映画「シャイロックの子供たち」を観た。
阿部サダヲがとても上手い。2013年の映画「奇跡のリンゴ」から、彼の出演作はだいたい鑑賞している。普通の人からエキセントリックな役柄まで、何でもこなす。演技に独特の間があって、それがこの俳優さんの特徴のひとつになっている。加えてユニークな声の持ち主で、映画をまるごと阿部サダヲワールドにしてしまう力強さがある。
本作品では普通の人の役だが、見かけによらず頭の回転が速くて肝っ玉の据わった西木課長代理を存分に演じてみせた。個人的な問題も抱えているが、職場ではおくびにも出さない。頭のよさは支店内では知られているようで、支店長以下、西木課長代理にはそれなりに一目置いている様子が見て取れる。こういう立ち位置の役はかなりの難役だと思うが、最初からそういう人間だとばかりに自然に演じている。
物語は池井戸潤お得意の権力者vs下級管理職のパターンで、切れ者の西木課長代理がどんな手を打つのか、ワクワクしながら鑑賞できるところは「半沢直樹」と同じだが、ごく普通の人である西木が、ごく普通の人たちとともに分析と対処を進めていくところがいい。極限状況を日常のレベルに引き戻すのが西木のキャラクターだ。おかげで立体的でリアリティのある作品に仕上がっていると思う。面白かった。