「現在サーチエンジンにはおおきく分けて二種類あります。まずひとつはヤフー!のようなディレクトリ型。登録依頼のあったホームページを人間の手で分類しているものです。専門のスタッフでも一日に数百の分類で手一杯だそうです。現在ホームページは数万単位で毎日増加していますし(略)ディレクトリという構造が人がなにかを探すときの考え方に似ているので誰でも直感的につかえるんです。」
「それでもうひとつのサーチエンジンはどんなやり方をしているの」
「インデックス型といいます(グーグルはこちら)。文字通りすべてのホームページから目的のキーワードを自動的に拾う方法です。ロボット型の検索プログラムが勝手に世界中のサイトをめぐって、ある言葉をふくむサイトをごっそりさらってきます。」
“検索”というのがどうにもよくわからない。こんな説明をされたところで、あなた信じられますか?世界中に無限に広がるインターネットの世界で、キーワードをぶちこむとあんな短時間で数万、ヘタをすると数百万のサイトをピックアップしてくれるのだ。毎日ヤフー!やグーグルを使いながらも、わたしにとってコンピュータはいまだに一種のブラックボックスだが、その要因のひとつはこの検索というやつだな。だいたいあのヤフー!が、手作業で分類をしていると初めて聞いたのは数年前だけれど、先端を行くように見える情報産業の内情が、実は気が遠くなるような内職の世界だったなんて……
「アキハバラ@DEEP」は、石田衣良お得意のちょっとおしゃれなど根性商売物語。“IT版どてらいやつ男(やつ)”、というか。あるいは今回は、欠落の多いオタクたちが、お互いの長所と障害を武器に敵を攻略する、いわば“脆弱なサイボーグ009”とも形容できる。まあこういうキャッチコピーが次々にうかぶあたりが広告畑出身の石田の作品らしい。
主人公のオタクたちがつくりあげた、AI内蔵サーチエンジンをめぐる争奪戦。敵のボスはどうみても孫正義。しかしどちらにも正義があるのが、この業界の面白いところなのだろう。情報小説としても、とにかく読ませる。池袋に続いて、石田は秋葉原も魅力的に描いた。「よい人生とは、よい検索だ」がキーワード。面白いっす。