映画「エターナル・ドーター」を観た。
音楽と映像はホラーみたいだが、マーティン・スコセッシが製作総指揮に名を連ねていることから、ホラーではないと思う。
ティルダ・スウィントンが演じた主人公ジュリーの内面世界を、彼女の一人二役で現実のホテルとその周辺にイメージとして思い切り膨らませてみせた作品である。
初老を迎えようとしているジュリーの孤独と喪失感が、モノクロに近い淡い色彩の映像から透けて見える。深い後悔や不安もある。母の記憶と、できなかったことが実現していたらという妄想と、それに現実とが、互いに境界線を曖昧にして、主人公の周りに広がっていく。
それは心のなかに溜まった澱のようなもので、捨て去らなければ前に進めない。そのためにこのホテルに来たのだ。孤独に自分の心の闇と対峙する姿はとても凛々しくて、ティルダ・スウィントンに相応しい役柄だった。オープニングは嵐の夜のようだが、エンディングには晴れた朝を迎えたような爽快感がある。