眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

エアコンが早すぎる/オムレツも作れない

2023-06-01 02:45:00 | コーヒー・タイム
 5月になって夏日の日などが出始めるとどこも一斉にエアコンを働かせて冷房をがんがん利かし始める。そうなったら、もう止められない。当日の気温なんてお構いなしなのか。延々と冷房を利かしすぎて、僕みたいな寒がりは行く先々の店内で腕を抱えて震えて過ごす覚悟がいる。
「季節ってそんなに単純か?」
 本日より夏になりました。もう戻ることはございません。まるでそんな態度かと疑われる。7月8月は確かに夏だろう。毎日エアコンを稼働させて冷房を利かせなければ危険でさえあるだろう。だが、5月も同じでいいのか? 5月はもっとふんわりとした季節ではないか。5月であっても、日によっては10月中旬だったり、3月上旬であるかのような日に変わったりするのではないか。それでも頑固者はエアコンを止めようと動かない。どうしてなのか? 3月なのに、10月と同じなのに、冷房なんか利かせて何も不思議がないというのか?
 もう20時30分だよ。
「もう暑くないんだから、いい加減止めないか?」
 おい、そこのモールのフードコート!


 フィクションくらい好きにさせとけよと思わなくはない。
 傷つきやすい人は、傷つけることにも敏感だ。言葉を口にしたり、物を書いたりする時は、(これって誰か傷つけてない?)と一旦慎重な姿勢を取ることは、普通だ。だが、どう考えたところで100%は無理だろう。
(何を言っても駄目だ)
 喧嘩が拗れてどうにも気まずい空気に支配された時、適当な言葉が見つからずにずっと黙り込んでしまったという経験はないだろうか? その状況下では、素直に受け取れる言葉なんてなく、互いに傷つかないことができなくなっている。言葉を尽くしたとしても、ちゃんとしたとこには届かない。(無理ゲーなのだ)
 生きている限りは、誰かを傷つけたり迷惑をかけることを避け切れないのではないだろうか。一切角を立てないつもりなら、何も歌わないのが一番安全だ。皆はそれほど静寂を愛しているのだろうか。きっとオムレツだって作れなくなる。


 5月というのにインナー・ダウンを着ていた。僕はあまり前に出るタイプではないのだ。けれども、商品は前に出さなければならないという。後ろに引っ込んでいては売れず、また商品には表と裏が存在し必ず顔を前に出しておかないと駄目だという。ひたすら前へ前へと引き出していく仕事にはなかなか終わりが見えなかった。(弾けるような成果というものには程遠い)
「ありがとうございます」
 客が商品を1つ手に取ってカートに入れた。ありがとう? 商品が売れる。確かにそれはいいことのはずだ。だけど、心から喜べない。店の利益がどうした? どうあろうと賃金には何も関係がないようでもある。前に出ていた商品が消えたことがくやしくもある。(前に出ていたとうだけで売れたのか?)またやりなおしだ。整えたところで崩れるのはすぐ先の風景だった。単調な作業の繰り返しは眠たくもなる。誰か困っている人が現れてくれないだろうか。瓶詰めのマスタードでも、練りゴマでも、フライドガーリックでも、何でもいい。いつでも準備はできている。誰かを案内しながら、僕は歩き出したかった。


 僕が部屋にひきこもっていた頃のことだった。親戚の姉さんが部屋に入ってくるとジャラジャラとカーテンを開けた。太陽の光が射し込んで、部屋の中の魔物たちが一斉に悲鳴を上げた。
「社会復帰しないとね」
 彼女はさらりと言った。ごく自然な挨拶のように軽かった。けれども、僕はその言葉に本当は酷く驚いたし、傷つきさえもした。平静を装って頷くのが精一杯だった。(彼女はその時のことなどまるで覚えていないはずだ)
 社会とは…… 復帰とは……
 僕はいつ外れたの?

コメント
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