「柏原由佳 1:1」 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
「柏原由佳 1:1」
2021/2/11〜3/14



1980年に広島県で生まれ、2006年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業した柏原由佳は、ベルリンを拠点に制作活動を続けてきました。

その柏原の個展が「柏原由佳 1:1」で、野山や湖、それに水溜りのある自然を舞台とした13点の新作絵画が展示されていました。



いずれの絵画も揺らぎを伴うような筆触でまとめられていて、目の前のリアルな風景を写し取ったというよりも、刹那的とも受け取れるような心象が混じり合っているかのようでした。実際に作品には「現実の景色と内なる想像の空間が混在」(解説より)しているそうです。



また大きな葉の植物や荒々しい岩場などからは熱帯を思わせるものの、一転して薄暗い木立の池を描いているなど、場所は必ずしも一様ではなく特定も出来ませんでした。



さらに山々に囲まれた広い平地の景観全体を鳥瞰する一方で、水たまりを木陰越しに覗き込むような視点があるなどスケール感も多様でした。解説に「大地にひそむ根源的なエネルギーを喚起」とありましたが、例えば恐竜の生きた古代の地球のようなプリミティブな世界を連想させるかもしれません。



柏原は絵画制作に際し、半油性下地をキャンバスに塗り込む作業から行っていて、次に油絵具を日本画のように薄く溶き、時にテンペラを用いつつ色彩を表現してきました。色彩が混じりつつも類まれな透明感が感じられるのは、こうした技法に由来しているのかもしれません。



私が一連の絵画を通して特に印象的だったのは、池や湖と思しき水が多く描かれていることでした。それらの多くは濃淡こそことなれどもエメラルド色に染まっていて、強い光を受けながら輝いているいるかのようでした。



鑑賞者1人1人が景色に多様なイメージを投影できる作品なのかもしれません。しばらく水の描かれた光景を前にしていると、かつて瀬戸内で目にした美しい海の色が重なって映りました。



新型コロナウイルス感染症対策のために事前予約制が導入されています。但し当日の定員に達していない場合は、予約なしでの観覧受付が可能です。


3月14日まで開催されています。*写真は全て「柏原由佳 1:1」の展示作品。会場内の撮影が可能でした。

「柏原由佳 1:1」 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX
会期:2021年2月11日(木・祝)〜3月14日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~18:40 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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