眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ハートブレイク・ゼロ(恋愛マスター)

2022-02-27 03:19:00 | ナノノベル
(どんなにうれしくても素直に返さないこと)
「好きです。僕と一緒に行きましょう」
 私もずっと好きだった。今すぐに想いを打ち明けて真っ直ぐに飛び込んでいきたい。どうして素直になってはいけないのか。
(待ちなさい。辛抱なさい)
 恋愛マスターが私の行動を制御している。彼女の言葉に従えば恋愛は正しく進み、誤ったルートは回避できるのだ。だけど、どうしてこんなにも苦しいの。
「ずっと好きでした」
 その言葉にも瞳にも偽りはなさそうに思える。爆発しそうな答えを私は胸の内に引き留めている。まだなのだ。すぐに答えを出してはならないのだ。寝かせるのだ。耐えるのだ。3日間待たねばならないのだ。
「あなただけを愛します」
 そう。私も。早く答えたい。近づきたい。そばに行って触れたい。好きなんだから。私の方こそもっと好きなんだから。
(待ちなさい。静観しなさい)

「あなただけを愛し続けます」
 1日が過ぎ、2日が過ぎても、彼は少しも変わらない。
 あと少し、あと少し、頑張って……。愛を信じて。
(約束の時間です。まもなく答えが出ます)

「誰か他にいるの?」
 疑いの言葉を置いて彼は歩き始めた。
「行かないで!」
 0時をまわったらすべて上手くいくから。答えられるのだから。
(待ちなさい! 追いかけないこと)
「待って! 私を置いて行かないで!」
(いいえ。彼を行かせるのです)

「好きです。ずっと好きでした」
 逃げて行く好きが、もう一度聞こえた。
(ほらみなさい。彼はもうあっちの子にいったわ)
 私だけを好きな時間は終わったのだ。
 マスターの声に従って危険なルートは回避することができた。あまりに正しすぎて私は涙が止まらない。
(これでいいの。もっと辛い目にあうところでした)

コメント
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