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空想歴史小説 貧乏太閤記41 命がけの敗走

2022年10月21日 17時36分29秒 | 貧乏太閤記
金ケ崎城に着いた三将は軍議を開いた
鉄砲は明智、木下合わせて800挺はある、木下隊、明智隊交互に撃って、弾込めの時間を稼ぐ、池田隊は弓隊、槍隊、騎馬隊を後方で構えて鉄砲隊の合間に追いすがる敵に攻撃を仕掛ける
敵勢に衰えが見えたら、最後の一射をかけてあとは足軽は胴丸も捨てて身軽になって一気に逃げること、そう取り決めを行った。

そして敵は数千の部隊が押し寄せてきた、打ち合わせ通りに反撃を開始した
だが池田隊は志願したわけでもないのに、取り残された不満からか臆病風に吹かれてあまり役に立たない
明智、木下隊は必死に戦ったが、少しずつ討ち取られていく、金ケ崎城も持ちこたえることができず、池田隊を叱咤激励して何とか防戦してもらった
何しろ木下隊500、明智隊500に対して池田隊は3000もいるのだ
しかし敵は新手を繰り出してくる、こっちは戦いぱなしだ、敵の勢いが少し鈍ったので逃げることにした
池田隊が先頭、後は木下、明智は入り乱れての敗走だ
敵は騎馬を先頭に追いかけてきた、逃げ足の遅いものから討たれていく
藪の中に逃げ込む者もいれば、谷に向かって転げ落ちていく者もある
皆、身軽になって逃げようとする
秀吉たちももう背後に敵が来るのが見えて観念した、「南無阿弥陀仏」思わず口からお経が出てきて死を覚悟した。
その時、道の両方から鉄砲の音が轟いて、追ってきた敵の騎馬武者が相次いで落馬した、それを見て織田方のいくらかが反撃に転じると、そのあとを来た雑兵は恐れて数町も後方に逃げた
再び、鉄砲が火を噴くと敵勢の影が消えた。
左右の林から出てきた侍大将は「われらは徳川の兵でござる、このようなこともあろうから援護するようにと殿様から命じられて鉄砲200と槍隊300で待ち受けていたのでござる、敵もいったん退いたようだから逃げましょう、われらはこれにて」
林の中に隠しておいた馬に乗って徳川隊は去っていった、足軽も後を追った
秀吉、小六、前野、半兵衛も敵の捨て馬を拾って乗馬した、「ゆくぞ、皆駆けよ」、武者はやはり捨て馬を拾い、足軽は裸同然の姿で駆けだした
「命あっての物種じゃ~なんまんだ~ぁ」歌ともつかぬ掛け声を上げて。

同じころ真っ先に駆けた信長は朽木谷に到着した、このあたりは朽木元綱の領地である、元綱が敵なのか味方なのかは信長にもわからない
前方に鎧武者の集団が騎乗してこっちを見ている、元綱は浅井の被官でもある、すなわち浅井に請われれば応援の兵を出すくらいの関係である
しかし足利将軍にも忠誠を誓っているから本当の姿はわからない。
もし元綱が浅井に通じていれば信長の首は琵琶湖を超えて、浅井か朝倉に送られるであろう
「人間五十年~~」信長はつい口ずさんでいた、「天命を待つのみ」
騎馬武者が3騎ゆっくり近づき下馬して片膝をついた
「織田様、われらは松永弾正が家臣と、細川の家臣でございます、将軍より朽木元綱をお味方にするよう命ぜられて今、朽木殿も快く引き受けてくれました
もはやここまでくれば安心でございます、屋形にて一息ついてください
都よりまもなく500騎ほど援軍も参ります故、ごゆるりと茶など」
信長が発つ頃には続々と敗残の家臣たちも追いついてきて、その数は数千に膨れ上がった、信長は無事に京に戻ってきた
しかし、翌日も殿軍の明智光秀、木下秀吉は帰ってこなかった、その家来たちも

「前田さま、うちの人はどうなったのでしょうか?」
訪ねて来た利家に、すがる様にねねが問いかける
秀吉は既に出世をしたが、利家も昨年利家の兄が死んだので前田家の相続人となり尾張荒子城主になった
自分の禄と合わせて5000石近い城持ちの大身になっていた。
「藤吉郎殿は殿軍となって、もっとも危険な仕事を志願された、いまだ京にはついていないようだが、一緒にいた池田隊がそろそろ戻ってきているから、間もなく無事に戻られるであろう」
「本当ですか? 本当に無事に戻るでしょうか」涙声である
「大丈夫じゃ、仏の道にも精通されているから神仏のご加護もあるだろう」
「ああ、そうでしたね、子供のころから運が強いと申しておりましたから、きっと大丈夫ですね、ささどうぞお上がりになって粗茶ですが」
利家が家に上がって茶を呼ばれていると、そこに、秀吉の母ナカも出てきた
「戦とは恐ろしいものじゃ、ひいの父親も戦争に出て傷がもとで死んでしもうた」
「あらまあ、母上、まだひいとおっしやる、信長様から秀吉と言う立派な名前をいただいたのに」
「なあに、儂から見れば100になってもあの子は、ひいじゃ」
「まあまあ、家の中ではそれでも良いが、世間では皆、秀吉殿に心服しておりますし家来も多いですからのう」
「わかりました、秀吉殿と申します、えろうなって遠くに離れていくようじゃ、滅多に家にも帰ってこぬしのう
子を作る時間もたまには無いと一生子なしじゃのう、ねねさ」
遠慮のない、ナカの言葉にねねの表情が曇った、結婚して9年になるがまだ子が生まれない
「おおい、儂じゃ、兄者が帰ってきたぞ」
やってきたのは弟、小一郎だ「今、使いが来てのう京に着の身着のままでついたそうじゃ」
「それでけがは? 腕はちゃんとついておるのか?」ナカが聞く
「大丈夫じゃ、多少のかすり傷はあるようだがケガはしておらんとのことじゃ、兄者は大手柄じゃぞ、無事にお屋形様や徳川さまを守ったのじゃから」
「その通りでござる、この戦一番の勲功でであろう、ただ負け戦故恩賞はないが、お屋形様のことじゃ近いうちに復讐するであろう
特に身内の市様の夫でありながら、お屋形様の命を危うくした浅井長政は許さぬであろう」
利家も、よほど悔しかったと見えて小一郎に興奮気味に語った、小一郎は京で留守居をしていたから戦場の様子はわからない。

















お~い 空よ 雲よ 秋は寂しいぞ

2022年10月21日 06時28分40秒 | 心 思い
秋が寂しい いつも秋は寂しい
それなのに 昨日今日の秋は 特別寂しい









秋空の 深さを知り 歳時記読む


水飲んで すぐ十月の 蒼空へ      由利雪二「花こぶし」







きみはいま いずこの秋を 見てるやら