監督 滝田洋二郎 音楽 菅野よう子
時に文化文政。巨大都市江戸。一見平和に見えるその裏で、人と鬼との激しい戦いが繰り広げられていた。
江戸の闇から魔を祓うために組織された特務機関“鬼御門"。病葉出門は、そこで“鬼殺し"と怖れられる腕利きの魔事師だったが、五年前のある事件を境にそれまでの一切を捨て、今では鶴屋南北一座に弟子入りしていた。
が、謎の女つばきとの出会いが、彼の運命を狂わせた。
なぜか鬼御門に追われるつばきは彼に「自分の過去を探してくれ」と頼む。彼女の瞳の奥に宿る何物かに惹かれていく出門。執拗につばきを追う鬼御門の先頭に、出門と兄弟同様に育った安倍邪空がいた。鬼御門の頭領十三代目安倍晴明を奸計にはめて葬った邪空。が、彼は更なる力を求めて、鬼を率いる美形の妖かし美惨と手を組み、彼らの前に立ちはだかる。鬼の王“阿修羅"の悲しき因果に操られ、千年悲劇の幕が開く。
その先にあるのは、滅びか、救いか───舞台版のストーリーより
原作の舞台版で演った富田靖子や天海祐希もそれなりによかったんだろう。でも顔の表情がスクリーンに数十倍にも拡大される映画においては、宮沢りえの起用は必然。なんて美しい女優なんだ。
原節子、岸恵子、吉永小百合……これがまっとうな美人女優の系譜だとすれば、その裏には“邪悪な”と形容したくなるラインもある。山田五十鈴、京マチ子、細川ちか子……加虐な表情が色香をかもし出す、いわゆる妖女系。
「たそがれ清兵衛」「父と暮らせば」で清楚な美しさを感じさせた宮沢は、「阿修羅城の瞳」で真逆の妖女の一面を見せる。ちょっとネタバレになるけれど「(この男を)今、殺せる!」と感じた瞬間の喜悦の微笑みなど、震えがくる。
宮沢がどれほどの女優になるかは未知数。でも作品の選択は今のところ満点だ。タイプが少し似ている鰐淵晴子レベルにとどまるタマではないことを確信。
共演の市川染五郎も、こう何というか、性根の腐った感じ(笑)が実にいい。次作「蝉しぐれ」が不安になるくらいケレン味たっぷり。歌舞伎のシーンはさすがだ。
ムシャクシャする気持ちを払拭するに最適の映画。あー宮沢りえにもっともっといじめられたい!