2012.6.20(水)曇
専門用語と化学式に満ちあふれた疲れる本というイメージだが、実は化学式など
一言も無く、大変興味深い内容の一文もあるので紹介しておこう。
「尾崎前山とその周辺」ー馬牧推定地の遺構についてという一文で、日本中世史専門の東工大福田豊彦教授の手になるものである。
尾崎前山の製鉄遺跡で、一体誰が何のために製鉄をしたかという課題のもとに探究されたものである。
原料の調達、経営者の性格、製品、領主の居住址、館出(発見された土塁)の実測、牧、官牧、官厩、牧司と労働力、牧付属の製鉄所
これがこの文の見出しである。想像力の豊かな方はストーリーが彷彿とされようが、氏はこの地域に大規模な土塁があることに着目され、調査の手を入れられる。それが古代の官牧(公の放牧地で大結牧に否定される)であったことに到り、古代の製鉄所が官牧の付属施設であろうと結論づけられる。この間の調査、研究が化学式こそ出てこないが、考古学的調査、遺跡の測量、労働力の計算など実に科学的で、そのうえ古文書による考察、地名の探究など実に綿密なものなのだ。結論に至るストーリーは一気に読んでしまうほど魅力的なものであった。
官牧と製鉄とのかかわりは私自身薄々感じていたことだった。
老富町の胡麻峠の由来を見つけるべく南丹市胡麻(ごま)を訪れて、その地がマンガン鉱の大産地であったこと、勝田家という鋳物師が操業していたこと、官牧であったこと、金属地名が多くあることなどを知った。古代製鉄の地ではないかという気がしており、製鉄用の木を切り出したばかりに灌木帯となり、放牧に適した地となったのではないかという珍説まで書いたことがある。
胡麻高原、胡麻新町で鋳物師勝田家は活躍していた。(2011.10)
その後長野県須坂市(すざかし)や東北の牧などの例から古代製鉄と官牧が関連するのではと考えている。
官牧と製鉄の関係について論理的に書かれているのはこの本が初めてで、不確かであったことがはっきりして、実に価値のある書籍であった。おわり
【作業日誌 6/20】
草刈り(3-4)
防鳥ネット張り
いやはやカラスの被害は頭に来るぜ。
今日のじょん:台風一過ったって北部じゃあ雨も風もしれていたんだけど、、、。
上林川はこの程度。