「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」 日比谷図書文化館

千代田区立日比谷図書文化館
「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」
2021/7/17~9/19



千代田区立日比谷図書文化館で開催中の「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」を見てきました。

江戸時代に神田へ金物問屋として創業した三谷家では、8代目当主・長三郎が浮世絵師のパトロンとなって作品を蒐集し、今に至るまで貴重な浮世絵コレクションが残されました。



その三谷家コレクションにて構成されたのが「浮世絵をうる・つくる・みる」で、錦絵はもとより、画稿や資料など約140点(展示替えあり)が公開されていました。



今回の浮世絵展の大きな特徴は、タイトルに記されたように「うる」、「つくる」、「みる」の3つのキーワードから作品を紹介していることで、「うる」では江戸時代の浮世絵ショップである絵草紙屋が再現されていました。



絵草紙屋とは現代の本屋に相当するもので、店頭には絵入りの草双紙などとともに、錦絵が並べられていました。錦絵は軽くて持ち運びが便利であることから人気を博し、江戸の人々のみならず、江戸を訪ねた旅人などにも買い求められました。


渓斎英泉「地本問屋・山本屋平吉の店先」 天保10(1839)年

江戸後期にして1枚20文、現在の価格にして500円程度だったそうです。寛政年間に江戸の芝にあった地本問屋を描いた図や、明治期に残った絵草紙屋の写真パネルなども、当時の浮世絵販売の様子を知るための貴重な資料かもしれません。


三代豊国「四季遊観之内 弥生の汐干狩(校合摺)」 弘化4〜嘉永元(1847〜48)年

続く「つくる」では、浮世絵制作の工程が彫りと摺りの作業で使われる道具などと紹介されていて、三谷家に残された画稿や校合摺なども展示されていました。


三代歌川豊国「役者見立里見八犬伝 里見二郎大輔義実 杉倉木曽介氏元(版下絵)」 安政期(1854〜60)

欄外に三代豊国から三谷家の長三郎と彫師に宛てた書込みも興味深いのではないでしょうか。そこには長三郎に彫師を依頼したり、人物の描写に際して筋を細くするなどの指示が書かれていて、絵師とパトロン、それに彫師の間における生々しいやりとりを知ることができました。

なお長三郎は版元の恵比寿屋庄七や、歌川派の絵師と深く交流していて、その結果、三代豊国や兄弟弟子の国芳らの描いた画稿や版下絵が残されました。


右:歌川国芳「坂田怪童丸」 天保7(1836)年頃

ラストの「みる」では、歌舞伎の役者を描いた役者絵をはじめ、美人画や名所絵などの優品が数多く展示されていて、とりわけ役者絵と和漢の英雄豪傑らを題材にした武者絵が充実していました。


右:歌川国芳「和田合戦義秀惣門押破」 嘉永6(1853)年

歌川国芳の「和田合戦義秀惣門押破」は鎌倉時代の御家人、朝比奈義秀が和田合戦で奮闘する場面を描いた作品で、義秀は中央にて門の柱を掴みながら敵陣へと攻め入っていました。ともかく劇的でかつ躍動感のある構図が魅力で、もはやアクロバティックといえるような動きを見せていました。


月岡芳年「藤原保昌月下弄笛図」 明治16(1883)年

国芳、芳艶、芳虎、そして芳年などが展示のハイライトと言えるかもしれません。静けさに包まれながらも、張り詰めた緊張感の漂う芳年の「藤原保昌月下弄笛図」に魅せられました。


左:歌川芳藤「志ん板子供遊うんどおづくし」 明治7(1874)年

この他、子ども向けに体操や運動の動きを図解した尽くし絵といった、明治時代の教育的な錦絵にも目を引かれました。



「浮世絵摺り体験コーナー」も面白いのではないでしょうか。ここでは浮世絵の摺りの工程をインクやバレンなどを用いて体験することができて、完成したシートを記念に持ち帰ることもできました。



8月17日を挟んで作品の入れ替えが行われました。それ以降の展示替えはありません。(本エントリの作品は前期展示のものです。)


会場内の撮影も可能でした。9月19日まで開催されています。*一番上の作品は、三代歌川豊国「鍾馗図」 江戸時代後期

「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」 千代田区立日比谷図書文化館 1階 特別展示室(@HibiyaConcierge
会期:2021年7月17日(土)~9月19日(日)
 *前期:7月17日(土)~8月15日(日)、 後期:8月18日(水)~9月19日(日)
休館: 7月19日(月)、8月16日(月)、8月17日(火)
時間:10:00~19:00(月~木、土曜)、10:00~20:00(金曜)、10:00~17:00(日祝)。
 *入室は閉室の30分前まで
料金:一般300円、大学・高校生200円、中学生以下無料。
住所:千代田区日比谷公園1-4
交通:東京メトロ丸の内線・日比谷線霞ヶ関駅B2出口より徒歩約3分。東京メトロ 千代田線霞ヶ関駅C4出口より徒歩約3分。都営三田線内幸町駅A7出口より徒歩約3分。
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