「イラストレーター 安西水丸展」 世田谷文学館

世田谷文学館
「イラストレーター 安西水丸展」
2021/4/24~9/20



世田谷文学館で開催中の「イラストレーター 安西水丸展」を見てきました。

1942年に生まれたイラストレーターの安西水丸は、漫画や小説に絵本、エッセイや広告などで多様に活動しては、多くの人々の心を捉えてきました。

その安西の仕事の全貌を幼少期にまで遡っているのが「イラストレーター 安西水丸展」で、原画や関連資料など500点に加え、旅にまつわる原稿や民芸品といった130点の資料が展示されていました。



まず冒頭は「ぼくの仕事」の題し、安西が本や広告などに描いた絵が展示されていて、中には2020年末に新たに発見された小説「アマリリス」のカバー原画といった貴重な作品もありました。



またイラストとともに、モチーフの元になったスノードームや瓶なども合わせて公開されて、ともに見比べることができました。覗き窓のように設置された展示ケースも面白いのではないでしょうか。



会場構成を手掛けたのはデザイン事務所「DO.DO」(ドド)で、壁に安西のコレクションしたスノードームのモチーフを描いたり、覗き穴や顔はめスポットなどを設置していて、遊び心に満ちた空間を築き上げていました。展示室内に8カ所ほど隠された、安西を象るパネルやシルエットを探して歩くのも楽しいかもしれません。



安西と関係の深かった嵐山光三郎、村上春樹、和田誠に関する作品も見どころだったのではないでしょうか。嵐山光三郎は安西と同じ年の編集者で、漫画雑誌「ガロ」や絵本「ピッキーとポッキー」などの様々な仕事を手がけました。



「兄弟のようだ」とも語る村上春樹とはジャズ喫茶経営中の頃からの知り合いで、村上の本の装丁を数多く担いました。さらに先輩にあたるイラストレーターの和田誠は安西にとってライバルともいえる存在で、2001年から2014年にかけて2人で1枚の作品を仕上げる取り組みを行いました。結果的に描かれた作品は200点にも及ぶそうです。



幼少期の資料から生涯にわたって愛した品々を紹介する「ぼくの来た道」も興味深いものがありました。ここでは学校で賞をとった水泳大会のポスターから大学時代に制作したレコードジャケット風の作品などが展示されていて、安西がイラストレーターとして活動するまでの道のりを辿ることができました。



安西は3歳から中学を終える直前まで千葉県の千倉で過ごしていて、同地の広い海や自然環境が、自身の想像力や美意識を育んだとも語っています。

また画面を横切る一本の線を「ホリゾン=水平線」と呼んでいましたが、ホリゾンを引く時に千倉の海の水平線が目に浮かんだともしています。まさに千倉での生活、そして海こそが安西の創作の源泉の1つだったのかもしれません。



「素朴な和が好きだ」という安西は、アトリエの和室に鳥取の民芸家具を置き、自ら描いた屏風や掛軸を飾ったとされていて、会場でも一部が再現されていました。あたかもアトリエにお邪魔したかのような雰囲気が感じられるのではないでしょうか。



ラストは「たびたびの旅」と題し、旅する人だった安西に着目して、旅にまつわる作品や旅のための道具、さらに旅先で求めた土産物などが展示されていました。



生涯で国内外の様々な場所を訪ねた安西は、特に電車での旅を好み、いつでも旅に出られるようにカメラや双眼鏡、手帳を入れる鞄を置いていました。



平日の夕方に出向きましたが、会場内は想像以上に賑わっていました。公式サイトによると休日の14時から16時の間は、混雑のために入場を規制する場合があるそうです。またグッズ売り場も盛況でした。


写真も自由に撮れましたが、撮影を楽しみたい場合は混雑時間帯を避けるのが良いかもしれません。



当初の会期(8月31日まで)が延長されました。9月20日まで開催されています。おすすめします。

「イラストレーター 安西水丸展」 世田谷文学館@SETABUN
会期:2021年4月24日(土)~9月20日(月・祝)
休館:月曜日。但し8月9日・9月20日は開館し、8月10日は休館。
時間:10:00~18:00 *入場、及びミュージアムショップの営業は17時半まで。
料金:一般900(720)円、大学・高校生・65歳以上600(480)円、小・中学生300(240)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:世田谷区南烏山1-10-10
交通:京王線芦花公園駅より徒歩5分。
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