女はスマホだけを見つめながら歩いて来る。周りの風景は何も目に入らない。頭の中は手の平に光る最小の神とリンクしている。
男は煙草だけに火をつけようとしながら歩いて行く。雛を守るように手をすぼめ風の勢いを封じる。視野は唇のように小さく尖っている。
互いの進路が重なっていることに気づくことができない。運悪く互いに避けられない相手が出会ってしまった。
近づく、近づく。
スマホ女と煙草男はぶつかった。
(シュッ)
火がついたのはスマホの方。
煙草はnoteに落ちて一編の詩になった。
スマホは赤く光って灰になった。