都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「香りの器 高砂コレクション展」 パナソニック汐留美術館
パナソニック汐留美術館
「香りの器 高砂コレクション展」
2021/1/9~3/21
パナソニック汐留美術館で「香りの器 高砂コレクション展」を見てきました。
古くは紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトに辿ることのできる「香り」は、古今東西において、香油や薬、香水など人々の暮らしと密接に関わってきました。
そうした香りに関する器を紹介するのが「香りの器 高砂コレクション展」で、紀元前10世紀のキプロスの香油壺から古代オリエントのガラス製容器、さらにはマイセンからガレやラリックなどの香水瓶、はたまた日本の漆工品が一堂に会していました。
いずれも1920年に創業し、今では世界有数の香料会社として知られる高砂香料工業に由来するコレクションで、その数は約240点に及んでいました。
はじめに展示されていたのは、土や石、それに陶器で造られた、紀元前10世紀から紀元前450年頃の極めて古い香油壺でした。それに続くのが古代オリエントのガラス製の香油瓶で、とりわけ青や群青の色彩がマーブル文様を描く「マーブル文長頸香油瓶」に魅せられました。これは1世紀頃の限られた時期のみに確認される作品で、大理石や縞瑪瑙の模様をガラスで表現するため、2色のガラスを溶かして制作されました。
オリエントやイスラムの世界では、中世から近世にかけての蒸留技術の開発によって香水が多く作られ、その後、ヨーロッパでは17世紀頃にアルコールの精油の抽出による香水文化が花開きました。さらに18世紀になると庶民の間でも香水が普及し、かつてのガラス瓶に代わって、マイセンやウエッジウッドといった陶磁器による香水瓶が人気を集めました。
マイセン 色絵香水瓶「子犬」 ドイツ 19世紀
マイセンで目を引いたのは、人物や動物の姿を象った小型の彫像の香水瓶でした。子犬や狩人、また修道士などがモチーフとなっていて、かなり写実的でかつ色彩が細かに施されていました。
左:ウエッジウッド「女神天使文香水瓶」 イギリス 18世紀後半
右:ウエッジウッド「天使文香水瓶」 イギリス 18世紀後半
この他には、青や緑などの素地にカメオ風の白いレリーフを施したウエッジウッドの香水瓶や、セーブルのポプリポットなども魅力的かもしれません。
ボヘミアン・ガラス 展示風景
1つのハイライトを築いていたのが、ボヘミアン・ガラスの香水瓶の展示でした。ボヘミアでは19世紀の香水文化の普及を背景に、単純で控えめな装飾を特徴としたビーダーマイヤー様式の香水瓶が生産され、技術革新によって多様な香水瓶が作り出されました。そして色ガラスに金彩やエナメル彩を施した香水瓶や、エングレーヴィングの技法によって文様を彫ったものは、同国外の香水瓶の造形にも影響を与えました。
ボヘミアン・ガラス 展示風景
会場では「被せガラスエナメル金彩花文香水瓶」を頂点に、ボヘミアン・ガラスの香水瓶が6角形の展示台に並んでいて、実に華やかな雰囲気を醸し出していました。
ルネ・ラリック 香水瓶「ユーカリ」 フランス 1919年
アール・ヌーヴォーとアール・デコの香水瓶では、ガレやラリック、そしてドーム兄弟による作品が展示されていて、とりわけラリック代表作として知られた「ユーカリ」に心を引かれました。
右:ドーム兄弟「風景文香水瓶」 フランス 1900〜10年頃
ドーム兄弟は風景や百合の文様を色ガラスへ絵画のように描いていて、「風景文香水瓶」では湖や山が広がる光景を幽玄に表していました。
カール・パルダ「幾何学文香水瓶セット」 1930年頃
幾何学的モチーフを取り入れた香水瓶セットも興味深いのではないでしょうか。ボヘミアのガラス作家、カール・パルダの「幾何学文香水瓶セット」は、花や蝶などのモチーフを瓶に装飾していて、ワイン色のような光を放っていました。
「幾何学文アトマイザー香水瓶」 オーストリア 1920年頃 他
オーストリアの幾何学文様の香水瓶もいくつか並んでいて、シンプルなデザインでありつつ造形としての力強さが感じられました。いずれもウィーン工房周辺のガラス工房で制作された可能性があるそうです。
こうした一連の外国の香りの器に加え、もう1つの見どころと言えるのは、江戸時代の香枕や明治時代の七宝による高炉など日本の香りに因んだ器でした。また合わせて香木や香道伝書の資料も並んでいて、日本の香りに関する文化の一端を伺うこともできました。
参考出品:R.B.Sibia「ウォルト社」ポスター フランス 20世紀
アール・デコ時代の椅子やフロアランプなどの特別出品の資料も会場を彩っていました。
中央:セーブル「草花文ポプリポット」 フランス 18世紀
ファッションとデザインの両面の観点から多様な器を追っていくのも楽しいかもしれません。1つ1つの香水瓶がまるで宝飾品のように輝いて見えました。
予約は不要です。3月21日まで開催されています。
「香りの器 高砂コレクション展」 パナソニック汐留美術館
会期:2021年1月9日(土) ~3月21日(日)
休館:7月22日(水)、8月12日(水)~14日(金)、8月19日(水)、9月9日(水)、9月16日(水)。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
*3月5日(金)は20時まで開館。(2月5日の夜間開館は中止)
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円。
*ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
「香りの器 高砂コレクション展」
2021/1/9~3/21
パナソニック汐留美術館で「香りの器 高砂コレクション展」を見てきました。
古くは紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトに辿ることのできる「香り」は、古今東西において、香油や薬、香水など人々の暮らしと密接に関わってきました。
そうした香りに関する器を紹介するのが「香りの器 高砂コレクション展」で、紀元前10世紀のキプロスの香油壺から古代オリエントのガラス製容器、さらにはマイセンからガレやラリックなどの香水瓶、はたまた日本の漆工品が一堂に会していました。
いずれも1920年に創業し、今では世界有数の香料会社として知られる高砂香料工業に由来するコレクションで、その数は約240点に及んでいました。
はじめに展示されていたのは、土や石、それに陶器で造られた、紀元前10世紀から紀元前450年頃の極めて古い香油壺でした。それに続くのが古代オリエントのガラス製の香油瓶で、とりわけ青や群青の色彩がマーブル文様を描く「マーブル文長頸香油瓶」に魅せられました。これは1世紀頃の限られた時期のみに確認される作品で、大理石や縞瑪瑙の模様をガラスで表現するため、2色のガラスを溶かして制作されました。
オリエントやイスラムの世界では、中世から近世にかけての蒸留技術の開発によって香水が多く作られ、その後、ヨーロッパでは17世紀頃にアルコールの精油の抽出による香水文化が花開きました。さらに18世紀になると庶民の間でも香水が普及し、かつてのガラス瓶に代わって、マイセンやウエッジウッドといった陶磁器による香水瓶が人気を集めました。
マイセン 色絵香水瓶「子犬」 ドイツ 19世紀
マイセンで目を引いたのは、人物や動物の姿を象った小型の彫像の香水瓶でした。子犬や狩人、また修道士などがモチーフとなっていて、かなり写実的でかつ色彩が細かに施されていました。
左:ウエッジウッド「女神天使文香水瓶」 イギリス 18世紀後半
右:ウエッジウッド「天使文香水瓶」 イギリス 18世紀後半
この他には、青や緑などの素地にカメオ風の白いレリーフを施したウエッジウッドの香水瓶や、セーブルのポプリポットなども魅力的かもしれません。
ボヘミアン・ガラス 展示風景
1つのハイライトを築いていたのが、ボヘミアン・ガラスの香水瓶の展示でした。ボヘミアでは19世紀の香水文化の普及を背景に、単純で控えめな装飾を特徴としたビーダーマイヤー様式の香水瓶が生産され、技術革新によって多様な香水瓶が作り出されました。そして色ガラスに金彩やエナメル彩を施した香水瓶や、エングレーヴィングの技法によって文様を彫ったものは、同国外の香水瓶の造形にも影響を与えました。
ボヘミアン・ガラス 展示風景
会場では「被せガラスエナメル金彩花文香水瓶」を頂点に、ボヘミアン・ガラスの香水瓶が6角形の展示台に並んでいて、実に華やかな雰囲気を醸し出していました。
ルネ・ラリック 香水瓶「ユーカリ」 フランス 1919年
アール・ヌーヴォーとアール・デコの香水瓶では、ガレやラリック、そしてドーム兄弟による作品が展示されていて、とりわけラリック代表作として知られた「ユーカリ」に心を引かれました。
右:ドーム兄弟「風景文香水瓶」 フランス 1900〜10年頃
ドーム兄弟は風景や百合の文様を色ガラスへ絵画のように描いていて、「風景文香水瓶」では湖や山が広がる光景を幽玄に表していました。
カール・パルダ「幾何学文香水瓶セット」 1930年頃
幾何学的モチーフを取り入れた香水瓶セットも興味深いのではないでしょうか。ボヘミアのガラス作家、カール・パルダの「幾何学文香水瓶セット」は、花や蝶などのモチーフを瓶に装飾していて、ワイン色のような光を放っていました。
「幾何学文アトマイザー香水瓶」 オーストリア 1920年頃 他
オーストリアの幾何学文様の香水瓶もいくつか並んでいて、シンプルなデザインでありつつ造形としての力強さが感じられました。いずれもウィーン工房周辺のガラス工房で制作された可能性があるそうです。
こうした一連の外国の香りの器に加え、もう1つの見どころと言えるのは、江戸時代の香枕や明治時代の七宝による高炉など日本の香りに因んだ器でした。また合わせて香木や香道伝書の資料も並んでいて、日本の香りに関する文化の一端を伺うこともできました。
参考出品:R.B.Sibia「ウォルト社」ポスター フランス 20世紀
アール・デコ時代の椅子やフロアランプなどの特別出品の資料も会場を彩っていました。
中央:セーブル「草花文ポプリポット」 フランス 18世紀
ファッションとデザインの両面の観点から多様な器を追っていくのも楽しいかもしれません。1つ1つの香水瓶がまるで宝飾品のように輝いて見えました。
\一部写真撮影OK📷/「香りの器 高砂コレクション 展」には写真撮影可能エリアがあります。撮影をお楽しみいただき、シェアして、皆さまの生活の中にアートを広げていきませんか?#香りの器 #香水 #フレグランス #アールデコ #アールヌーヴォー撮影される際のお願い✅https://t.co/k1tOXVn9u5 pic.twitter.com/D01WuWF9cd
— パナソニック汐留美術館 (@shiodome_museum) January 29, 2021
予約は不要です。3月21日まで開催されています。
「香りの器 高砂コレクション展」 パナソニック汐留美術館
会期:2021年1月9日(土) ~3月21日(日)
休館:7月22日(水)、8月12日(水)~14日(金)、8月19日(水)、9月9日(水)、9月16日(水)。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
*3月5日(金)は20時まで開館。(2月5日の夜間開館は中止)
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円。
*ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
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