ストローの先はぐにゃっと曲がったタイプ。氷はきめ細かい。パーティションの汚れが近づいてみると目立つ。椅子は脚が高くかけ辛いようで下に横木が入っていて案外大丈夫。思っていたよりずっと柔らかい。シロップは見慣れないメーカーのもの。カウンターの奥行きはかけてみると随分広い。あると思い込んでいた電源はない。
「かけてみないとわからない」
勘が働いて合っている場合もあるが、全く的外れであることも多い。街でも家でも実際に住んでみないとわからないことは多い。仕事や職場も同じだろう。実際に深く潜入してみてはじめてわかる。想像のつくところがある一方で、全くかけ離れているところもあるものだ。アイスコーヒーは以前飲んだことのあるホットと比べて随分とまずく感じる。まさかシロップがまずいのか。そうでなければコーヒーそのものがまずいのだ。
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夢の中では友人の家にいて連ドラの再放送を見ていた。大してすることのない暇な家だった。本棚には神々のアドリブ、見たことのある個包装の高級菓子があった。目が覚めると毛布の中だった。誰かが毛布をかけたのだ。
「おはようございます」
警備員は外国人だった。彼は夕べ起こさなかったのだ。帰るところがなかったので助かった。自分の席に戻ってみるとポメラも鞄も無事だった。
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店の前の通りは坂道になっている。この店は坂道に建てられているのだ。東へ行く人は少し速く、西へ行く人は少し遅くなっている。商店街の果てなので、天井の照明や人々の表情にも少し陰りが見える。次の一口のことを考えると憂鬱だ。そういう状態になったら外食(飲食)は不幸だ。次の一口が楽しみでわくわくしている。それならどれほどハッピーか。