ロバート・キャパは大好きな写真家です。彼に纏わる本を読んでみました。
キャパの有名な「崩れ落ちる兵士」という写真は、いつどのように撮られたのかを
考察したのがこの本です。1枚の有名な写真を巡るミステリーを、ノンフィクション
ライターである著者が、独自の視点で謎解きを行っています。
「崩れ落ちる兵士」はスペイン戦争の象徴的な写真で、銃弾が当たった瞬間を見事に
捉えたものとして有名ですが、撮影したはずのキャパ自身のコメントはなく、
その撮影状況はよく判っていません。筆者は関係者にインタビューしたり、実際に
現場に足を運んで、本当は誰がいつどのように撮影したのかを考察しました。
自分の意図を作品に反映できる芸術写真家と違って、報道写真家が撮る写真は、
ほとんどが偶然の産物で、写真の価値を決めるのはそれを掲載するマスコミ等の
受け手側の意図に依ります。この写真も、受け手側によって評価が高まった事例であり、
それが撮影者を有名にすると共に、撮影状況を秘密にしなければならないことで、
或る意味十字架を背負わされることになりました。
多くの写真と簡単な図解を盛り込んでいて大変読みやすく、謎解きは多少くどい感じも
しますが、筆者の主張はとても判りやすく面白かった。