激化する世界各国の農地争奪戦のレポート本です。
昨年、NHKで放映された同名の番組制作の裏側をレポートしたもので、農地を奪われる側の国は、東欧ウクライナ、極東ロシア、アフリカで、奪う側としては北欧、韓国、中国、インドが取り上げられています。将来的に人口の増加による食料不足を見越して、中国・インドは食料確保のための農地囲い込みを目論んでいます。いずれも好調な経済を背景に、貧しいアフリカ諸国にインフラと資本提供を申し出て、その見返りとして農地確保に励むという図式になります。政府間レベルでは双方にメリットがある契約ですが、現場の農民にとっては農地の収奪は死活問題となっているのが現状です。でも、そういう事情は無視される事が多く、当事者同士では軋轢となって問題となりつつあります。超大国のこの2カ国とは違って、韓国の場合は自国の農業壊滅によるアウトソーシングが目的です。極東の農地は日本、中国などもアプローチする地域ですが、韓国企業は政府の力も借りて、即断即決で農地確保に走っているようです。マダカスカルで国土の農地の半分を無償で獲得した時は、世界からの非難を浴びた経緯もあります。そういう状況では、日本も将来的な食糧不足は韓国同様に問題となりえますが、日本政府は海外での農地獲得よりも自国内の農業保護を優先する政策をとっているため、遅々として対策は進まない。商社は農地で作物を育てることには興味が無く、製品としての食料取引までしか考えていないのが現状です。そんな中、取材班は青森の大規模農家がウクライナでの農業育成支援を地道に続ける様子を追いかけています。彼のアプローチが今後の日本の農業に役立つ時期が来るかもしれないと結んでいます。
将来の食料確保は切実な問題というのは判っているのですが、それでも現代の大都市の消費者は、お金さえ出せば食料は手に入るものという感覚があります。でも今回の震災で判ったように、将来はお金がいくらあっても食料が手に入らない時代が来るかもしれない。対応は政府や企業に任せるのではなく、個人レベルでやるしかなさそうな気がしました。
備えあれば憂いなし。。。でも買い溜めするだけでは何も解決しません。食物を生産する技術を身に付けることの方が重要になるかも。