都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」 府中市美術館
府中市美術館
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」
2021/5/22~7/11
府中市美術館で開催中の「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」を見てきました。
景勝地や寺社仏閣といった日本各地の名所は、古くから絵画や版画などに表され、人々の目を楽しませてきました。
そうした名所を描いた作品に注目したのが「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」で、江戸から昭和へと至る木版、油彩、水彩、それに印刷物など約110点の作品が展示されていました。(一部に展示替えあり)
まず冒頭を飾るのが江戸の絵師、歌川広重による「名所江戸百景」の連作で、「深川洲崎十万坪」や「上野山内月のまつ」、さらにゴッホが模写したことでも知られる「大はしあたけの夕立」などが並んでいました。いずれも神奈川県立歴史博物館の所蔵する作品でした。
このように展覧会では神奈川県立歴史博物館や江戸東京博物館、もしくは静岡県立美術館や愛知県美術館といった他館の作品が多くやって来ているのも特徴で、必ずしも府中市美術館のコレクション展ではありませんでした。
いくつかのテーマを設定し、名所を描いた作品を紹介しているのも見どころの1つといえるかもしれません。そのうち「西洋画法と写真」では、明治時代に名所を描いた油彩画とともに、同じ地点を写した写真をパネルで並べていて、互いに見比べることができました。桜の名所である小金井の玉川上水を描いた五百城文哉の「小金井の桜」と、小川一真による写真「The Hanami」から「小金井橋を望む」の比較も面白いのではないでしょうか。
小林清親と川瀬巴水の作品が充実していたのにも目を引かれました。そしてここでも小金井の桜を表した巴水の「小金井の夜桜」が出ていて、夜の闇で咲き誇る桜のもと、大勢の見物客が行き交う光景を見ることができました。また酒を飲んでいるのか、肩を組んで歩く人がシルエット状に描かれていて、花見特有の賑わいが感じられました。
さてこの「映えるNIPPON」において特に興味深かったのは、名所を舞台としたポスターなどの印刷物の展示でした。
例えば大正時代に当時の鉄道省が発行したポスター「房総めぐり」は、成田山や誕生寺など千葉県内の名所を紹介していて、日程別のモデルコースや料金も掲載されていました。また全てが有名なところばかりでなく、市川・八幡の藪知らずや習志野の軍の練習場まで案内があるのも心憎いかもしれません。
大阪毎日新聞社が読者向けに付録として配布した「日本鳥瞰近畿東海大図絵」は、日本中の名所を鳥瞰図として描いていて、美穂の松原や伏見稲荷、それに東照宮といった国内の観光地とともに、何故かハワイやサンフランシスコまでが記されていました。この他では鉄道省による「鉄道旅行案内」や、昭和2年の小田急の開通時に刊行された「小田原急行電車開通記念」ポスターなども貴重な資料といえるかもしれません。
吉田初三郎が描いた横幅4メートルにも及ぶ大型の肉筆「神奈川県鳥瞰図」も大変に目立っていました。ここには富士山を背に横浜、三浦半島、それに大山や箱根などの名所を解剖するように描いていて、大きくデフォルメ化された神奈川の光景に圧倒されるものを感じました。
国立公園をモチーフにした絵画や、和田英作と富士山、それに向井潤吉と民家に着目した展示も見応えがあったのではないでしょうか。幅広い観点から名所を描いた作品の魅力を伝える好企画だと言えそうです。
展示替えの情報です。前後期で一部の作品が入れ替わります。
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」(出品リスト)
前期:5月22日(土)〜6月13日(日)
後期:6月15日(火)〜7月11日(日)
入れ替わる作品は広重、清親、巴水などの木版画です。但し6月15日より後期展示に入っているため、これ以降の入れ替えはありません。
東京都の要請により府中市美術館は5月31日まで臨時休館していましたが、6月1日より通常通り再開館しました。
予約は不要です。7月11日まで開催されています。
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」 府中市美術館(@FuchuArtMuseum)
会期:2021年5月22日(土)~7月11日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」
2021/5/22~7/11
府中市美術館で開催中の「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」を見てきました。
景勝地や寺社仏閣といった日本各地の名所は、古くから絵画や版画などに表され、人々の目を楽しませてきました。
そうした名所を描いた作品に注目したのが「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」で、江戸から昭和へと至る木版、油彩、水彩、それに印刷物など約110点の作品が展示されていました。(一部に展示替えあり)
まず冒頭を飾るのが江戸の絵師、歌川広重による「名所江戸百景」の連作で、「深川洲崎十万坪」や「上野山内月のまつ」、さらにゴッホが模写したことでも知られる「大はしあたけの夕立」などが並んでいました。いずれも神奈川県立歴史博物館の所蔵する作品でした。
このように展覧会では神奈川県立歴史博物館や江戸東京博物館、もしくは静岡県立美術館や愛知県美術館といった他館の作品が多くやって来ているのも特徴で、必ずしも府中市美術館のコレクション展ではありませんでした。
いくつかのテーマを設定し、名所を描いた作品を紹介しているのも見どころの1つといえるかもしれません。そのうち「西洋画法と写真」では、明治時代に名所を描いた油彩画とともに、同じ地点を写した写真をパネルで並べていて、互いに見比べることができました。桜の名所である小金井の玉川上水を描いた五百城文哉の「小金井の桜」と、小川一真による写真「The Hanami」から「小金井橋を望む」の比較も面白いのではないでしょうか。
小林清親と川瀬巴水の作品が充実していたのにも目を引かれました。そしてここでも小金井の桜を表した巴水の「小金井の夜桜」が出ていて、夜の闇で咲き誇る桜のもと、大勢の見物客が行き交う光景を見ることができました。また酒を飲んでいるのか、肩を組んで歩く人がシルエット状に描かれていて、花見特有の賑わいが感じられました。
さてこの「映えるNIPPON」において特に興味深かったのは、名所を舞台としたポスターなどの印刷物の展示でした。
例えば大正時代に当時の鉄道省が発行したポスター「房総めぐり」は、成田山や誕生寺など千葉県内の名所を紹介していて、日程別のモデルコースや料金も掲載されていました。また全てが有名なところばかりでなく、市川・八幡の藪知らずや習志野の軍の練習場まで案内があるのも心憎いかもしれません。
大阪毎日新聞社が読者向けに付録として配布した「日本鳥瞰近畿東海大図絵」は、日本中の名所を鳥瞰図として描いていて、美穂の松原や伏見稲荷、それに東照宮といった国内の観光地とともに、何故かハワイやサンフランシスコまでが記されていました。この他では鉄道省による「鉄道旅行案内」や、昭和2年の小田急の開通時に刊行された「小田原急行電車開通記念」ポスターなども貴重な資料といえるかもしれません。
「映えるNIPPON」展会場では、作品展示が進められています。今回の目玉作品の一つである #吉田初三郎 の《神奈川県鳥瞰図》(昭和7(1932)年、神奈川県立歴史博物館蔵)はなんと幅4メートルを超える大作!傾斜展示台に作品を展開して、展示していきます。#府中市美術館 #映えるNIPPON pic.twitter.com/wN4GdMPv1c
— 府中市美術館 (@FuchuArtMuseum) May 21, 2021
吉田初三郎が描いた横幅4メートルにも及ぶ大型の肉筆「神奈川県鳥瞰図」も大変に目立っていました。ここには富士山を背に横浜、三浦半島、それに大山や箱根などの名所を解剖するように描いていて、大きくデフォルメ化された神奈川の光景に圧倒されるものを感じました。
国立公園をモチーフにした絵画や、和田英作と富士山、それに向井潤吉と民家に着目した展示も見応えがあったのではないでしょうか。幅広い観点から名所を描いた作品の魅力を伝える好企画だと言えそうです。
展示替えの情報です。前後期で一部の作品が入れ替わります。
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」(出品リスト)
前期:5月22日(土)〜6月13日(日)
後期:6月15日(火)〜7月11日(日)
入れ替わる作品は広重、清親、巴水などの木版画です。但し6月15日より後期展示に入っているため、これ以降の入れ替えはありません。
東京都の要請により府中市美術館は5月31日まで臨時休館していましたが、6月1日より通常通り再開館しました。
予約は不要です。7月11日まで開催されています。
「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」 府中市美術館(@FuchuArtMuseum)
会期:2021年5月22日(土)~7月11日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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