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森鴎外=即興詩人
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森鴎外 (ウイキペディアから)
亡き父の書斎には鴎外全集の初版本があった
森鴎外と言う名の文豪のことを今の50代以下の人々がどれぐらい知っているだろうか?
「舞姫」? 「うたかたの記」?? それってなーに ???
と言う時代になったのだろう
ちょっとわかった人でも、「即興詩人」が鴎外の作だと思い込んでいる人が結構いるらしい
現代のデンマークの若者にハンス・クリスチャン・アンデルセンと言う人を知っているかと聞いたら
殆どの人が、それは誰? と聞き返してくるという話を聞いたことがある
日本では有名な童話作家だが、本国ではとっくに忘れ去られているのだろうか
そのアンデルセンが「即興詩人」と言う自伝的小説を残したことを、現代のデンマーク人は完全に忘れている
ならば、日本人が「即興詩人」を鴎外の作たど思い違いしても咎めるわけにはいかない
ではなぜ「即興詩人」が鴎外の作として日本では生き延びたのか
それは、その訳の日本語としての格調の高さの所為だという人もいる
その書き出しはlこうだ
羅馬(ロオマ)に往きしことある人はピアツツア・バルベリイニを知りたるべし。
こは貝殻持てるトリイトンの神の像に造り做したる、美しき噴井ある、大なる廣こうぢの名なり。
貝殻よりは水湧き出でてその高さ數尺に及べり。・・・
私がリーマンブラザーズなどの国際金融業を辞めて、カトリックの司祭を志して、ローマで神学を学ぶことになった時、小豆島の老主任司祭の岩永神父は私にこういった。
ローマに行くのなら、鴎外の即興詩人を読んでから行きなさい。私も、初めてローマに留学した時、先輩からそう薦められたことがあった、と。
アンデルセン原作の作品の主人公である即興詩人が、イタリアを旅するうちに嵐に遭って、「青の洞窟」に流れ着く場面がある。
私はこの夏で6度目のカプリ島で、3度目の青の洞窟訪問が叶った。毎度試みたのだが、3度は天候に阻まれて、中に入ることが出来なかったのだ。何しろ、千鳥ヶ淵の貸ボートよりもやや幅の狭い小舟に乗り換え、船底にお尻を付けて身を低くし、波が下がって口が開いた瞬間を見計らって船頭が鎖を手繰ってスルリと滑り込む以外に中に入る手だてはない。少し波が高かったり、うねりがあったりすると、もう入れない、運よく入れても出られなくなる恐れがあるからだ。
生涯に一度だけカプリを訪れ、夢に見た青の洞窟に振られ泣く泣く島を後にした経験のある人もきっといるはずだと思う。私は過去5回の内3回は泣きを見たのだった。
それが今回はどうだ。元ベテランのガイドさんで、今はマル5つの最高評価の日本レストランで女将(おかみ)をしている千香子さんが島一周の約束でチャーターしたモーターボートの船長は彼女の顔見知りでその道50年のベテラン。雲一つない快晴の太陽を遮るものは無く、気温は30度には達していた。波にも恵まれ、無事スルリと青の洞窟の中に入れた。これで勝率は5割にアップした。
それだけではない、勧められて船に乗る前に10ユーロで買って身に着けていた海水パンツは、アナカプリの海水浴場で泳ぐためだと思っていたのに、この青の洞窟で、小舟の船頭が、「本当は違法で警察に見つかれば罰金ものだが、俺が目をつぶるから、かまわないから入れ」としきりに勧める。
怖いもの見たさと言うか、無鉄砲と言うか、売られた喧嘩は買わなきゃ男が廃ると思ったか、元々Tシャツとズボンを脱げば準備は出来ていた。海水パンツ一つになって足からスルリと一気に首まで海水に浸かった。洞窟の水温は低かった。強い日差しに晒されて開き切っていた全身の毛孔がギュッと収縮するのが感じられた。心臓にもバクッとひとつ衝撃が来た。アリャ、このままご昇天かと一瞬覚悟したが、幸い無事だった。あとはボートから手を離し、全身がコバルトブルーに染まり、透明になっていく感覚に身を委ねるだけだった。
洞窟の入り口は小舟一艘がすり抜けるのがぎりぎり
泳いでいるのは私
体の芯まで青色に染まっていくような錯覚に捕らわれる
染まるだけでなく溶けてしまうのではないかと思った
ブルブルッ! もう上がらせてェ ~
満ち足りて再び小舟の人となると、船頭はいい声でカンツォーネを洞窟の天井にこだまさせながらゆっくり中を二周して、また眩しいい日差しの外海へ針の耳を通る糸の要領で海面が下がって洞門が開いた瞬間に鎖を手繰ってスルリと外に出た。みんな、身を平らにしてボートの船底にへばりついたのは言うまでもなかった。
小舟の船頭が、法律を犯してまで泳がせてやったのだから、泳がなかったものもみんな一人あたま10ユーロ出せ、と言ってきた。これさえなかったら最高の気分だったのに、とややつや消しの結末だったが、5人分で15ユーロに値切って手を打った。
では、そもそもなぜカプリ島に行くことになったのか、今日のブログでは全く姿を見せなかった同行者は一体誰だったのか、などの疑問には、次のブログでお答えすることになるだろう。
(つづく)