記念展 ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」を動画で紹介しています。

「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」とは、美術館のコレクションと現代作家5名がコラボレーションした展覧会で、ジョセフ・コーネルやジョアン・ミロ、それにサイ・トゥオンブリーの作品などを踏まえつつ、福田尚代、野口里佳、さわひらきらが自らの作品を公開しています。

【ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち】紹介動画
 さわひらき × サイ・トゥオンブリー
 杉戸洋 × ラリー・ベル
 野口里佳 × ジョアン・ミロ
 福田尚代 × ジョゼフ・コーネル
 渡辺信子 × エルズワース・ケリー



今回の動画で興味深いのは、会場の作品を映像で紹介するとともに、出展した作家が展示のコンセプトなどについて語っていることでした。例えば野口里佳はミロの「コンポジション」から鳥のモチーフを取り上げた上、野生の孔雀や植物の写真を撮影した経緯について触れていました。また自ら訪問したという、マヨルカ島にあるミロのアトリエのエピソードも興味深いものがありました。

またエルズワース・ケリーの「ブラック・カーヴ」を選び、全て新作の彫刻を出展した渡辺信子の動画からは、天井高を活かした会場の雰囲気が良く伝わるのではないでしょうか。渡辺が「シンフォニーのように作品が響く」と展示を語るのも、少なからず動画から感じることが出来ました。



さわひらきも、トゥオンブリーの「無題」とどのように自作を関連づけるかについて悩んだことや、抽象に向き合うことが良い経験になったことなどを語っていて、作家の率直な展示に対するスタンスも伺い知れました。壊れたメトロノームを取り出して「可愛い」と話すなど、さわひらきの意外な人となりも感じられるかもしれません。


この他、公式Instagramアカウントでも会場風景を公開しています。そちらを合わせて見るのも良さそうです。

さて1990年5月2日に開館したDIC川村記念美術館は、今年で開館30周年を迎えました。



私が初めて川村記念美術館へ行ったのは、2004年に開催されていた「ロバート・ライマン」展のことでした。まだ当時、現代美術に関心を持ち始めた頃で、白が静かに揺らぐようなライマンの絵画とともに、レンブラントから印象派、ピカソやシャガール、そして何よりもロスコなどの20世紀のアメリカ現代美術の充実したコレクションに感銘を受けたことを覚えています。かの有名な「ロスコ・ルーム」も、現在の変形7角形の展示室にリニューアルする前でした。



DIC川村記念美術館はコレクションとともに、マナーハウスを思わせるような建物、あるいは四季の草花が楽しめる里山の庭園など、都会の美術館では得難い魅力が存在します。京成やJRの佐倉駅から揺られる送迎バスも小旅行気分を味わえる上、しばらく前に東京から美術館へ向かう高速バスも運行され、かつてよりアクセスは向上しました。



梅雨の時期は紫陽花が見頃を迎えます。再開館した際には是非とも訪ねたいと思いました。

「開館30周年記念展 ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:2020年3月20日(金・祝)~7月26日(日) *開催延期、臨時休館中。
休館:月曜日。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1300(1100)円、学生・65歳以上1100(900)円、小・中・高生600(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *コレクション展も観覧可。
 *5月5日(木)はこどもの日につき高校生以下入館無料。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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「みる」、「よむ」、「つくる」など多様なコンテンツで楽しむ「おうちでポーラ美術館」

「モネとマティス―もうひとつの楽園」の開幕を延期し、臨時休館中のポーラ美術館が、動画の閲覧や塗り絵などを自宅で楽しめるコンテンツ、「おうちでポーラ美術館」を展開しています。



「おうちでポーラ美術館」
https://www.polamuseum.or.jp/enjoyathome

「おうちでポーラ美術館」の主なコンテンツは4つで、まずは「みる」と題し、前回展の「シュルレアリスムと絵画」や、過去に行われた「モディリアーニを探して-アヴァンギャルドから古典主義」展などのギャラリートークの動画を公開していました。



中でも「シュルレアリスムと絵画」展が充実していて、1から4までの各Chapterを、学芸員の方が5分から10分ほどで丁寧に解説していました。また例えばダリの作品では、「何に見えますか?」など観客に問いかけつつ、身振り手振りで作品のイメージを紹介していて、とても引き込まれるものを感じました。それこそワンツーマンでお話を聞いているような感覚を覚えるかもしれません。



さらに「みる」の「じっくり見よう」のコーナーでは、同館でも有数の化粧道具のコレクションの中から、19世紀の貴重な化粧ケースなどを手で取り出す様子を紹介していて、美術館で実物を見るのとは異なった鑑賞体験を得ることも出来ました。

続く「読む」では、マンガや人物相関図などで、モディリアーニやルドンの人となりや同時代と後世への影響関係などを紹介していて、より親しみやすく画家に接しているような気持ちにさせられました。



またここでは過去の展覧会のコンテンツから、印象派画家のプロフィールや作品の紹介、シュルレアリスム絵画に登場する用語の解説、あるいは美術における女性のファッションの変遷などについてもWEBにてまとめられていました。中でもモディリアーニを中心としたエコール・ド・パリの画家の足跡を、Googleマップのストリートビューを利用して読み解く、「エコール・ド・パリの画家たちが過ごしたパリ」も面白いのではないでしょうか。ゴッホの「アザミの花」などの絵画を拡大して筆触を分析した、調査レポートも興味深いものがありました。



そして「つくる」では、モネの「睡蓮の池」などの塗り絵をダウンロードして楽しめる他、「親子で楽しもう」として、マティスの切り絵の制作プロセスを辿るアニメーション動画も公開されていました。



ラストが「ポーラ美術館を知る」で、過去に同館で行われた宿泊イベントの動画や、美術館のイントロダクションムービーを閲覧することが出来ました。



木漏れ日の差し込む森の遊歩道の動画を見ていると、私も以前に「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」を見た際、スーザン・フィリップスの「ウインド・ウッド」のサウンドインスタレーションが、森の中の鳥のさえずりや小川の流れる音と一体になって響いていたことを思い出しました。


もちろん再び森林浴を楽しみながら、日本と西洋絵画の名品を鑑賞出来ることを願ってやみませんが、しばらくは「おうちでポーラ美術館」で、ポーラ美術館のコレクションを愛でるのも良いかもしれません。

「モネとマティス―もうひとつの楽園」 ポーラ美術館@polamuseumofart
会期:2020年4月23日(木)~11月3日(火・祝)  *開幕延期、臨時休館中。
休館:会期中無休。
時間:9:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800(1500)円、65歳以上1600(1500)円、大学・高校生1300(1100)円、中学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
交通:箱根登山鉄道強羅駅より観光施設めぐりバス「湿生花園」行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。小田急線・箱根登山鉄道箱根湯本駅より箱根登山バス「ポーラ美術館」(桃源台線)行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。(所要時間約40分)有料駐車場(1日500円)あり。
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くまモンと一緒に見る「モダンアート ニッポン!ウッドワン美術館名品選」

熊本県立美術館
「モダンアート ニッポン!ウッドワン美術館名品選」
2020/3/20~5/15 *開催延期。5/7より開館。



新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休館中の熊本県立美術館が、開催延期となった「モダンアート ニッポン!」展の一部の様子を動画で配信しています。

それが「おうちで美術館」で、熊本県立美術館や熊本城周辺の魅力をSNSなどで発信している熊本県立大学の学生チーム、「Artract(アートラクト)」(@artract16)のWEBサイトから視聴出来ました。



「Artract」(熊本県立大学津曲研究室 学生チーム)
https://artract16.wixsite.com/home

まず「熊本県立美術館展示紹介動画集」では、展示作品を解説を交えて紹介していて、橋本関雪の「片岡山のほとり」や上村松園の「舞支度」、それに川合玉堂の「冬嶺孤鹿」などを、引きとアップのアングルの映像で見られました。



出展中最大の藤田嗣治の「大地」では、学芸員の方が作品の横で手を挙げていて、サイズを体感的に知ることが出来ました。なお「大地」は、銀座聖書館のブラジルコーヒー陳列所を飾るために制作され、当初、横幅15メートルだったものの、後に依頼主の邸宅に移された際に切り取られたことから、現在は幅10メートルほどになっているそうです。



続く「モダンアートニッポン展 くまモン編」では、誰もが知る熊本県PRマスコットキャラクターのくまモンが登場し、会場内で学芸員の解説を聞きながら、下村観山や岸田劉生の作品を鑑賞していました。そのうち劉生では、チラシ表紙を飾った「毛糸肩掛せる麗子肖像」が引用されていて、麗子と同じモチーフの肩掛けをくまモンも着ていました。なかなか面白い演出ではないでしょうか。



おうちで美術館―ステイホームで楽しんでね―

それに「毛糸肩掛せる麗子肖像」では、「レイコでファッションショー」とし、自由に服を描ける塗り絵もPDFでダウンロード可能でした。さらに同館のコレクションであるルノワールの「胸に花を飾る少女」の塗り絵も公開されていて、今後も増えていくとのことでした。


この他、熊本県立美術館の公式Twitterアカウントでは、「学芸員のイッピン!」として、学芸員のおすすめの作品を画像をテキストで紹介していました。

ちなみにTwitter上で「#おうちで美術館」を検索すると、全国各地の休館中の美術館や博物館の様々なSNSでの取り組みが出てきます。それらを追いかけるのも楽しいかもしれません。

*5月6日追記

5月7日(木)からの開館が決まりました。当初会期の10日までを延長し、15日(金)まで開館します。また7日以降の休館日はありません。

「モダンアート ニッポン!ウッドワン美術館名品選」 熊本県立美術館@kumamoto_kenbi
会期:2020年3月20日(金・祝)~5月15日(金) *開催延期。5月7日より開館し、当初会期(10日まで)を延長して、15日(金)まで開館。
休館:月曜日(月曜祝日の場合は開館し、翌日休館)。5月7日以降は会期終了まで無休。
時間:9:30~17:15
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(900)円、大学生800(600)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
場所:熊本市中央区二の丸2
交通:市電「熊本城・市役所前」または「花畑町」下車、徒歩15分。熊本駅より熊本城周遊バス「しろめぐりん」にて「熊本城・二の丸駐車場」下車、徒歩3分。
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「おうちで式場展」で見る「式場隆三郎:脳室反射鏡」展

広島市現代美術館
「式場隆三郎:脳室反射鏡」 
2020/3/14~5/17 *臨時休館中



2月29日より臨時休館中の広島市現代美術館が、「式場隆三郎:脳室反射鏡展」をオンラインで楽しめる特設サイト「おうちで式場展」を公開しています。



「おうちで式場展」
https://www.hiroshima-moca.jp/ryuzaburo_shikiba/special/

主なコンテンツは3つあり、最初にアップされた「続・無観客美術館」では、式場展の展示風景を引きを中心としたアングルで撮影し、動画として紹介していました。同館の映像部の方々による制作で、ダイジェスト版を含めると4本あり、全部で5分程度でした。会場内の雰囲気を掴むのに良いかもしれません。



続くコンテンツが「都築響一 誌上展覧会」で、都築氏のメルマガで有料配信された「怪人シキバ二十面相」が特別に掲載されていました。これが想像以上に充実していて、精神科医で文筆家でもあり、またゴッホ研究家で山下清の紹介者でもあった式場のマルチな活動を、豊富なテキストや図版を通して追うことが出来ました。中でも戦時下における民藝との関わりや、書物への偏愛などの面は興味深いのではないでしょうか。ちなみに日本へのゴッホ受容に際しては、2017年に東京都美術館で開催された「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」でも式場の資料展示がありました。



ラストが「バーチャル展覧会」で、画面を動かしながら展示室を360度の方向から見ることが出来ました。ここで面白いのは「画面の表示」と「情報の表示」のアイコンがあることで、それらをクリックすると一部展示資料を閲覧出来たり、解説文が表示されました。またgoogle Polyを通すと全画面で表示されるため、会場内へ立ち入ったかのような臨場感も得られるかもしれません。


休止中の展覧会をWEBで伝える試みが各美術館で増えていますが、広島市現代美術館の「おうちで式場展」もかなり充実しているのではないでしょうか。さらに同館では本展のみならず、「おうちで図録を楽しもう!」として、過去展の図録を送料無料で購入出来るキャンペーンや、ワークショップの「おうち」バージョンをyoutubeで公開するなど様々な取り組みを行っています。


*里見公園(市川市)に咲くバラ。数年前に撮影。

さて今回の展覧会の主人公である式場隆三郎は、昭和11年、千葉県市川市の国府台に精神科の式場医院を設立し、院内にバラ園を整備しました。しかし昭和30年に火災が発生し、多くの方が亡くなる悲劇に見舞われましたが、後に新病院を建設して再びバラ園を開設するなど、市川市と縁の深い人物でもあります。そして市の花にはバラが指定され、没後に市の名誉市民として顕彰されました。

私も市川市に在住していることもあり、少なからず式場について関心を持っていて、以前、市の文学ミュージアムで開催された「炎の人 式場隆三郎ー医学と芸術のはざまで」を観覧したことがありました。主に式場の芸術面の関わりについて紹介する展覧会でした。



「式場隆三郎:脳室反射鏡」も見られれば良かったのですが、コロナの件もあり、叶いそうもありません。まずはWEBでのコンテンツを作って下さった広島市現代美術館のスタッフの皆さんに感謝致したいと思います。

「式場隆三郎:脳室反射鏡」 広島市現代美術館@HiroshimaMOCA
会期:2020年3月14日(土)~5月17日(日) *臨時休館中
休館:月曜日(5月4日を除く)、5月7日(木)。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生700(600)円、高校生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は30名以上の団体料金。
場所:広島市南区比治山公園1-1
交通:広電(市内路面電車)比治山下駅より徒歩10分。広島駅及び紙屋町より広電・広島バスにて「段原中央」下車。動く歩道「比治山スカイウォーク」経由にて約700m。
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オンラインショップで探したい展覧会カタログ&グッズ

「ほぼ日刊イトイ新聞」が運営する「ほぼ日カルちゃん」が、新型コロナウイルスの影響により休止、あるいは開催が延期された、展覧会のカタログやグッズをオンラインで発売しています。



「ほぼ日カルチャんWEBショップ」
https://www.1101.com/store/culturen_shop/

現在、扱われているのは、いずれも開催日が未定の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(国立西洋美術館)と「古典×現代 2020」(国立新美術館)、それに「特別展 和食」(国立科学博物館)や、休止中の「ピーター・ドイグ展」(東京国立近代美術館)のカタログやグッズなど約60点で、カタログにはもれなく「カルちゃんステッカー」のおまけが付いていました。また各展覧会の取材記事へのリンクもありました。



4月28日にスタートしたばかりにも関わらず、一部の商品は既に「再販売検討中」と表示されていて、事実上の品切れとなっていました。なおオンラインでの購入に際しては、「ほぼ日ストア」のシステムに登録する必要がありました。



東京の美術や演劇、それに音楽や映画などの催しを紹介する「ほぼ日カルチャん」の店舗は渋谷PARCOの4階にありますが、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、2020年4月7日より休業しています。

そして「ほぼ日カルチャん」と同様、オンラインで展覧会のカタログなどの販売を行っているのが、「OIL by 美術手帖」の運営する「Exhibition Catalogue &Goods Collection」で、4月27日にオープンしました。



「Exhibition Catalogue &Goods Collection」
https://oil-catalogues.bijutsutecho.com

スタート段階で13の展覧会が参加し、約80点以上のカタログやグッズが扱われていて、今後も約30の展覧会が参加表明するなど、「ほぼ日カルチャんWEBショップ」よりも網羅的でした。また品切れも少なく、在庫も比較的、余裕があるようでした。

【参加予定の展覧会一覧】 *4月27日段階

「ピーター・ドイグ展」(東京国立近代美術館)
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」(東京都現代美術館)
「ソール・ライター展」(Bunkamura ザ・ミュージアム)
「ゴッホ展」(兵庫県立美術館)
「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ」(名古屋市美術館)
「ラウル・デュフィ展」(松本市美術館)
「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私」(原美術館)
「久門剛史―らせんの練習」(豊田市美術館)
「木梨憲武展 Timing‐瞬間の光り‐」(長崎県美術館)
「柚木沙弥郎のいま」(松本市美術館)
「2020年のさざえ堂—現代の螺旋と100枚の絵」(太田市美術館・図書館)
「おいしい浮世絵展」(森アーツセンターギャラリー)
「和食~日本の自然、人々の知恵~」(国立科学博物館)



「OIL by 美術手帖」は美術専門誌の「美術手帖」が、国内のギャラリーやアートストアとともに開設したマーケットプライス型の販売サイトで、実店舗は「ほぼ日カルチャん」と同じ渋谷PARCOにあります。こちらも休業中です。



「ほぼ日カルチャんWEBショップ」のサイトにも案内がありますが、サイトを閲覧しながら、ミュージアムショップを歩くようにグッズを愛でるのも楽しいのではないでしょうか。いずれのサイトでも今後、取り扱いする展覧会やグッズが追加されていくそうです。


この他、一部の展覧会のカタログは、「NADiff Online Shop」などでも扱われています。取り寄せの期日を鑑みるとGW中には間に合わないかもしれませんが、しばらくは見られなかった展覧会のカタログを自宅でじっくり読むのも良いかもしれません。

東京都美術館にて会期途中で閉幕し、山口県立美術館での開催が延期となっている「ハマスホイとデンマーク絵画」の特設オンラインショップが、4月30日の10時にオープンします。



「ハマスホイとデンマーク絵画」特設オンラインミュージアムショップ
URL:https://hammershoi.shop/
グッズ注文受付期間:2020年4月30日(木)午前10時~5月10日(日)午後11時59分
*5月11日(月)以降の販売については未定。


オンラインミュージアムショップの開設期間は5月10日までで、以降の販売については未定です。また展覧会の開催状況や在庫の有無により、途中で受付停止となる場合もあります。「ハマスホイとデンマーク絵画」のグッズはどれも魅惑的だっただけに、人気を集めるのではないでしょうか。

「ほぼ日カルチャん」@culturen_1101
概要:「まいにち、東京特集。」をテーマにしたWEBサイトほぼ日刊イトイ新聞による「東京の文化案内所」。舞台、映画、ライブ、展覧会など連日さまざまなイベントが行われている東京の催しを、ほぼ日の視点でセレクトし、紹介しています。
店舗住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO4階 *2020年4月7日より臨時休業中。

「OIL by 美術手帖」@OILbyBT
概要:2019年オープン。これまでアートシーンの動向を伝えてきた『美術手帖』が、日本を代表するギャラリーやアートストアとともにつくる、アートに特化したマーケットプレイス型の販売サイトです。
店舗住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO2階 *2020年4月7日より臨時休業中。
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「おうちで体験!かはくVR」で探検する国立科学博物館

国立科学博物館が、3DビューとVR映像で館内を紹介する特設サイト、「おうちで体験!かはくVR」を公開しています。



「おうちで体験!かはくVR」
https://www.kahaku.go.jp/VR/

これは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、臨時休館している同館が、一般財団法人VR革新機構の協力によって高画質画像を撮影したもので、スマホやPCにて自由に閲覧出来ました。但しVR映像としての鑑賞には、専用ゴーグル、及びメガネが必要でした。



まずトップページでは、博物館の「日本館」と「地球館」が選択可能で、例えば「日本館」をクリックすると、建物のドールハウスの全景から、3階「日本列島の生い立ち」の一角にある、フタバスズキリュウの展示風景が表示されました。



さすがに高精細画像だけに、画像は明らかに鮮明で、作品のみならず、キャプション一部までも読めました。博物館の中に立ち入っているような雰囲気が得られるのではないでしょうか。



「かはくVR」で面白いのは、単に館内を3Dで画像で楽しめるだけでなく、ドールハウスの断面図やフロアマップが表示されることでした。また地下から3階までの移動も、フロアセクターのアイコンでスムーズに行えました。



3階の展示室からそのまま地下へ移動するとラウンジがあり、反対側のミュージアムショップも覗き込むことが出来ました。一般的に入場出来るほぼ全てのスペースが撮影されていて、入れない場所はトイレといった程度でした。



広大な面積を有する国立科学博物館だけに、一通り、館内を見て歩くのも相当の時間がかかりますが、3階から2階、1階へと、順に降りながら展示資料を見学するのも分かりやすいかもしれません。



一方で「地球館」も、地下3階から地上3階へ至る全フロアが、3D及びVR映像で公開されていて、「日本館」と同様に展示室を行き来したり、標本などを拡大して閲覧出来ました。



この「地球館」でおすすめなのは、3階の「大地を駆ける生命」のコーナーで、野生の大型獣の剥製が100体以上も並ぶ光景を、実際の会場と同じように、ぐるりと一周、360度の方向から眺められました。実に壮観ではないでしょうか。



上野公園のジャイアントパンダや、現存する3体のうちの1つであるニホンオオカミなど、どれもが貴重な剥製ばかりであるのは言うまでもありません。



また2階では、ラバウル沖で発見された零戦や、日本初の液体酸素ロケットエンジンの「LE-5」なども、高精細な画像で楽しめました。



「おたずねの多い展示」国立科学博物館
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/permanent/imgs/otazune.pdf

以前より国立科学博物館では、「おたずねの多い展示」として、アンモナイト化石やダイオウイカ、それに月の石など、人気のある展示資料をPDFで公開しています。そちらを参照しながら3D画像を追っていくのも面白いかもしれません。



「おうちで体験!かはくVR」の制作に際しては、一辺25センチの3Dカメラを用い、博物館の約1500点もの箇所が休館中に撮影されました。またカメラの高さが約120センチと子どもの目線に合わせているのも特徴で、もちろんファミリーに人気の「親子とのたんけんひろば コンパス」も見られました。



この他では、まるでSF映画に登場する宇宙船のような「地球館」の全体を俯瞰したドールハウスも迫力がありました。



報道によると、一般財団法人VR革新機構では、国立科学博物館以外にも撮影を希望する施設を募集しているそうです。まずは新型コロナウイルスの一刻も早い鎮静化を願うばかりですが、ひょっとすると他の美術館や博物館でも高精細な3Dビューを見られるかもしれません。


youtubeで公開中の「かはくチャンネル」などと合わせて楽しむのが良いのではないでしょうか。率直なところ、想像以上に臨場感がありました。

「おうちで体験!かはくVR」 国立科学博物館
ウェブサイト:https://www.kahaku.go.jp/
YouTube: https://www.youtube.com/NMNSTOKYO/
Facebook: https://www.facebook.com/NationalMuseumofNatureandScience/
Twitter: https://twitter.com/museum_kahaku/
Instagram: https://www.instagram.com/kahaku_nmns/
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バーチャル・ツアーやニコニコ美術館で見る「ピーター・ドイグ展」

東京国立近代美術館
「ピーター・ドイグ展」
2020/2/26~6/14 *臨時休館中



新型コロナウイルス感染拡大に伴い、臨時休館中の東京国立近代美術館が、「ピーター・ドイグ展」の会場風景を、Facebookページ上で公開しています。

その名は「FB限定バーチャル・ツアー」で、4月11日を1日目とし、20日を10日目として、会場内を章を追って順に紹介していました。



ここで特徴的なのは、360度カメラで館内を撮影していることで、Facebook上では写真を動かすことも出来ました。また写真を拡大することも可能ですが、かなり引きのアングルであるため、細かなタッチなどを見ることは叶いませんでした。ただし会場内の大まかな雰囲気は分かるかもしれません。

それを補って余りあるのが、ニコニコ美術館で公開された「ピーター・ドイグ展」の解説動画で、休館中の3月18日の19時から生中継されましたが、現在もアーカイブとして閲覧することが出来ます。



休館中の東京国立近代美術館「ピーター・ドイグ展」から生中継【ニコニコ美術館】

ゲストに現代アーティストの五月女哲平さんをお迎えし、東京国立近代美術館の主任研究員の桝田倫広さんと、当時は企画課長で、4月から横浜美術館の館長に就任された蔵屋美香さんが作品を参照しながら、時に動画のコメントに反応しつつ、実に細かに解説されていました。

所要時間もゆうに2時間半に及んでいますが、おそらく実際のギャラリートークでもこれほどの長時間に渡って作品を紹介することはまずありません。時に冗談を交えつつも、蔵屋さんらの鋭い視点は、あたかもドイグの絵画を解剖していると思うほどでした。この他、設営の準備段階のエピソードなども興味深いものがありました。

さて「ピーター・ドイグ展」ですが、2月26日に無事開幕したものの、僅か3日目にして臨時休館となり、3月15日までの休館期間が現在まで延長され、開館出来ない状況が続いています。


「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ」 2000〜2002年 シカゴ美術館

実のところ私自身、ドイグ展を大変に楽しみにしていたので、会期早々、2日目の2月28日に一度、見てきました。会場内の撮影も出来ました。


「赤い船(想像の少年たち)」 2004年 個人蔵

リアルな光景に心象風景が混じり合いつつ、複数の絵画によって物語が紡がれていくかのようで、「誰もが見たことがあるようで、誰も見たことのない景色」との指摘も誇張とは思えませんでした。それに幻想的でありながらも、時にオカルト的な場面がフラッシュバックするような、不思議な魅力も感じられました。いくつかの作品はまるで白昼夢を見ているかのようでした。


「花の家(そこで会いましょう)」 2007〜2009年 ニューヨーク近代美術館

また砂糖を結晶化したような絵具の質感や、キャンバスから滲み出てくるような色彩そのものの美しさにも強く惹かれました。こればかりは映像ではあまり良く分かりません。


再開館日は現在のところ未定ですが、当面の会期は6月14日までと予定されています。いつしか作品の前に立てることを心待ちにしつつ、WEB上で「ピータ・ドイグ展」を追いかけたいと思いました。

「ピーター・ドイグ展」 東京国立近代美術館@MOMAT60th) 
会期:2020年2月26日(水)~6月14日(日) *臨時休館中
休館:月曜日。但し3月30日、5月4日は開館。5月7日(木)。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般1700(1500)円、大学生1100(900)円、高校生600(400)円。中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *本展の観覧料で当日に限り、「MOMATコレクション」も観覧可。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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かはくチャンネルで見る「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜-太田洋愛原画展-」 

国立科学博物館
「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜-太田洋愛原画展-」 
開幕日未定~2020/4/12 *臨時休館中



国立科学博物館公式「かはくチャンネル」で公開中の解説動画、「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜ー太田洋愛原画展ー」を見てみました。

1910年に生まれ、旧満州で植物画の道に進んだ太田洋愛は、戦後ソ連による抑留を経て帰国すると、図鑑や教科書の植物画を多く描き、1970年には日本ボタニカルアート協会を設立するなどして活動しました。

その太田の描いたサクラの水彩画、約100点を展示したのが、「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜ー太田洋愛原画展ー」で、あわせて日本の植物分類学の礎を築いた植物学者、大井次三郎の業績を紹介していました。



さて計3本の動画によると、まず第1章「サクラの自然史」に取り上げられたのは、日本やヒマラヤのサクラの標本でした。日本では野生のサクラが約10種類あるとのことで、桜餅に使われるオオシマザクラや、牧野富太郎が上野公園で採取したソメイヨシノなどを見ることが出来ました。また花見の習慣の史的変遷も興味深いかもしれません。

続く第2章では「桜のボタニカルアート」と題し、サクラの様態を記録した植物画が紹介されていました。いずれもサクラを研究するために制作されていて、動画越しでも細部までを精緻に描いていることが分かりました。



そして重要なのが、太田洋愛が絵を描いた「日本桜集」で、植物学者の大井次三郎が種類の名前や特徴を記していました。ようは二人の合作と言えるかもしれません。

解説では太田洋愛の活動についても触れていて、太田がサクラの絵を描いた百科事典をアップで映し出していました。また大井が著し、日本の初めての植物の総覧である「日本植物誌」や、オオタザクラをまつわる二人のエピソードも印象に残りました。



ラストが太田が「日本桜集」に記したサクラの原画で、絵の標本と合わせて見比べることが出来ました。ここで面白いのが、品種によって花や葉の生育の時期が違うことから、絵と標本のサイズが異なるとの指摘でした。ただ基本的には標本と同じサイズで描かれるとのことでした。

一般的な花の絵画と植物画の違いについても言及があり、太田の作品は単に写実的ではなく、芸術性を得たボタニカルアートとして位置付けられています。また「日本桜集」には解剖図も含まれていて、科学的にサクラの構造を捉えた作品でもあります。この他にはソメイヨシノ特性についても興味を引かれました。


今年はお花見もままならない状況でしたが、動画を通してとは言え、美しく精緻なサクラの絵を多く愛でることが出来ました。国立科学博物館のスタッフの方々と、展示を監修され、解説も担当された植物研究部長の樋口正信さんに感謝したいと思います。

「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜-太田洋愛原画展-」 国立科学博物館@museum_kahaku
会期:開幕日未定~2020年4月12日(日) *臨時休館中
休館:3月23日(月)、4月6日(月)。
時間:9:00~17:00。
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生630(510)円、高校生以下・65歳以上無料。
 *( )内は団体料金
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
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解説動画で楽しみたい「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開催直前で延期となった「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」展の特設サイトでは、見どころを動画で楽しめるコンテンツを公開しています。



「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」特設サイト
https://artexhibition.jp/london2020/

近年、大型展を中心に、youtubeなどでプロモーション動画が公開されることは珍しくありませんが、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で注目したいのは、展覧会を構成する7つの全ての章を、主任研究員の川瀬祐介さんが作品を参照しながら丁寧に解説していることでした。

冒頭では「コンセプト紹介|ロンドン展の見どころ&おススメ作品」と題し、展覧会のコンセプトが語られていて、イギリスの美術に対する趣味の反映された、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクションの内容についても紹介していました。



続く第1章では、今回の目玉の1つでもあるクリヴェッリの「聖エミディウスを伴う受胎告知」を拡大しながら解説していて、極めて精緻に描かれたモチーフを映像でつぶさに確認することが出来ました。それに天使や聖人の役割、小鳥の意味など、個々の描写が受胎告知の場面をどのように築いているのかについても理解し得るのではないでしょうか。また第1章が8角形の展示室であることについてのエピソードも面白く感じました。



私が特に印象に残ったのは、第5章の17世紀スペイン絵画のセクションでした。ここではムリーリョの「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」が引用されていましたが、そもそも17世紀のスペイン絵画を国外で初めて評価したのは、19世紀のイギリスやフランスであって、さらにムリーリョに関しては、イギリスが存命中から高く称賛していたということでした。またメランコリックな少年や少女をモチーフとした作品は特に人気を集めていて、実際に「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」は、収集当時、ロンドン・ナショナル・ギャラリーにて最も模写された作品の1つでもあったそうです。ムリーリョとイギリス絵画の思わぬ接点が浮かび上がっていると言えるかもしれません。



イギリスで珍重された肖像画についても見るべき点が多いのではないでしょうか。第3章の「親しみある肖像画」では、ライト・オブ・ダービーの「トマス・コルトマン夫妻」が紹介されていて、「カンバセーション・ピース」と呼ばれるイギリスに独自の肖像画の特徴についての知見を得ることが出来ました。まさに「親しみ」、「リアル」などもキーワードなのかもしれません。



川瀬さんは以前、「失われたアートの謎を解く」のトークイベントでご一緒したことがあり、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」についてお話ししていただきましたが、専門的な見地に基づきながら、気取らずに見どころを語って下さり、とても引き込まれるものを感じました。解説動画を拝聴しても明らかですが、話題の尽きない、澱みない語り口も大いに魅力です。



初めにも触れましたが、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は、展示の設営が終了したものの、いまだ開幕を迎えられていません。こうした状況によるのか、前売券の販売も終了になりました。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック/AERAムック」

ただ東京の国立西洋美術館(開幕日未定〜6月14日)の後は、大阪の国立国際美術館(7月7日〜10月18日)への巡回も予定されています。


がらんとした展示室を動画で見れば見るほど、実際の作品を鑑賞したくなるかもしれませんが、開催に希望を持ちながら、全40分を超える川瀬さんの力の入った解説にじっくり耳を傾けるのも良いのではないでしょうか。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」@london_2020art) 国立西洋美術館@NMWATokyo
会期:2020年3月3日(火)~6月14日(日) *開幕延期(開催日未定)
休館:月曜日。但し3月29日、5月4日は開館。
時間:9:30~17:30 
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1700(1500)円、大学生1100(1000)円、高校生700(600)円。中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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「オンラインで楽しむ横浜美術館」で見たい「澄川喜一 そりとむくり」展

横浜美術館
「澄川喜一 そりとむくり」
2020/2/15~5/24  *2/29より当面の間、臨時休館。



新型コロナウイルス感染拡大、及び政府による緊急事態宣言のため、美術館の休館が長期化しています。そのような中、横浜美術館では、企画展「澄川喜一 そりとむくり」の展示風景やイベントレポート、またはコレクション展の作品解説を映像などで配信する、「オンラインで楽しむ横浜美術館」が行われています。

「オンラインで楽しむ横浜美術館」
https://yokohama.art.museum/news/news/data-20200331-1095.html



まず企画展「澄川喜一 そりとむくり」では、横浜美術館の副館長で主席学芸員である柏木智雄氏が、展覧会の内容を会場写真とともに詳細に解説していて、具象から抽象へと至る澄川の作風の変遷を辿ることが出来ました。

展覧会の見どころダイジェスト/「澄川喜一 そりとむくり」展
https://yokohama.art.museum/blog/2020/03/post-538.html

ここで目を引くのが、仮面や甲冑のような形をした抽象彫刻で、独特のプリミティブな造形は、後の木のねじれや反りを作品に活かした「そりのあるかたち」に連なるようにも思えました。また澄川は東京スカイツリーや東京湾アクアライン川崎人工島の「風の塔」のデザイン監修を担っていて、彫刻を超えた幅広い領域で活動していることも分かりました。



全64もの質問を澄川本人に直接ぶつけた、「教えて澄川先生」のコンテンツも大変に充実していました。幼少期から現在までの体験や、制作にまつわるエピソードなど追っていて、最近ハマっているものや趣味を「仕事」としたり、好きなおにぎりの具を「ツナマヨネーズ」と答えるなど、澄川の人となりも浮かび上がっていました。なお澄川は、88歳になっても、アトリエで木に向き合っては、日々、創作に励んでいるそうです。

「アトリエ訪問記(前半)」/「澄川喜一 そりとむくり」展
https://yokohama.art.museum/blog/2020/02/post-533.html

アトリエに取材した訪問記も興味深いではないでしょうか。作品を保存する「彫刻館」なる施設には、今回の展覧会への出品作を含め、まさに反った作品が多数置かれていて、あたかも森の中の樹木を目の当たりにするかのようでした。



また2020年2月22日(土)に横浜美術館で行われた記念対談「澄川喜一×深井隆」のyoutube動画も、澄川の制作に対するスタンスを知るのに重要と言えるかもしれません。澄川と20歳年下で、現在、板橋区立美術館で個展を開催(新型コロナウイルス感染防止のため、臨時休館中。)している彫刻家、深井隆は、東京藝術大学の彫刻科にて澄川に学んでいました。それゆえか、トークも大学時代のエピソードから始まっていました。



コレクション展「横浜美術館の西洋美術 木版挿絵からボルタンスキーまで―絵画・版画・写真・彫刻」のページにも、全7章の詳細な展示解説が掲載されていて、ヴァシリィ・カンディンスキーの「網の中の赤」の解説もyoutubeにアップされていました。カンディンスキーの画家としての変遷や青騎士との関連を踏まえつつ、作品を紹介していて、あたかもギャラリートークに参加したかのようでした。



さらに若手作家を紹介する小企画展である「New Artist Picks 柵瀨茉莉子|いのちを縫う」では、展示写真風景、動画での作家インタビューなどを見ることが出来ました。

New Artist Picks 柵瀨茉莉子展|いのちを縫う
https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20200314-555.html

葉や貝などの自然の素材を用い、布に縫って広げた作品は、写真や動画からしても魅惑的で、作家の自然への共感が感じられるようでした。なお同館が再館された後、会期を変更の上、改めて開催されるそうです。


2月15日に開幕した「澄川喜一 そりとむくり」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2月29日に臨時休館が決まりました。その後、状況を鑑みつつも、休館期間は延長され続けていて、実のところ私もまだ展示を見られていません。



当面の会期は5月24日までとされていますが、再開館に期待を寄せながら、「オンラインで楽しむ横浜美術館」の各コンテンツを追っていきたいと思いました。*掲載画像は美術館サイトより

「澄川喜一 そりとむくり」 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:2020年2月15日(土)~5月24日(日) *2月29日より当面の間、臨時休館。
休館:木曜日。
時間:10:00~18:00
 *5月の金曜・土曜は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1400)円、大学・高校生900(800)円、中学生600(500)円、小学生以下無料、65歳以上の当日料金は1400円(要証明書、美術館券売所でのみ発売)
 *( )内は20名以上の団体料金。要事前予約。
 *当日に限り「横浜美術館コレクション展」も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅3番出口から徒歩3分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より「動く歩道」を利用、徒歩約10分。
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