映画「赦し」を観た。
登場人物はだいたい嫌な感じである。おまけにあまり頭がよくない。そして法廷のシーンが多い。そのせいか終始辛い気持ちでの鑑賞となった。しかし観終えると、シェイクスピアの悲劇みたいなカタルシスがある。不思議によく出来た作品だ。かろうじて明晰なのが、同級生を殺した犯人と、娘を殺された母親のふたりである。必然的にこのふたりを中心に物語が展開していく。
女子高生が同級生を殺したとなると、動機はいじめしか考えられない。いじめがエスカレートして殺してしまったか、いじめられた怒りが爆発したかのいずれかだ。本作品は後者だった訳だが、主眼はいじめそのものではなさそうだ。
尚玄という俳優は初見だが、台詞を言うのに抑揚がなくて、棒読みみたいに感じてしまった。そういう演出なのかもしれないが、娘を殺された作家にしては精神性が単純過ぎるように思わせてしまう演技である。
対照的に、殺された娘の母親を演じたMEGUMIと、犯人役の松浦りょうは好演。MEGUMIは、殺された娘が親に見せていた顔とは別の顔を持っていた話を聞いて、それを受け入れられない父親に対し、現実的に可能性を認める母親を上手く演じている。遡ってそういう娘に育ててしまった自分の責任を痛感するシーンにはリアリティがあった。
松浦りょうは、判決を受けてから7年間収監されて、数え切れないほど事件を反芻することで精神的に成長した犯人が、自分が殺した同級生の母親と父親のそれぞれと面会するシーンの演技が秀逸。特に父親との面会は、本作品で一番のシーンだと思う。
単純化すれば、独善的で他人を攻撃する父親の影響で同じような娘が育ってしまったという話だが、一般にいじめっ子がどうやって生まれるのかは謎だらけであり、簡単に図式化するのは難しい。本作品はそれよりも、いじめに遭った側がどうやって自分をコントロールしていけばいいのか、7年の刑務所生活でその答えに辿り着いたような印象を醸し出している。松浦りょうの落ち着いたウィスパーボイスがそこに信頼性を加味していて、なんとなく希望が持てる気がした。