三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「スクロール」

2023年02月04日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「スクロール」を観た。
映画『スクロール』オフィシャルサイト

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生きること。愛すること。 北村匠海 中川大志 監督・脚本・編集:清水康彦 原作:橋爪駿輝「スクロール」 配給:ショウゲート

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 北村匠海と中川大志が主演するということで鑑賞したが、清水康彦監督がちょっと心配だった。というのも、前作の「CUBE 一度入ったら、最後」が底の浅い作品で、菅田将暉や斎藤工、岡田将生、杏、吉田鋼太郎といった芸達者の役者たちの演技をすっかり駄目にしていたからだ。

 出だしはなかなかいい。不協和音のBGMが響く中を、幻想的かつエキセントリックなシーンが続く。極めて個人的なシーンだが、掘り下げていけば人類との共生感に至る可能性もある。国際映画祭も夢ではない気がした。

 「僕」のSNSのつぶやきも、ユウスケの自問自答も悪くなかったのだが、松岡茉優が登場したあたりから、前作の「CUBE 一度入ったら、最後」と同じように、登場人物同士の関係性に重心が移ってしまった。そうなると作品としての底が一気に浅くなる。

 登場人物がそれぞれに自分の問題を掘り下げることで、世界観を共有するような深みのある物語を期待したが、叶わなかった。北村匠海も中川大志もとてもいい演技をしていたので、なんとも残念である。

「そんなんで、生きる意味あんのか?」
「コダマ、マジで死んでほしい」

 ふたつの台詞には共通点がある。こういう言葉を吐くのは、いずれも世の中のパラダイムに毒されてしまった人間である。パワハラをする方もされる方も、寛容や優しさから程遠い精神性だ。思春期の中学生のレベルから一歩も成長していない。
 これでは共感を得られないし、登場人物の誰にも感情移入ができない。人間としての度量が狭すぎるのだ。だからどれだけ掘り下げても人類との共生感に至ることはない。国際映画祭など夢のまた夢だ。やれやれ。