三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「BLOW BACK」

2023年02月17日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「BLOW BACK」を観た。
BLOWBACK : 作品情報 - 映画.com

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BLOWBACKの作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。「エクスペンダブルズ」シリーズへの出演などで知られる元格闘家のランディ・クートゥアが、仲間を裏切る...

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 ニックの武器は腕っぷしでも狙撃でもなく、頭が切れることだ。状況を分析し、計画を立案して、実行する。それに胆が据わっている。娘は父親の危うさを心配しながらも、その能力を疑うことはない。

 悪の連中にも衣食住は必要だ。世の人々の多くは生活レベルを向上させたいと願っていて、悪の連中も例外ではない。しかし自分で価値を想像したり世界観を構築することが出来ないから、世の中の価値観に流される。悪の連中にとって生活レベルの向上とは、いい家、いい服、いい車、いい女、いい食い物だ。俗物の価値観である。そういえば歴代の自民党の大臣が毎晩のように贅沢な食事をしていたという報道を思い出す。俗物根性が丸見えだ。

 身の程知らずだが、悪の連中も、できれば他人に尊敬されたいと考えている。しかしバカだから誰も尊敬しない。だったら、せめて畏怖の念を抱かせたい。そのためには強さをアピールして、舐められないようにしないといけない。怒鳴る、凄む、恫喝するという行動は、悪の連中が最も得意とする典型的な行動である。バカ丸出しだ。アベシンゾーもよく怒鳴っていたらしい。

 しかしニックには俗物が望む生活は必要ない。必要なのは難病の娘の治療費だ。保険が利かない高度治療を受けさせたい。普通の仕事では10年経っても稼ぎ出すことが難しい。その間に娘は死んでしまうだろう。
 悪の仕事をするには悪の連中を集めるしかない。悪知恵は働くが、基本的にバカだからおだてれば調子に乗る。使いやすいが、信念がないからいつ裏切ってもおかしくない。敵は警察だけではないのだ。

 ということで、本作品はニックと悪の連中と警察の三者の動きを追う、立体的なサスペンスである。とても面白い。無駄な描写を削っているから、場面を理解して次の展開を予測するのに観客の頭もニックと同じくらい目まぐるしく回る。これがなかなか楽しい。登場人物にはそれほど感情移入することはないが、物語がスリリングで目が離せない。アクション映画としてはよく出来ていると思う。