神が宿るところ

古社寺、磐座、不思議・パワースポット、古代史など極私的な興味の対象を見に行く

大歳御祖神社(駿河国式内社・その14)

2010-11-26 23:20:52 | 神社
大歳御祖神社(おおとしみおやじんじゃ)。祭神:大歳御祖神(神大市比売命)。
場所:静岡市葵区宮ケ崎町102-1(「静岡浅間神社」の住所)。
創建時期は不明。一説に、応神天皇(在位:270~310年?)の御代という。祭神の「大歳御祖神」というのは、大年神(オオトシ)の母神という意味で、本名は神大市比売命(カムオオイチヒメ)という。大山祇神の娘で、櫛名田比売命の次に須佐之男命の妻となり、宇迦之御魂神(稲荷神)と大年神を産んだ。この2神はいづれも農業神であり、神大市比売命も本来は農業神であったものと思われている。しかし、神名に「神大市」が含まれることから、「市場」の守護神として信仰されるようになったとされる。子の大年神は、年(季節)の移り変わりを神格化したものとも思われ、秋の収穫をもたらす神であった。更に、大年神の子には御年神(ミトシ)、大国御魂神(オオクニタマ)、奥津日子神・奥津比売神(オクツヒコ・オクツヒメ)、大山咋神(オオヤマクイ)など、重要な神々がいる。余談だが、正月のお年玉は、本来「御年魂」であるという説もあり、もしそうなら、御年神は子供にとって最重要の神かもしれない。
ところで、当神社は、江戸時代の文書等には「奈吾屋社」・「奈吾屋明神」などと称されていた。「ナゴヤ」というと、愛知県の県都「名古屋」が連想されるが、「ナゴヤ」というのは固有名詞ではなく、一定の地形・地勢を示す地名であるらしく、他所にもある。例えば、伊豆国の式内社「金村五百君和気命神社」の現社名は「奈胡谷神社(なごやじんじゃ)」となっており、これは鎮座地名(現・伊豆の国市奈古谷1399-1)をとったものと思われる。地名の由来の話に深入りはできないが、少なくとも「ナゴヤ」と祭神は無関係とみたほうがよい。
要は、当神社の祭神である大歳御祖神=神大市比売命は、多分(現・静岡市の基となった)「安倍の市」の守護神として祀られたとみられるが、「安倍の市」の所在地には争いがあり、その論争について当神社の鎮座地が関係してくるということである。このことについては、別項(「安倍の市」)で書くことにしたい。
ただ、「奈吾屋社」が「大歳御祖神社」とは本来別の神社だったとした場合、現鎮座地の背後の賤機山という名前などからして、それは「倭文(しずり、しどり)」など織物の神を祀るものだったのではないかと考えられている(なお、駿河国富士郡の式内社「倭文神社については、2010年8月27日記事参照。)。
ところで、「静岡浅間神社」のうち、「神部神社」と「浅間神社」は2社同殿で、賤機山の東麓にあって社殿は東向きに建っている。当神社は、南に延びた賤機山の先端に位置し、社殿も南向きである。賤機山は、遠く南アルプスから延びてきており、こうした山の先端(先・鼻)には神が宿ると考えられてきた。その意味では、当神社こそ、静岡平野のなかでも、神のエネルギーが籠もる最も良い位置にあると言えるのではないだろうか。


玄松子さんのHPから(浅間神社・神部神社・大歳御祖神社):
http://www.genbu.net/data/suruga/asama2_title.htm



写真1:「大歳御祖神社」正面鳥居(通称:「赤鳥居」)。社号標はシンプルに「大歳御祖神社」。


写真2:拝殿


写真3:参道入口の鳥居。参道の両側に「宮ヶ崎」の商店街が連なる。
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