眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

スロー・フード/スロー・ウォーク

2023-06-28 18:46:00 | コーヒー・タイム
「お待たせいたしました」
 それは待望のトーストか。注文した品が届けられることを、誰もが心から待ちわびるとは限らない。もう少し、もう少し、主人公の到着をただ待っていたい人もいるだろう。まだ現れぬ風景を想像しながら静かに過ごす時こそが宝物だとも考えることができる。実際にその時が来たら、時は急速に終点に向けて動き始めてしまう。「お待たせいたしました」届けられたトーストは、止まっているように見えた時計の針を押してしまうのだ。「ありがとう」感謝の言葉の裏には切なさも見え隠れしている。


「急ぎたくない道がある」

 テレビがまだ半分くらい信じられていた頃、鬼のようにゆっくり歩く技術を極めた人がいた。スーパー・スローウォークだ。素人目には完全に止まって見えたが、実際はほんの少しずつだが前進している。簡単なようでいて特別な筋肉を使っている、というような運動だ。すごさを検証する企画としてだるまさんが転んだに挑戦するも、AIの目を欺くことはできなかった。世の中には奇妙なチャレンジがあるものだ。尊敬や憧れを持ちつつテレビを見ていたことを思い出す。
 急ぐ必要のない道がある。たどり着きたくない目的地がある。着いたところであの人と顔を合わせる。早く着いたら儲かるの? 好きな人でも待っていてくれるの? だからと言って……、留まってゆっくりできるほどの時間もない。だから、僕は歩きながら時間をコントロールできたらと考えるようになった。
 昔は、人を追い抜いて歩いて行くのがいいと思っていた。歩く速さを誇ってもいるようだった。(行きたいとこがあったのだろうか)だが、今はそれとは逆だ。人よりもゆっくりと歩いて行きたい。

「ゆっくり動いて進まないのは当たり前だ」

 そうではない。目指すべき理想のフォームとは?
 自然に動いて、きびきび歩いているように見えながら、実際にはさほど前進に至っていない。運動はしているが、効率的な前進を第一目的としていない。そのような歩きが好ましい。歩行者の中に違和感なく溶け込んでいるが、不思議と周りから遅れを取っていく。まるで別の時空にいるように……。
 人にどんどん抜かされて行っても、少しも負けているようには感じない。なぜなら、抜かされているのではなく、抜かせているのだから。
「どうぞお先に」
 どん尻はずっと僕が受け持つのだ。

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街の証言者たち

2023-06-28 01:25:00 | アクロスティック・ライフ
行動履歴を洗い直し
通りに出ては
目撃証言を拾い集めた
のっぺらぼうだと思われていたところに
人の一面が見え始めた


こうもり傘と呼ばれていましたね
友達と呼べる友人は二次元三次元共にいなかったようです
もつ煮込みをよく独りで食べてましたね
飲めない酒をよく悪い薬と一緒に飲んでいました
表情に出さず平気な顔でよくうそをついてましたね


コインランドリーに激しく出入りしてました
トサカをつけた時は鶏気取りでしたよ
紅葉狩りに近所の犬を誘っては行っていました
ノートパソコンを後ろからのぞき込んでは嫌がられてましたよ
ひじき煮が大嫌いでした。肉を出せとしつこく言ってましたね


コップ酒がお気に入りでやたらとコップを集めていました
度が過ぎるほどの仕事好きでやばいのもよくやってましたね
もぬけのからかとうわごとのように言っていました
脳天気なのは毛嫌いしてましたね
ひねくれた奴でしたよ。曲がったことしかしてませんでしたから


小金には興味がないとか。ビッグになるとよく言ってました
ドローンを見ると興奮して子供のように追いかけてました
森によくこもってました。フクロウのつれがいたようです
農業を営む計画があったようです。土地を探してましたよ
昼寝が好きでしたね。眠るのが一番という雰囲気でしたね


駒を持ったら放しませんでした
同角不成と指されるとやたら切れてましたね
持ち歩があると何でもかんでも叩いてました
脳内盤が3面あると自慢げによく言っていました
飛車を特別にかわいがっていたようです


コオロギの粉末を持っていて何かの時に撒いてました
糖質を気にしてました。プと言えばプロテインと言ってましたね
モノポリーにはまってました。あれは国境とかないでしょ
飲み込みの悪い奴でしたね。会議中もガムを噛んでたくらいですから
引っかけ問題を酷く憎んでいました。根は正直者ですよ


言葉を言葉通りに受けてしょっちゅう問題を起こしてましたよ
ドラえもんが好きでしたね。どこでもドアはあると言ってましたね
物わかりがわるかったみたいですね。謎々でよく悩んでいたとか
乗り物の中では電車を好んでましたね。終点でも乗り続けているほどに
酷い奴としか言えませんよ。もういいですかこれから歓迎会だからじゃっ


この辺りでは相当に厄介な
トラブルメーカーであったようだが
元々そうだったのかはわからないところもある
のっぺらぼうはあくまで表の顔であり
人の解釈はまちまちに存在するようだ

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