「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」 サントリー美術館

サントリー美術館
「リニューアル・オープン記念展 Ⅲ 美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」 
2020/12/16~2021/2/28



サントリー美術館で開催中の「リニューアル・オープン記念展 Ⅲ 美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」を見てきました。

2007年に東京ミッドタウンに移転開館したサントリー美術館は、「美を結ぶ。美をひらく。」をメッセージに掲げ、洋の東西を問わず様々な展覧会を行ってきました。

今回は江戸時代から1900年のパリ万博へ至る時代のコレクションを紹介していて、古伊万里、鍋島、紅型、和ガラス、浮世絵にガレなど、国や時代、それに素材を超えた作品が展示されていました。


「色絵組紐文皿」 大川内・鍋島藩窯 江戸時代・17〜18世紀

まず冒頭では古伊万里や鍋島の優品がずらりと並んでいて、特にデザインの観点からも面白い「色絵組紐文皿」や「薄瑠璃地染付花文皿」といった鍋島に魅せられました。

またここで興味深いのは、タイトルに物語とあるように、それぞれの作品をトピックとしてまとめていることで、鍋島では「構図」や色彩の「青の表現」などに着目していました。


「染付松樹文三脚大皿」 大川内・鍋島藩窯 江戸時代・17〜18世紀 重要文化財

「染付松樹文三脚大皿」は松の枝と葉を丸く屈曲するように表した大皿で、幹や枝は単純化された一方、松葉の塊は細かい線によって1本1本丁寧に描きこまれていました。


「薄瑠璃地染付花文皿」 大川内・鍋島藩窯 江戸時代・17世紀

朝顔型の皿である「薄瑠璃地染付花文皿」は大振りの花や太陽光のモチーフを散らしていて、いずれも青と白抜きで口縁をはみ出すように開いていました。まるで花火を見やるようなイメージも浮かび上がるかもしれません。


「花色地瑞雲霞に鳳凰模様裂地」 19世紀

15世紀から19世紀にかけての琉球王国を彩った紅型や型紙も充実していました。そのうち「花色地瑞雲霞に鳳凰模様裂地」は、赤、青、黄、緑、紫の5色の羽をつけた鳳凰が堂々と舞う姿をモチーフとしていて、まさに王家のシンボルに相応わしいような風格を見せていました。


「矢羽根繋模様白地型紙」 19世紀

型紙の展示方法も秀逸だったのではないでしょうか。例えば「矢羽根繋模様白地型紙」では、ちょうど型紙をケースの中で浮かせるように置いていて、照明の効果によって型紙の影が鮮やかに浮かび上がっていました。



鍋島の優品と並んで私が強く魅せられたのは、江戸時代に「びいどろ」や「ぎやまん」と呼ばれた日本の伝統的なガラスでした。


左奥:「青色菊形向付」 江戸時代・18世紀

「青色菊形向付」は筋状の凹凸のある形にガラスを吹き込んで作られた器で、青色の曲線を描いているからか、水面が揺らいでいるような光景にも見えました。


「薩摩切子 藍色被船形鉢」 江戸時代・19世紀

この他、「藍色被船形鉢」や「緑色被栓付瓶」などの薩摩切子の名品も目立っていて、透き通ったガラスの煌めきの美しさにため息がもれるほどでした。


「横浜異人商館座敷之図」 五雲亭貞秀 江戸時代・文久元(1861)年

浮世絵では江戸、幕末の横浜浮世絵、明治の開化絵、それに小林清親の版画が展示されていて、主に洋風表現や近代化を描いた作品など、西洋との関係に着目していました。


「女織蚕手業草」 喜多川歌麿 江戸時代・寛政10〜12(1798〜1800)年頃

喜多川歌麿の「女織蚕手業草」は晩年の連作で、蚕が繭となり、糸になって織られる光景が描かれていました。女性が働く仕草を実に精緻に示していて、衣服の文様が空摺りによって立体的に浮かび上がっていました。また元々、一枚ずつ完結した場面であるものの、つなぎ合わせると部分的に絵柄がつながる構成も面白いかもしれません。



ラストはアール・ヌーヴォーの作家で、日本美術とも関わりの深いエミール・ガレの展示でした。ここには花器や壺をはじめ、飾棚からランプ、ティーテーブルまでが並んでいて、ガレの多様な制作を見ることができました。


左:エミール・ガレ「花器 バッタ」 1878年頃

花器「バッタ」は1878年のパリ万博で発表した「月光色ガラス」を用いた作品で、バッタや葉の表現からは日本の蒔絵を連想させるものがありました。


エミール・ガレ「壺 風景」 1900年頃

壺「風景」は器を取り囲むような木々の向こうに、色面で抽象化された風景が広がる様子を表現していて、神秘的とも呼べる作品世界を築いていました。


入場に際して検温、手指の消毒が必要です。なお予約制ではありませんが、事前にオンラインでチケットを購入することができます。金曜と土曜の夜間開館は休止となりました。



会場内の撮影も可能です。2月28日まで開催されています。

「リニューアル・オープン記念展 Ⅲ 美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:2020年12月16日(水)~2021年2月28日(日) *会期変更
休館:火曜日。但し2月23日は18時まで開館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
 *金・土曜の夜間開館は中止。
料金:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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