映画「若い女」を観た。
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フランス映画はアメリカ映画と違って、神の概念があまり登場しない。願うことはあっても祈ることがないのだ。祈るというのは自分以外の何かの力に期待することである。アメリカでは神や天使に祈り、God bless you(神のご加護を)という。日本では神仏に祈り、初日の出に祈って御利益を期待する。
しかしフランス人が祈る姿はピンと来ないし、フランス映画でも祈るシーンの記憶がない。フランスは美を追求する国であるが、同時にリアリストの国でもある。
本作品の主人公は、所謂世間的な長所をほとんど持っていない。美人でもなく、何かの資格や才能がある訳でもない。その上、自分勝手でおしゃべり、自覚がないから反省もしないという、あまり付き合いたくない女性である。31歳は若いのか若くないのか微妙な年齢で、若い女(原題も同義)というタイトルは思わずニヤリとしたくなるようにアイロニカルだ。実にフランスらしい。
さてタイトルにも皮肉られる主人公だが、何があってもめげない底抜けに前向きの性格で、景気の悪いパリの街でなんとか生き延びていこうとする。自分に有利であれば口から出まかせも平気な彼女だが、嘘つきではない。
自分の現在を恥じることなく堂々としている姿は、見ているうちに次第にシンパシーを覚えてくる。世の価値観に惑わされず、悲惨な自分の状況を呪うこともない。金の前に屈することも、金のない人を蔑むこともない。あくまでニュートラルに、世間の尺度ではなく自分なりの判断で生きる。
経済的なことや仕事のことを考えれば、ミゼラブルな未来しか待っていないような彼女だが、女がひとりパリで生きていくということが不思議な共感を呼ぶ。主役のレティシア・ドッシュは初めて見る女優さんだが、なかなか見事な演技だったと思う。