都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「Re construction 再構築」 練馬区立美術館
練馬区立美術館
「練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築」
2020/7/8~8/2(プレ展示)、2020/8/9~9/27(本展示)
今年に開館35周年を迎えた練馬区立美術館が、現代作家が同館のコレクションを新たに解釈して作品を公開する「Re construction 再構築」を開催しています。
参加したのは流麻二果、青山悟、冨井大裕、大小島真木の4名で、それぞれが順に「色」、「メディア」、「空間」、「身体」をテーマにした作品を公開していました。
冒頭は歴史の視点からコレクションを紹介するコーナーで、中でも恩地孝四郎や畔地梅太郎ら複数の画家が、1938年から1941年にかけて日本や台湾、それに朝鮮の景勝地などを描いた「新日本百景」に魅せられました。
右:松岡映丘「さつきまつ浜村」 1928年
左:流麻二果「さつき静まる浜村」 2020年
続くのが「色」をテーマとした流麻二果で、松岡映丘の「さつきまつ浜村」と松岡静野の「舞妓」を引用した作品を展示していました。なお松岡静野とは画家を志して島成園に師事し、後に映丘の妻となった人物で、夫を支えるために筆を折ったと言われています。よって作品も「舞妓」のただ一枚しか確認されていません。
右:松岡静野「舞妓」 大正時代
左:流麻二果「色の跡:松岡静野『舞妓』」 2020年
流のアプローチにかかると、映丘の風景や静野の人物が揺らぎ流れゆく色彩に還元していくようで、レイヤーを通した抽象パターンへと転化しているように見えました。
流麻二果 展示風景
これまでにも流は、絵画の中に使われた色を一色ずつ取り上げ、色の層を描くシリーズなどを手掛けていて、今回の「舞妓」でも静野が選んだ色を追体験するように塗り重ねました。
郭徳俊「大統領シリーズ」 展示風景
刺繍で知られる青山悟は「メディア」において、1937年に京都で生まれ実験的な創作を行ってきた郭徳俊の「大統領シリーズ」を起点に、大小様々なインスタレーションを公開していました。
青山悟 展示風景
ここで興味深いのは現代社会の世相を作品へ落とし込んでいることで、世界を襲った新型コロナウイルスやアメリカの分断、そして延期されたオリンピックなどの時事的な諸問題が浮き彫りになっていました。
青山悟「Map of The World」 2020年
素材もレジ袋やマスク、ゴム手袋など多岐にわたっていて、作品はバックヤードと思しきスペースにまで展開していました。素材とイメージの意外な関係も面白いかもしれません。
青山悟「Come see what's real」 2020年
既製品などを用いて立体作品を制作する冨井大裕は、1924年に東京で生まれた画家の小野木学の作品を引用した展示を行っていました。
冨井大裕 展示風景
湯桶や風呂椅子、スポンジにゴミ箱、塵取りなどを組み合わせた立体作品は、小野木の幾何学的とも呼べるような平面と向き合っていて、二次元と三次元の様々な形が一つの空間にて共演を果たしているかのようでした。
冨井大裕 展示風景
展示室内にはひな壇も設けられていて、見下ろして鑑賞することも可能でした。ミニマルでポップでありながらも、まるでガジェットを目にするかのような冨井作品の魅力が感じられました。
大小島真木 展示風景
ラストの「身体」をテーマとした大小島真木の幻想的なインスタレーションも美しかったのではないでしょうか。
手前:大小島真木「ゴレム」 2020年 左:大小島真木「胎樹」 2020年
右奥:池上秀畝「桜花雙鳩・秋草群鶉図」 1921年
ここでは荒木十畝の「閑庭早春」と池上秀畝の「桜花雙鳩・秋草群鶉図」を参照しつつ、自然と生き物が共生しつつ、生と死が往還する空間が築かれていて、あたかも神話的世界に立ち入ったかのようでした。
大小島真木「ウェヌス」 2020年
展示はプレ展示(7/8〜8/2)と本展示(8/9〜9/27)に分かれ、プレ展示期間中には公開制作が行われたそうです。
現在の本展示中に開催予定だったアーティストトークは、新型コロナウイルス感染対応のため中止されましたが、代わって各作家のインタビューを収録した動画が期間限定(10月末まで)で配信されています。そちらも鑑賞の参考になりそうです。
青山悟「旗と聖火」 2020年
一部展示室と作品の撮影が可能でした。
会期末を迎えました。9月27日まで開催されています。
「練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築」 練馬区立美術館(@nerima_museum)
会期:【プレ展示】2020年7月8日(水)~8月2日(日) 、【本展示】 2020年8月9日(日)~9月27日(日)
休館:月曜日。但し8月10日(月・祝)、9月21日(月・祝)は開館。8月11日(火)、9月23日(水)は休館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人800(600)円、大・高校生・65~74歳600(500)円、中学生以下・75歳以上無料。
*プレ展示は無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*ぐるっとパス利用で300円。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。
「練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築」
2020/7/8~8/2(プレ展示)、2020/8/9~9/27(本展示)
今年に開館35周年を迎えた練馬区立美術館が、現代作家が同館のコレクションを新たに解釈して作品を公開する「Re construction 再構築」を開催しています。
参加したのは流麻二果、青山悟、冨井大裕、大小島真木の4名で、それぞれが順に「色」、「メディア」、「空間」、「身体」をテーマにした作品を公開していました。
冒頭は歴史の視点からコレクションを紹介するコーナーで、中でも恩地孝四郎や畔地梅太郎ら複数の画家が、1938年から1941年にかけて日本や台湾、それに朝鮮の景勝地などを描いた「新日本百景」に魅せられました。
右:松岡映丘「さつきまつ浜村」 1928年
左:流麻二果「さつき静まる浜村」 2020年
続くのが「色」をテーマとした流麻二果で、松岡映丘の「さつきまつ浜村」と松岡静野の「舞妓」を引用した作品を展示していました。なお松岡静野とは画家を志して島成園に師事し、後に映丘の妻となった人物で、夫を支えるために筆を折ったと言われています。よって作品も「舞妓」のただ一枚しか確認されていません。
右:松岡静野「舞妓」 大正時代
左:流麻二果「色の跡:松岡静野『舞妓』」 2020年
流のアプローチにかかると、映丘の風景や静野の人物が揺らぎ流れゆく色彩に還元していくようで、レイヤーを通した抽象パターンへと転化しているように見えました。
流麻二果 展示風景
これまでにも流は、絵画の中に使われた色を一色ずつ取り上げ、色の層を描くシリーズなどを手掛けていて、今回の「舞妓」でも静野が選んだ色を追体験するように塗り重ねました。
郭徳俊「大統領シリーズ」 展示風景
刺繍で知られる青山悟は「メディア」において、1937年に京都で生まれ実験的な創作を行ってきた郭徳俊の「大統領シリーズ」を起点に、大小様々なインスタレーションを公開していました。
青山悟 展示風景
ここで興味深いのは現代社会の世相を作品へ落とし込んでいることで、世界を襲った新型コロナウイルスやアメリカの分断、そして延期されたオリンピックなどの時事的な諸問題が浮き彫りになっていました。
青山悟「Map of The World」 2020年
素材もレジ袋やマスク、ゴム手袋など多岐にわたっていて、作品はバックヤードと思しきスペースにまで展開していました。素材とイメージの意外な関係も面白いかもしれません。
青山悟「Come see what's real」 2020年
既製品などを用いて立体作品を制作する冨井大裕は、1924年に東京で生まれた画家の小野木学の作品を引用した展示を行っていました。
冨井大裕 展示風景
湯桶や風呂椅子、スポンジにゴミ箱、塵取りなどを組み合わせた立体作品は、小野木の幾何学的とも呼べるような平面と向き合っていて、二次元と三次元の様々な形が一つの空間にて共演を果たしているかのようでした。
冨井大裕 展示風景
展示室内にはひな壇も設けられていて、見下ろして鑑賞することも可能でした。ミニマルでポップでありながらも、まるでガジェットを目にするかのような冨井作品の魅力が感じられました。
大小島真木 展示風景
ラストの「身体」をテーマとした大小島真木の幻想的なインスタレーションも美しかったのではないでしょうか。
手前:大小島真木「ゴレム」 2020年 左:大小島真木「胎樹」 2020年
右奥:池上秀畝「桜花雙鳩・秋草群鶉図」 1921年
ここでは荒木十畝の「閑庭早春」と池上秀畝の「桜花雙鳩・秋草群鶉図」を参照しつつ、自然と生き物が共生しつつ、生と死が往還する空間が築かれていて、あたかも神話的世界に立ち入ったかのようでした。
大小島真木「ウェヌス」 2020年
展示はプレ展示(7/8〜8/2)と本展示(8/9〜9/27)に分かれ、プレ展示期間中には公開制作が行われたそうです。
Re construction 再構築先日撮影したアーティストトークの様子をすこしご紹介☺️当館での開催はなくなってしまいましたが、会期中に動画配信にてお届け!作家4名それぞれのトークを配信します。詳細は決まり次第お知らせします!アーティストトークHP⇒https://t.co/INvTjRfmnw#練馬区立美術館 pic.twitter.com/EuZI15pOzK
— 練馬区立美術館 (@nerima_museum) August 28, 2020
現在の本展示中に開催予定だったアーティストトークは、新型コロナウイルス感染対応のため中止されましたが、代わって各作家のインタビューを収録した動画が期間限定(10月末まで)で配信されています。そちらも鑑賞の参考になりそうです。
青山悟「旗と聖火」 2020年
一部展示室と作品の撮影が可能でした。
会期末を迎えました。9月27日まで開催されています。
「練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築」 練馬区立美術館(@nerima_museum)
会期:【プレ展示】2020年7月8日(水)~8月2日(日) 、【本展示】 2020年8月9日(日)~9月27日(日)
休館:月曜日。但し8月10日(月・祝)、9月21日(月・祝)は開館。8月11日(火)、9月23日(水)は休館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人800(600)円、大・高校生・65~74歳600(500)円、中学生以下・75歳以上無料。
*プレ展示は無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*ぐるっとパス利用で300円。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「エキソニモ... | 2020年10月に... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |