眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

街の串刺し

2022-07-07 03:25:00 | 短い話、短い歌
 渡りかけたところに、焼き鳥が3本落ちていた。
 何があったのか。恐らくこういうことだ。
 その人は焼き鳥の入ったパックを抱えて歩いていた。ちょうど踏切の前を通りかかった時、かんかんと音が鳴り出したので慌てて駆け出した。元々あふれんばかりに収まっていた焼き鳥は、勢い余って飛び出してしまった。落ちてしまったものは仕方がない。その人は振り返るよりも踏切を渡ることを優先し、遮断機が下りてしまう前に踏切を渡り終えた。その後何人もの人が踏切を渡る時に焼き鳥の存在に気づいたり一瞬目を留めたりはしたものの、あえてそれを手にしたり交番に届けたりする者はいなかった。
 その人は家に帰ってから焼き鳥で埋めるはずだった空腹を、カップ麺等で埋めたのだろう。冷たくなった焼き鳥に最初に触れるのは、この街に住む鴉かもしれない。




振り返るよりは進もう串刺しの未練は鴉きみのおやつさ

コメント
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