映画「マッチング」を観た。
至るところに綻びが見えるストーリーで、やや興ざめになるシーンがいくつかある。その度に少し白けるので、ホラー作品としての出来はあまりよくない。
29歳の娘が父親の昔の不倫に怒ることはあまりないと思う。十分に大人だし、自分の親が、人間として完成されている訳ではないことを知っているはずだ。
同じく、29歳にもなれば、多少のことには驚かない。異常事態が発生しても、叫ぶよりも先ず状況を把握して対処を考えるのが普通だ。人間は本当に驚いたときには無表情になるもので、土屋太鳳はその演技をしていたのに、そのあと叫ばせるのは、演出としてどうかと思う。
しかし悪いところばかりではなく、ミステリーとして謎が明かされていく展開は、見ごたえがあった。偶然に見える出会いは実は必然に近かったり、見ず知らずの他人だと思われた人間同士が、実は濃厚な関係性にあったりする。タイトルの「マッチング」の意味は、マッチングアプリのことだけではなかったという訳だ。エンターテインメント作品として楽しむには悪くない。