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★ 書評 〔グアム日本人会会報〕
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カトリック神父 金融 バチカン 今年の1月と2月、グアム島の或る教会の司祭が一時留守をするということで、その留守番に出かけました。そして、最近、グアムの日本人会から会報が送られてきました。その中に、「ライブラリー発掘」と言うコラムがあって、私の本が紹介されていましたので、その書評を転載させていただきます。
「バンカー、そして神父」放蕩息子の帰還
谷口幸紀著 (亜紀書房)
「人生はほんの小さな偶然で大きく方向が変わるものであるが、私はそれを単なる偶然とは考えていない。」(本文203ページより抜粋)これはマザー・テレサが日本で著者を面接することになっていたのに彼女の持病が悪化してこられなくなったことに対して書かれたものだ。日本人会会員のサンティアゴ神父と共に1月半ばに日本人会に訪ねられた著者は優しく人を惹きつける眼差しが印象的であった。香川県高松の教会から1ヶ月余りグアムの教会のお努めで訪問された際、自書のこの本を日本人会に寄付してくださった。人はそれぞれのドラマをもって生きている。以前は何々をしていたが現在はこれこれをしている、という話はよく聞く。実際私にもある。この本のタイトルのごとく、以前は金融界でウォールストリート(アメリカ)、ドイツ、ロンドンを駆け回っていた著者が、バチカン(ローマ)で神父に転職する過程を読みどころとしている。サンティアゴ神父によると別の職から転職して神父になるケースは少なからずあるという。しかし、この本の魅力は自分のドラマを綴る著者の洞察力とペンマンシップだと思う。バイクの事故から始まるこの本は読みやすくておもしろい。何か映像を見ているような錯覚に襲われるほど描写や表現がうまい。そして次はどうなるのか本をおきたくないのである。なんと純粋で自分に偽りなく生きてこられたかと感心していると、聖地エルサレムで「お泊り保育作戦」をやりだす茶目っ気ぶりも伺える。この本を読まれた或る会員の方は「宗教書によくありがちな、押し付けの言葉で浮き上がった現実味のない文章ではなく、作者自身、生身の人間が生の言葉で赤裸々に書いている。」と感想を述べている。ほんの小さな偶然で私も今はここグアムに住んでいる。それでもこれはきっと単なる偶然ではなく何かの導きがあったからであろう、と放蕩娘の私は思うのである。
編集委員 中尾 真弓
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