三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「FALL フォール」

2023年02月03日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「FALL フォール」を観た。
映画『FALL/フォール』公式サイト|2023年2月3日(金)公開

映画『FALL/フォール』公式サイト|2023年2月3日(金)公開

映画『FALL/フォール』公式サイト|2023年2月3日(金)公開

https://klockworx-v.com/fall/

 簡単に言えば、フリークライミングの事故で夫を亡くしたベッキーの、立ち直りの物語である。そして事故のときに一緒にいた、女性クライマーのハンターがもうひとりの主人公だ。ベッキーがファーストネームで呼ばれるのに、何故ハンターはファミリーネームなのかは、特に説明されない。

 起承転結がしっかりしていて、展開は非常に分かりやすい。キーワードは「適者生存」だ。ハゲワシが登場したときに、ハンターが口にする台詞である。何故キーワードなのかは、終盤になると分かる。
 そんなことよりも、本作品の最大の特徴は、お尻のあたりがゾワゾワするくらい怖いことだ。ホラー映画みたいな未知のものに対する怖さではなく、眼の前にある物理的な恐怖だ。当方は、東京タワーの展望台のアクリルの床に立つのも怖いくらいだから、地上600メートルの高さは想像もつかない。足場は狭いし、高所の強風が吹く。フリークライマーだからこそ平気でいられるのだろう。習うより慣れろである。しかし登ってきた梯子は壊れて落ちてしまった。

 どうすれば助かるか。極限状況に置かれたふたりは、失敗が許されない決断を実行するが、運命の女神はどこまでも冷たい。
 最終盤はネタバレになるので書けないが、まあまあ納得のラストだった。ホラー映画には鑑賞後に安堵感があるが、本作品には爽快感がある。緊張と弛緩。ストレス解消にはピッタリの作品である。

映画「ピンク・クラウド」

2023年02月03日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ピンク・クラウド」を観た。
映画『ピンク・クラウド』オフィシャルサイト

映画『ピンク・クラウド』オフィシャルサイト

2023年1月27日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

映画『ピンク・クラウド』オフィシャルサイト

 映画の冒頭で、2017年に考えられたシチュエーションドラマで2019年の映画化だから、コロナ禍とは無関係に創出された作品だというテロップが流れる。コロナ禍と重ね合わさないで、独自の極限状況の中での人間の心理を想像して欲しいという訳だ。

 全編を通じて流れる不協和音のBGMが、不快で不穏な状況を際立たせる。主人公は知り合ってセックスをしたばかりの30歳くらいの男女で、翌朝に怪現象が起きて高層アパートの上層階に閉じ込められる。
 時間が瞬く間に過ぎる。その間には、協力があり、対立があり、融和があり、妥協がある。情報のやり取りはインターネットで、テレビのニュースもある。情報はあるが、実感がない。外に出ない、他人と触れ合わないのは、思っている以上にストレスになるのだと、本作品は伝えている。
 逆に言えば、社会は多かれ少なかれ、共依存の集合だということだ。そこから脱しようとすれば自殺するしかない。インターネットには視覚と聴覚による結び付きがあるが、それはある意味で幻想である。ふたりのうちのどちらかが自殺すると言い出すのではないかと思いながら鑑賞した。

 決して楽しいドラマではないが、リアリティがあって、スクリーンから目が離せない。役者陣が総じて好演で、カメラワークもいい。ブラジル映画のレベルの高さがうかがえる。思考をかきたてられるという点では、かなりの傑作だと思う。