「FACE展2021」 SOMPO美術館

SOMPO美術館
「FACE展2021」 
2021/2/13~3/7



2012年にSOMPO美術財団が創設し、年齢を問わず「真に力がある作品」(同館WEBサイトより)を公募する「FACE展」も、今回で第9回を数えるに至りました。

出品数は昨年の875点を大きく上回る1193点で、専門家による審査の結果、83点の作品を入選とし、グランプリ以下の9点の受賞作品が決まりました。


魏嘉(ウェイジャ)「sweet potato」 2020年
 
そのグランプリを受賞したのが魏嘉(ウェイジャ)の「sweet potato」と題した絵画で、煙突のある家の中にパイナップルや桃、それにコップを片手に飲み物を口に入れようとする人物などを描いていました。いずれもがラフなスケッチのような線で象られていましたが、パステルやスプレー、エアブラシなどが巧みに使い分けられていて、極めてニュアンスに富んだ質感を見せていました。


魏嘉(ウェイジャ)「sweet potato」(部分) 2020年

作家は受賞に際して、コロナ禍において帰国した台湾から出られなかった経験を元にしているとコメントしたそうですが、いわゆるステイホームを連想させる面もあるかもしれません。一見、ポップでありながら東洋画的な雰囲気も漂っていて、漢字で連なる文字列はさながら画賛のようにも思えました。


高見基秀「対岸で燃える家」 2019年

優秀賞に選ばれた高見基秀の「対岸で燃える家」は、川岸で屋根から炎を吹き出しながら燃える家を移していて、星空の元、木立に囲まれた辺りは静寂に包まれていました。まるで夢の中を覗き込むようで、不思議と以前に目にしたピーター・ドイグの絵画を思い起こしました。


内田早紀「鱗粉のゆくえ」 2020年

審査員特別賞の内田早紀の「鱗粉のゆくえ」も魅惑的かもしれません。やや小さな画面にはサメやウミヘビや海藻などの海のモチーフが絡み合うように描かれていて、色鉛筆と水彩による色彩が互いに響き合うように広がっていました。奇怪な生き物による魑魅魍魎とした世界ながらも、抽象的な形が垣間見えるのも面白いのではないでしょうか。


山本亜由夢「パライソ」 2020年

同じく特別賞では山本亜由夢の「パライソ」も印象に深い作品でした。ここでは抽象的な色面の中へ、樹木や生物、そして男女の様子を潜ませるように描いていて、いくつかのレイヤー状から情景が浮かび上がるように表されていました。


土井沙織「バイバイ フリードリヒ」 2020年

大きな瞳を前に向けた少女を描いた土井沙織の「バイバイ フリードリヒ」(読売新聞社賞)も存在感があったのではないでしょうか。それこそ仲睦まじい子どもとペットを写した家族のスナップ写真のような一場面を、石膏やペンキ、アクリル絵具などを用いた重厚な筆触で表していて、郷愁に誘われるような魅力を感じました。


吉田愛の「山行」 2020年

この他では、吉田愛の「山行」をはじめ、植田陽貴の「夜の共通語」や橋口元の「daily life」、さらには神戸勝史の「はじまりの木」に安藤恵の「Ordinary days」などにも心惹かれるものがありました。


植田陽貴「夜の共通語」 2020年

審査委員長の堀元影が審査講評において「例年以上にハイレベルな作品が多いと感じた」と記していましたが、確かに想像以上に見応えがあったのではないでしょうか。具象に抽象の表現、また油彩やアクリル、それに日本画の素材などのメディウムを問わず、力作が少なくありませんでした。


橋口元「daily life」 2020年

なお今回の「FACE展」は、昨年5月に新しくオープンした美術館棟での初めての開催となりました。展示室内の撮影も可能でした。(収蔵品コーナーの一部作品は除く。)


神戸勝史「はじまりの木」 2020年

会期中、観覧者投票によって「オーディエンス賞」が選出されます。私は土井さんの作品に投票しましたが、お気に入りの作品を探しながら鑑賞するのも楽しいかもしれません。


事前予約は不要です。3月7日まで開催されています。

「FACE展2021」 SOMPO美術館@sompomuseum
会期:2021年2月13日(土)~3月7日(日)
休館:月曜日。但し祝日・振替休日の場合は開館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700円、高校生以下無料。
住所:新宿区西新宿1-26-1
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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