映画「FALL フォール」を観た。
簡単に言えば、フリークライミングの事故で夫を亡くしたベッキーの、立ち直りの物語である。そして事故のときに一緒にいた、女性クライマーのハンターがもうひとりの主人公だ。ベッキーがファーストネームで呼ばれるのに、何故ハンターはファミリーネームなのかは、特に説明されない。
起承転結がしっかりしていて、展開は非常に分かりやすい。キーワードは「適者生存」だ。ハゲワシが登場したときに、ハンターが口にする台詞である。何故キーワードなのかは、終盤になると分かる。
そんなことよりも、本作品の最大の特徴は、お尻のあたりがゾワゾワするくらい怖いことだ。ホラー映画みたいな未知のものに対する怖さではなく、眼の前にある物理的な恐怖だ。当方は、東京タワーの展望台のアクリルの床に立つのも怖いくらいだから、地上600メートルの高さは想像もつかない。足場は狭いし、高所の強風が吹く。フリークライマーだからこそ平気でいられるのだろう。習うより慣れろである。しかし登ってきた梯子は壊れて落ちてしまった。
どうすれば助かるか。極限状況に置かれたふたりは、失敗が許されない決断を実行するが、運命の女神はどこまでも冷たい。
最終盤はネタバレになるので書けないが、まあまあ納得のラストだった。ホラー映画には鑑賞後に安堵感があるが、本作品には爽快感がある。緊張と弛緩。ストレス解消にはピッタリの作品である。