【朝日子ども新聞のコラム原稿】
子どもに他人の飯を食わせよう! NPO法人ねおす 理事長 高木晴光
北海道の小さな町、人口3200人の黒松内町にある我家には二人の小学5年生が暮らし、児童数13名の小学校に山村留学をしています。大都会からやってきた彼女等とは孫程の歳の隔たりがありますが、ジジババではなくて気持ちは「父ちゃん、母ちゃん」です。
田舎は人口が少なくても人や自然とのコミュニケーション密度は都会と比較にならない位に濃くあります。我家は閉校になった小学校にあり「自然学校」という交流活動を行っています。20代の職員と共に9名で大家族生活を営んでいます。楽しいこともたくさんありますが、食事や生活で叱られもします。寂しいことも辛いこともありますが、実親に対してできるような感情に任せた我儘をいうことはできません。
一歩外にでるとビルはなく、緑に囲まれ野鳥がさえずり続け、蛇やクモ、バッタが、川にはエビやカニさえいます。時には「熊出没注意」の町内放送に脅かされます。スーパーの棚に並んだ食品ではなく、誰がどこでどうやって育てた、獲ったかがわかる野菜や魚が食卓に並びます。彼女等は都会にはない多様な人や自然の中で暮らしています。
時代が大きく変化をする中で社会の仕組みがあらゆる場面できしみを立て崩壊しかかっています。ところが多くの大人はこれまでと同じような社会が続くと妄想しています。今10歳の子どもが私と同年代になるのは半世紀も先なのです。それまでに日本の人口は何千万人も減少し人類初と言える超高齢社会に突入します。新しい社会の仕組みが必要なのです。しかもその時代を生きるのは私達ではない、今目の前にいる子ども達なのです。だからこそ、言われてやるのではない、自らが知らない人、知らなかった事に近づき、その環境の中でより良く暮らす「生きる力」を養うことが大切です。
子どもは庇護するだけの存在ではありません。自らを生き延びさせるたくましい潜在的生命力があります。その能力を使いリアルな直接体験を通し肌身で感じ、生きる具体的な術を獲得してゆきます。つまり、かわいい子には旅をさせろなのですが・・ただ、子どもは残念ながら自分で食料を確保できません。だからこそ、「他人の飯が食える環境」を大人はもっと提供すべきだと思います。