〔エゾ鹿〕 前回は「神が愛をもって無から世界を創造したときに悪を創らなかったはず」ということと、「われわれの世界には悪が、それも恐るべき邪悪なものが圧倒的な存在感をもってのさばっている」という疑う余地も無い現実をどう調和的に受け止めるかというところで、話が途切れたと思う。
〔ウサギ〕 神は初めから二者いた。善なる神と悪なる神。世界の善いものは全て善なる神から、悪は全て邪悪な神から。そう考えれば、目の前の現実は簡単に説明できるのではないですか。
〔エゾ鹿〕 単純だね、君は。そんなのどちらも本当の神の名に値しないよ。本当の神は、あらゆる相対性を超越した孤高の一者でなければならない。自らは初めも無く、終わりも無く、永遠の今に生きる神。真善美の源、あふれる愛で全ての被造物を無から存在界に呼び出した生命の与え主。それが、ユダヤ教、キリスト教、回教に共通する神の概念だ。
〔ウサギ〕 そんな神なんて、日本人には全く知られていないというべきだろうね。
その時、雲が切れて太陽の光が二人を包んだ。
ウサギはほとんど本能的に車を止め、外に出て太陽に背を向けて立った。目の前に虹があった。完全な弧を描いて、肉眼には本虹の外側にもう一つ、二重の虹が見えた。
象の鼻の岬の近く、今ちょうど鮭が上っていて、昨日は熊が出た谷を見下ろす高台では、虹の色が一層濃くなり、デジカメの感度でも二重の虹が識別できる
下の写真は南フランスで見た虹
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