三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」

2023年12月12日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」を観た。
映画『ヤジと民主主義 劇場拡大版』公式サイト

映画『ヤジと民主主義 劇場拡大版』公式サイト

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 アベシンゾーが警察官僚を取り込んで、政権維持のために言論封殺していたのは事実である。国会では、自分に批判的な日刊ゲンダイを持ち出して、言論弾圧などしていないとヘラヘラしながら答弁していたが、その裏では戦争法や共謀罪法、特定秘密保護法など、国民を弾圧して税金を自由に使う法律を着々と成立させている。
 本人が言う「美しい国」はお国のために国民が犬死にする国のようだ。射殺されても、アベが残した負の遺産は大きく、戦争法や弾圧法が成立してしまった以上、警察によって法が執行される。マスコミは既に有形無形の圧力を受けていたり、自ら進んで政権に尻尾を振ったりしているから報じないが、全国的に基本的人権よりも治安維持のほうが優先される傾向になってきている。

 どんな国でも警察は権力のポチであり、暴力装置である。暴力を振るう凶悪犯に対しては暴力で対抗するのが法的に許可されているが、丸腰のカタギを大人数で押さえつけたりするのは違法だ。それは警察の示威行為で、反体制的な発言をする人物に暴力を振るうことで、逆らうとこうなるというスケープゴートにしているのだ。ほとんどヤクザと同じだ。
 警察官は国民の生命、身体、財産の安全を守るのが本分だが、それよりも大事なものがあるようだ。それは警察組織であり、役人としての立場だ。警察の威信などという意味不明の言葉を使って、組織防衛をし、職務上の行為については、無理やり合法とする。
 以前、前方不注意とスピードの出しすぎで止まっているバスに衝突して死んだ白バイ隊員がいたが、何故かバスの運転手が逮捕されたことがある。死んだ隊員は巡査から二階級特進して警部補となり、警部補としての退職金と公務員の遺族年金が支払われている。すべて国民の税金だ。
 一般道で高速走行したアホの白バイ隊員の名誉と警察の威信とやらのために、バス運転手の人権が蹂躙された。もちろん裁判所は警察の味方だから、警察の主張する通りの判決が下され、バス運転手は業務上過失致死の冤罪で服役した。仮釈放も認められなかった。

 この国で腐り切っているのは政治だけではない。むしろ官僚組織である。政権交代で民主党が政権を執ったとき、官僚組織は自分たちの立場が危うくなることに危機感を覚えたようで、あらゆる策を講じて、民主党政権を潰しにかかった。政治家が旗を振っても役人が言うことを聞かなかったら、政治は空回りする。
 沖縄の米軍基地について、最低でも県外移転だと主張した鳩山由紀夫総理大臣は、日本の完了とCIAの協力によって、瞬く間に失脚してしまった。あのタイミングが、日本の民主主義が本格的なものになる唯一のチャンスだったのに、官僚組織がそれを潰したのだ。
 民主党政権は、鳩山のあとは菅直人が失言をして参院選で負けたり、野田みたいな口先だけのノンポリを担いだりして迷走した。しかし自民党がもっと酷かったことを思い出して、有権者が迷走に懲りずに民主党政権に何度もチャンスを与えていれば、官僚組織も協力せざるを得ないようになったはずだ。残念でならない。

 総理大臣が演説するとなると、警察は他の都道府県からも応援を仰いで警備する。使われているのはもちろん国民の税金だ。なのに、ストーカー被害を訴えてきた女性に対しては、何の警備もしない。警察にとっては、総理大臣と一般人の女性とでは、基本的人権の重さが異なるという訳だ。
 アベシンゾーが射殺されたのは、ある意味でストーカー殺人である。ストーカー対策に重きをおいて予算を注ぎ込んでいたら、そのノウハウが応用できて、アベシンゾーは射殺されないで済んだかもしれない。

 政治というのは税金の使い方で、我々は自分たちの納めた税金や保険料がどのように使われるのかを監視しなければならない。しかし日本人はそういう意識には乏しいように見える。困っている人々に税金が使われず、言論弾圧に税金が使われたり、他国民を殺すために兵器を購入するのに巨額の税金が使われたりする。政治家は官僚組織と持ちつ持たれつで、税金を山分けしているようなものだ。

 そういう政治家が選挙で何度も当選することに、絶望を覚えざるを得ない。アホウ太郎がどんなに暴言を吐いても、選挙では圧勝する。言論弾圧と弱い者いじめが大好きな有権者が、この国を滅ぼそうとしているのだ。

映画「マエストロ:その音楽と愛と」

2023年12月12日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「マエストロ:その音楽と愛と」を観た。
Netflix『マエストロ:その音楽と愛と』

Netflix『マエストロ:その音楽と愛と』

一部劇場にて12月8日(金)映画公開!プロデューサー:マーティン・スコセッシ&スティーヴン・スピルバーグ、監督・脚本・主演:ブラッドリー・クーパーの最強布陣で贈...

シネマラインナップ

 子どもの魂百までという諺があるが、その通りだと思う。
 本作品のレナード・バーンスタインは、最後まで少年のように描かれる。感性は瑞々しく、欲望には素直で、稚気にあふれて悪気がない。大酒飲みのヘビースモーカーだが、酒に飲まれるようなことはなかった。
 才能というのは、定義しづらいところがある。本作品では gifted という言葉と、talent という言葉が使われるが、どちらもバーンスタインの才能を表現するには何かが欠けている。自分の才能のことを言うのに、迷いながら talent と言うシーンがあるが、恥ずかしげに使うその言葉に、自分でも違和感があったのだろうと想像した。
 芸術家の一番の才能は、飽きないこと、持続することだと思う。本作品ではバーンスタインの音楽以外のシーンも多く描かれるが、彼が人生で最も多くの時間を費やしたのは、作曲であり演奏であり指導だろう。その時間が彼のレーゾンデートルであったと言える。実に羨ましい人生だ。
 バイセクシャルを隠そうともしないあっけらかんとした生き方は、長年にわたって妻のフェリシアには理解されなかったようだ。素直で悪気のない少年のような彼の本質に彼女が気づくには、かなりの期間を要したようだが、気づいて幸せだったと思う。
 カラヤンとの関係や、弟子の小澤征爾のことなど、バーンスタインはエピソードには事欠かない人物だが、本作品はあえて家族の関係性に絞ったことで、音楽界のスーパーマルチタレントの人となりに迫ることができた。

 ブラッドリー・クーパーは20代から70代までのバーンスタインを見事に演じきった。凄い演技力だ。音楽の才能にも恵まれているようで、バーンスタインの指揮の真似も堂に入っていた。56歳で亡くなったフェリシアを演じたキャリー・マリガンも、若い頃から晩年まで抜群にキュートで、最高だった。
 音楽は、我々の日常にうるおいとリズムを与えて励ましてくれる、人生に必要なものだと改めて感じさせてくれた。とてもいい作品だった。ブラボー。