第3章「日露戦争」篇はこちら。
「ハワイ・マレー沖海戦」(’42 東宝)
監督:山本嘉次郎 特殊技術:円谷英二 主演:大河内伝次郎 原節子
「史劇を愉しむ」シリーズ太平洋戦争篇ということでいきましょう。この映画は開戦一周年を記念してつくられた大作。題名どおり真珠湾攻撃とマレー沖海戦という日本海軍の大勝利を描いたもの。なんといっても円谷英二の特撮がすごい。ハワイの山を回りこんで爆撃する戦闘機の姿など、戦中でこのレベルならもうちょっと戦後は進歩していてもよさそうなものじゃないかと思うぐらいだ。実際、戦後の東宝戦争映画ではこの映画の特撮シーンがさんざん使い回されている。まあ、ハリウッドにしたって大作だったはずの「ミッドウェイ」あたりは円谷特撮をそのまんま流用していたんだけど。
この映画は戦闘の連続だけではなくて、予科練の生活が地味ぃに描かれたりもしている。しかしこれがもうなんちゅうか“不健康なまでに健康”で、ちょっと怖い。乱暴な言い方をすれば、戦前の日本と現代の北朝鮮の相似を思ったりもする。国策戦意高揚映画だから仕方ないとはいえ、戦後、監督の山本は東宝争議(戦闘機以外は全部来た、と有名なストライキ及びGHQによる排除事件)の際に自己批判させられたりしている。でも、この映画が生み出した技術によって、戦後の特撮天国ニッポンが支えられていたのは事実なのだった。
次回は「太平洋の嵐」を。