7Gの電波干渉を受ける内に感覚を乱されて、ジョナサンは仲間たちからはぐれてしまった。
「これからどうしよう」
すっかり失速して街の交差点まで降りてきた。助手席の窓がちょうど開いていた。少しお邪魔して運転席にいる男の帽子をつついてみた。(行き先をたずねるつもりだった)
「ひえーっ!」
その時になり、はじめて気がついた運転手は奇声をあげた。ジョナサンは驚いて窓から脱出した。ビルの屋上まで逃げると大きな鴉たちが集団でおかしな歌を歌って威嚇してきた。争いに来たわけではない。けれども、街には敵対的な空気が満ちていた。
コンビニの駐車場まで逃れて来たが、そこにはまた別の主がいるのが見えた。猫はアスファルトに身を伏せながら、自分の手をなめていた。
「南はどちら?」
猫はジョナサンの問いを聞いてから、もう一方の手をなめた。十分に時間をかけ、その間に彼がまだ逃げずにそこにいることを見届けると、ゆっくりと口を開いた。
「あなたの翼が知っているはずよ」
ジョナサンは飛び立った。
この街に自分を知るものはいない。
7Gと夕焼けが交じり合う空の中で、新しい挑戦を始めた。